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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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第六幕 第一場 : 花々


青木は、霧雨の中、周囲を探し回っていた。
さ迷いながら、ケータイで第九に連絡を入れる。

「青木!・・今、どこに居る!!」
小池が叫び、出かける準備をしていたメンバー達も、電話の周囲に集まった。

「萩原のもう一つの別荘を捜索しました・・ですが、薪さんが居ません・・!!」
「岡部さんが、そちらに向かっている。オレ達も、一課の刑事と共に動く。とにかく、お前はそこで待機しろ」
今井が言った。

「薪さんは・・どこに・・」
「そこに居ないなら、別の場所を捜索するまでだ。こっちでも調べてみる。いいか? 下手に動くなよ、青木!」

青木は電話を切り、フラフラと歩いた。
別荘から更に少し山に入った、ひと気の無い場所。

そこに、石造りの古びた橋があった。
眼下に、川が流れている。
やや川上に、釣り人が使うのか、無人の、手漕ぎボートの船着場。

青木は、橋の真ん中まで来ると、欄干にもたれ、顔を覆った。
薪は一体、どこに居るのか・・・。

「彼なら、近くに居るよ」

声がして、青木は弾かれたように振り返った。
橋のたもとに、男が立っていた。

その顔は・・
「萩原・・俊耶・・!!」

青木は、銃を両手で構えた。
「薪さんは・・どこに居る」

萩原は、全く動じる気配も無く、フッ・・と、微笑んで見せた。
「答えろ・・!!」
青木の指が、引き金を捉える。

「ふん・・言ったろう? 近くに居ると。・・下を、見てごらん」
「下・・?」
青木は、慎重に、銃を構えたまま、橋の下を覗き込む・・

「薪さん!!・・」
薪の乗ったボートが、ゆっくりと、今まさに、青木の下を通り抜けていく・・・

「薪さん・・薪さん!!」

薪は、ボートに仰向けに寝かされていた。
胸の上で手を組み、目を閉じて。

そして、その周囲は、色とりどりの花々で埋め尽くされ、薪の身体の上までが、花に覆われていた。

薪は、青木の呼びかけにも全く反応せず、ピクリとも動かない・・

「薪さんに、何をした・・!!」
青木が、萩原に向かって叫んだ。

「君は、オフィーリアを知っている?」

萩原の唐突な言葉に、青木は、一瞬、戸惑いを見せる。

・・オフィーリア・・『ハムレット』に登場する少女。
自分に愛を囁いていたハムレットに父を殺され、正気を失い、花冠を手に、歌いながら川に溺れていった・・

「まさか!ボートに細工を?・・」

「いや、していない。彼は、水に溺れたりはしないよ」
青木の言葉に、萩原は、愉快そうに目を見開いて、言う。

「・・それに、溺れるのは、生きた人間だけだ。彼はもう、溺れることは無い」
「!!・・どういうことだ!」

話している間にも、薪のボートは、少しずつ遠ざかって行く・・

「彼は、毒薬を飲んだんだ」

「・・馬鹿な!!」
青木は、真っ蒼になる。

「本当だよ。僕の前で、彼は、薬を飲み干した」
「そんな・・薪さんが、そんなことを、するわけが無い・・!!」

「彼は、自分が毒を飲むことで、君の命を、救ったんだよ」
「!?・・・」
「君だけじゃない。僕は、彼が毒を飲まなければ、無差別に人を殺して回ると言った。彼は、僕が殺す筈だった、全ての人間の、身代わりになったんだ」

「そんな・・そんな・・・」
「彼は、苦しまずに逝ったよ。あの薬は、一滴でも口に入ると、その効果を発揮する。身体がしびれ、体温が失われていき、やがて・・」
「やめろ!!」

青木は、両眼から涙を流しながら、萩原に、銃の狙いを定めた。
「僕を撃つのかい? だったら、確実に急所を狙った方がいい。生き延びると、君にとって余計なことを言いかねない。警察の人間が、ナイフ一つ持たない、丸腰で無抵抗の人間を、撃ったとね・・」

「そんなことは関係ない。殺してやる・・!」

「ここで僕を撃ち、のたうち回る僕を放置していく? それとも、絶命するまで、確実に銃を撃ち込んで行く? 僕だって命は惜しい。君が本気で撃とうとするなら、逃げ出すかもしれない。それを君は追いかける?・・そんなことをしているうちに、彼は、どんどん川下に流れていってしまうよ」

青木は、川の先を見つめた。
薪のボートは、その縁を見せ、視界から消えるところだった。

「薪さん・・・!」

青木は、萩原に銃を向けたまま、その顔を見、そしてまた、川下を見つめた。
そして・・

「くそっ!!」
言いながら、萩原から数歩後ずさり、駆け出し、銃を降ろして、船着場へと、走って行った。

萩原は、青木がボートを漕ぎ出し、薪の後を追う様子を、目で追っていた。
その姿が見えなくなり、やがて・・・

ズキュン!・・・・

川下から、一発の銃声が響いた。
どんよりとした、霧雨の夕方の空。
鳥達が、その銃声に驚いて飛び立った・・・

「Sweets to the sweet.Farewell」
(美しい人には、美しい花々を。さようなら)

萩原は、つぶやいた。
オフィーリアが埋葬される時、ハムレットの母が、花を撒きながら、彼女に捧げた、その言葉を。

萩原は、満足そうに微笑むと、その場から、姿を消した。





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