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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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第五幕 第九場 : 執着


「さすがだね・・素晴らしい」
萩原は笑った後、そう言った。

「君を見ていると、人間は神の最高傑作だという言葉を、信じられる・・」
「What a piece of work is a man(人間とは何と素晴らしい芸術作品か)」
薪がつぶやき、萩原が目を見開く。

「君は本当に・・そう、ハムレットのセリフだ」
萩原は、じっと薪を見つめて、言った。

「綺麗な発音だね。それに、声がとてもいい。・・君がハムレットを演じたら、どんなに素晴らしいだろう・・」
萩原の視線が、更に熱くなる。

「・・でも、君に演じてもらうのは、彼ではない」
萩原がそう付け足し、薪は、どういうことかと、眉をひそめた。

薪は、改めて周囲を見渡した。

英文学の講師が、イギリス文学の書籍やDVDを大量に並べていることに、違和感は無かった。
だが、最初に気付くべきだった。
その約半数を、シェイクスピアの戯曲が占めていることに。

「・・坂上は、アントニオか? そして、高橋は『タイタス』の・・」

薪の言葉に、萩原は、笑みを浮かべた。

「気付いてもらって嬉しいよ。そう、僕は、借金の代償に、身体の肉を要求したシャイロックの、その望みを叶えたかった。人々に虐げられてきた彼に、復讐の機会を与えてあげてもいいんじゃないかとね」

「だが、証文には、1ポンドの肉としか書いていない。血は一滴も流してはならぬと言われ、シャイロックは断念せざるを得なかった・・。僕も、さすがに血を一滴も流さないことは無理だった・・だから、切り取ってから血を抜いた。死体に添えた肉は、実に綺麗な物だったろう?」

先程まで、泣き、震えていた彼とは別人のように、冷静に残虐なことを語る男が、居た。

「高橋の方は、実はあまり時間が無かった。・・本当は、もっと丁寧にやりたかったんだが・・雑な仕上がりになったことが、残念だ」

「・・そしてお前は、自分をハムレットになぞらえているのか? 父親を敬愛し、その父親を殺された彼に」
「そうかもしれない。僕はハムレットを、いつも身近に感じていた。父親の亡霊に、復讐を誓った彼のことを・・」

萩原は、ソファに座り直すと、言った。
「君の質問に、まだ答えていなかったね。・・学生相手にも、よくやるんだ。脱線している間に、回答を忘れてしまう・・」

「何故今なのか。そう、きっかけは、2年前の夏だった」

萩原は、話し始めた。

「長谷川教授の講演会が開かれた。テーマは『集団心理とマスメディア』というものだ。本来、専攻の違う私が行く必要は無いのだが、時間が許す限り、教授の講演には、出席するようにしていた。あの日・・」

「あの日、聴講者の中に、現役のテレビプロデューサーが居た。テレビの報道による集団心理の操作について、その影響と責任についての質問をしていた。そして・・ある報道を例に出した。固有の名前は一つとして出さなかったが、僕には分かった・・」

「あいつは・・高橋は言ったんだ。自分が、もし自分が、あるプライバシーに関わるスクープを入手し、報道した場合、その社会的影響について、どう位置付けたら良いかと・・ただ、例として出すには、それは、あまりにも具体的過ぎた」

萩原の目が、遠くを見ている。
「・・何という巡り合わせだろう・・。父の亡霊が、僕をそこに引き合わせてくれたとしか思えなかった・・。教授と握手を交わす高橋を見て、僕は、あのスキャンダルを、徹底的に調べることを、復讐を・・・決意した」

「時間がかかった。色々と奥の手も使った。・・幸い、週2回の講義のみという立場も、僕に時間を与えてくれた。高橋と、坂上・・そして君に、僕は行き着いた」
萩原の目が、薪の前に戻る。

「坂上と高橋は、自分達の利益の為に、父の・・僕の、全てを踏みにじった・・。そして君は、仲村の脳を見る、指揮を取った。・・第九が、全ての根源・・」

「第九のことを調べて、僕は愕然としたよ・・仲村の事件当時の捜査官は、6年前の夏を境に、ほとんどが居なくなっていた」
それを聞いた瞬間、薪の顔に、苦渋が走った・・

「残っているのは、唯一、室長の君だけ。君は何故、あんなことがあった後も、一人、第九に残っているのだろう・・地位にすがり付く人間なのか? だったら、かえって事件が起こった第九ではなく、別の部署に異動を願う筈だ。事件が語り継がれるその場所に、何故、居続けている・・?」

「僕は君のことを調べた。憑かれたように・・過去の第九に関わるニュース、雑誌や新聞での報道も全て追った。僕は、分からなくなった。君は・・坂上や高橋とは違う。奴らは、調べる程に、底の浅さが見えた。なのに君は、調べれば調べる程、幾重にも重なる深みが見える・・まるで、シェイクスピアが描く人物のように・・」

萩原は、薪を見つめる。
苦しげとも言える瞳で・・・

「・・しかし君はその時、ここに、日本には居なかった。アメリカまで君を追いかけて、手を出すには、面倒が多過ぎる。それに・・僕は、あとの二人の事件を、君に見てほしかったから・・」

「半年前、君が帰国したことは、僕にとって大きな喜びだった・・・。それからは、僕は、君の情報ではなく、君自身を追っていた。気付いていたかい?・・もちろん、充分に距離を置いていたからね。それに、君は常に、周囲の人に注目されていて、見られることを、もう意識はしていないようだね」

萩原は、小さなため息を付く。
「・・そう、君は、いつもいつも、人を惹き付けずにはおかない・・君自身は全く意識していないのに。まるで、舞台上で、君のところだけに、スポットライトが常に当たっているようだ」

「僕の気持ちが分かるかい? 僕は、第九という機関が、そこで働く人間達が、憎かった。憎くて、憎くて、たまらなかった。・・なのに、その仲村の脳を見た君に、憎むべき君に・・焦がれて」

「焦がれて、焦がれて・・」

萩原の目が、薪を見る。
薪の顔を、瞳を、鼻を、唇を、髪を、首筋を、肩を、胸から腰、腰から脚にかけての線を・・萩原は、絡むように目で辿る・・・

薪は、その視線に、思わず身じろぎをした。
・・自分が演じる人物とは、一体、誰なのか・・・

「ずっと・・君を見続けていたかった・・。僕は、復讐を誓いながら、果たせずに逡巡するハムレットのように、僕自身の決意を忘れそうになった」

「父の命日に、僕は、改めて誓った。君が、第九の室長に返り咲いた今のうちに・・父の名が辱められた運命の日までに、行動を起こすと・・!」

萩原は、座っていたソファを近付け、またも、薪に接近する。
薪の膝と、萩原の膝がぶつかる。

萩原は、一見正常に見えながら、二人の人間に、あんな末路を与えた異常者でもある。
まともな精神状態ではない。
ここで、相手を刺激してはいけない。

そう、薪は自分に言い聞かせ、じっと堪える。
しかし・・

「・・震えなくてもいい。愛しい君・・。君は、イギリスの夏を知っている? あの国は、夏が一番美しい・・咲き誇る花々、緑の草原、吹き渡る風、柔らかな光・・・君は、それを思い起こさせる。そして君は、その夏の日よりも素晴らしい・・」

「一度だけ、たった一度、君の、すぐ傍まで近付いたことがある。ごく最近だ」
萩原は、薪の顔に視線を止めて、言った。

「昨日、君は雨の中、一人歩いていた。・・濡れるのも構わずに・・僕は思わず、君に初めて、近付いた。憔悴し切った君の姿は・・たまらなく魅力的で・・。僕は、すぐにも君を抱き締めて、連れて帰りたい衝動に駆られた・・」

「・・だが、そんなことは出来る筈もない。実際に、僕の目の前で君を抱えて連れて行ったのは、君の部下だった・・」

萩原の瞳が、嫉妬を帯びた物に変わる。

「それまで、君をここに招待する計画を立てながらも、どこか躊躇する気持ちがあった・・。それが、あの時に、僕の中で、実行する決意が固まったんだ。その夜、初めて僕は・・君を想って・・」

萩原は、薪に手を延ばす。
今度は、体勢を変える等といった、そんな物ではない。
ある意思を感じて、薪は蒼ざめる・・

「やっと・・君はここに・・僕の物に・・今ここで・・君を・・」

「君の・・全てを・・」

そして萩原は、薪の唇に、手を触れた。





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コメント

■ きゃ~(T_T)

おはようございます。かのん様☆

まさか、薪さんの帰国を待ち焦がれていた人が、第九や私たち以外にいたなんて・・・しかも、あんな危険な人・・・(°□°;)

もしかしたら、アメリカ迄行っていたかも・・・と思うとぞっとしました(T_T)

狂気に染まった萩原は、筆舌に尽くしがたいほどに恐ろしく、薪さんの精神とお身体が、ただひたすらに心配です(T_T)(T_T)(T_T)

瞳から、脚まで絡むように目で辿るって・・・

ある意思を感じたって・・・

唇に触った!!!!!←キスしたらどうしよう。それだけは止めて(T_T)

ひぃぃぃぃ~~
何事でしょう!!!
だんだん、萩原の行為がエスカレートしていくような気がします(T_T)

あの雨の夜、憔悴した薪さんの傍にいたなんて(°□°;)
青木が車で追い掛けるのが、もう少し遅かったら・・・(T_T)
いや、青木の存在に気が付いてしまったから、拉致する(彼的には招待)する気になったのですよね。

あああ~薪さん~
何を演じさせられるのでしょう・・・?
青木の役割は・・・?

今回の事件は、2年前の講演会で、高橋を見つけたのが、きっかけだったのですね。
もし、それがなかったら、彼は全てを内に抑えて、静かな人生を送ったのでしょうか・・・

青木~
お願い。急いで!

あああ~
続き、気になります!!!お待ちしております

■ 

○たつままさま

こんにちは。
日々コメントをありがとうございます。とても励まされておりますm(_ _)m

> まさか、薪さんの帰国を待ち焦がれていた人が、第九や私たち以外にいたなんて・・・しかも、あんな危険な人・・・(°□°;)

第九や「私たち」という言葉にウケてしまいました・・
こんな風におっしゃっていただくのって・・・嬉しいものですね。

> もしかしたら、アメリカ迄行っていたかも・・・と思うとぞっとしました(T_T)

海外を訪れることにも慣れていそうですしね。
でも彼は、自分の起こす事件を薪さんに見てほしかったので(坂上や高橋は日本に居るし)、帰国を待っていたのでしょうね。

> 狂気に染まった萩原は、筆舌に尽くしがたいほどに恐ろしく、薪さんの精神とお身体が、ただひたすらに心配です(T_T)(T_T)(T_T)

あああ・・たつままさんにこんなにもご心配をおかけしてしまって、すみませんすみません・・・

> 瞳から、脚まで絡むように目で辿るって・・・

あ・・これは、実は私自身、書きながら萩原に憑依して薪さんを眺めておりました。申し訳ございません!!(土下座)

> ある意思を感じたって・・・
> 唇に触った!!!!!←キスしたらどうしよう。それだけは止めて(T_T)

大丈夫です。
私のことですから(笑)、触れただけでストップ致しました。

> ひぃぃぃぃ~~
> 何事でしょう!!!
> だんだん、萩原の行為がエスカレートしていくような気がします(T_T)

今度は別の意味でエスカレートしていきます。ああ・・すみません・・・

> あの雨の夜、憔悴した薪さんの傍にいたなんて(°□°;)
> 青木が車で追い掛けるのが、もう少し遅かったら・・・(T_T)
> いや、青木の存在に気が付いてしまったから、拉致する(彼的には招待)する気になったのですよね。

雨に打たれて呆然と歩く薪さん・・いえ、萩原ならずとも拉致したくなりませんか・・?(すみませんすみません!)

> あああ~薪さん~
> 何を演じさせられるのでしょう・・・?
> 青木の役割は・・・?

こうやって展開を考えながら読んでいただくのが嬉しいです。
青木にもちゃんと役割があります。

> 今回の事件は、2年前の講演会で、高橋を見つけたのが、きっかけだったのですね。
> もし、それがなかったら、彼は全てを内に抑えて、静かな人生を送ったのでしょうか・・・

ああ・・・そうかもしれないですね。
いえ、それが無くてもどこかできっかけが生まれたのか・・偶然のせいか、必然か・・分かりませんね・・。

> 青木~
> お願い。急いで!

すみません。
青木、急いではおりますので・・・

> あああ~
> 続き、気になります!!!お待ちしております

続き・・ある意味更にハードになりましたが・・たつままさん、ご心労で倒れてらっしゃらないでしょうか・・。
あああ・・すみません・・(謝ってばっかり・・)

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