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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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第五幕 第十一場 : 微笑


「さあ、顔を上げて。口を開けるんだ。・・これなら、使い方さえ間違えなければ、苦しまず、安らかに逝けるよ・・」
萩原は、微笑を浮かべ、言った。

『・・使い方を間違えると、人を傷付ける・・』
その時、薪の脳裏に、青木の声が響いた。

『・・でも、それで救われた人も、たくさん居るんです・・』

「青木・・」
目まいを覚えるような暑さの中で、青木が語りかける姿が、見える。

薪は、顔を上げた。
しかし、その目には、光が宿っていた。

萩原は驚きの表情を見せ、ボトルを差し出したその手を、引く・・・

「・・確かに、MRI捜査は、お前の言うとおり、その人間の人生の一部を見ることだ。・・とても個人的な所まで。だが・・」

「僕達は、脳を見ることで、自分もその人間の思いを、人生の一部を、背負う覚悟でやっている。決して、生半可な気持ちで出来ることじゃない・・!」

「異常者の犯罪を見続けることだって、平気でいるわけではない。第九の人間、一人一人が、その重圧に耐えている・・全ては、事件を解決に導く為に・・」

薪の目は、もう迷ってはいなかった。
自分が信じてきた物・・それは、今も信じられる。

「以前であれば、失われていたかもしれない命を、MRI捜査によって、救った例もある。また、被害者や加害者の死因を究明することで、当事者の無念な思いを、すくい取ることも出来る・・MRI捜査には限界がある。しかし、MRI捜査でしか成し得ない領域もある」

「・・お前は、自分の利益の為に情報を操作した人間に、それまでの人生を壊された・・それは、他人には分かり得ない、壮絶な苦しみがあったろう・・。だが、それは、MRI捜査が存在する、そのせいではない。それは全く、別の物だ」

薪は、言い切った。
あくまで静かに・・しかし、揺るぎ無い信念を持って・・・

「・・・・・・」

萩原は、ボトルのフタを締めると、再びそれをテーブルに置き、その場をゆっくりと、行きつ戻りつ・・歩いた。
「・・君の良心の呵責に訴えようと思ったが・・どうやら、僕は失敗したらしい」

薪は大きく深呼吸をする。
一気に、汗が吹き出した・・

「・・じゃあ、やり方を変えよう」

萩原はデスクの引き出しを開けると、そこから、ある物を取り出し、薪に向けた。
「お前・・」

銃口が、薪に狙いを定めていた。

「君を傷付けたくはない。・・それを、飲むんだ」
「撃てばいい」
薪は言った。

MRIを、第九の皆と共に築き上げた物を、傷付けられ、苦しみと負い目の中で死ぬことは、耐え難かった。
だが、そうでなければ、とうに・・6年前のあの日から、覚悟は出来ていた。

「・・僕が撃つんじゃ、意味が無いんだ。僕は・・君に、君自身にそれを飲むことを、選択してほしいんだよ」
「何故、そんなことにこだわる?」
「・・・・・」

萩原は、銃口を薪に向けたまま、ゆっくりと、薪に近付く。
その時、萩原は、部屋の一角にあるライトが点灯したことに気付いた。

「警告灯・・誰か、辿り着いたのか?」
萩原は、その映像を、テレビに映した。

「青木・・!!」
青木は、銃を手に、窓ガラスを破る。
そして、そこから侵入した。

「・・あんなことをしたら、セキュリティーが作動して、警備員まで来る・・また、面倒なことになるな・・」
萩原の言い方は、落ち着いた物だった。

青木は、次々と部屋を調べていく・・だが・・

「これは・・違う家だ。ここじゃない・・!!」
薪が叫んだ。

「そう。数百メートルしか離れていない場所だけど。あれは、僕の名義の別荘だ。僕が所有する別荘には、カメラを取り付けてあると言ったろう? ・・そして、ここに居れば全てが分かるように。ここは、母が相続した場所なんだ。今は、叔母の名義になっている。でも叔母は必要ないと言って、僕にここを使わせてくれた。ここが一番いい場所なんでね。僕も大事にしているんだが」

「でも・・あそこがもぬけの空だと分かったら、調べ直して、こちらも見つけるだろう・・いずれにせよ、残された時間は、わずかだ」

テレビの画面に、青木が必死に捜索している姿が映る。

「薪さん・・薪さん!!」
最初は静かに探っていたが、今や、青木は叫んでいた。

「青木・・・」

「初めて、涙を見せたね・・」
萩原が言い、薪は、自分の頬を伝う物に気が付いた・・・

「彼はやはり、君にとって、特別な人間なようだ・・。僕も君と彼を見続けてきて、思ったよ。君達の関係は、ハムレットとホレイショー、ロミオとマキューシオのような友情か、あるいはヘンリー5世とフルエリン、タイモンとフレイビアスのような師弟愛かとね」

「・・たぶん、その両方であり、そして、そのどちらでも無い・・君達は・・・」

薪の耳には、萩原の声は、届いていなかった。
覚悟は出来ていると思っていた。だが・・・

「僕は・・本当は、君の涙を見たかったんじゃない・・一度でいい。間近で君の・・君の笑顔を見てみたかった・・」

萩原はつぶやき、改めて、薪の銃を構えた。
涙を湛えた薪の瞳が、そこに向かう。

「この銃は、君を撃つんじゃない。君以外の人間を、撃つ為に、使う」
「な・・!!」
薪は叫んだ。

「君は、自分が撃たれることを、恐がってはいない。それでは意味が無い。ならば、僕はこれで、別の人間を撃とう・・」
「別の・・まさか・・!!」

薪は、首を横に振った。
「・・いや、捜査官は、皆、訓練されている。お前のような素人に、簡単にやられることは無い」
「でも・・例えば、君の命を握っていると、脅したら、どうかな?」
「・・!!」

「君はやっぱり、自分の命より、人の方が大切なんだね。そんな君だから・・・」
萩原は、微笑んだ。

「・・それに、別に僕は、君の部下に限って狙う必要は無い。そういう可能性もあるけどね。例えば・・今から外に出て行って、無差別に人を撃ったっていい」
「そんなこと・・!」

「僕は、本気だ」
萩原は、薪に銃口を向ける。

「君が、君自身の意思で、死を選ぶこと。それだけが、僕の望みだ。君がそれを選ばないのなら、僕は代わりに、別の人間を殺すよ。誰だっていい。・・僕はもう、殺人者だ。刑を免れようとも思わない。そう思えば、何だって出来る」

「坂上を殺す時は・・ロープを締める手が震えた。だが・・高橋の時は、ほとんど迷わなかった。不思議な物だね。一人目よりも、二人目の時の方が、楽なんだ。・・僕はもう、二人殺している。だから、三人目も、四人目も、もう躊躇無く出来る・・君次第だ」

立ち昇る暑さの中で。
萩原の狂気は、留まるところを知らなかった。

「・・僕がこの薬を飲み干したところで、お前がそれ以上殺人を犯さないと、何故、信じられる」

萩原は、薪を見据えたまま、言う。
「君がさっき言ったじゃないか。真実が何か、判断するのは自分自身だと・・。僕は、君さえ死を選んでくれれば、他にはもう、人を傷付けない・・・それが本心だ。確かに、証明のしようは無いけどね」

そして、改めて銃を構え、射抜くような視線で薪を見つめると、萩原は、声を落として、言った。
「時間が無い。僕はもう、待っていられない。君がすぐに、この場で死を選ばなければ、僕は行くよ・・殺人を犯しにね・・」

薪は、暑さと疲労で、気を失いそうになっていた。
しかし・・

「・・一つ、僕からも条件がある」
「何だ?」

薪は、決心した。
来るべき時が、来たのだ。

「警察手帳と一緒に・・入っていた筈だ。あれを、返してほしい」
「え・・?」
「僕は、君が証明する術も無い物を、信じるんだ。信じて・・死を選ぶ。それ位の条件、呑んだっていいだろう?」
「・・・・・」

萩原は、デスクの引き出しから、白い小袋を取り出した。
「ポケットの上から触った時は、発信機かと思ったよ。・・だが、そうじゃなかった。これは、ただの・・」

萩原は、薪の目の前で、テーブルの上でその小袋の口を開け、逆さにした。
コロン・・と、銀色に光る物が、転がり落ちた。

「手に・・握らせてくれ」
萩原は、椅子の背もたれに回された薪の腕の、その手に、指輪を握らせた。

薪は、背後で手を探り、その指輪を、左手の薬指に、はめた・・・

また、涙が溢れてくる・・。
だが、その涙は、さっきとは違って・・

薪は、目の前の画面を見つめた。
青木は、その家には誰も居ないと判断して、また、外に出て行った。
「薪さん・・一体どこに・・薪さん・・!!」
そう、叫びながら・・・。

青木の姿が、画面から消えた。

「さあ」
萩原は、再びボトルのフタを開け、薪の前に差し出した。

薪は、口を開けた。
萩原の手で、そこに、液体が注がれる・・。

それは、とても苦い味わいで・・でも、芳香はどこか、甘かった。

飲み込んだ瞬間、手足がしびれ始めた。

こんなことになって、部下達は、どう思うだろうか。
だが、岡部や、今井、みんな・・・彼らなら、自分が居なくても、これからも第九での務めを果たし、MRI捜査の未来を担っていけるだろう。

薪の脳裏に、第九メンバー一人一人の姿が、浮かんでは、消えた・・

そして・・青木。

この5年半で、格段に成長した、青木。
未だ、捜査官としては未熟な部分もあるが、その人間的資質が伴えば・・

大丈夫だ、青木。
お前なら、やっていける。

『今日からこちらの第九に配属になりました。青木一行といいます』
『この仕事に、第九に憧れてましたから・・薪剛警視正にも!』

『相手は、好意を持ってわざわざ薪さんへ贈ってくれたんですよ。それを、中身を確かめもせず、人にあげるなんて、失礼じゃないですか』
『桜を、眺めてたんです』

『でも大丈夫ですから。薪さんは好きに歩いて下さい』
『大丈夫ですよ。オレが助けますから』

『オレは、薪さんが抱えてる物が何であろうと、薪さんのそばに居ますから。オレには・・・それ位しか出来ないから』
『薪さん。大丈夫です。オレは、薪さんが、何を抱えていようと、どこに居ようと、そばに居ます』

『この2週間、色んなことがありましたけど・・。オレ、薪さんと過ごしたこの2週間が、とても・・とても大切で・・。だから、薪さんにも、忘れないでほしくて』
『結婚しましょう、薪さん』

『薪さん・・これからは・・本当に・・薪さんのそばに、居られるんですね・・・』
『オレは、薪さんへのこの気持ちを・・隠したくなんか無い』

『・・あなたのものです。オレの・・永遠の誓い』
『薪さん・・オレは、どんな時も、何があっても、あなたの傍に居て・・・死があなたとオレを引き離さないことを、ここに誓います』

『じゃあ、こうして下さい。オレがいつも傍に居る事を忘れないと、そう、永遠に誓って下さい』
『薪さん、その時に、オレが傍に居る事を、思い出して下さい。いつも、いつもオレが薪さんの傍に居る事を、どうか、忘れないで下さい・・・』

「青木・・・」
次々と目の前に浮かぶ、青木の姿・・・

いつも真っ直ぐにこちらを見つめ、真っ直ぐな言葉を放つ、青木。
その目を、笑顔を、手の暖かさを、胸の温もりを思い出す。

同時に薪は、暑さに火照っていた身体が、急激に冷えていくのを、感じていた。

青木・・
僕は・・

僕が死ぬ時は、きっと、誰かに殺される時だと、そう思っていた。
絶望と後悔の中で・・それがきっと、自分に見合う仕打ちだと・・。

でも青木。
僕は今、絶望も、後悔もしていない。
希望を持って、死に臨むことが出来る。

お前は、最後まで、約束を果たしてくれた。
あの日から今日まで・・お前は、変わらず、僕の傍に居てくれた。

今、この瞬間も、僕は、お前を感じている。
お前は、すぐ傍に居る・・・・・・・・

薪の身体から、完全に力が抜けた。
まぶたが閉じられ、睫毛が、重なった・・。

萩原は、薪の様子を、じっと見ていた。
見たかった物が、今、そこにあった。

薪が・・微笑んでいた・・・・・・・・

意識を失うその瞬間、薪は、本当に、心から、幸せだった。





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コメント

■ ・・・(T_T)

こんばんは。かのん様。

涙が止まりません(T_T)
何度も、何度も、拝読しました。

必死に薪さんの姿を探す青木と、それを見つめる追い詰められた薪さん。

青木や、他の人々を守るために、死を受け入れた薪さん・・・なんて酷い・・・(T_T)

誓いの指輪をはめ、青木を想い、傍に感じて、心から微笑む・・・。

バレンタインや第二の居場所、私の大好きな朱色の空、別れ、新春、そして大切な誓い。
青木のいつも真っ直ぐな想いと言葉の数々は胸に響きます。

私、本当に涙が止まりません(T_T)

青木、絶対に萩原の言葉に惑わされないでね。

萩原は、悲しく辛い苦しみを抱えてはいますが、私は彼を同情することは出来ません。決して。
絶対に、フォスターに言いつけてやる!!!

かのん様。
早く、薪さんを助けて下さい。
続き、お待ちしております。

私は、すっかりボロボロです(T_T)(T_T)(T_T)

■ 

○たつままさま

こんにちは。
コメントありがとうございましたm(_ _)m

レスがすっかり遅くなってしまい、申し訳ございませんでした。
レスを書くとネタバレになってしまいそうだったのと、私自身、展開が重くてレスを書き辛かったことから、今になってしまいましたm(_ _)m

> 涙が止まりません(T_T)
> 何度も、何度も、拝読しました。

あああ・・泣かせてしまって申し訳ございません!!(><)
そして・・何度も読んで下さったこと、本当にありがとうございます。

> 必死に薪さんの姿を探す青木と、それを見つめる追い詰められた薪さん。
> 青木や、他の人々を守るために、死を受け入れた薪さん・・・なんて酷い・・・(T_T)

酷いですよね・・
第九を中傷する言葉には負けなかったけれど・・

> 誓いの指輪をはめ、青木を想い、傍に感じて、心から微笑む・・・。
> バレンタインや第二の居場所、私の大好きな朱色の空、別れ、新春、そして大切な誓い。
> 青木のいつも真っ直ぐな想いと言葉の数々は胸に響きます。

どのセリフがどの話か、全部覚えていて下さるのですね・・嬉しくてありがたくて、涙が出ます・・(TT)

今回、自分が書いた創作を中心に、合間に原作のセリフを挟むという暴挙に出てしまいました・・(こんなの、許されるかしら・・・)

> 私、本当に涙が止まりません(T_T)

本当にすみません。
そして・・ありがとうございます・・・

> 青木、絶対に萩原の言葉に惑わされないでね。

惑わされまくりでした(←おい)
でも、薪さんとの事前の約束が、生還に至らせてくれました。

> 萩原は、悲しく辛い苦しみを抱えてはいますが、私は彼を同情することは出来ません。決して。
> 絶対に、フォスターに言いつけてやる!!!

フォフォフォ・・・フォスター!!!

ここで彼の名前が出てきたことに、本当にびっくりしてしまいました☆☆☆
最近顔出してませんが、たつままさんは彼を忘れないでいて下さるのですね。
あああ・・・本当に本当にありがたいです・・・

> かのん様。
> 早く、薪さんを助けて下さい。
> 続き、お待ちしております。
> 私は、すっかりボロボロです(T_T)(T_T)(T_T)

やっとやっと助かったシーンをUP出来ました・・ここまで長かったです・・

ボロボロだなんて・・・(TT)
本当にすみませんでした!!!!

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