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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
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第三幕 第六場 : 過去


二人は、ベッドの中で抱き合い、目を閉じていた。

その夜の薪の激しさに、青木は、痛々しさすら、覚えた。
「薪さん・・身体、辛くないですか?」
青木が、そっと尋ねる。

「ん・・」
薪は身じろぎをして、薄目を開ける。

青木は、薪の額をなでる。
汗をかいた、薪の髪の匂いが立ち昇る。
・・それは、青木にとって、いつも心地良い。

青木はため息を付き、改めて、薪の背中に腕を回し、抱き締める。
腕の中の細い背中が、かすかに震えるのを感じた。
胸が・・痛い・・・・・

「青木」
「はい・・」
薪の呼びかけに、青木は応えた。

「・・お前は、仲村議員の事件を、知っているか?」
薪がその話を出したことに、青木は内心、驚いた。
だが、穏やかな口調で、答える。

「はい。その前の発砲事件の遺族による、あの、刺殺事件ですよね」
「・・二つの事件は、一見何の関係も無かった。だが、犯人の証言と、仲村の脳の映像によって、それは、一つに繋がった・・」

薪は、話し始めた。
青木に向かって。
心の内を。

「2059年の5月初旬、連続発砲事件が起きた。捜査一課が乗り出し、容疑者は、遺体で発見された。遺書も見つかった。全ての物的証拠、状況証拠共に、そいつが発砲事件の犯人であり、捜査の手が迫ることを怖れ、自殺したことを示していた・・事件は、解決した」

・・あの時、本当は、事件に裏があった。
自分は、それを知っていた。
知っていながら・・

「・・薪さん?」
口をつぐんだ薪の顔を、青木が覗き込む。

・・青木には、そこまで話す必要は無い。
あの犯人の脳を第九で見た記録は、残っていない。

薪は起き上がり、ベッドの上に座り込んで、続けた。
青木も上半身を起こして、聞き入る。

「・・そして、半月後、仲村議員の刺殺事件が起きた。当時、二大政党と言われたうちの一つの・・党首だ。しかも、殺され方は、尋常ではなかった。大声を上げて逃げ回る議員を追いかけ、駆け付けた多数の目撃者の中で、滅多刺しだ。秘書も犠牲になった。犯人はその場で自殺を図り・・だが、一命を取り留めた」

「犯人は、しばらくの間、昏睡状態にあった。その間に、仲村の脳は、第九に回された。大物議員があんな形で殺されたんだ・・いかに犯人が残虐な手口であったか、その証拠となる画が求められていた。実際、犯行の場面は、悲惨な物だった・・だが、それだけではなかった」

「・・発砲事件に関与していることが、分かったんですね?」

「仲村は、発砲事件を、裏で操っていたことが分かった。・・自分の利益の為に。犯人も昏睡状態から脱し、そのことを証言した。・・ことは公になった。MRIで得られた仲村の脳データは、裁判の参考資料として、提出された」

「正式に発表されたのは、そこまでだ・・分かるな?」
薪が青木の目を見て言い、青木は、うなずいた。

「ここからは、一部の人間しか知らない・・いや、知らなかったことだ」
薪が言い直す意味を、青木は理解した。
坂上が、高橋に見せた、あの文書・・・

「実際には、仲村の脳から得られた情報は、それだけではなかった。・・仲村は、暴力団と関わりがあった。財界の大物と、裏で様々な取引をしていた。穏やかな笑顔の裏に、身近な人間には暴力的な振る舞いを見せ、複数の人間と、強引に関係を結んだ事実もあった・・・」

「・・だが、その公表は差し控えられた。あまりにも、関わる人間の数が多過ぎる。そのデータは、警察内と、裁判のみで扱われることとなり、それを元に、暴力団や汚職に関する捜査が、密かに進められた・・。もう、この事件は第九の手を離れていた。そして翌月・・」

言われるまでもなく、青木にも、もう分かっていた。
翌月、何が起こったのか・・

「突然、亡くなった仲村議員のスキャンダルとして、これらが、テレビで報道された。こうなると、仲村個人の問題ではない。暴力団や財界人が関わったとなると、国会を揺るがす大事件だ。最初の報道を機に、各局もこのニュースを追った。仲村が家族に暴力をふるっていたことや、その性癖も明るみにされた」

「テレビでは相手の実名は控えられたが、関係を結んだ人間が誰か、示唆するような報道さえあった。・・個人のプライバシーなんて問題にされない。MRI捜査を、個人の尊厳を砕くと叩いている、そのマスコミが、全てを白日の下に晒したんだ・・!!」

「・・・・・」
薪の言葉に、青木は、何も言うことが出来ない。

「・・各局が争うように報道をして、事実と虚構が、ない交ぜになった。今思えば、他局は、高橋の局で報道された物の焼き直しだった。実際、高橋以外には、事実を知る者はいなかったろう。なのに、このスキャンダルを取り上げ、様々な事柄がでっち上げられ、その日の報道はお祭り騒ぎだ・・だが」

薪は、目を上げた。
「突然、報道は止まった。あれ程のスキャンダルが、たった一日で、どこの局でも、取り上げられることは無くなった。全てのテレビ局の人間が、そんなこと、無かったかのように、別の事件を追っていた」

「この報道の情報源は一体何か・・当時から、MRIのデータの流出が噂された。すっかり鳴りが止んでから、警察は、このスキャンダルに関与していないと言った。データの流出は、一切あり得ないと。それが、警察の声明だった」

青木も、警察のその声明を覚えている。
そして・・当時の青木はそれを、信じた。

「・・報道を促したのは、たぶん、坂上一人の力ではない。何か、背後にもっと大きな力が動いていた。そうでなければ、報道が、あれ程までに突然に打ち切られることも無かったろう・・。だが、例えたった一日だとしても、流れ出たニュースは、もう戻すことは出来ない」

「仲村の死後、体制を立て直そうとしていたその政党は、事実上壊滅した。連立政党も力を失った。そういう結果が得られるだけの、充分な報道がなされてから、これ以上は国会そのものがつぶれると判断し、報道を止めさせた者が居る。坂上一人に、そんな力は無い。」

薪の話は、そこで、途切れた。





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