カウンター


プロフィール

かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

リンクは嬉しいので、ご自由にどうぞ♪


当ブログ拍手頁

最新の公開拍手コメのレスはこちら それ以前の公開拍手コメ&レスは、各記事の拍手ボタンを再度押していただければ読めます 鍵拍手コメにつきましては、拍手をいただいた記事下コメント欄にレスを書いております

所属してます♪


月別アーカイブ


最新記事


最新コメント


検索フォーム


 
第一幕 第三場 : 講義


「・・では、このシーンを、朗読劇風に、それぞれ配役を決めて読んでもらおうか」
教壇に立つ男は、周囲を見渡して、言った。

「ポーシャ扮するバルサザー博士を、水野君」
わっと歓声が沸き、指名された女学生は、この、あまりにも有名な裁判シーンの、主役とも言える役柄を与えられ、はにかんだ笑顔を見せた。

「商人アントーニオに小川君。その友人バッサーニオに・・」
男は次々と配役を決めていく。

「・・高利貸しシャイロックに、遠藤君」
「ええーっ!?」
遠藤というその学生は、不満の声を上げた。
その様子に、周囲に笑い声が起こる。

「何か、不服があるようだね?」
「だって萩原先生、オレ、そんなに悪役ヅラしてますか?」
その言葉に、また、学生達の間で笑い声がさざめいた。

「シャイロックが悪役だと、君はそう思うんだね?」
教壇に立つ男、萩原は、笑顔を見せると、椅子に座って話し始めた。

「この、『ベニスの商人』のシャイロックは、シェイクスピアの多数の戯曲の中でも、特に複雑なキャラクターだ。ユダヤ人である・・ということは、このキリスト教社会の中では、それだけで迫害を受けるものだった。これは、戯曲の舞台だけのことではない。これをシェイクスピアが書いていた当時のイギリスも、純然たるキリスト教社会だった」

萩原は、遠藤という学生だけでなく、その講義を取っている、教室の学生全体を見渡して、話す。

「金貸しになったのも、他の職業では、仲間に入ることがままならなかった、更には、アントーニオという、無利子で貸し付けもする金貸しが居る為に、客は皆そちらへ行ってしまう。結果的に、高利で貸し付ける以外、生計を立てる術が無かったと、取ることも出来る」

「しかも、シャイロックは、公の場で、アントーニオからさげすみを受け続けた。市民達からも嫌われ、キリスト教社会の中で、孤立していた。これは、単なる悪役とは、一概に言えないのではないだろうか」

「でも、借金の返済の代わりに、身体の肉を1ポンド切り取るって発想は、あり得ないよねえ」
学生の一人がつぶやき、周囲も頷いた。

「さっさとバッサーニオからお金を受け取って、引っ込めば良かったのにね」
また別の学生が言う。

「・・そんな隠者のような生活の中で、シャイロックは、法の下の厳正な裁きという状況で、正々堂々と復讐する機会を得た。金を受け取れば、確かにことは丸く治まっただろう。だが、それで終わりだ。また明日も、明後日も、その日までと同じ、孤立して、さげすまれる日々が続くだけだ。・・彼が望んでいたのは、復讐であって、金ではない。それまでとは違う、何かを得たかった。そういうことだったのかもしれない」

「先生は、シャイロックに味方するんですか?」
学生に質問され、萩原はじっと、その学生を見つめた。

「私は、シャイロックとアントーニオ達、どちらに味方するといった発想は無いよ。・・ただ、シェイクスピアは、シャイロックを最後には改宗までさせて、キリスト教徒を擁護する結末にしているが、ただそれだけで良いなら、シャイロックの心情を、ここまで語らせることは無かった筈だ」

「実はシェイクスピア自身は、そんな簡単な物で、この話を終わらせたくはなかったのかもしれない・・当時の社会では、こういった結末に描くのは当然の流れであったろうが。・・そんな風に、当時の時代背景も頭に入れながら読むことで、より深い解釈が可能だと思うよ」

そこまで言うと、萩原は、ニコッと笑い、シャイロック役に割り当てた学生に向かって、言った。

「そういうわけだ。シャイロックという複雑なキャラクターを、君の深い洞察力で掘り下げて、読み上げてほしい。期待しているよ」
「・・分かりました」

何か丸め込まれたかなあ、オレって・・と、口の端を本で隠して、隣りに座る学生に小声でつぶやくと、
「さあ、呼ばれた者は、全員立って」
萩原のその言葉に、その学生も立ち上がった。

「じゃあ、始めて」
萩原も立ち上がると、ゆっくりとその場を行きつ戻りつしながら、学生達の朗読に、微笑んで、聴き入った。




関連記事

コメント

コメントの投稿



管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

■この記事のトラックバックURL

⇒ http://kanon23.blog36.fc2.com/tb.php/331-c01fc3a5

この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

■この記事へのトラックバック

 | BLOG TOP |