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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

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レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
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第9話:助手


それは、アオキールが、ソガンザや、他の数名の近衛兵達と城内を歩いている時だった。
アオキールは、見覚えのある人影に、目を止めた。

「あの方は・・?」アオキールが尋ねると、
「ああ、王室の医者だ」ソガンザが答えた。

「いえ・・そうではなくて、先生と話してる方です」
「あれは、医者の助手をしている女性だ。名前は・・誰だったかな」
「ユキエンナ、そう聞いておりますが」

アオキールの言葉に、ソガンザは驚いた顔をした。
「名前まで知ってるのか? アオキール、お前は、意外と隅に置けぬなあ。イマイップ殿でさえ、あの女性から名前を聞き出すのは、至難のわざだったと言うのに」

「いえ、私は、彼女から、直接名前を聞き出したわけではありません」
「え? 本人から聞いたわけでもないのに、名前を知っているのか? これは益々・・」
ソガンザの言葉に、他の近衛兵達も、顔を見合わせて笑った。

アオキールは、それ以上、何か言うのをやめた。

姉の出産に、産婆と共に立ち会ったその女性は、子供が無事に生まれ、事なきを得ると、産婆とすぐに帰っていった。
アオキールは、話す間も無かった。

ユキエンナという名で、産婆の娘だということは、後で母から聞いた。
出産当日だけでなく、身ごもってからというもの、何かに付けて様子を見に来てくれたと、それは姉から聞いた。

まさかこんな所で出会うとは。
一言、礼を言いたいと思ったが、ソガンザ達の前で声をかけるのは、賢明ではないと思われた。
後で先生の所へ行ってみよう、そうアオキールは心に決めた。

休憩の折り、アオキールは医者の部屋を訪ねた。
ノックをしたが、返事は無い。
出直そうかと思った時に、背後から、あの女性が現れた。

「何か?」ハッキリとした口調は、初対面の時と同じだ。
「私は、近衛兵の、アオキールと申します」
「どなたか、ご病気か、お怪我でも?」彼女は、心配そうな顔で、そう聞いた。

「いえ、そういうわけでは・・」
アオキールがそう答えると、ユキエンナは急に冷めた口調になり、言った。
「それでは、先生へのご用は後になさって下さい。先生は今、ご診察に出ておりますので」

「診察・・と言うと、王の所ですか?」
「だったら、どうだと言うのです」

「王のご病気は・・いかがでしょうか」
アオキールの胸中に、父王を思う、姫の面影がよぎった。

「あなたも、王様のご様子を探りにいらしたのですか? 王様のご容態についてでしたら、姫様と、タシロス様にお伝えしております。それ以外の方には、お話し申し上げるわけには、参りません」
ユキエンナは、キッパリと言った。

「私は、先生に頼まれて、足りないお薬を取りに参ったのです。早く戻らねばなりません」
ユキエンナはそう言って、部屋のドアに手をかけた。

「まだ、何か?」
その場を動こうとしないアオキールに、怪訝な顔をしている。

「いえ・・私は、先生ではなく、あなたに用があって参ったのです」
やっとアオキールは、そこまで言うことが出来た。

ユキエンナは、身体をアオキールに向け直して立つと、ふーっと、ため息を付いて、言った。
「私に用がおありだと。手身近に、お願い申し上げます」

見上げる黒い瞳には、苛立ちが見えた。
アオキールは、その瞳に、またも意志の強さを感じた。

「私は、近衛兵で、名をアオキールと申します」
「それは、先ほど聞きました」

「先日は、姉の出産にて、大変お世話になったので。ユキエンナ殿に、お礼を申し上げたくて」
「姉?・・あなたの?」
「ええ・・あの、私は、義兄と共に、あなたに水をかけられた者です」

一瞬の間の後、ユキエンナは、その場面を、思い出したようだった。
「あ・・」
そう声に出し、笑みを見せた。

笑うと、彼女の目元が、突然和らぐのを、アオキールは知った。

「ああ、そう。あなた・・。だったら、最初からそう言って下されば良かったのに」
「あなたが、言わせてくれなかったのでは・・」
「え?」
「あ、いえ・・」

アオキールは、改めて、彼女を見て、言った。
「ありがとうございました」

「いえ。ご無事にお生まれで何よりでしたわ。お姉さまは、産後のひだちはいかがでしょう?」
「私は、あの後すぐに城に戻ったのですが、母より手紙が参りました。姉は順調に回復し、子供も、すくすくと育っているようです」

「そうですか。女の子でしたわね」
「ええ。マイネッラと名付けました」
赤ん坊の話に、穏やかで優しい空気が流れた。

「あなたがここに居らっしゃるとは、今日まで存じませんでした」
「私は、ここでずっと先生の助手をしております。先頃、姫様の乳母殿から、姪御さんが身ごもったことを知らされましたので。私から、産婆である母に、子供を取り上げるように頼んだのです」

「そうだったのですか」
「わざわざ足を運んでいただきまして。では」
そう言って微笑むと、ユキエンナは部屋の中に入り、アオキールの目の前で、ドアを閉めた。

初対面といい、今度といい、何て印象の鮮やかな女性だろう、そう、アオキールは帰る道すがら、思っていた。

兵舎に戻り、持ち場に着く為の支度を始めると、何やら、ソガンザやイマイップ、それに何人もの近衛兵達が入り口に集まり、意味ありげにアオキールを見て、笑っていた。

支度を整え、アオキールが彼らのところへ行くと、ソガンザが声をかけてきた。
「どうだった? 首尾は」
「首尾、とおっしゃると?」
アオキールは、何のことだか分からない。

「休憩時間に、食事もそこそこに立ち上がり、アオキールはどこへ行ったやら」
「あれは、きっと女だ」
「そう言っていたら、王医先生の所へと向かうお前を目撃した者が居た。これは間違いないと、そういう話になったわけだ」

「いえ、そういうことではございません! 私はただ、姉の出産の礼を言いに・・」
「まあまあ、そう言い訳するな、アオキール」
「なかなか、美人ではあると思うぞ」

「しかし、あの女は難しいだろう。イマイップ殿でさえ、剣もほろろに断られたとのことだ」
「とにかく気が強い。大体、この城の女は、気の強い者が多い」
「姫の影響だろう」
「違いない」

そう言って、兵士達は、ドッと笑った。
姫の話が出た事に、アオキールは、また、胸がうずいた。

そんなアオキールの様子を見て、イマイップが、アオキールの肩に腕を回した。

「アオキール、確かに、気持ちを切り替えるのは、なかなか難しい事かもしれない」
「? あの、イマイップ殿。何をおっしゃっているのか、私には呑み込めないのですが」

「・・分からなくていい。とにかく、お前が、あの女性に興味を示しているのは、非常に良いことだと思っている。我々は、全面的に、お前とユキエンナ殿の事を、応援するぞ」

イマイップの言葉に、周囲の野次が続いた。
「そうだ、そうだ。我々が付いている」
「大船に乗った気でいろ」

姫の縁談で、すっかり士気が下がった近衛兵達にとって、この話は、格好の餌だった。
食い付かない手は無かった。

「ですから! そんなことでは!」
アオキールは必死に言い訳をしたが、聞いている者は居なかった。



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