カウンター


プロフィール

かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

リンクは嬉しいので、ご自由にどうぞ♪


当ブログ拍手頁

最新の公開拍手コメのレスはこちら それ以前の公開拍手コメ&レスは、各記事の拍手ボタンを再度押していただければ読めます 鍵拍手コメにつきましては、拍手をいただいた記事下コメント欄にレスを書いております

所属してます♪


月別アーカイブ


最新記事


最新コメント


検索フォーム


 
※清水先生の作品とは、一切関係ございません。


オリジナルストーリー

「薪と鈴木と雪子 第5章」



Scene1:視線


それは、梅雨が明け、真夏の太陽が、ジリジリと照り付けるようになった、その頃。

いつもの店で、雪子はカウンター席に座り、飲み物を注文したところだった。
案の定、誘った本人は、まだ来ていない。
雪子はすっかり、こういった状況に、慣れっこになっていた。

「いらっしゃいませ!」
カウンターの中から響く店主の声に、雪子は振り返った。

店に入ってきたその人間と目が合い、雪子は手を振ったが、相手は一度目をそらし、店内をサッと見渡してから、雪子に近付いた。

「鈴木は、まだ来ていないんですか?」
「そうなの。てっきり、一緒だと思ったのに」
「・・今日は休日ですからね。雪子さんの方こそ、鈴木と一緒に来るのだとばかり、思っていました」

言いながら、薪は、雪子の左隣りに座ると、ウーロン茶を注文した。
「ちょっと。いい大人が、休日の夕方に、ウーロン茶?」
雪子がそう言うそばから、雪子の目の前には、グラスに注がれたビールと、お通しの小鉢が現れた。

「・・この後、また職場に戻るつもりなので。雪子さんはお気になさらず。ご自由に飲んで下さい」
雪子は改めて、薪の姿をしげしげと眺めた。

チャコールグレーのスラックスに、半袖の白いボタンダウンシャツ。
ネクタイこそ着けていないが、確かに、これは仕事のスタイルだ。

「部下が休んでいるのに、上司が一人で休日出勤?」
「・・・・・・」

薪は、何も言わない。
第九の仕事に関しては、極秘事項も多い。
雪子は察し、それ以上、問うことはしなかった。

「はい、お待ちどうさま!」
ウーロン茶が出された。
本来なら、アルコールにしか付かないお通しが一緒に出てきたのは、店主の心遣いだ。

「じゃあ、お先に始めてましょうか」
雪子はいい、ニッコリと笑って、グラスを掲げて見せる。
薪もうなずき、二人は共にグラスに口を付けた。

ビールを飲み、雪子は、隣りの人間の顔を見つめる。
グラスを手にする横顔は、暑さの中を歩いてきたばかりだとは思えない程に、涼やかだ。

その横顔を、雪子はこれまでに、どれだけ見てきたことだろう。

白い肌、彫刻をほどこしたかのような完璧な鼻筋、かすかに伏せた目元を、男性とは思えない程、長い睫毛が縁取っている。
それに、たった今、口を潤したせいなのか、桜色の唇は、艶めいて見えた。

雪子が黙ったまま見つめていると、薪はパッと目を開け、何ごとかと問うように、雪子を見上げた。
雪子は、あわてて目をそらす。

薪の正面顔ではなく、横顔ばかりを見てきたのは、きっと、こういったせいなのだろう。

「克洋くん・・遅いわね」
雪子が、箸を手に取りながらそう言うと、
「いらっしゃいませ!」店主が言った。

薪と雪子は、同時に振り返った。



Scene2:空気


「悪い悪い!」
店に入るなり、片手を挙げ、謝る仕草を見せたその男は、早足で二人に近付くと、雪子の右隣りに座った。

「汗をかいたんで、シャワーを浴びてたら遅くなった。よっさん、ビールお願いします!」
「はい!」
よっさんと呼ばれた、鈴木と顔なじみのその店主は、笑顔で答えた。

「・・・・・・」
鈴木の様子を見て、薪と雪子は顔を見合わせる。
そして、同時にプッと吹き出した。

「・・何だ?」
「だって・・」雪子は笑う。

「それじゃ、シャワーを浴びたかいが無いな」
薪も言い、鈴木はハンカチを取り出すと、自分の顔にびっしりと吹き出た汗をぬぐった。

「・・急いで来たものだから。今日は、暑いな」
「鈴木さん、どうぞ」
「あ・・すみません」
店主が差し出した冷たいおしぼりと共に、鈴木はビールを受け取った。

おしぼりで手を拭く鈴木に、雪子が言う。
「こんな暑い日にも、ジョギングを欠かさないの?」

「夜は、3人で飲もうと思ってたから・・その前に済ませたかったんだ」
「自分にノルマを課すのもいいが、体調を崩すなよ。自己管理も仕事のうちだ」
「はい! かしこまりました。室長殿」

鈴木の言葉を機に、また、3人で笑う。
薪と雪子の2人だけだった時とは全く違う、空気。

鈴木と雪子は顔を見合わせ、互いにビールを飲み干す。
「料理は注文したのか?」
「まだだけど」
「よっさん、何かすぐ出来る物、作ってくれませんか? あと、今日のおススメは何かな」

雪子や店主と会話を交わす鈴木を、薪は、穏やかな表情で、見つめていた。



Scene3:沈黙


「・・雪子さんは、どうした?」
薪がトイレから戻ると、鈴木が一人で座っていた。

「それが、職場から呼び出しを受けちゃってさ」
鈴木は肩をすくめる。

「雪子は今日非番だし、飲んじゃったから執刀は出来ないって言ったんだけど、オブザーバーとして出てきてくれるだけでもいいって言われたらしい」
「・・そうか」
「それだけ頼りにされてるんだよな。相変わらず、大した女だよな」

自分の彼女を、謙遜することなく、誇らしげにそう言う鈴木。
そんな鈴木の笑顔を見て、薪は目をそらした。

「・・出るか」
「そうだな」

自分が誘った上に、遅れたお詫びだと、支払いは鈴木が済ませた。
外に出ると、日はすっかり暮れ、夜の闇を、繁華街の明かりが、眩しく照らしていた。

行き交う人々の中を、薪と鈴木は、並んで歩いた。

「薪は、この後、どうするんだ?」
鈴木が、ゆっくりと歩きながら、薪の顔を見つめて、言う。

「職場に、戻ろうと思っている」
薪はそれだけ、答えた。

「・・例の事件が、まだ気にかかるのか?」
「・・・・・・」
薪が何も言わずとも、鈴木には分かっていた。

ある事件で、第九の機密情報が、外に漏れ出た可能性があった。
他の職員が居ない休日に、薪が密かにその調査をしていることを、鈴木は知っていた。

「・・あれは、薪のせいじゃない。もう、気にするな」
自分の肩に、鈴木の手が置かれ、薪はその場に、立ち止まった。

じっと地面を見つめる薪の、その顔を、鈴木は覗き込んだ。
「第九の人間は、やるべきことをやった、それだけだ。それ以上のことは、もうオレ達の手を離れたことだ。薪が、責任を感じることじゃない」
「・・・・・・」

「薪・・」
黙ったままうつむく薪の両肩に、鈴木は自分の手を置き、薪を正面に向かせた。

「薪。お前は、第九の室長で、オレは部下だ。だが、だからと言って、自分一人で、物事を背負い込むな」
鈴木の言葉に、薪はゆっくりと、顔を上げる。

薪の大きな瞳に、街灯が反射して、揺れて光って見えた。

その瞳が、鈴木を見つめながら、やや細まる。
そして、唇がわずかに、何か言いたげに開いた。

・・だが薪は、何も言わなかった。

それでも、鈴木はうなずいた。
薪が何も言わずとも、うなずいて見せた。

鈴木は、薪の肩から片手を離すと、横に並んだ。

向こう側に回された鈴木の片手は、薪の肩に置かれたままだった。
まるで、薪を抱き寄せるように。

二人はまた、歩き始めた。

それは、梅雨が明け、太陽が照り付けるようになった、そんな季節のことだった。




薪と鈴木と雪子 第5章 終





関連記事

コメント

■ 切ないです。

おはようございます。かのん様♪ 

昨日は鈴木さんの命日(推定)ということもあり、皆様のところで、鈴木さんに関する記事などを拝見しました。 

私は、薪さんと一緒にいる幸せな鈴木さんが大好きです。 

いつも、こんなふうに薪さんを包んでくれたのかな~と思っています。 
辛いことがあっても、鈴木さんが隣にいる、ということで薪さんは精神的にずいぶん助けられたのではないかと・・・  

こんな幸せな当たり前の日々を失ってしまうのが分かっているだけに、本当にこの二人は切ないですね(T T)

ついつい薪さんに見とれてしまう雪子の気持ちはわかります(^ ^;)

気になります!
とっっっっても気になりますよね!!!

きっと、雪子にとっては、結婚の対象(人生のパートナー)ではないかもしれませんが、強く惹かれていたのでしょうね。

・・・だからこそ、長年、身近で薪さんを見ていたであろう彼女のあの行動が理解できませんでしたね。

■ 

○たつままさま

こんにちは。
昨日は、早速にコメント下さいまして、ありがとうございましたm(_ _)m

> 昨日は鈴木さんの命日(推定)ということもあり、皆様のところで、鈴木さんに関する記事などを拝見しました。

そうなんですよね。推定命日・・・。
鈴木さんが亡くなった悲しい日・・であると同時に、薪さんの終わりの無い苦しみが生まれた日でもあると思うと・・

私もこの創作は、命日に捧げるつもりで書きました。
9日に合わせてUPする予定が、一日遅れてしまいましたが。

> 私は、薪さんと一緒にいる幸せな鈴木さんが大好きです。

そう思って読んで下さって嬉しいです。
 
> いつも、こんなふうに薪さんを包んでくれたのかな~と思っています。 
> 辛いことがあっても、鈴木さんが隣にいる、ということで薪さんは精神的にずいぶん助けられたのではないかと・・・

そうなんですよね。
原作では本当に出演シーンが少ないだけに、そこから押し測ることしか出来ませんが、広報誌や、鈴木さんの脳に残る薪さんの笑顔を見る限り、素晴らしい関係だったのではないかな・・と思います。  

> こんな幸せな当たり前の日々を失ってしまうのが分かっているだけに、本当にこの二人は切ないですね(T T)

そうですよね。
薪さんと鈴木さん、この二人は、どんなに幸せなシーンを書いても(思い描いても)、その先に待つ結果は変わらない・・切ないですね。

> ついつい薪さんに見とれてしまう雪子の気持ちはわかります(^ ^;)

ええそれはもちろん、絶対見とれますとも!!(笑)

> 気になります!
> とっっっっても気になりますよね!!!

ですよね、ですよねーーーーーっ!(笑)

> きっと、雪子にとっては、結婚の対象(人生のパートナー)ではないかもしれませんが、強く惹かれていたのでしょうね。

この世界の雪子は、きっとそうですよね。
原作もそうなのではないかと・・私は思っているのですが。

> ・・・だからこそ、長年、身近で薪さんを見ていたであろう彼女のあの行動が理解できませんでしたね。

そうなんです、そうなんです!!
「あの」行動は、どうしても不可解です・・はあ。

■ 

○ruruharuさま

こんにちは。
コメントありがとうございます!

> 実は三好さんが出てくるお話をじっくり
> 読ませていただくのはほとんど
> 無かったのですが…避けてました。
> (あーーすみません!)
> たとえ薪さんがいらっしゃっても
> あえて、避けてました。
> ‥ごめんなさい‥

すみません・・コメの冒頭からウケてしまいました(≧m≦)
なんて正直なお方。

お気持ち、分かります。分かりますよ~~!!
私も、自分のところの雪子は愛しい癖に、よそ様の創作で雪子が出てくると、どうしても身構えてしまうのですよ。
雪子がまだ何も言わない、動かないうちから、登場しただけで、「来たわね!騙されないわよ」みたいな・・(笑)←ヒドイ・・・

> 今回読ませていただいたのですが
> 三好さんはともかく‥す、すみません。
> 今の薪さんが幸せだけに‥
> かのんさんの薪さんですが‥。
>
> 辛いですね。

鈴木さんのことは、どんなに幸せな風景を描いても、その先に辛い出来事が待っているわけですから・・
どうしても、幸せなだけでは終わらなくなってしまいますね・・・

> 考えてみますと、原作ではもちろん
> 薪さんは主人公なわけで‥
> 脇のキャラは主人公にからんで必ず
> 動いていく‥
> ‥鈴木さんの役割はいったいなんだったの
> でしょう‥
> 何のために清水先生は鈴木さんを
> 生みだして、何のために薪さんの手に
> かけさせたの?
> そういう疑問が湧き上がってくるのです。
> 今の今でもそう、思うのです。

それは思います。
「秘密」に薪さんが、第九が登場した時、既にその出来事は終わっていた・・・

お話の大前提だったわけですよね。

何故、そんな必要があったのか・・

これは、読み手の数だけ答えがあるし、無いとも言えますよね・・
とても辛く大きな出来事なだけに・・答えはいつまでも出ません。

> ほんとうに鈴木さんのことが暗いかげを
> いまだに落としているだけに‥
> 辛いです。

どうしても、付きまといますよね。
私は、あまりの辛さに、鈴木さんに関するエピソードを書くことは避けてしまう傾向にあるのですが、でも、完全に避けることは絶対に出来ない。

> 清水先生が鈴木さんのサイドストーリー
> を書くことは、到底考えられないと
> 思いますので、幸せそうなかのんさんが
> 描く鈴木さんは貴重だっ!
> と思ったりします。

え・・そうでしょうか?
貴重だとおっしゃっていただくと、舞い上がってしまいそうです。
(ああでも、滅多に鈴木さんを書けない私なんかより、もっとずっと素敵な鈴木さんを書いている方、多数いらっしゃると思いますが・・)

鈴木さんのサイドストーリー・・・清水先生、描いて下さらないでしょうか・・。
はっきり言って、青木の婚約話なんかより、鈴木さんの過去話の方が、ずっと読みたいんですけど(←ここでそんな愚痴を言うな)

> 命日が過ぎて私が思うことと言えば
> 鈴木さんに関しては‥
> 同じところをいったり、きたりしていて…
> こうしてかのんさんの鈴木さんを
> 読ませて頂くことで折り合いを
> つけている‥ということなのでしょうか‥。

ああ・・・そんな風に読んでいただき、ありがたいです。
鈴木さんのことは、原作からの情報が少ないだけに、私も妄想ばかりですが・・私の中の鈴木さんは、こんな方でいらっしゃいました。
それは、私の願望に過ぎないのかもしれませんが。

> すみません‥勝手なことを、つらつらと。

とんでもございません!!
とてもとても嬉しいコメントでした。

ありがとうございました。

コメントの投稿



管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

■この記事のトラックバックURL

⇒ http://kanon23.blog36.fc2.com/tb.php/384-746bdb87

この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

■この記事へのトラックバック

 | BLOG TOP |