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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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第8話:仮初


これまで、学生や、本好きの老人等が、ぽつぽつと訪れる程度だった、青木の店が。
急に、引きも切らず、客が訪れるようになった。

目当ては、本ではない。
本を開くフリをしながら、皆、店の手伝いをする、アキの姿を追っているのだ。

アキが、本を携え右に行けば、客達も、それとなく右に集まり、アキが、ホウキを手に左に行けば、それとなく客達も左に移動するといった具合だ。

「あなたは、いいんですよ。そんなことをしなくても」
「でも、それでは、私の気が治まりません。何か、青木様のお手伝いをさせて下さい」

そんなやりとりの末、青木は、店の掃除や本の整理を、アキに手伝ってもらうようになった。
アキは、最初は、ハタキの使い方さえ知らなかった。
記憶を失ったからというだけではなく、家では女中を使い、掃除などに手を出さない生活を、していたのかもしれなかった。

最初は、何をやるにも不思議そうだったアキだが、青木がやって見せると、見よう見まねで、それを手伝った。
「いいですね。とても上手です」
青木が褒めると、アキは、頬を紅潮させ、嬉しそうに微笑むのだった。

生来飲み込みが早い気質なのか、アキは、次々と物事を覚えていった。
かくして、アキはいつの間にやら、店の看板娘となっていたのだが。

大方の客は、アキの姿を遠くから眺めるだけだったが、中には、
「お嬢さん。この本をいただきたいんだがね」
言いながら、それとなく、アキの手に触れる輩も居た。

青木は、そんな場面を見ると、飛んで行った。

「こちらですね。お預かりします」
そう言って、本をひったくるように受け取ると、
「ここは良いから。奥の掃除を頼みます」
アキに言い、その場を下がらせるのだった。

結果的に、青木は、かえって仕事も気遣いも増えて仕方が無かったのだが、それでも、アキが傍に居ることに、日毎に喜びを感じるようになっていった。

様々な噂も、飛び交った。

「一体、どこの娘さんだろうね」
「あの身のこなしに、品のある雰囲気。華族様の流れを組むのじゃなかろうか」
「だが、華族様の身内だったら、大々的にお探しになるだろうに」

「あの顔だ。異人の血を引くのではないか?」
「ハーフというやつか」
「もしかすると、道ならぬ恋によって生まれ、隠し子として生きてきたのかもしれん」
「まさに、深層の令嬢というやつだな」

「あるいは、アキさん自身が、道ならぬ恋に落ちたのかもしれぬぞ」
「うん?」
「身分違いの男と、駆け落ちをする筈だったが、何かの手違いで叶わず、そのまま記憶を失ったということかもしれない」
「おお。なる程。それなら、家族は醜聞を恐れて、思うように探せないということもあるな」

記憶を失った、美しい娘。
それは、いくらでも噂の種になり得た。

噂は、しばしば、青木の耳にも届いた。
「駆け落ち・・か」

そういうことも、あるかもしれない。
青木は、そんなことを思った。

駆け落ちとまでは行かなくとも、いいなずけが居るということは、充分にあり得る。

「オレは、かりそめの同居人に過ぎない」
当たり前のことを、何度も自分に言い聞かせた。
・・言い聞かせねばならぬ程、アキの存在が、青木の中で、大きくなっていった。

青木は、ある決意をし、ある日、店を閉めると、アキに、話があると言った。

畳の上に、アキはきちんと正座して、青木の話を待っている。
ピンと延びた背筋。
すくっと上げた、白く細い首。

その上に乗る、あまりにも出来すぎた顔の造作に、青木は改めて見入り、そして、目をそらした。
青木は、アキの向かいに座り、話し始めた。

「・・隣り町に、知り合いがやっている呉服屋があります。そこの女将さんが、働き手が足りないと、いつも言っていました。・・良かったら、そこに、移り住みませんか?」

「!!・・・」
青木の言葉に、アキは、驚いた表情で、青木を見上げる。

「仕事を覚えるまでは大変でしょうけれど、あなたなら、立派にこなせると思う。あそこは、女将さんもいい人だし、常客の顔ぶれも悪くないから、心配ないでしょう。それに・・」
青木は、言葉を継いだ。

「あの夫婦は、息子さんを戦地で失っているんです。他に子供は無く、跡取りを欲しがっている。あなたの話をしたら、かなり乗り気になっていました。女将さん達に気に入られれば、あなたを、養女にしてくれるかもしれません」

「・・・・・」
娘は、黙って下を向き、青木の話を聞いている。

「こんなことは言いたくないけれど・・あなたの記憶が戻るという保証は無い。もしかしたら、ずっとこのままかも・・。だとすると、いつまでも、ここに居るわけには、いかないでしょう」

「・・青木様は、私が、お邪魔なのですか?」
やっと出てきたアキの声は、微かに、震えていた。

「青木様は、私がここに居ることが、ご迷惑なのですね?」
「そういうわけでは・・。ただ、あなたは若い女性だし、オレのような者と居ても、いいことは無いでしょう。先のことを考えたら・・?・・アキさん?」

青木は、その時になって、アキの膝に、ぽつん、ぽつんと、落ちる滴に気が付いた。

「・・私は・・ここに居させていただいて、充分幸せでございます。・・でも、青木様にとっては、そうではなかったのですね。いえ、当然です。青木様は、記憶を失って途方に暮れていた私を、どこの馬の骨とも分からない私を、助けて下さいました。・・それだけで、私は・・・」

言いながら、アキの膝に、滴がこぼれていった。
「アキさん・・」

青木は、戸惑いながらも、アキの傍へと近付いた。
アキの肩に、そっと手を触れると、アキは、青木に顔を見せまいと、片手を添えた首を、後ろへと向けた。
白い首筋が、青木の目に入る。

「・・・もし、アキさんがよろしければ」
青木は、そのままの姿勢で、アキに話しかけた。

「今度の話は無かったことにして、もう少し・・こちらに居ていただいても、いいですか?」
青木の手が乗る、アキの肩が、ピクンと震えた。

「あなたのせいで、店は大繁盛だ。今出て行かれては、オレの方が困ってしまう。だから・・」
「・・・・・」
アキは、顔を向こうに向けたまま、黙っている。

「もう少し・・いえ、あなたの記憶が戻るまで。いつまででも。ここに・・ここで、オレの手伝いを、してくれませんか?」

こくん・・と、アキはうなずいた。





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コメント

■ 白いうなじ(〃∇〃)♪

おはようございます。かのん様♪

きゃ~(≧∇≦)
二人の様子が、まるで新婚さんみたいですね~♪♪♪

アキさんすっかり看板娘ですね☆
そこに群がる男性客!
青木が気が気でない様子が楽しいです(^▽^)v

青木、アキさんを手離しては行けません!!!
しっかり捕まえて離さないで下さい\(^▽^)/

幸せになって下さいね(≧∇≦)

きゃ~きゃ~きゃ~☆☆☆

まきさ・・じゃないアキさんの白いうなじ~~~(〃∇〃)

泣いている顔をそむける・・・階段のあのシーンを思い出しました(≧∇≦)

はぁ~色っぽい・・・
何だか、いい匂いが漂って来そうですね♪
うふふふふ(〃∇〃)

いや~ん。
青木様だって・・・
「青木!!!」って呼び捨てしていいのに(^▽^;)

とっても幸せな青木様が羨ましいです・・・(≧ε≦)
「チッ。青木め」

この二人の今後が気になります♪
続き、楽しみにしております(^_^)v

■ 

○たつままさま

こんにちは。
コメントありがとうございます!

毎日毎日、お忙しい中、読んで下さるだけで嬉しいですのに、欠かさずコメントまで、ありがたくも申し訳なくもありがたいです(><。。)

> きゃ~(≧∇≦)
> 二人の様子が、まるで新婚さんみたいですね~♪♪♪

うふふ♪
二人の初々しさに、書きながら私も新鮮な気持ちになっておりました(^^)

> アキさんすっかり看板娘ですね☆
> そこに群がる男性客!
> 青木が気が気でない様子が楽しいです(^▽^)v

あ、楽しんでいただけて嬉しいです☆
青木、困れ困れ(笑)

> 青木、アキさんを手離しては行けません!!!
> しっかり捕まえて離さないで下さい\(^▽^)/
> 幸せになって下さいね(≧∇≦)

たつままさんのエールがとても嬉しいです。
ありがとうございます。

> きゃ~きゃ~きゃ~☆☆☆
> まきさ・・じゃないアキさんの白いうなじ~~~(〃∇〃)
> 泣いている顔をそむける・・・階段のあのシーンを思い出しました(≧∇≦)

私も書きながら、このシーンどこかで・・と、またもデジャヴを味わっておりました(^^;)

あの美しいシーンに重ねていただくなんて、とても光栄です。

> はぁ~色っぽい・・・
> 何だか、いい匂いが漂って来そうですね♪
> うふふふふ(〃∇〃)

ここから色っぽさを感じ取っていただけるとは・・たつままさんの感受性に、本当に感謝致します。

> いや~ん。
> 青木様だって・・・
> 「青木!!!」って呼び捨てしていいのに(^▽^;)
> とっても幸せな青木様が羨ましいです・・・(≧ε≦)
> 「チッ。青木め」

あはは☆(^^)

「チッ。青木め」このセリフ、いいですよね!

> この二人の今後が気になります♪
> 続き、楽しみにしております(^_^)v

ありがとうございます。
週末は更新が出来ないと思いますので、とりあえず、明日は、もう1話、UP致します。
よろしくお願い申し上げます!m(_ _)m

■ 

○3/25に鍵拍手コメ下さったMさま

続けてのコメント、ありがとうございます!
たぶん、読書のスピードは速いであろうMさんが、一話一話、丁寧に読んで下さっているようで、ありがたく思いますm(_ _)m

どきどきしていただき、とても嬉しいのですが、読み進むうちに、ガッカリされないと良いのですが・・と、こちらがどきどきしております(><)

アキさん、けなげでしょうか。
原作の薪さんもって・・うう・・(涙・涙・・・)

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