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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene6:月夜


フォスターと薪、二人は、釣りの成果を手に、ログハウスに戻ってきた。

「さすがは君だ。最後には、すっかりやり方を飲み込んでいた」
「指導が良かった。そういうことにしておこう」

釣りの成果があったからだろうか。
それとも、アウトドアで楽しむという、滅多に無い出来事のせいだろうか。

薪の表情は、和らいでいた。
普段はあまり見られない、楽しそうな薪の笑顔に、フォスターはつい、目を引かれた。

釣り道具を片付け、二人はキッチンへと足を運んだ。
「飲む物は色々とある。適当に飲んでくつろいでくれ」
フォスターはそう言うと、魚を調理台に広げた。

薪が近付いて、言った。
「僕も何かやろう」
薪のその言葉に、フォスターは、驚いた顔を見せた。

「僕も自炊経験は長い。だが、最近はお前がやって来てキッチンを占領するせいで、腕が鈍って仕方が無い。少しは僕にも料理をさせろ」

薪はフォスターの隣りに並んで立つと、言った。
「何を作るつもりなんだ?」
「大きい物は、ムニエルにする。後は、野菜と一緒に、スープ仕立てにするつもりだ」

「じゃあ、魚をさばくのはお前にまかせる。その方が良さそうだ。スープの方は、僕にまかせろ」
当然のようにそう言う薪を、フォスターは黙って見下ろすばかりだ。

「味付けはどうする?」
「・・君に、まかせよう」
「ここにある物を使っていいのか?」
「・・ああ」

薪は、人参とピーラーを手にすると、野菜の下ごしらえを始めた。
フォスターも自分の作業に戻り、魚を相手にナイフを動かし始めた。

材料を刻む音や、お湯を沸かす湯気が、部屋の中に、立ち込めていた。


************


ウッドデッキのテーブルに、出来上がった料理が並んだ。
「外のライトは付けなくてもいいな。付けると虫が寄って来る。中の明かりと、それに、今夜は月明かりがあるから、それで充分だろう」

フォスターはそう言い、一度中に入ると、ワインボトルを手に、戻ってきた。
テーブルを挟んで、薪とフォスターは、真向かいに座る。

フォスターが持ってきたボトルには、ラベルが貼っていなかった。
「今夜は、ワインの講釈は無いのか?」
薪が、からかうように言った。

「・・これは、地元のブドウ農家が、自宅用に作っている物だ。祖父の知人でね。祖父は、酒は強くなかったが、このワインだけは、新酒を毎年楽しみにしていた。いつか、私も一緒に飲みたいと思っていたが・・」

フォスターはそう言うと、薪のグラスにほんの少し注ぎかけ、
「これ位でいいか?」そう聞いた。

薪は答えた。
「いや・・せっかくだ。もっといただこう」
薪の言葉に、フォスターは微笑むと、並々とその赤ワインを注いだ。

そして、自分のグラスにも注ぎ、薪に向かってグラスを掲げ、乾杯をしてみせた。
この日は薪もほんの少し、グラスを掲げて見せ、それから、ワインに口を付けた。

「・・美味いな」
「そうか・・」

それから、二人は食事に入った。
フォスターはスープを口に運ぶと・・
「美味い!」大きな声で、そう言った。

もう一口食べて「美味い!」
更にもう一口・・「本当に美味い!」

「・・・・・」
何度も大声でそう繰り返すフォスターの顔を見て、薪は、

そう言えば、初めて夕食を共にした時も、この男は、こんな顔を見せた・・

そんな事を思い出した。
・・あれから、2年が過ぎていた。

料理の皿は全て空になり、ワインのボトルも、2本目が空こうとしていた。
フォスターは、この夜も饒舌になっていた。

「私は、三兄弟の次男として育った。父は素直な長男に期待を込め、母は甘え上手な末っ子を溺愛した。・・私は、そんな兄と弟に挟まれ、両親からは、ほとんど顧みられなかった」

「必死に頑張った。勉学も、何もかも。両親の目を引こうと、必死だった。しかし、私がどんなに優秀な成績を収めても、両親の態度には、変わりは無かった・・。私は、全ての物事を、斜めに見る癖が付いていた」

「祖父は、私の事を、最初から対等な人間として見てくれた。家族が避暑地でバカンスを過ごすという時も、私は一人で、祖父の元で過ごした。祖父と居ると、世界が広がって見えた。親兄弟の中で、もがいている自分が、とても狭い世界に居ると感じた。私はいつしか、呪縛から逃れる事が出来た・・」

薪は、テーブルに肘を付き、目を伏せ、フォスターの話を黙って聞いていた。

「この地で、私は解き放たれたのだ。全てはここから始まった。・・いつか、心から想える相手が現れたら、その人を、ここに連れて来たいと、ずっと思っていた。・・私の原点である、この場所に」

「まだ決定ではないが・・君はたぶん、来月で任期を終える事になるだろう。君は日本に・・第九に帰るんだ」

「・・薪、君の事だ。噂は色々と耳に入っていると思う。だが・・私は、君のこの2年間の仕事での実績を・・そして・・そして、君と過ごした時間を、軽く見ているわけではない。私は、ただ・・」

そこまで話した時に、フォスターは、薪の様子に気が付いた。

昼間の疲れが出たのか、それとも、いつに無くワインを多く飲んだせいなのか・・薪は、テーブルに腕と顔を付け、完全に眠っていた。

・・一体、話のどの辺りから、薪は眠っていたのだろう・・

フォスターは微笑んで立ち上がり、テーブルの向こうに回ると、薪を抱き上げた。
それでも薪は、ピクリともせず、熟睡していた。

フォスターは薪を抱えたまま、ロフトへの階段を上がった。
そして、薪をそっと、ベッドに寝かせた。

天窓から月明かりが差し込み、薪の髪や睫毛を、銀色に照らす。

フォスターは薪の頬に手を差し伸べ・・しかし、触れる直前に、その手をギュッと握り締めた。
そして、自分のそのこぶしを、薪の顔から離すと、その手で、薪の肩まで布団をかけた。

階段を降り、改めて、デッキチェアに座った。
3本目のワインを、グラスに並々と注ぐ。

夜空を見上げた。
今日一日の、薪の姿が、次々に思い浮かんだ。

「これでいい。私は、これで、充分だ」

月を相手に、グラスを掲げた。
そして流し込んだワインの香りが、フォスターの胸の奥に、深く深く、沈んでいった・・・・・・・




(終)



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コメント

■ 

ああー、フォスター、切ない、切ない~~(TT)
でも素晴らしい1日を薪さんと過ごせて良かった…薪さんも熟睡してしまうくらい、フォスターを信頼しているようだし。
かのんさんの表現力は素晴らしい、本当に極上のワインのような1作でした。

今後は、薪さんが日本に戻ってからのお話になるのでしょうか。
第九の皆はどうしているのかな…楽しみです。

■ 

おはようございます。かのん様♪

あうう…フォスター…切ないくて…切なく(T_T)…

めぐみ様と丸っきり同じ感想になってしまいますが…

薪さんは、心からフォスターを信頼しているのですね。
でなければ、お酒が入ろうと、こんな無防備に眠るわけありませんよね~。

かえって、彼には酷ですね…(T_T)

でも、フォスターは耐えましたね。
愛のない行為は無意味…
薪さんの心を裏切り、悩ませるような事はしない方でしたね\(^ー^)/

ちょっと残念な気もしますが…(^_^;)
仕方がありませんね。

フォスター氏の薪さんへの愛に乾杯☆☆☆

かのん様。小説「休日」お疲れ様でした。
こんな夜中にupされるなんて、大変だったのでは?

フォスター氏の魅力を存分に語った、かのん様の愛の込もった素敵な作品でした\(^ー^)/

ありがとうございました(^▽^)

■ 

うあーーーーーーん(ノД`)・゜・。

フォスターフォスターフォスターフォスターフォスター!!!

辛いよ~~~悲しいよ~~~切ないよ~~~

ずっとコメントしたくてウロウロしてたんですけど、
やっぱり切なくて切なくて切なくて・・・・・
またしても上手くコメントできませんでした(;_;)

フォスターと薪さんくっついて欲しい・・・
なんだか青木なんかどうでもよくなるくらいフォスターが好きです・・

薪さんといっしょになれたらどんなにか素晴らしいでしょう・・・

うぅ辛い・・・やっぱりダメだ・・・青木との仲を祝えないです・・・

薪さん第九に戻っちゃうんですか・・・
フォスターにとってはその方が忘れられて良いのかもしれないですね・・・
傍にいると薪さんの存在の強さに、魅力に、美しさに心奪われて、どうしても忘れることなんてできないでしょうから・・・

>今日一日の、薪の姿が、次々に思い浮かんだ。

ついつい薪さんを見つめてしまうフォスターの気持ちを想うと涙が滲みました・・・・・

>「これでいい。私は、これで、充分だ」

本当に?本当にそれでいいの?あきらめちゃうの?
本当に青木には敵わないの?。゜゜(´□`。)°゜。

想いが叶わないのなら、フォスター。いつかあなたが薪さん以上に愛する人と、あなただけを愛してくれる人と、幸せになってくださいね・・・
あなたの幸せを薪さんと同じくらい心の底から祈ってます(--、)

かのんさん、お疲れさまでした&想いのこもった創作ありがとうございましたm(__)m

■ 

○原麻めぐみさま

読んで下さった事、そしてコメントも、ありがとうございます。

> ああー、フォスター、切ない、切ない~~(TT)

切なさを感じ取っていただけて何より嬉しいです。
ありがとうございます。

> でも素晴らしい1日を薪さんと過ごせて良かった…薪さんも熟睡してしまうくらい、フォスターを信頼しているようだし。

「素晴らしい1日」と受け取って下さって、とても嬉しかったです。
田舎で過ごす他愛も無い一日ですが、今の状況で出来る範囲では、フォスターにとって最大限の素晴らしい一日だったと、私も捉えているので。

> かのんさんの表現力は素晴らしい、本当に極上のワインのような1作でした。

うわ・・・・・・・
めぐみさんの方こそ、何て素晴らしい表現なのでしょう。
「極上のワインのような1作」というお言葉、もったいなくて、でもとても嬉しいこのお言葉に、私が酔ってしまいました・・

> 今後は、薪さんが日本に戻ってからのお話になるのでしょうか。
> 第九の皆はどうしているのかな…楽しみです。

あ・・考えておりませんでした(笑)
最近、アメリカやイタリア等、外国にばかり行っていた(脳内が)ので、すっかり第九の現状とかを忘れておりました・・

■ 

○たつままさま

こんにちは。
コメントありがとうございます。

後書きにも書きましたが、今回のお話は、たつままさんのお陰で出来ました。
どうもありがとうございました。

> あうう…フォスター…切ないくて…切なく(T_T)…

嬉しいです(TT)
切なさを感じ取っていただけるのが、何より嬉しいです。
ありがとうございます。

> 薪さんは、心からフォスターを信頼しているのですね。
> でなければ、お酒が入ろうと、こんな無防備に眠るわけありませんよね~。

そうですね。
しかも、一度あんな事があったにも関わらず・・
薪さんは、自分がもう惑わされない事と同じ位、フォスターの事も信じているのだと思います。

> かえって、彼には酷ですね…(T_T)

そこまで分かって下さるのですね。嬉しいです。

> でも、フォスターは耐えましたね。
> 愛のない行為は無意味…
> 薪さんの心を裏切り、悩ませるような事はしない方でしたね\(^ー^)/

そうですね・・
これがもし、フォスターの気持ちが生半可な物であったら、相手が無防備なのをチャンスと捉えるかもしれませんが。
真剣な想いである程、相手の信頼を、裏切れないのではないでしょうか。

> フォスター氏の薪さんへの愛に乾杯☆☆☆

素敵な乾杯を、どうもありがとうございます!!!

> かのん様。小説「休日」お疲れ様でした。
> こんな夜中にupされるなんて、大変だったのでは?

お気遣いありがとうございます。
何だか今回は勢いが付いて、一気に書き上げたくて仕方がありませんでした(^^;)

> フォスター氏の魅力を存分に語った、かのん様の愛の込もった素敵な作品でした\(^ー^)/
> ありがとうございました(^▽^)

こちらこそ、最後まで読んで下さって、そして想いのこもった素敵なコメントを下さり、どうもありがとうございましたm(_ _)m

■ 

○コハルビヨリさま

コメントありがとうございます。

> うあーーーーーーん(ノД`)・゜・。
> フォスターフォスターフォスターフォスターフォスター!!!
> 辛いよ~~~悲しいよ~~~切ないよ~~~

ああああ・・泣かないで、コハルさん(TT)
でもそこまで想いを込めて読んで下さって、本当にありがとうございます。
私の方こそ、胸が一杯になります。

> ずっとコメントしたくてウロウロしてたんですけど、
> やっぱり切なくて切なくて切なくて・・・・・
> またしても上手くコメントできませんでした(;_;)

いっぱいいっぱい切なさを感じていただいて、本当に嬉しいです。
ありがとうございます。

> フォスターと薪さんくっついて欲しい・・・
> なんだか青木なんかどうでもよくなるくらいフォスターが好きです・・

そんなーーーーーーー
ああでもそこまでフォスターを愛して下さって、どうしましょう・・
本当にありがとうございます。

> 薪さんといっしょになれたらどんなにか素晴らしいでしょう・・・

コハルさんのこのコメを拝見して、二人が一緒になる光景もチラッとよぎってしまいました・・
もし、薪さんが青木よりも先に彼と出会っていたら・・・
いえいえ、青木が居たからこそ、薪さんはアメリカに渡る決心をしたのですから。
そんな風に、私まで考えてしまいました・・

> うぅ辛い・・・やっぱりダメだ・・・青木との仲を祝えないです・・・

そんなーーーーーーーー!!
・・・とまどう程に嬉しいです。

> 薪さん第九に戻っちゃうんですか・・・

この分だと戻りそうです。

> フォスターにとってはその方が忘れられて良いのかもしれないですね・・・
> 傍にいると薪さんの存在の強さに、魅力に、美しさに心奪われて、どうしても忘れることなんてできないでしょうから・・・

そうかもしれませんね・・
傍に居たら、余計に辛いかもしれない・・
でも、傍に居るだけで、幸せだったかもしれない・・でも・・

> ついつい薪さんを見つめてしまうフォスターの気持ちを想うと涙が滲みました・・・・・

彼はきっと、仕事の時も、薪さんが広い部屋の反対側の隅に居たとしても、きっと薪さんの様子を常にそれとなく見ているのだろうと思います。

> 本当に?本当にそれでいいの?あきらめちゃうの?
> 本当に青木には敵わないの?。゜゜(´□`。)°゜。

ああああ・・どうしよう・・・・
コハルさんのお気持ちが嬉しいような、困ったような、辛いような・・でも幸せです。こんなにもフォスターを、作品世界を愛していただいて・・

> 想いが叶わないのなら、フォスター。いつかあなたが薪さん以上に愛する人と、あなただけを愛してくれる人と、幸せになってくださいね・・・
> あなたの幸せを薪さんと同じくらい心の底から祈ってます(--、)

本当に本当にありがとうございます。
コハルさんの心からの祈りは、きっと彼に通じると思います。

> かのんさん、お疲れさまでした&想いのこもった創作ありがとうございましたm(__)m

こちらこそ、コハルさんの想いに感動して、上手く言葉に表せません。
本当に本当に、ありがとうございました!!!

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