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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

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第五幕 第七場 : 問い


やがて、萩原の嗚咽が止まると、静寂が訪れた。

萩原は、顔を上げると、どこかを見つめながら、再び話し始めた。
「・・友人達は、皆、離れていった・・。父の親類も、母と僕の顔を見ることが、彼らの恥辱だった・・。本当に救いの手が必要な時に、人は皆、離れて行ったんだ・・」

「叔母夫婦や、長谷川教授が、僕達の様子を見に訪れた・・父の籍を抜けるように勧めてきたのも、叔母たちだ・・彼らの気遣いは分かった。だが・・本当は、僕は佐々木のままでいたかった・・」

「父の名前で居たかった・・父を失い、父の誇りをも踏みにじられて・・名前まで捨てるなんて・・僕は・・本当は・・」
再び激情の波が訪れるのを必死に抑え、萩原は、話し続ける。

「・・でも、母の為だ。母の為に・・その名を捨てた。そして・・」
そこまで言い、萩原は、床に座り込んだまま、薪を見上げた。

「僕の母が、その後どうなったのか、知りたいかい?」
薪は、沈黙を続ける。

「相次ぐ心労で、母は、精神を壊してしまった・・。無理も無い。父に頼って生きてきた人だ。僕一人ではどうしようもなく、結局、母は入院した・・」

「僕は、大学に通い続けた。いつも、誰もが、腫れ物に触るように僕を扱う・・それでも僕は、母の居る病院と大学とを、行ったり来たりする日々を送った・・」

萩原の口調は、静かになった。

「時が立つにつれ、母の病状は、徐々に回復しているように見えた。僕は修士課程を終え、大学を後にした。休学のつもりだった。母の看病に専念し、大学には後から戻ろうと・・」

「ある日、母の一時帰宅が許された。叔母が世話を申し出てくれたが、僕は断わった。母と二人で過ごしたかった。久しぶりに、母と過ごし、母の笑顔を見て、思った・・これからは、父の分も、母を労わって生きていこうと・・」

萩原の話が、一度、途切れた。
そして・・

「その夜、僕が目を離したスキに、母は、自室で首を吊っていた」

薪は、顔をゆがめ、萩原を見つめた。
先程とは違い、萩原は静かに・・まるで、人ごとのように、つぶやいた。

「Frailty,thy name is woman」
(脆き者、汝の名は女)

その言葉を聞き、薪はハッとした顔をした。

萩原は目をつぶり、言った。
「・・その後のことは、まるで夢の中のことのようだった。母の葬儀も・・何もかも・・」
そして静かに、目を開けた。

「物事が落ち着いてからも、大学には戻らなかった。長谷川教授には、大学から定員超えを理由に断わられたと言ったが・・本当は、自分でも行く気がしなかった。何もしたくなかった。何もかも・・自殺さえ、する気が起きなかった。ただ、時が過ぎてゆくのを、見守っていた・・・」

「生きる屍のようだった僕を、教授は大学の講師にと紹介してくれた・・断わっても、彼はあきらめなかった・・何かさせたかったんだ。きっとね。僕の為というよりも、彼の負い目、彼の満足の為に・・」

萩原は微笑んだ。

「もうどうでも良かった。断わることすら、もう面倒になっていた。目の前に差し出された仕事に、僕は、日常を見出した・・。そう、他の人間と同じように、仕事をして、食べて寝て、人と話をし、買い物をする・・そんな生活だ。心の内にある物を抑え・・全てに対して穏やかに・・いつしか、それが人から見た、僕という人間になった・・」

心の内を抑え、目の前にある仕事に生きる・・薪は、そんな人間を知っていると、そんな思いに捉われていた・・

「坂上が、高橋が、そして・・君が・・僕の全てを、壊した・・・」
萩原は、ゆっくりと立ち上がり、薪に近付く。

目の前まで来ると、薪を見つめ、言った。
「ずっと・・君に、尋ねたいと思っていた・・」

萩原の目が虚ろになり、部屋のライトを背に、薪の前に陰が覆いかぶさる。

「父は・・佐々木嵩俊は・・本当に、そんな・・そんな目に合っていたのか・・!!」
薪は、顔を上げ、萩原を見返した。

「どうなんだ・・!」
萩原の手が、薪の両肩に置かれた。

ビクッ・・と薪は一瞬震え・・そして、言った。
「お前は、それを聞いて、どうする?」
「え?」

「僕が、何て答えるか、お前は、何を望んでるんだ?」





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