カウンター


プロフィール

かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

リンクは嬉しいので、ご自由にどうぞ♪


当ブログ拍手頁

最新の公開拍手コメのレスはこちら それ以前の公開拍手コメ&レスは、各記事の拍手ボタンを再度押していただければ読めます 鍵拍手コメにつきましては、拍手をいただいた記事下コメント欄にレスを書いております

所属してます♪


月別アーカイブ


最新記事


最新コメント


検索フォーム


 
第10話:葛藤


掃除をしていて、出てきたそれを手に、アキは言った。
「これ・・」

「ああ。懐かしいな。捨てればいい物を。こんな所に取っておいて・・」
青木は、アキから軍服を受け取り、目を細めた。

「銃は軍に返し、靴やベルトは、初年兵達に譲ってしまった。だが、これだけは残っていた・・」
「青木様は、軍人さんだったのですか?」
青木は微笑んでうなずくと、急に真面目な顔になり、言った。

「・・そうですね。一度、きちんと話しておいた方がいいかもしれません」

その夜。
店を早仕舞いし、夕食も終え、青木は、アキに向かって話し出した。

「オレは、幼い頃から、本が好きで、勉強が好きでした。でも、先の学校に進むには、オレの家は、それ程裕福ではなかった。町に出て、書生になる道もありましたが・・オレは、軍隊に入ることに決めました」

青木は思い出す。
村の皆が、自分を祝ってくれたことを。

『子供の頃から、優秀だったからねえ』
『士官学校に入るんだろう?』
『大したものだよ。親父さん達も、鼻が高いだろうね』

「・・実際、親父は、オレが町に出てからも、ことあるごとに、オレの自慢話をして歩いていたそうです」
青木の言葉に、アキは、穏やかに微笑む。

「・・でも、お袋は違いました。オレが軍人になると言っても、あまりいい顔はしなかった。きっと・・オレのことを心配してくれているのだろうと。町に出る前に、話があると言われた時も、きっと、自分の身を守れと、そう言われるのだろうと思って・・」

「もちろん、オレには、軍に身を置くからには、お国の為にこの身を捧げる覚悟がありました。でもきっと、お袋はそれを母親として嘆くのだろうと・・オレは、そんなお袋に心配を掛けぬよう、慰めねばと、そう思って・・」

そして・・母に投げかけられた言葉は、青木にとって、予想外のものだった。

「・・お袋は、オレに言いました・・人を、殺さないでくれと」
「!・・」
青木の言葉に、アキは、目を上げた。

「てっきり、死なないでくれと言われるのかと思ったら、その逆だった。オレはもちろん反論しました。敵が居たら、迷わず手に掛けると・・それが国を守る為だからと。やらなければ、やられる・・そこまで言っても、お袋は言いました。それでもいい。殺すよりは、殺される方がマシだと・・」

「オレは衝撃を受けました。母の言っている意味が、サッパリ分からなかった」
青木は、話しながら、アキを見つめた。

「・・今なら、お袋の気持ちも分かります。お袋は、オレに、人殺しになってほしくなかった」
アキは、じっと黙ったまま、青木の話を聞いている。

「こんなこと、今までに、誰にも話したことはありません。他人に知れれば、非国民とののしられ、密告されたことでしょう・・オレは、お袋の話は聞かなかったことにして、村を離れました」

「・・軍での生活にも、一つも迷いは無かった。自分がやっていることは、正しいのだと信じていた。そう・・あの事故に合うまでは・・」
「事故?」
アキが、聞き返した。

「オレは、一度、遭難事故にあったことがあるのです」
「・・・・・」
アキは、また口をつぐんだ。

「・・あの日。オレは、炭鉱の下見に、山を訪れていました。帰る前に、吹雪に遭遇した。すぐに止むだろうと思い、小屋に避難していました。ところが・・」

青木は、束の間、沈黙した。
そして・・

「・・気が付いたら、オレは、病院のベッドに寝かされていました。帰りの遅いオレたちを心配して、役所の人達が、迎えに来てくれたのです。吹雪が去った小屋の入り口で、オレは気を失って、倒れていたそうです。同行していた郡役所の河村さんは・・1里も離れたところで、凍死していました・・」
青木は一度、目をつぶった。

「・・オレは、凍傷に掛かっていましたが、大したことは無かった。・・でも、病院の検査で、肺に、病気のあることが分かったのです」
青木は、自分を見つめているアキと目を合わせた。

「それまで、丈夫なことが取り柄だった自分が、まさかそんな病に侵されているとは、思ってもみませんでした。・・一年、療養所暮らしをしました。身体は回復したけれど、病気持ちが軍に居るわけにはいきません・・。オレは、自ら除隊を申し出ました」

青木は、静かに話し続ける。

「故郷の村には、顔向け出来ませんでした。除隊よりも前に、親父は病気で亡くなりましたが・・。お袋の元には、既に姉夫婦が住んでいましたから・・オレは、町に残る道を選びました」

「懇意にしていた、この店の親父さんに気に入られ、住み込みで働くうちに、親父さんが亡くなり、そのまま店を続けています」

話は、ひとまず終わったかのように見えた。
だが、青木がアキに話したかったのは、ここからだった。

青木は、一つ深呼吸をすると、再び話し始めた。

「・・今思うと、あの時、病気が発覚して、良かったのかもしれません。事故に合ってから、オレは、迷うようになりましたから」
「迷う・・?」

アキに聞かれ、青木は遠い目をしながら、答えた。
「それまで、オレは、何も迷わなかった。お袋の言葉も分からず、ただ前を見て、突き進んでいた。けれど、あの日・・あの事故の日から、本当にそれでいいのか、自分は、人の為に、国の為にやってきたと信じてきた、果たして本当にそれでいいのかと・・!」

声が、上ずってきた。
アキには、愛想を付かされるかもしれない。
そう思っても、言わずにはいられなかった。

「あらゆることが、信じられなくなりました。軍に入ったことも。自分の生きてきた道も。何もかも。迷って、悩んで、苦しんで・・オレの心は、引き裂かれ、ぼろぼろだった・・!」

「除隊の理由は、病気だと言ったけれど、本当は違う。病気はきっかけに過ぎません。オレは、己の生きる道を、見失ってしまったのです!・・・」

青木は、頭を抱えていた。
あの日から、全てが分からなくなった。
今もなお、何が正しいのか、一つも分からない。

「・・・・・」
手で顔を覆い、押し黙った青木を見て、アキも、ただ、黙っていた。

・・しばらくして、青木は言った。
「情けないでしょう? オレは、こんな人間なんです。迷ったあげく、何一つ答えを得られず。ただ、もがき苦しむだけで・・」

青木は、アキの顔を見ることが、出来なかった。
きっと、自分という人間に、幻滅しているに違いない。

「青木様は・・間違っていないと思います」
アキの小さな、しかしハッキリとした声が、聞こえた。

青木は、顔を上げた。
アキは、そこに正座したまま、青木をじっと、見つめていた。

「確かに、己の道を信じ、突き進む生き方も、美しいとは思います。でも・・」
青木も、アキを見つめていた。

「でも、それまでの行いを振り返り、迷い、悩み、苦しむ・・。そんなことが出来る人は、そう多くありません。私は、そんな青木様が・・」

アキは一度言葉を切り、そして、続けた。
「そんな青木様だから、信じられるのでございます」

青木は、何も言えなかった。
だがアキは、そんな青木に、微笑みながら、うなずいて見せた。





関連記事

コメント

■ 頑張れ!!!

こんにちは。かのん様♪

軍服を脱いだ青木にこんな葛藤があったなんて・・・

人生を変えてしまう程の出来事だったのですね。

なんと言っても、山の神様にお逢いしたのですから(≧∇≦)

日本の進む道。
自分の進む道。
命の重み。

すごく苦しい葛藤があっから
世間知らずの文学青年か、
隠居したおじいさまのような生活(←失礼しました)を送っていたのですね♪

いろいろ悩んで下さい。それが若さです(^_^)v

あの後、青木は、戸口で倒れていたのですか。

きゃっ☆
小屋で素っ裸で失神していたわけではなかったのですね(≧∇≦)←またまた失礼しましたm(_ _)m

ドキドキ☆
青木の告白はまだまだ続くのですね(≧∇≦)

アキさんとの関係がどうなるのか?

続き、お待ちしております♪♪♪

■ 

○たつままさま

こんにちは。
コメントありがとうございます!!

> 軍服を脱いだ青木にこんな葛藤があったなんて・・・
> 人生を変えてしまう程の出来事だったのですね。
> なんと言っても、山の神様にお逢いしたのですから(≧∇≦)

「軍服を脱いだ」という表現を、一瞬違う意味に捉えてしまった私をお許し下さい・・(笑)

そうですね・・大きな出来事だったようです。

> 日本の進む道。
> 自分の進む道。
> 命の重み。
> すごく苦しい葛藤があっから

さすがですね・・・
私が長々と書いてきたことを、ピタリと的確に言い当ててしまうたつままさん・・読んで受け止めていただいていることが分かり、本当にありがたく思います!(TT)

> 世間知らずの文学青年か、
> 隠居したおじいさまのような生活(←失礼しました)を送っていたのですね♪

まさしくそんな感じですね(笑)

周囲の人達とのやりとりには、世間知らずな印象を抱かせる反面、どこか老成した部分もあるという・・

私の抱く「青木」という人物像が、こんな感じなのかもしれません(^^;)

> いろいろ悩んで下さい。それが若さです(^_^)v

「青木には、悩んでほしい」そんな個人的な願望が、今回のお話には現れているのかもしれません・・・

> あの後、青木は、戸口で倒れていたのですか。
> きゃっ☆
> 小屋で素っ裸で失神していたわけではなかったのですね(≧∇≦)←またまた失礼しましたm(_ _)m

ぷはは☆(^^)
どんな状態でいたか、次回、もう少し詳しく出て参ります。

> ドキドキ☆
> 青木の告白はまだまだ続くのですね(≧∇≦)
> アキさんとの関係がどうなるのか?
> 続き、お待ちしております♪♪♪

欠かさず読んでいただき、コメントまで・・本当にありがたくて頭が下がります・・m(_ _)m
どうもありがとうございました!!

コメントの投稿



管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

■この記事のトラックバックURL

⇒ http://kanon23.blog36.fc2.com/tb.php/490-bb96ab45

この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

■この記事へのトラックバック

 | BLOG TOP |