カウンター


プロフィール

かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

リンクは嬉しいので、ご自由にどうぞ♪


当ブログ拍手頁

最新の公開拍手コメのレスはこちら それ以前の公開拍手コメ&レスは、各記事の拍手ボタンを再度押していただければ読めます 鍵拍手コメにつきましては、拍手をいただいた記事下コメント欄にレスを書いております

所属してます♪


月別アーカイブ


最新記事


最新コメント


検索フォーム


 
※清水先生の作品とは、一切関係ございません。


オリジナルストーリー

「精霊」



その淵には、精霊が住んでいた。

淀んだ水の中に、上半身だけを水の上に出して、佇んでいる。
白い肌に、栗色の髪。
髪と同じ色をした、大きな瞳。

全身水に濡れ、唇も蒼ざめている。
白い衣を身に着けたその姿は、精霊と言うより、まるで、修行僧のようにも、見えた。

断崖の上から、その姿を、大勢の人が見つめている。

「綺麗だねえ・・」
そうつぶやいて、見とれている者。
全く関心を見せず、人だかりをチラリと見て、通り過ぎて行く者。

人々の騒がしさに、精霊は、顔を上げ、群集を、ギッ・・と、睨みつけた。

「うう・・恐い」
精霊の怒りの表情に、多くの者がその場を去っていく。
かと思うと、力の込もったその瞳の強さに、益々惹かれ、声も無く、魅入られている者もある。

「ねえ、あれ、何?」
再び顔を下げて目を伏せ、長い睫毛を重ね合わせた精霊を見て、小さな男の子が、聞いた。

「あれはねえ、水の神様なんだよ」
母親が答えた。

「水の化身・・我々は、精霊と呼んでいる」
親子が振り返ると、そこに、村の長老達が居た。

「あの精霊が、村のこの淵に住んでいるお陰で、村は洪水に見舞われることも、日照りに悩むことも無いんだよ」

長老の一人が言えば、
「あれは、この村に、無くてはならない存在だ」
もう一人が、キッパリと、言った。

精霊の務めは、それだけではなかった。

時々、誤って川に落ち、溺れて死んだ者の魂(たましい)が、運ばれてくる。
精霊は、その魂に手を触れ、その魂が何を思って死んでいったか、その声を聞き、後に残る無念を受け止める。

全てを聞いてもらった魂は、思い残すことなく、空へと飛んでいく。

精霊は時々、泣いていた。
死んだ魂のその無念が、あまりにも大き過ぎて、精霊の胸を、占領してしまうのだ。

時には、いくら魂に耳を傾けても、その声が聞き取れないこともある。
思いを聞いてもらえなかった魂は、空へと飛べず、水の中に溶けていってしまう。

精霊は、魂が溶けたその水を両手ですくうと、指の間からこぼれ落ちる水を見ながら、ほろほろと涙をこぼした。

精霊の涙で、淵は、益々深くなる。
少しずつ、少しずつ、深くなるその淵で、精霊の身体も、少しずつ、少しずつ、水の中へと隠れていく。

「ねえ、あの精霊、溺れないの?」
男の子が、また、聞いた。

「そうだな。もし、本当に溺れそうになったら、その時は、助けてやればいい」
男の子の後ろに、今度は、村の若者が居た。
どっしりとした体格のその若者は、続けた。

「精霊は、今は、誰にも助けてと言っていないだろう? だから、こうして、見守っていればいいんだ。精霊には、精霊の務めがある。彼は、それをやらなければ、ならない」

「彼?・・・あの精霊は、男なの?」
そう言って、男の子は、もう一度精霊を見つめた。

細い身体で、水の中にしっかりと立っている、精霊。
華奢な肩も、蒼ざめてはいながら、ふっくらとした唇も、奥まで水に濡れているかのように、揺れている瞳も、男の子の目には、女性のように・・いや、その精霊には、性別が無いかのように、見えた。

「ねえ・・あの精霊は、ずっと一人で、寂しくは、無いの?」
男の子の疑問は、途切れることが無い。

「村のみんなで、こうして見守っていることが、助けになるんだよ」
「精霊だって、分かっているよ。みんなが、そばに居ることをね」
大人達の声にも、男の子は、納得しなかった。

「本当に? 本当にそうなの? 精霊は、寂しいとは、思ってはいないの?」

その時。

いつの間に行ったのやら、断崖から、淵へと降りる道を、下っている若者が、居た。
見ている者達は、ざわざわと、その姿を見て語り合った。

「あれ、あんなところ、行っていいのかい?」
「いや、入っちゃいけないとは、書いていないが」
「だが、精霊のそばに寄るなど、誰も思いもしなかったことだ」

背の高いその若者は、もう、精霊のすぐ傍らまで、来ていた。
「もし・・精霊さん」
水辺で、若者は、声をかけ、精霊が、振り返った。

断崖の上の者達は、固唾を呑んで、見守っている。

「お前は・・?」
精霊の目は、驚きに、大きく見開かれていた。

「村の者です。いつも水の中に居て、寒くはありませんか?」
「は!?」
思いもかけない言葉だったのだろう。
精霊は、しばし、若者を見つめたまま、黙っていた。

やがて、ゆっくりと、口を開いた。
「私は・・精霊だ。寒くなんか、無い」
「でも、顔色はすっかりと蒼ざめて、首筋にも鳥肌が立っているご様子。本当は、寒いのではありませんか?」

若者は、ニッコリと笑うと、続けた。
「もう長いこと、ここでお務めを果たしてらっしゃるのでしょう。どうです? 少し水から上がって、身体を温めては」

「・・・・・」
若者の物言いに、精霊は、またも言葉を失った。
そして、水に漬けていた指先を挙げると、そっと、天を指し示した。
「私がこの淵から離れれば、その間、雨が降らなくなるかもしれぬ」

そう言って、今度は、その白い手で、真っ直ぐに地を指し示した。
「私が水から上がってしまえば、その間、洪水が起きぬとも、限らない」

若者は首をかしげ、空を仰ぎ、地を見つめると、再び精霊の顔を見つめた。

「ほんの少しの間です。雨が降らぬのであれば、井戸を掘ればいい。乾きに強い作物を育てればいい。少しの間なら、水を汲み、溜めておくことも出来ましょう」

「逆に雨が降り続き、水に押し流されそうになれば、土手を作り、堰を固めることも出来るのです。・・人間は、強い生き物です。あなたが居なくても、田畑を耕し、日々を豊かに営んでいる村もたくさんある・・私達の村は、あなたにずっと守られてきた」

「・・でも、あなたのことは、誰が守るのですか?」

「私を・・?」
またも、不意を付かれ、精霊は押し黙った。

「あなたはずっと、務めを果たしてきた。少しの間、淵から上がり、休むことも叶いましょう」
そう言って、手招きをする若者に、精霊は、身体を向けた。

「・・私は、精霊だ。誰の守りも必要とはしない。休むことなど、考えもしなかった。私がここに居なければ、この村は立ち行かない。その務めが、私の支えでもあったのだ・・」

「でも、あなたは、疲れておいでになる。自分でご存知ないだけだ」
「・・精霊の私に、そんなことを言ったのは、お前が初めてだ・・・」

そう言いながら、精霊の目が、何か、遠い物を見つめる物に、変わった。
遠い昔・・そう、何百年前だったか、やはり、そんなことを言った若者が居たような、気がしたから・・。

同時に精霊は、何か、恐ろしい気持ちにとらわれた。
あの時、淵から出たことで、そう、何かが起こったような・・

「行かない」
「え?」
目の前の若者は、精霊の言葉に、聞き返した。

「行かない。この淵から上がれば・・そちらに行けば、何か、きっと、恐ろしいことが起こる・・」
「何故、そう思うのです?」

「分からない・・ただ・・」
「起こるかもしれない。でも、起こらないかもしれない。来てみなければ、それは、分からないことでしょう?」
「いやだ、いやだ、いやだ・・!」

言いながら、精霊の目から、涙がこぼれ落ちていた。

「ほら」
若者は、言った。
「あなたは、恐れているだけだ。本当は、こちらへ来たいのに」

若者の言葉に、精霊は、顔を上げた。
涙が、こぼれ続ける。

ほろほろ。
ほろほろ。

「さあ」
若者は、手を差し伸べた。

精霊が、動き出す。

断崖の上の者達が、どよめいている。
精霊は、一歩、二歩と、若者のそばに歩み寄った。
だが、戸惑いが精霊を襲い、その歩みを、止めた。

「やはり、行けない・・」
精霊が、諦めた表情で、若者に背を向けた、その時。

バシャ。
バシャバシャバシャ・・・

精霊は、驚いて振り返る。
若者が、水の中に入り、こちらに近付いてきていた。

「愚か者! 何をしている! ここは我が聖域。人間のお前が足を踏み入れれば、溺れるかもしれない」

バシャ。
バシャ。

若者は、歩みを止めない。
精霊も、たまらず、若者に向かって進む。

その瞬間、精霊の目の前で、若者が足を踏み外し、水の中にその姿が消えた。

「ああっ・・!」
断崖上のどよめきの中、精霊も、水の中に潜った。

しばらくして・・・

精霊は、若者を抱えて、水から上がった。
若者の身体を、水辺に横たえた。

若者は動かない。
「なんと・・無茶なことを」

精霊はそうつぶやくと、若者の顔に、自分の顔を重ねた。

「ぶっ・・くっ・・」
若者の口から水がこぼれ、若者は目を開けた。
目の前に、精霊の美しい顔があった。

若者は、精霊のその顔に、手を差し伸べた。
自分は、何故、こんなことをしたのか。

遠い、遠い昔から。
子供の頃から、精霊を見ながら育ち、自分の心には、何かが芽生えていたのだと、その時、気付いた。

これから何か、恐ろしいことが、起こるのだろうか。
それとも・・

若者は、どちらでも良かった。

精霊は、若者の、その手を取った。
蒼ざめていた精霊のその唇に、頬に、赤みが差し始めた。

精霊は、若者の顔を見つめ、静かに、微笑んでいた。




精霊 終





関連記事

コメント

■ 想いのままに・・・

こんにちは。かのん様。

ううう・・・泣きました(T_T)

精霊が悲しみ苦しみながらも、囚われて水から出られない、出ようともしない。

なら、青年の方から行くしかないのですね。
彼は、自分の想いが自分自身どんなものか分かっていないかもしれない。
形になっていないかもしれない。

ただ、崖の上から、手をこまねいているだけでなく、自ら飛び込んで行った。

想いのままに・・・

そんな彼に、精霊は戸惑いながらも、助け、人間である彼を受け入れるのでしょう。

冷たく冷えきった、その事に本人さえ気が付かなくなっていた精霊の心を暖めたのですから。

青年よ。
安心しなさい!

恐ろしいことなんて起きないからね♪

これから、美しい精霊との薔薇色の日々が待っているよ(≧∇≦)

それは、誰かさんと違って、自らの想いのままに飛び込んだ君への最高のご褒美です(〃∇〃)♪

・・・すみません。
最後は腐腐腐な妄想が駆け抜けていきました。

かのん様の優しく美しい世界が本当に大好きです(^_^)
とても、素敵なお話ですね。

私は、涙と鼻水でびしょびしょになりました(^_^;)

■ 

○たつままさま

こんにちは。
コメントありがとうございました!m(_ _)m

> ううう・・・泣きました(T_T)

え!?
ええ~~~!!
そうなのですか!!!

あああ・・・お言葉に感動して、私の方が泣いてしまいます。
ありがとうございます(TT)

> 精霊が悲しみ苦しみながらも、囚われて水から出られない、出ようともしない。

そうですね。
「出られない」だけではなく「出ようともしない」・・

> なら、青年の方から行くしかないのですね。
> 彼は、自分の想いが自分自身どんなものか分かっていないかもしれない。
> 形になっていないかもしれない。

ああ・・・
そうです。きっと、そうです。

> ただ、崖の上から、手をこまねいているだけでなく、自ら飛び込んで行った。
> 想いのままに・・・
> そんな彼に、精霊は戸惑いながらも、助け、人間である彼を受け入れるのでしょう。
> 冷たく冷えきった、その事に本人さえ気が付かなくなっていた精霊の心を暖めたのですから。

・・・・・・・・・・・・・。

うう・・・
ありがたいです。
ありがとうございます。

・・こんな風に受け留めて下さって、何だかもう、言葉が無いです・・・。

> 青年よ。
> 安心しなさい!
> 恐ろしいことなんて起きないからね♪

あ、たつままさんにそうおっしゃっていただくと、そんな気がして参りました☆
何だか、二人には、明るい未来が待っているような・・

> これから、美しい精霊との薔薇色の日々が待っているよ(≧∇≦)

ば・・薔薇色っ!?

> それは、誰かさんと違って、自らの想いのままに飛び込んだ君への最高のご褒美です(〃∇〃)♪

え~と・・・

> ・・・すみません。
> 最後は腐腐腐な妄想が駆け抜けていきました。

ブハッ!!
そう来ましたか☆☆☆
この世界でも、そちらに持っていける、たつままさんに脱帽です。

腐腐腐なんてそんな・・ちっとも考えませんでした・・。

・・考えなかったのに。

駄目です。
もう駄目です。
脳内に、めくるめく映像が展開され、そこから逃れられなくなってしまいました・・・(T▽T)

> かのん様の優しく美しい世界が本当に大好きです(^_^)
> とても、素敵なお話ですね。
> 私は、涙と鼻水でびしょびしょになりました(^_^;)

突然の嵐のようにやってきて、一気に書き上げたこの世界を、こんな風に読んで、思って、感じて下さって・・
私は本当に幸せ者です・・・(つ;)

本当に、ありがとうございました・・・!

コメントの投稿



管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

■この記事のトラックバックURL

⇒ http://kanon23.blog36.fc2.com/tb.php/444-988af6f1

この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

■この記事へのトラックバック

 | BLOG TOP |