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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

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レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
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第12話:信念


姫がソガンザ達と話をするその前の時、アオキールは、医者の部屋へと向かっていた。
ノックをしたが、やはりまた、留守のようだった。

足音に振り返ると、そこに、ユキエンナの姿があった。
顔が半分埋もれる程に、腕一杯の書物を抱えている。

「お運びしましょうか」アオキールは申し出た。
「あなたは・・。結構ですわ。こういったことは、慣れておりますの」

言ったそばから、ユキエンナはその場でつまずき、転びそうになった。
とっさにアオキールは、彼女の身体を抱き留めた。

「キャッ!」
「うわっ・・・ターッ!!」

・・彼女を支えたまでは良かったが、同時に、大量の書物が、アオキールの身体に、一気にぶつかって、なだれ落ちた。

「だ・・大丈夫?」ユキエンナは、アオキールの顔を覗き込む。
「え・・ええ」アオキールは、自分の腕をさすりながら、床にかがんで書物を拾い始めた。
ユキエンナも共に拾い集める。

拾いながら、ユキエンナは、くくっと笑い出した。
「あなたって人は・・」
おかしそうに笑いながら、本を集める。

そんなユキエンナの横顔を見ながら、アオキールは、どうも自分は、この女性の前では、情けないところばかりを見られている気がする、そう思った。

結局、アオキールが書物を、部屋に運び込んだ。
「こちらに置いて下さる?」
言われるままに、本を置く。

難しい言葉が並ぶその本に、アオキールは怪訝な顔をした。
「疫病や奇病に関する本を集めたのです。これから急いで調べ物をしたいので、失礼しますわ」
そう言うと、ユキエンナはアオキールが目の間に居ることにも構わず、本を開いた。

真剣なその表情に、アオキールはしばし見とれた。そして、
「あ・・そうです。疫病、そのことで、私は参ったのです」そう言った。

顔を上げたユキエンナに向かって、アオキールは続けた。

「城では、噂が飛び交っております。料理人達を中心に、不審な病が流行っている。どうやらそれは疫病らしいと。しかし、人の言う事は様々で、どれがまことの話なのかが分かりません。あなたに聞けば、それが分かるのではないか、そう思って、参ったのです」

アオキールの真っ直ぐな瞳を、ユキエンナはじっと見返した。
そして、言った。
「あなたは何故、それを突き止めたいのです?」
「え?」

「近衛兵のお務めは、城を守り、王様や姫様を守る事ではありませんか? あなたは、以前にも、王様のご容態をお聞きになっていた。何故です? 一兵士であるあなたが、何故お城で起こっていることを、突き止めようとなさるのですか?」
「それは・・」

アオキールは、自分でも分からなかった。
確かに、自分がしていることは、分を過ぎた事なのかもしれない。
だが何故か、この城で、今何が起こっているか、それを見過ごす事は出来なかった。

「分かりました」
ユキエンナは、アオキールから目をそらさずに、言った。

「あなたには、まことの事をお話ししましょう。ただ、みだりにそれを言いふらし、皆の動揺を招く事、それだけはしないと、約束を」
「誓います」

アオキールの言葉を聞いて、ユキエンナは、ゆっくりと話し出した。

「料理人や給仕係達が、得体の知れない病にかかっているのは本当です。まずは風邪のような症状に始まり、高い熱を出し、湿疹が広がって、食べ物を受け付けなくなり、やがて衰弱して、弱った身体が死に至るのです。まだ、亡くなったのは、年を取った料理人一人・・でも、このまま放っておけば、その数は、また一人、また一人と、増えていくことになるでしょう」

「原因が分からないのです。先生も、こんな病は見た事が無いとおっしゃった。・・なので、疫病の恐れがあると、お疑いになったのです。まだ、本当のところは分かりません。でも、このまま放っておいたら病が広がるかもしれない。病にかかった者を、城から離れた場所に移した方がいいと、今頃、先生はタシロス様に、お話し申し上げている筈です」

「今のところ、分かる事は、これだけ」
そう言うと、ユキエンナは、これでもういいでしょう? と言うように、アオキールに目くばせして見せた。

「・・そうだったんですか。ありがとうございました」
アオキールは礼を言い、改めて、ユキエンナの手にした書物を見つめた。

「その本は・・」
「先生はお忙しくて、調べ物までは、手が回りません。私は、少しでもお役に立てるようにと、この度の病について、原因を突き止める、何かきっかけが無いかと探しているのです」

「・・あなたはどうして、医者の助手など、務めていらっしゃるのですか?」
アオキールは聞いた。

「女のくせに。そうおっしゃりたいのでしょう?」
ユキエンナは言った。

「・・私の母も、祖母も・・私の家は、代々産婆を務めておりました。母が子供を取り上げると、子供の母親は、産後も私の母を頼りました。ひだちが悪く、これはとても母の手に負えない、医者に診せた方がいいという事も少なくなかった。でも、彼女達は、そうしようとはしなかった・・何故だか、お分かり?」

「母親達は、男性の医者に、己の身体を診られることが、恥ずかしかったのです」
「あ・・」
黙って聞いていたアオキールは、その意味するところが分かると、顔を赤く染めた。

「医者に診せれば良いものを、それをせず、結局そのまま身体を壊す母体を、母は何度も見てきたのです。相談事を受けても、産婆である母には、出来ることは限られております」

「でも、もし、女の医者が居たら? 子供を取り上げるだけではない、身重になってから、そして子供が生まれた後も、母親達は、何の迷いも無く、医者に診せる事が出来るでしょう」

「私は、女であるからこそ、出来ることを成したいのです。先生の元でたくさん勉強をして、いつか、女達の力になりたいと、ずっとそう思って参りました」

「・・でも、殿方には理解出来ないでしょうね。男と対等な職に就こう等、生意気だ。そんな事が、女の身で出来るわけが無い。そんな考え方、とても理解することはかなわない・・男の方は、皆、そうおっしゃるのです。でもそれも構いません。私は、私の信じる道を、行きたいと思っております」

そこまで話すと、ユキエンナは、また、手元の書物に目を落とした。
目の前の男も、こんな話をしたら、すぐに立ち去るだろうと、そう思っていた。

だが、男が立ち去る気配も無く、つぶやいたその一言に、ユキエンナは、驚いて目を見開いた。

「素晴らしいと思います」
アオキールは、そう言っていた。

ユキエンナは、改めて顔を上げ、アオキールを見つめた。

「素晴らしいと思います。あなたの考えは。・・とても」
アオキールも、ユキエンナを見つめ返した。

二人はじっと、互いのことを見つめていた。



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