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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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※清水先生の作品とは、一切関係ございません。


オリジナルストーリー

「晩夏」



「・・ああ、今から戻る。そうだな、その書類は、デスクに置いておけ。戻り次第、僕がチェックする」

薪は、ケータイを閉じた。
「岡部さん・・心配してたんじゃないですか?」
「・・さあな」

薪は、青木の運転する車で、会議から戻るところだった。
今後のMRI捜査機関の展開についての、合同会議。
薪の意見と中央省庁の考えには、食い違う部分があった。

将来についての意見を述べるには、第九の過去の実績についても、色々とつつかれる。
薪を送り出す時、岡部は何も言わなかった。
だが青木には、岡部の薪を見るその顔が、とても不安げに見えた・・・

日は、やや傾き、車内に夕日が差し込む。
助手席で、額に手を当て、目を伏せる薪を見て、青木は思う。

疲れてるな・・・

車は、海沿いの道に差し掛かった。
ふと、青木は思いついて尋ねる。

「薪さん、最後に海に行ったのは、いつですか?」

薪は少し間を置いて・・
「・・そうだな。もう、ずっと行っていない・・」

薪のその答えと同時に、青木は道を左に折れた。
「?・・どうした?」

「ああ・・ちょっと、ノド乾きませんか? そこの駐車場に、自販機が見えたので・・」
飲み物を買うなら、その先のコンビニに寄ったっていい。
だが、青木は海に面した駐車場へと、車を入れた。

車を停め、窓を開けると、潮風の匂いがした。

青木は自販機でアイスコーヒーを買うと、車に戻り、薪に差し出した。
薪は黙って受け取り、だがフタを開けようとはせず、そのまま、外を見やる。

駐車場の先、眼下には海岸が、砂浜が見えた。
「あまり・・人は多くないですね」
「もう、9月になるからな・・」

海水浴と言うよりも、波打ち際で足だけ水に入れている家族連れ。
その先には、ボディボードやサーフィンをしている人達。
更に沖合いには、ヨットや小さな船が、ポツポツと並んでいる。

薪は、空を仰ぐ。
夕空にカモメが群れ飛び、1羽だけ、仲間から少しはぐれて飛んでいる・・

表情を変えずに、じっと海や空を見つめる薪に、青木は言った。
「海・・あまり、好きじゃないんですか?」

「海は・・今が夏だということを、再認識させられる」
薪の答えに、青木は言葉を失う。

薪にとって、夏という季節は・・・・・

薪は静かに、波と戯れている人達を見つめる。
水着や、Tシャツにショートパンツというラフな姿の子供達の中に、一人だけ、違和感のある少女が居た。

花飾りの付いた麦わら帽子に、小花の模様のフリルのブラウス。
ネックレスまで身に着けて。
・・きっと、この子供は、海に入る予定では無くて、傍を通った時に突然砂浜で遊びたくなったのだろう・・薪はそんな風に推測する。

レースのズボンを、たくし上げてはいるが、それはすっかり波と砂にまみれている。
親と思われる大人達は、そんな子供に目くじらを立てるでもなく、笑顔で子供を見つめている。

キャップをかぶった、父親と思われる男性は、大きな波が来る度に、波から守るように、少女の身体を持ち上げている。
日傘を差した、母親と思われる女性は、そんな二人を振り返り、微笑んでいる。

・・どこにでもある、ごく普通の、親子の風景。

「青木・・もし、お前が子供を欲しいと思ったら・・」
「え?」
薪の突然の言葉に、青木は思わず聞き返した。

「もし・・お前が、結婚して、子供を持ちたいと思うのであれば、お前には、その可能性が残されている。お前の人生は、まだ、決定したわけではない。・・いつだって、やり直すことが出来る。・・引き返すことが・・出来る」

「薪さん・・」
海を見つめ続ける薪のその背に向かって、青木は、つぶやいた。

「僕は・・そんな可能性のあった人間の未来を・・既に、奪っている。だから、もう、これ以上・・・」

薪の言葉は、そこで途切れた。
薪の手の甲に、青木の手が、重なったから。

薪の膝の上に置かれた右手に、青木は、自分の左手を重ね、指を絡めた。
その感触に、薪は、目を閉じる。

「薪さん・・オレは、これから先もずっと・・・・薪さんと共に、生きていきます」

薪は振り返った。
その顔を、青木はじっと見つめ、言った。

「薪さんと共に、生きて、いきます」

「・・・・・・」
薪は、青木を見つめ返し・・・

また、窓の外を向いた。
青木からは、薪が今、どんな表情をしているのか、分からない。

「そろそろ・・行きましょうか」
青木は、薪の手からそっと自分の手を離し、車を発進させた。

薪はそのまま、助手席の窓の外を、見つめていた。

日が沈む。
もうすぐ夏が、終わる。

愛しい人を失った、その季節が、今年もまた、過ぎてゆく・・・・・・・




晩夏 終





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