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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene2:散策


「それでは、ごゆっくりおくつろぎ下さいませ」
宿の仲居が下がり、青木は、ふっ・・とため息を付いた。

山懐に抱かれた、数寄屋造りの小さな宿。
紅葉のこの時期、週末は既に予約で客室は埋まっていたが、平日だったことが幸いし、この宿に部屋を取ることが出来た。

車で行くことを提案したのは、薪だ。
その理由は聞かなかったが、駅で、列車の中で、誰かに目撃されることを避けた方がいいということは、青木にも分かった。

休暇に入る前に、青木は岡部に問われた。
「休みの間、お前、遠出はするのか?」
「え?・・」

不意打ちをくらったようで、青木は戸惑った。

「緊急の場合に備えて、連絡が取れるようにしておかなきゃならん。・・まあ、何も無いとは思うが。自宅で連絡が付くならいいが」
「あ・・いえ。ちょっと出掛けます・・」

「そうだよなあ。せっかくの休み位、上司とは離れたいよなあ」
小池が、青木の背中を、ポンと叩く。

「一緒に住むことを選んだんだ。今更そうでもないだろう」
今井が言う。

「よりによって、せっかく薪さんが休暇を取る日と、重なるなんてな」
「オレ達の方が、オニの居ぬ間の休日だな」
宇野と小池が、青木に向かって、不憫そうに笑う。

「・・・・・・」
黙っている青木を、曽我と岡部は、何も言わずに見ていた。

「とにかく、ケータイだけは、ちゃんと電源を入れとけよ。ま、何か緊急の捜査が入ったとしても、薪さんを呼び出すことはあっても、お前を呼ぶことにはならんだろうから。せいぜいゆっくりするんだな」

岡部の言葉に、青木が尋ねる。
「あの・・薪さんは、何て」
「ん?」
「薪さんは・・休暇中、どうするか、言ってましたか?」

「聞いてないのか?」
岡部は聞き返し、そして、言った。

「薪さんも、出掛けるかもしれないと言っていた。それ程遠くではないから、何かあったらすぐケータイに連絡を入れろと言われた」
「そう・・ですか」

目的地に向かって運転をしながら、青木は思う。
何故、あの時、薪さんと出掛けるのだと、自分は言えなかったのだろう。
その一言が、何故、言えないのだろう・・・

理由は分かっていた。
だが、青木には、それが歯痒くてならなかった・・。

信号で停止する度に。
青木の目は、つい、助手席へと向かう。

深い茶色のショートジャケットの袖から、白い手首がのぞいている。
その先に続く細い指で、無造作に髪をかき上げ、外を見やる、薪・・

「おい」
薪の一言に、青木は信号が変わったことを悟り、正面に向き直る。

隣りに佇むその存在に、心が浮き立つ。
たまらない程に、胸に広がる充足感。
・・なのに、どこか、奥に疼くような痛みを感じるのは、何故なのか・・

宿へ向かう途中、紅葉の名所に立ち寄った。
真っ赤に色づく木もあれば、まだ、青みを残した葉を付ける木もある。

赤に黄色に、降り敷いている落ち葉の上を、二人で歩く。

青木は、通りすがる人々が、皆、こちらを振り返ることに気付いていた。
普段から、薪と歩いていると、視線を感じることは、少なくない。
だが、それとなく見やる都会の人々とは違って、観光に来た人々は、まるで、ここまで何を見に来たのかと思う程、こちらをじっと見送っている。

だが薪は、そんなことは、まるで気に留めていないようで。
ゆっくりと歩を進めながら、時折、見事に色づいた木の前で、立ち止まり、見上げ・・

燃えるように赤く色づいた木の下に、その人は立っている。
すくっと、背筋を伸ばし、細い首を伸ばし。
そして、ふとこちらを向くと、その大きな二重の目が細まり、微笑みかけた。

「? 青木?」
声を掛けられ、青木は、我に返る。

薪に近づき・・その手を取った。
「・・・・・」
薪は一度動きを止め、青木を見上げる。

だが、青木は前を向いたまま、繋いだ手に、力を込める。

薪も、振り払わなかった。
握り返してくる、その柔らかな手の感触に、青木は、胸が詰まるような気がした。

宿に着き、長屋門風の屋根の付いた門をくぐり、中に入る。
青木が、チェックインの手続きをしている間に、薪はロビーの一角にある縁台に通され、出されたお茶を飲んでいた。

手続きが済むと、青木もそこへ案内され、目の前にお茶と干菓子が置かれた。
薪の向かいに座り、自分も湯飲みを手にする、青木。

「疲れたろう」
「いえ」

短い会話の後に、青木は、熱いお茶をすする。
そして、言った。

「薪さん、あの・・」
「うん?」
薪が、青木を見上げる。

「薪さんて、自分が、人に見られていること、気にならないんですか?」
「僕が?」
やはり自覚が無いのかと、青木の口元に、笑みが浮かんだ。

「お前こそ」
「え?」
「通りすがりに、お前のことを見ている女達が、随分居たぞ。気にならなかったのか?」
「オレが?・・」

それは例えば、こんな会話になっていたりする。

「ねえ、見た? 今の人」
「うん。すっごい美女」
「美女? 男の子じゃないの?」

「女でしょ? だって、一緒に居るの、どう見てもあれ、彼氏じゃない」
「そうかなあ」
「背、高いよね」
「うん。ちょっと、いいかも」

素敵なカップルだよね、と言い合う女性グループのおしゃべりを知れば、注目されていたのは、どちらか片方ではないのに。

「お前、自覚無いんだな」
「薪さんこそ」

二人は見つめ合い、微笑みあう。
互いに相手のことを、仕方の無い人間だと、思いながら。

そして二人は、部屋に案内された。
それは、露天風呂付きの、離れの一室だった。





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コメント

■ 素敵です☆☆☆

こんばんは。かのん様♪

かのん様の素晴らしい描写で、紅葉狩りに飛んで行きたくてウズウズしてきた、たつままです(^_^)v

秋の長雨の季節になり、朝夕はすっかり冷え込んできました。
が、近所の公園を見ても、樹木は青々と、まだまだ夏の名残が・・・(^_^;)

赤や黄色に色付く紅葉の中、静かに二人が並んで歩く様子が浮かんできます(〃▽〃)
時折、すれ違う、女性達が二人に見とれて・・・通り過ぎると「素敵なカップルだね。」と噂をする。

本当にかのん様の描写は凄いです!!!
目の前に映像が浮かんできます(≧∇≦)

前を向きながら薪さんの手を握る青木と、黙って手を握り返す薪さん。

素敵です(≧∇≦)
旅先ならではの行動ですね♪♪♪

公には出来ない二人の関係。
二人が愛し合って揺らがなければいいんです。

さてさて、落ち着いた旅館の離れ(しかも、露天風呂付き♪♪♪) で、ゆっくりとした時間を過ごして下さいね\(^▽^)/

しづさんの言葉をお借りしまして「おしどり夫婦」な薪さんと青木の夜(色々な意味で★)を見守って行きたいです。

続き、楽しみにお待ちしております♪\(^▽^)/♪

■ 

○たつままさま

こんにちは。
コメントありがとうございます!(^^)

> かのん様の素晴らしい描写で、紅葉狩りに飛んで行きたくてウズウズしてきた、たつままです(^_^)v

嬉しいお言葉を、ありがとうございます(;▽;)

紅葉狩り・・行きたいですねえ・・
(今、こちらのあおまきさんを見て噂話をしている女性達が、たつままさんや私にも思えました^^;)

> 秋の長雨の季節になり、朝夕はすっかり冷え込んできました。
> が、近所の公園を見ても、樹木は青々と、まだまだ夏の名残が・・・(^_^;)

そうですね。
こちらも紅葉はまだまだです。

でも、昼はセミ、夜は蛙の大合唱(田舎なので)だったのが、いつの間にか虫の大合唱に変わっていることを思うと、秋だなあと思います(^^;)

> 赤や黄色に色付く紅葉の中、静かに二人が並んで歩く様子が浮かんできます(〃▽〃)
> 時折、すれ違う、女性達が二人に見とれて・・・通り過ぎると「素敵なカップルだね。」と噂をする。
> 本当にかのん様の描写は凄いです!!!
> 目の前に映像が浮かんできます(≧∇≦)

あああ・・嬉しいです(TT)

いつも思いますが、映像が浮かぶのは、たつままさんの豊かな想像力ゆえだと。
それでも、そうおっしゃっていただけることは、本当に本当に嬉しいです!!

> 前を向きながら薪さんの手を握る青木と、黙って手を握り返す薪さん。
> 素敵です(≧∇≦)
> 旅先ならではの行動ですね♪♪♪

素敵ですか?
嬉しいです~~!(><)

そうなんですよね。
なかなか住んでいるその場所では出来ないことで・・
だからこそ、こういう場でしてくれた二人に、私も嬉しかったです☆

> 公には出来ない二人の関係。
> 二人が愛し合って揺らがなければいいんです。

ああ・・力強いたつままさんのお言葉。
響きます。

> さてさて、落ち着いた旅館の離れ(しかも、露天風呂付き♪♪♪) で、ゆっくりとした時間を過ごして下さいね\(^▽^)/

薪さんが知らない男達の視線を浴びる・・と思ったら、青木は部屋付きのお風呂があるところ限定で探すしかなかったようです(^^;)
まあ、自分の思いだけじゃなく、薪さんが気兼ねなくくつろげるように・・という配慮かもしれませんけどね(^^)

> しづさんの言葉をお借りしまして「おしどり夫婦」な薪さんと青木の夜(色々な意味で★)を見守って行きたいです。

ありがとうございます。
「おしどり夫婦」、素敵な表現で嬉しいです♪

色々・・あるでしょうか(笑)

> 続き、楽しみにお待ちしております♪\(^▽^)/♪

どうもありがとうございます!
このお言葉が、コメントが、力になります。

最初は3話の予定だったのですが、結局6話になりそうな予感です・・・

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