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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

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でも必ず書かせていただきますので
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Scene5:夜会


「僕は、このまま直帰する。第九に戻ったら、皆にも区切りが付き次第、帰るように伝えてくれ」
そう言って岡部を帰すと、薪は、エントランスに居たスタッフの案内で、パーティー会場へと移動した。

その途中、VIP慣れしたこのホテルのスタッフ達でさえ、通り過ぎる薪の姿を目で追っていたことなど、薪は知る由も無かった。

会場の入り口付近で、いくつか見知った顔とすれ違う。
薪はその都度、足を止めて会釈をし、礼儀を尽くしつつ、相手が話しかける隙を与えずに足を早める。

先の事件のことで、同情を寄せる言葉が出て来るのは、目に見えている。
そんな話をここでするのは、真っ平だった。

アメリカ側の科学捜査関係者を迎えるとなれば、その人間達には、挨拶をせねばならないだろう。
そう思いながら、薪が会場に足を踏み入れると、アメリカ側の人間達は皆、日本側の上役達と会場の前方に集まり、式典の最後の打ち合わせをしている様子だった。

その中に、飛びぬけて背の高いシルエットも、交じっていた。

白いシャツに、黒のタキシード。
カマーバンドや蝶ネクタイ、カフスなど、全て黒でまとめられ、胸には白いシルクのチーフを刺した、ベーシックなスタイルだ。

だが、その生地、仕立て、身体に沿ったその造り・・最高級のオーダーメイドであることは、ひと目で分かった。

薪は、肩をすくめて、辺りを見渡した。
自分は、リースに過ぎないそのタキシードを、完璧に自分のものにし、着こなしていることなど、薪本人は気付いていない。

「田城さん」
薪は、傍に歩み寄った。
「薪警視正・・来られたんだね」
田城も振り返った。

「・・・この状況じゃ、来るしかないでしょう」
薪はチラッと、田城を上目遣いで見やる。
「・・君がこういった場を好まないのは知っているが、何しろ、今夜の主賓は、君の赴任先の関係者達だからね。どうしても来てもらわねば、仕方が無かった・・」

フォスターは、薪が会場に足を踏み入れた瞬間から、その存在に気付いていた。
田城と話しながら、近付いたホテルスタッフが勧めるアルコール類を断わり、ウーロン茶のグラスを手にする薪の様子を見て、

相変わらずだな・・

フォスターは内心、微笑んだ。

式典が始まった。
日米双方の上役達が、会場の前方に並び、挨拶を始めた。
日本語の挨拶には英語の、英語の挨拶には日本語の同時通訳が付き、速やかに式典が進む。

フォスターは、居並ぶ人間達の、一番端に立っていた。
彼自身はスピーチをしないらしく、肩書きと名前のみを紹介され、フォスターは頭を下げ、そして上げると、同時に完璧な笑みを見せた。

今回、主賓達が単独で訪れている為、夫人を伴った者は多くは無かったが。
その数少ない、夫婦で出席した夫達は、妻が前方に目を奪われていることに、気付くこととなった。

アメリカ側の最後の一人が、スピーチを行った。
「・・このように、アメリカと日本の警察の交流は、益々活発になる一方でございます。その証として、2年間、我が国のMRI研究所で活躍された御仁が、そちらにいらしている・・薪剛警視正です」

会場の中程で、中身の無いスピーチの数々や、その都度起こるおざなりの拍手を聞き流していた薪は、突然、自分の名前が発せられたことに、心底驚いた。

「薪警視正!」
総監が薪を呼ぶ。

この状況では、行くしかない。
薪は、内心で舌打ちをしながら、表面はあくまで平静を保ち、前方へと進み出た。

「ではここで、薪警視正より、一言ご挨拶を賜りたいと思います」
司会を務める人間が、薪にマイクを向けた。

もちろん薪は、予告を受けずとも、とっさにその場でスピーチを組み立てること位、わけは無い。
だが、事前に打ち合わせがなされることが当然の場で、当日になって会場に呼ばれ、前ぶれも無く挨拶の場に引き出された・・その諸々に対する怒りが、薪の口を、重くしていた。

「薪警視正」
「薪君・・!」

作り笑いを浮かべながら、その実、顔を引きつらせ、薪を促し、ささやく声がいくつも聞こえる。
薪は口を開きかけ、また閉じ・・

その瞬間、薪に向けられたマイクを、横から取り上げる手があった。

「先程ご紹介に預かりました、MRI研究所、所長のクラーク・フォスターと申します。ここにおられる薪剛警視正は、我が研究所において、多大な実績を残してくれました・・」

一番端に居た筈のフォスターが、いつの間にか中央に進み出、薪の隣りに立っていた。
フォスターは、この場に差し障りの無い範囲で、薪がアメリカで携わった事件とその捜査結果について、簡単に説明をすると、

「こうして、薪警視正が、我が研究所のチームの一員として、共に功績を挙げたことは、薪警視正当人の実力と、日本の警察の優秀さを如実に表すものと言えるでしょう。我々は、彼に感謝の意を表すると共に、改めて日本の警察に敬意を抱き、これからも日米協力を惜しまず、繋がりをより一層強固な物とし、互いに発展していくことを、この場で誓いたいと思います」

そう、結んだ。

パン、パン・・と、米国側の人間から、拍手が起こった。
それを合図に、日本側の上役達からも、そして会場の人間達全員から、拍手が沸き起こった。

会場に広がる拍手の中で、フォスターは、薪に手を差し出した。
互いに握手を交わす。

そしてフォスターは、薪にマイクを差し出した。
「最後は君が・・薪」

薪の目から、怒りは消え、静かな瞳が、フォスターを見上げる。
そして薪はマイクを受け取り、スピーチを始めた。





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