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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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これは、「薪と鈴木と雪子」第1章から第3章の、その後のストーリーです。

※清水先生の作品とは、一切関係ございません。


オリジナルストーリー

「薪と鈴木と雪子 第4章」



Scene1:特捜室


それは、梅雨に入る前の、新緑の季節のこと。

鈴木は、軽快な足取りで、庁舎へと入っていく。
「おはようございます!」
挨拶と共に第九に入ると、「おはようございます」「おはよう」と、先に来ていた捜査員達からも、声が上がった。

「おはようございます。鈴木さん、何だか今日は、キマってますね」
後輩の捜査員が、鈴木に声をかけた。

「今日は?」そう言って、鈴木は肩をすくめる。
「え・・いやあ、いつにも増してってことですよ」
相手は笑った。
鈴木は、後輩の捜査官からも、そんなことを気易く言われる。

「金曜ですからね。もしかして、あの女医先生とデートですか?」
更にそう尋ねられ、鈴木は、笑顔を見せた。

「今抱えてる事件も、山を越えたしな。後は、見落としが無いかチェックして、報告書を仕上げるだけだ。急な事件でも入らない限り、定時で帰れるだろうから」

そんな話をしていて、鈴木は、すぐ後ろに、その人物の気配を感じた。
「おはようございます。薪室長!」
振り返りざま、鈴木は言う。

「・・おはよう、鈴木」
言いながら、薪は、手にした書類に、視線を落とした。
「どうした?」

鈴木が、書類を覗き込んだ。
「残念ながら、その、急な事件が入りそうだ」
「え?」

改めて顔を上げた薪と、鈴木の目が、合った。

「週末の、連続発砲事件。未明に容疑者が遺体で発見されたが、それが、第九に回ってくることになった」
「ああ・・でもあれは、一課がやってるんだろう? 何でも、暴力団が絡んでいるとかいう噂で・・」
「それだけじゃない。更に、裏があるらしい」
「裏・・?」

そこまで話した時、第九に、電話が入った。
「室長、総監からお電話です」
「・・室長室に回せ」

捜査員が取り次いだ電話を、薪は、一人、室長室に入って、受けた。
そして、室長室から出て来ると、
「総監と話してくる。・・すぐに戻る」そう言った。

「薪」
出て行こうとする薪を、鈴木が呼び止めた。
「何だったんだ? 総監は、何て・・」

鈴木の言葉を聞くと、薪はフッと、微笑んだ。
「報告書、今日中に仕上げろよ」
そう言って、薪は出て行った。

・・しばらくして、薪は第九に戻ると、何も言わずに執務室を通り過ぎようとする。
そんな薪を見て、鈴木は立ち上がると、薪を追いながら、言った。

「薪。今日入る筈だった事件、あれは、どうなった? 手続きに行かなくて、いいのか?」
薪の足が、一瞬、止まる。

「・・あれは、もういい」
「いいって・・」
「僕が、これから一人で見ることにする。皆は、自分の担当の仕事を続けてくれ」
薪は、鈴木の顔を見ようとはしなかった。

「どういうことだ?」
「・・お前は、知らなくていいことだ」
そう言うと、薪は一人、特捜用に使われる個室へと、入っていった。



Scene2:居酒屋


夕方になって、薪は特捜室から、出てきた。
その顔が、あきらかに疲弊していることに、鈴木はすぐに、気が付いた。

「薪・・」
「僕は、大丈夫だ」
鈴木の言葉の続きを待たず、薪は答える。

「僕はまた、総監のところへ行ってくる。皆は、それぞれ、仕事に区切りが付いたら帰っていい。僕はいつ戻るか分からないから、最後に出る人間は、セキュリティーをかけていってくれ」
そう言うと、薪はデータの入ったディスクを手に、第九を後にした。

雪子は、メールを読むと、「了解」とだけ打って、返信し、ケータイを閉じた。

ここは、創作和食と、多彩なアルコールが味わえる、鈴木のお気に入りの店だ。
和風モダンな造りの店内で、雪子はカウンター席に座っていた。

「すまない。急な仕事が入って、少し遅くなる。終わり次第、合流する。悪いが、先に食事をしていてほしい。支払いはオレに付けておいてくれ」
鈴木からのメールは、そんな内容だった。

「合流するとか言って・・結局こういう時って、最後まですっぽかされるのよね」
グラスに入ったビールの泡を見つめながら、雪子はつぶやいた。

無理も無い。
第九の仕事は、急な捜査指令が入ると、連日の徹夜も辞さないハードな物だ。
それは雪子も、分かっていた。

「何だ。鈴木さん、来られないんですか?」
目の前で料理をしながら、雪子にそう声をかける店主は、鈴木や雪子とも、すっかり顔馴染みだ。

「こんないい女を待たせるなんて。鈴木さんも幸せな人ですねえ」
店主の言葉に、雪子は微笑み、そしてフッと、小さなため息を付く。

「仕方が無いのよ。お互い様だしね」
雪子も、急な検死が入り、鈴木との約束を反故にしたことは、一度や二度ではなかった。
既に料理を注文した後に、職場からの連絡が入り、並ぶご馳走を目の前にしながら、店を出たこともある。

「おいおい、これを全部、オレが平らげることになるのか?」そう言う鈴木に、
「ごめんね」と言いながら、バッグを掴んで慌ただしく席を立つ、雪子。
「このせいで太ったとしても、雪子、オレを見捨てないでくれよ」

そう言って、笑って雪子を送り出してくれる、鈴木はそんな男だった。

「今日は、少し飲んでから帰るわ。マスター、何かおススメの物、作って」
「少しと言わず、大いに飲んで、食べてって下さいよ。どうせ、勘定は、そのすっぽかした相手なんでしょう?」
「当たり」

「平目の御作り。カルパッチョ風」
「美味しそう」
出てきた皿を前に、雪子は笑顔で、箸を取った。



Scene3:嗚咽


そこに鈴木が居るのを見て、薪は、驚いた様子だった。

「鈴木・・まだ残ってたのか? セキュリティーをかけた様子が無いから、おかしいとは思ったが」
薪が第九に戻った時には、もう、夜もすっかり更けていた。

「薪、どういうことなんだ?」
鈴木は、昼間と同じ質問を、繰り返す。

薪は、一旦、鈴木から顔をそむけると、改めて鈴木の顔を見据えた。
鈴木には、下手な嘘は付けない。
かといって、本当のことを話して、鈴木を巻き込むわけには、いかない。

「鈴木、お前は、何も知らなくていいんだ」
薪も、昼間と同じ答えを、繰り返した。

「雪子さんと約束があるんだろう? もう帰れ。僕も、すぐに帰るから・・」
言いながら、鈴木の脇を通り過ぎようとする薪の腕を、鈴木は掴んだ。

「薪、何故だ? ・・お前は室長で、オレは、部下だからか?」
「・・・・・」
薪は、目を伏せた。

「暴力団絡みの、連続発砲事件。大きなヤマだ。それをお前は一人で見て・・そして、データを持って総監のところへ行った。捜査は、これで終わりなのか?」

「・・終わりだ」
「お前は、更に裏があるらしいと言ったな。それはもしかして、何か警察の威信に関わる物・・あるいは、更に上の・・政治的な思惑が絡む物・・だったんじゃないのか?」

薪は、鈴木に掴まれた腕を、振り払うことが出来ない。
鈴木の話に、肯定をすることも、否定をすることも、出来ない。
薪は、唇を噛み締め、ただ、黙って、鈴木の言葉を聞いていた。

「薪・・お前はどうして、そう、一人で抱えようとするんだ? オレのことが、信用出来ないか? お前にとって、オレは、その程度の・・」
「違う! 鈴木は、僕にとって・・!!」

薪の言葉は、そこで途切れた。

一体、自分は今、何を言おうとした・・?
薪は動揺し、瞳が揺れた。

鈴木には、自分を見つめるその顔が、まるで、今にも・・・

薪は、鈴木から顔を隠すように、俯いた。

鈴木は、薪の腕を離すと、近くにあった、デスクに腰をかけた。
薪を見上げる角度になり、鈴木は両腕を組み、改めて、薪を見つめた。

「薪・・お前、昔見た―――っていう映画、覚えてるか?」
「え?・・」
薪には、何故、鈴木が今ここでそんなことを言うのか、分からない。

戸惑いを見せる薪のその顔に、鈴木は微笑むと、薪の返事を待たずに話を続ける。
自分より、目の前に居る相手の方が、はるかに記憶力がいいことは、分かっていた。

「古いフランス映画だったな。あの映画で・・老人は、子供に言った。大人は泣かないなんて思ったら、それは違う。涙は人を造るんだと」

「薪・・大人になったって、泣くことは必要だ」
言いながら、鈴木は立ち上がる。

「一体、何を・・・」
言いかけた薪のその肩に、鈴木は自分の片腕を回すと、自分の胸に引き寄せた。

「鈴木・・」
ガッシリと自分を抱き寄せる、鈴木の腕の感触や、頬に当たる、鈴木の胸の温かさ。
薪を目を見開いたまま、それを、感じた。

「お前が、見られたくないと言うなら、オレは見ない。こうして、前を向いている」
「・・・・・・」
鈴木の言葉に、薪は、無言のままだった。

やがて・・

「うっ・・くっ・・ううう・・」
鈴木が、雪子と会う為に着込んだスーツは、薪の涙で、濡れた。

鈴木は、降ろしていたもう片方の腕を上げると、その手でそっと、薪の髪に触れた。
けれど、薪の顔は見ずに、真っ直ぐに前を向いたまま。

ただ、薪の嗚咽を、鈴木は、聞き続けていた。




薪と鈴木と雪子 第4章 終





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