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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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第四幕 第八場 : 友人


大学の事務員と、薪は話していた。
すぐ後ろに、青木が並んで立っている。

「萩原先生は・・あ、もうお帰りですね」
事務員は、講師のスケジュール表をパソコンで確認して、言った。

「講義が終わったということですか? 大学内に居る可能性は?」
「これは講義の予定だけじゃなく、実際の出勤状況も確認するものなんです。先生方が、出勤した時と、退勤の際、こちらにその旨、入力するようになっています。もう、お帰りになりましたよ」
「そうですか・・」

その様子を見て、青木が背後から事務員に声をかけた。
「すみません。あの・・萩原先生の写真は、ありませんか?」
「え?」
「先生の顔が分かるものがあればと、思うんですが」

「あ・・そういった物は、本人の許可無しに、私の権限では・・」事務員が言葉を濁す。
「では、萩原先生と親しい方を、教えていただけませんか?」薪は、事務員に言った。

「同僚や・・誰か、萩原先生と交流のある方に、お話を伺いたいんですが」
「萩原先生と・・っていうと、心理学の長谷川教授かな」
「長谷川・・教授」

「ええ」
「今、どちらにいらっしゃいますか?」

事務員は、その部屋をノックした。
「長谷川先生、よろしいでしょうか? 今、先生とお話をしたいという方がお見えになりまして。警察の方だそうですが」

「警察?」
長谷川は、いぶかしげな顔をする。

「法医第九研究室の者です。任意で伺いたいことが・・」
「第九?」
事務員の開けるドアの向こうで、会釈をしながら声をかけた薪に向かい、長谷川は、表情を変えた。

「あのー・・任意なので、先生の意思で、お断りしても構わないということなんですが・・」
事務員が言うと、長谷川は薪と、その背後に立つ青木をじっと見つめ、言った。
「私は構わない。どうぞ中へ」

事務員は立ち去り、改めて挨拶をする薪と青木に、長谷川は、ソファーに座るよう勧めた。
そして自分は、デスクの向こうの椅子に腰をかけた。

「第九の方々が、一体何のようです?」
長谷川の言い方には、トゲがあった。

薪も青木も、こういう態度には慣れている。
第九と聞いて、嫌悪をあらわにする人間は、少なくない。

「萩原先生のことを、お聞きしたくて参りました」
薪の言葉に、長谷川は更に表情を固くした。
「やはり・・そうか!」

長谷川の言葉に、青木は驚いた。
長谷川は、今回の事件と萩原の関係について、何か知っているのだろうか。

「6年前のことで・・まだ何かあるんですか? 君達は、彼をどこまで追い詰める気だ・・!」

いや、違う。
今回のことじゃない。
6年前・・仲村の事件のことを、長谷川は言っている。

萩原という男が、その事件と、どういう関わりがあるのだろう・・。
青木は、疑問を抱えつつも、黙って薪と長谷川の会話に、耳を傾けた。

「いえ・・今回参ったのは、過去の事件のことじゃありません。現在捜査中の事件について、萩原先生にお聞きしたいことがあるだけです」

「現在?・・彼が今、何かの事件に関わっていると言うのかね?」
「・・可能性があるというだけです。何も確定してはおりません」

「当たり前だ・・!!」
長谷川は立ち上がり、その怒りに、青木はとまどっていた。
薪は、顔色一つ変えず、言った。

「長谷川教授、あなたは、6年前の事件と彼の関係について、全てご存知なんですね」
「・・・・・・」
薪の言葉に、長谷川は黙り込み、そして、再び座った。
「全て・・知っている。私は、彼の父親の友人だった」

「彼の父親・・そうだったんですか」
薪は長谷川を見つめると、言った。

「仲村議員の秘書、佐々木嵩俊の・・」
「え!?・・」
青木は、思わず声を上げた。

仲村議員の秘書・・それは、もしや・・

「そうだ。あの時、事件に巻き込まれ、議員と共に殺された・・私の友人・・」
長谷川は、顔に手を当てた。

萩原俊耶が、6年前の事件で犠牲になった、仲村議員の秘書の息子・・・。

だが、それがどうして、今回、彼が犯人だという可能性に繋がるのか・・
青木にはまだ、薪がそう判断を下した理由が分からない。

長谷川は、首を横に振ると、薪と青木を見つめ、やがて静かに話し出した。
「・・佐々木は、若い頃から、理想に燃えた男だった。彼女とは、学生結婚で、私と共通の友人でもあった。佐々木と、その妻である女性と、私・・3人で、よく一緒に過ごした・・」

「やがて、俊耶くんが生まれた。両親に似て、幼い頃から利発な子だった。佐々木は政界に身を置いたが、俊耶くんはそういうタイプではなかった。佐々木は息子に自分と同じ道を歩むよう、無理強いはしなかった。息子には、息子の道があると言った」

「佐々木自身も、あれだけ弁舌が立ち、見栄えもする男なのに、秘書の道を選んだような男だ・・。理想的な家庭だったよ。親子3人、互いを思いやり、暖かく、慎ましい・・」

長谷川の目は、遠くを見ていた。
憧憬の思いが、そこにあった。

「それが・・あの事件で、全てが壊れた・・佐々木は、仲村議員の傍に居て、犯人に刺されて・・」
長谷川の声が、一度途切れた。

「・・議員はその場で絶命したが、急所を免れた佐々木は、救急車で運ばれた。散々苦しんだ末に・・出血多量で、死んだ・・」

「彼の妻と息子は・・どれだけ悲しんだか・・。私も、出来る限り、残された二人の力になろうと思った。それが・・せめて・・それで終わっていれば・・!!」

長谷川の悲痛な声が響き・・そして、長谷川は、薪をじっと見つめ、言った。

「あなた方は、議員の脳を、見たんだろう?」
自分は見ていない、そう言うことも出来た。だが・・・

「こちらに居る部下は、まだ配属前でした。・・ですが、私は見ました。事件の捜査の為に」
薪は、キッパリと言った。

「・・あなたが・・」
長谷川は、薪を見つめ、軽く首を振ると、目をそらした。

「・・その後、テレビで流れたスキャンダルは、警察の声明では、全てテレビ局が作り上げた物だということだった。・・だが、第九が仲村議員の脳を見て、そこから全てが分かったのだと、あの時、そう報道されていた。少なくとも、テレビを見ていた人間は、皆、あのスキャンダルを信じた・・」

「佐々木が・・佐々木が・・よりによって・・そんなあり得ないことを、皆、信じた・・・!!」

青木は、当時の報道を思い起こしていた。
犠牲になった秘書・・それが、仲村議員のスキャンダルの中で、どう関わっていたか・・。

「あなたが、議員の脳で見たものが実際にどうだったのか、そんなことは、知りたくも無い。ただ・・第九が議員の脳をMRIで見たことは事実だ。その事実があるだけで、皆、あんな報道を信じたんだ・・佐々木の、彼の家族の誇りが、踏みにじられたんだ・・!!」

長谷川の言葉に、突然、青木の身体を、衝撃が貫いた。

長谷川教授の告白。
当時の報道と、薪の言葉・・・・
それらから、青木は、佐々木嵩俊の背後に、ある結論を見出したのだ。

「薪さん・・!」
青木が出した結論に、薪はただ、視線を落とした。

長谷川の声は、かすれ、震える。

「第九が・・議員の脳さえ見なければ・・MRIなんて物が無ければ・・佐々木は、命を失うだけで済んだ・・。あなた方のせいで、佐々木は、命以上の物を、失ったんだ・・・」

「それは・・!」
言いかけ、青木は、自分の手の甲に、柔らかな薪の手の平がかぶさるのを感じ、言葉を呑み込んだ。
薪の顔を見ると、それは、それ以上は言うなと、青木に無言で訴えていた。

違う・・MRIのせいじゃない、それは、第九が脳を見たからではない・・青木は、そう言いたかった。

薪の表情は、静かで、何を考えているのか、読み取ることが出来ない・・・

「・・俊耶くんは、好奇の目に晒されながらも、必死で修士課程を終えた。だが・・普通ならその先に約束されていた筈の道が、閉ざされてしまった。あんな優秀な彼が、あの事件のせいで・・。この大学で教えていた私が、彼を講師に推薦した」

「あんな壮絶な経験をしながら、彼は、誠実に生きている。何の事件か知らないが、彼が関わることはあり得ません。私は、彼のことをずっと見てきた・・」

激情を抑えるように、長谷川は目をつぶり、静かに言った。








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