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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene6:伝言


薪は、会場を後にすると、ホテルの外へと向かった。

式典に続くパーティーで、薪は、挨拶をすべき人間達と、ひととおり言葉を交わした。
お偉方達が、役目を終えて会場を出て行くのを見届けてから、自分ももういいだろうと判断し、出ることにしたのだ。

最後にフォスターに声をかけようかとも思ったが、彼の姿は、会場に無かった。
何か用があって席を外したのか、あるいは先に帰ったのか。
特に気にもせず、薪は、裏口へと向かう。

正面玄関から出ようとすれば、途中でまた知り合いに会う可能性が高い。
責任は果たしたのだから、これ以上足止めを食うことは、避けたかった。

裏口を出ると、ホテルの中の喧騒が嘘のように、ひっそりとしていた。
夜風に吹かれながら、薪が階段に足をかけると、その先に、一人、階段に座り込む、男の姿があった。

「フォスター・・」

薪の声に、フォスターの背中が一瞬、わずかに揺れた。
それから・・フォスターはゆっくりと、振り返った。

フォスターは無言のまま、薪を見つめる。
薪がそこに居ることが、信じられないような面持ちで。

薪はかすかに首をかしげると、フォスターへと近付いた。

「こんなところで、一人、宴会か?」
「あ?・・ああ、これか。パーティーで残っていたのを、いただいてきた」
「そんなわけが、あるか」

薪は肩をすくめる。
フォスターが手にしているのは、クリュグのボトル。
ドンペリと並び称される、最高級シャンパンだ。

パーティー会場では、そんな高級な物は出されていない。
フォスターがホテルスタッフに、個人的に出させたに、違いなかった。

フォスターは、クリュグと、ワイングラスを一つ、手にしていた。
オーダーメイドのジャケットを、惜しげもなく傍らに置きやり、シャツにカマーバンド姿。
蝶ネクタイはほどかれ、紐状になって、襟元に垂れていた。

「薪、君のスピーチは、素晴らしかったな。短いながら、的を射て、誰のスピーチよりも感銘を受けた。とっさにあれだけの物が出て来るとは、さすがに君だ」
「・・さすがなのは、お前の方だ」

「え?・・」
フォスターは聞き返したが、薪はそれ以上何も言わず、フォスターの隣りに座った。
それ以上褒め称えることも、フォスターに礼を言うことも無かったが、フォスターには、それで充分だった。

「・・どうだ?」
フォスターが、空になったグラスを薪に差し出す。
だが、薪は首を横に振る。

フォスターは、それ以上薪に無理強いすることは無く、自分で手にしたグラスに、シャンパンを注いだ。

「視察団より先に・・私は、明日日本を立つ。新たな事件が入り、どうやら、ロビンスでは手に負えないらしい」
そう言うと、フォスターはグラスの中のシャンパンを見つめ、それから、並々と注がれたそれを、全て飲み干した。

そしてフォスターは、薪を見つめ、言った。
「薪・・」

薪が顔を上げる。

その瞳を見つめながら、フォスターはその名を繰り返す。
「薪・・私は・・・・」

そこまで言うと、フォスターは目をそらし、夜空を見上げた。
空には、満月には少し早い、やや欠けた月が、光っている。

フォスターは、言った。

「私は・・この秋、結婚しようと思う」

薪は目を見開いた。
そして言った。
「相手は、あの・・」

「そうだ。あの彼女だ」
フォスターが言葉を継いだ。

薪は、フォスターに付き合っている彼女が居ることを、知っていた。
女性との付き合いが多いという噂のフォスターが、薪がアメリカに滞在中は、一人の女性と関係が続いていたことも。

「・・彼女は、非常に勘のいい女性で、私が余計な気を遣う必要が無い。それに・・とても率直だ。彼女と居ると、私は、自分の気持ちが緊張から解かれ、安らいでいることに気付いた。家族というのは、こういうものかと思った。・・彼女に出会えたことを、神に感謝している」

静かに語るフォスターの言葉には、偽りの無い気持ちが、こもっていた。

「・・そうか」
言いながら、薪は一度目を伏せ、そして上げた。

「おめでとう」
フォスターに向かって、言った。

フォスターも、薪を見つめる。
そして、もう一度、グラスを差し出した。

薪は受け取った。
薪の細い指が、月明かりを反射するグラスにかかる。

フォスターはそのグラスに、シャンパンを注いだ。
薪は、グラスを掲げて見せる。
いつも、フォスターがそうしていたように。

そして薪は前を向き、グラスを傾け、シャンパンを口に流し入れた。
黄金色の細かな泡が、グラスから薪の唇へと、吸い込まれていく・・・

フォスターは、薪を見ていた。

華奢な肩を。
優美に延びる腕を。
袖から続く白い手を。

くっきりとしたアゴを。
グラスの芳香を嗅ぎ取っている鼻孔を。
伏せた瞳と、それを縁取る長い睫毛を。

月に照らし出された頬を。
シャンパンよりも、光り輝く髪を。
そして、グラスのふちに置かれた、艶めく唇を・・・

何年も前から、薪を知っているのに。
2年間、その傍で過ごしていたのに。

フォスターは、まるで、今、初めて薪を見たかのような、錯覚に捉われた・・・・

薪は、そんなフォスターの視線に気付くこともなく、シャンパンを飲み干すと、フォスターに向き直り、フッと・・微笑んで見せた。

夜風が・・二人の間をすり抜けた。

「薪・・青木に、伝えてほしいことがある」
フォスターは、薪に伝言を頼んだ。

「・・分かった。伝えておく」
フォスターから話を聞くと、薪はうなずいた。

薪は、フォスターにグラスを返すと、立ち上がった。
「薪、結婚披露宴に、来てくれるか?」
フォスターは隣りに立つ薪に、言った。

「いや・・」
薪は言いながら、階段に足をかける。

「・・そうだな。そんなことの為に、時間を費やす必要は無い。君には、第九で仕事をしている姿が、似合う」
フォスターは言った。

薪は階段を降りると、フォスターに背を向けた。

「薪・・」
フォスターが声をかけ、薪は立ち止まり、振り返った。

束の間、目が合う・・・

フォスターは、座ったまま、夜空を見上げ、言った。
「・・今夜は、月が、明るいな」

「そうだな」
薪も、その場に立ち、同じ空を見上げた。

「満月には、やや足りないが、それでも、こんなにも明るい・・充分に・・明るい・・・・」

フォスターは、そう言った。

薪は一度顔を下ろし、フォスターを見つめた。
フォスターの瞳が光って見えたのは、きっと、その月明かりが、反射していたのだろう・・・

薪は、もう一度空を見た。
そして、歩き出した。
フォスターに背を向けて。

フォスターは、薪の姿が完全に見えなくなるまで、そのまま、夜空を見上げていた。





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コメント

■ ぎゃ~(°□°;)

おはようございます。かのん様!

度々、お邪魔してすみませんm(__)m

あああ~フォスターが結婚なんて・・・
いろいろな想いを抱えて日本に来たのですね(T_T)

なのに、薪さん・・・相変わらずなんですから~
会場から、消えてしまったフォスターに何か用でも合ったのだろうと気にも止めないって・・・(T_T)(T_T)(T_T)

まぁ、スピーチの時といい、二人には唯一認め合った、大切な友としての想いがあるから・・・いいかな?

きっと、誰も来ないであろう、ここで会えたことは運命です\(^ー^)/

休日の時のように、月の光を浴びた薪さんは美しいのでしょうね。
そして、その輝くような薪さんが、シャンパンを飲む姿はさぞや・・・ため息が出るほど麗しいのでしょうね☆☆☆

きゃ~(≧∇≦)
かのん様の表現の素晴らしさに・・・(〃▽〃)
月に照らされて、髪を輝かせて、優雅にシャンパンをその口に入れる薪さんがハッキリと浮かびました♪\(^▽^)/♪

かのん様っ!!!天才(^▽^)v

フォスターの結婚はちょっと寂しいですが・・・
薪さんに焦がれ、いつまでも独りでは・・・(T_T)
率直で勘のいい彼女が傍にいて救われるのですね。
いつまでも、お幸せに・・・
フォスター・・・(ρ_;)

フォスターから、青木への「伝言」だったのですね。
そして、その裏には薪さんへの想いが・・・

とても、気になります(^_^)v
続き、お待ちしております\(^ー^)/

■ 

○たつままさま

拍手コメに続いてのコメント、ありがとうございます。
レスが遅くなってしまい、すみませんでしたm(_ _)m
やはり週末は何かとあって、一人の時間を取るのが難しく・・(><)

> ぎゃ~(°□°;)
> あああ~フォスターが結婚なんて・・・
> いろいろな想いを抱えて日本に来たのですね(T_T)

ありがとうございます。
オリキャラに関心の無い方から見れば、そのキャラが結婚宣言をするだけのシーンですから・・
こんな風に、気持ちを込めて読んでいただき、感激致しました・・

そうですね。
きっと、様々な、そして複雑な想いがあったのではないかと。

> なのに、薪さん・・・相変わらずなんですから~
> 会場から、消えてしまったフォスターに何か用でも合ったのだろうと気にも止めないって・・・(T_T)(T_T)(T_T)

「相変わらず」まさしくそうですね(笑)
最後に声をかけようと姿を探したり、薪さんは薪さんなりに、心を砕いてはいるのでしょうけど・・

> まぁ、スピーチの時といい、二人には唯一認め合った、大切な友としての想いがあるから・・・いいかな?

フォスターも、これでもう充分だと思ったのかもしれません。

> きっと、誰も来ないであろう、ここで会えたことは運命です\(^ー^)/

あ・・そこに目を留めていただけましたか。
そうですね、フォスターは誰かが来るとは、ましてや薪さんが現れるとは、思っていなかった。
薪さんはその偶然を気に留めていないかもしれませんが・・

> 休日の時のように、月の光を浴びた薪さんは美しいのでしょうね。

「休日」の最終話・・覚えていて下さったのですね。本当にありがたいです・・(TT)

> そして、その輝くような薪さんが、シャンパンを飲む姿はさぞや・・・ため息が出るほど麗しいのでしょうね☆☆☆
> きゃ~(≧∇≦)
> かのん様の表現の素晴らしさに・・・(〃▽〃)
> 月に照らされて、髪を輝かせて、優雅にシャンパンをその口に入れる薪さんがハッキリと浮かびました♪\(^▽^)/♪

きゃ~~~!!
叫んでしまうのはこちらの方です。

「麗しい」「綺麗」とは、直接書きませんでしたけれど。
フォスターの目から見た薪さんを、私は彼の視線を通じて見て、そのまま書いただけなのですが・・。
ハッキリと浮かべていただき、本当に嬉しいです。

・・「天才」というお言葉は、本当の天才の方に、とっておいて下さいませ。

> フォスターの結婚はちょっと寂しいですが・・・
> 薪さんに焦がれ、いつまでも独りでは・・・(T_T)
> 率直で勘のいい彼女が傍にいて救われるのですね。
> いつまでも、お幸せに・・・
> フォスター・・・(ρ_;)

どうもありがとうございます。
たつままさんのお言葉の一つ一つが、胸に染み入ります・・

フォスターは付き合いの多い人間ですが、彼女だけでなく、親しくなるのは、同期のジェラルド・ハーディや、主任のロビンスなど、皆、率直な人間ばかりなのですよね。
薪さんも、結局第九に残っているのは、薪さんに対して率直な人間ばかりだと感じます。

> フォスターから、青木への「伝言」だったのですね。
> そして、その裏には薪さんへの想いが・・・

どうしてこう、たつままさんは、書きながら込める想いを、全て汲み取って下さるのでしょうか・・
その都度感動してしまいます。

> とても、気になります(^_^)v
> 続き、お待ちしております\(^ー^)/

本当にありがとうございます。
あと1話、たぶん明日の夜UP出来ると思うのですが、それで今回は完結致しますm(_ _)m

■ 

途中ですが。
以前、フォスターが薪さんへの思いを砕かれて、月を見上げながら歩いていくあのシーンが浮かびまして。重なってしまいました・・・・。
結婚する、と決めて幸せになろうとしているフォスター。でも、どうしてもその裏の寂しさを感じてしまいます。
かれは一生、薪さんへの思いを忘れられないのでしょうか。うーん、わたしの気の回しすぎですかね(^^;
はい、つづき、読ませていただきます。

■ 

○しづさま

コメントありがとうございますm(_ _)m

> 以前、フォスターが薪さんへの思いを砕かれて、月を見上げながら歩いていくあのシーンが浮かびまして。重なってしまいました・・・・。

以前の創作を覚えていて下さり、重ねて下さることは、本当に嬉しいです(;▽;)
作者冥利に尽きます・・・

> 結婚する、と決めて幸せになろうとしているフォスター。でも、どうしてもその裏の寂しさを感じてしまいます。
> かれは一生、薪さんへの思いを忘れられないのでしょうか。うーん、わたしの気の回しすぎですかね(^^;

どうなんでしょう。
どんな気持ちで決意を固め、将来どんな想いを抱えていくのか・・私にも、登場人物達、彼らの心はハッキリとは分かりません・・

> はい、つづき、読ませていただきます。

読んで下さり、どうもありがとうございます!(><)

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