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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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第12話:初夜


ささやかな祝言が、とり行なわれていた。

花嫁、花婿、どちらの身寄りも、一人も姿を見せてはいなかった。
花婿は、実家が離れていて、この日までに家族を呼び寄せることが出来なかったこと、そして花嫁は、記憶を失い、家族の居場所すら分からないことが、その理由だった。

「青木、もっと飲めよ!」
花婿の青木は、周囲を友人達に囲まれ、次々と酌をされ、飲まされていた。

「アキさんも、どうですか?」
「いえ、私は・・」
花嫁のアキは、岡部の酌を、やんわりと断わった。

いつものハカマ姿ではなく、この日は、呉服屋の知人に好意で贈られた、白い着物を身に着けている。
その姿に、青木は隣りに佇むアキを見ては、頬を緩め、アキは、そんな青木の視線に気付いて、微笑んだ。

身寄りが居ないその代わり、周囲の店の者達、町の友人、知人、店の常連客等が集まり、二人の門出を祝っていた。

「落ち着いたら、共にオレの故郷に、顔を見せに行きましょう」
青木はそう、アキに話しておいた。

悩み続けた夜が明けた、その日。
青木は、アキに結婚を申し込んだ。

「アキさん、オレと結婚して下さい」
青木の言葉は、飾り気の無い物だった。

「・・・・・」
アキは、最初は言葉も無く、瞳を潤ませ、青木を見上げていた。

「あなたがどこの誰であるか、そんなことは、関係ない。今、目の前に居るあなたに、オレの人生の伴侶となり、これからの時を、共に過ごしていただきたいのです」

「・・はい」
アキは、いつものように、短く一言、そう答えた。

青木は、ことの次第を、実家に手紙で書き送った。
電報でなく、あえて手紙にしたのは、字数に関係なく、詳しく説明したかった為、そして同時に、時間を稼ぐ為でもあった。

一体どこの誰なのか、出生の分からぬ女性と結婚するとなれば、家族は当然、反対するだろう。
アキがどれ程の娘であるのか、実際に会えば分かることだが、手紙でいくら長々と説明したところで、それが伝わる筈も無かった。

故郷の家族や親類が、手紙を受け取り、こちらを訪ねようとした時には、もう祝言を挙げた後。
青木は、それを計算に入れていたのだ。

とりあえず祝言はとり行なう、そちらには、後から二人で訪ねるからと、そう書き送ったが、果たして、それで家族が納得しているかどうかは、分からない。

勝手に除隊して、勝手に町で商売を営んでいる、不肖の息子だ。
もうとっくに、オレのことは、母親も親類も、諦めているかもしれない。
そう思う青木だった。

祝言の夜。
青木とアキは、家で、二人きりとなった。

その夜は、ことに冷え込み、空気が凍てつくようだった。
だが、家の中では、火鉢の火が赤々と燃え、二人は身を寄せ合い、互いの腕の温かさの中に、居た。

「青木様? ・・何をお考えでいらっしゃいます?」

青木が、アキを腕に抱き、アキの顔を見つめているようでありながら、その目がそこを通り過ぎ、何か別の物を見ていることに、アキは気付いたようだった。

「・・・・・」
青木は、この日のアキを、改めて眺めた。

白い着物をまとったアキは、いつも以上に、あの男を、思い起こさせる。
腕に抱く身体からは、あの男と同じ匂いが、立ち昇っているようにすら、感じた。

青木は一度、アキを腕から離し、頭を抱えた。
「・・青木様・・?」
アキが、戸惑ったように、青木を見つめた。

青木は、もう、あの男のことを思い悩む自分と、別れを告げようと決意して、アキに結婚を申し込んだ。
祝言までの日々、準備に追われるアキは、益々美しさと輝きを増し、青木は満足して、それに見入った。

そう・・満足していた筈だった。
なのに・・

「アキさん・・」
「はい」
打てば響くような、アキの快い返事。
青木は、愛しさと共に、アキを見つめた。

その手を伸ばし、青木は、アキの頬を、そっと撫でる。
手に吸い付くような、滑らかな、その肌。

「青木様・・?」
大きな瞳を、こぼれるかのように見開いて、青木を、不思議そうに見つめる、アキ。

自分は、アキと共に生きていくのだ。
これから、一生・・・

ここで、振り切らねばならない。
全てを。

青木は、じっとアキと見つめ合ったまま、口を開いた。
「アキさん、あなたに、話しておきたいことがあります」
「話?・・」

あれは全て、夢だったのだ。
今度こそ、自分にそう、納得させねば、ならない。

アキと共に、未来を歩む為に・・・・

「以前・・オレは、吹雪の中で遭難しかけたと、そう、話しましたね」
「はい・・」
「その時のことで、まだ、話していないことがあるのです」
「・・・・・」

アキの顔が、何ごとかと、こわばったように、見えた。
青木は、構わず、話し続ける。

「あの日、オレは、吹雪の中、小屋の入り口に立っている人影に・・気付きました」
話し始めると、それは自然に、こぼれ出てきた。

「それは・・とても美しい人でした。そう・・ちょうど、アキさん、あなたのように。オレは、その人に出会ったことで、生き方が変わってしまったのです」

「・・夢だったのかもしれません。いえ、夢だったのでしょう。吹雪の中で死線をさ迷ううちに、不思議な夢を見たのです。きっと・・自分でも気付かなかった、心の奥底で眠る惑いが、無意識のうちに膨れ上がり、あのような夢になったのかもしれません・・」

「でも・・オレにとっては、夢とは思えない程、鮮烈でした。今日この日まで、オレは、その夢に、囚われてきました」

「でも、今日オレは、その夢と、決別しようと思います。アキさん、あなたと、共に生きる為に。あなたと二人で、新しい未来を、歩んでいく為に・・・!」

青木は、話し終えると、深い深い、ため息を付いた。
終わった・・
今度こそ、終わったのだ。

あの男の夢は全て忘れ、新しい日々を生きよう。
今、自分にはアキが居る。
もう、あの夢に、すがらなくても、生きて・・いける。

しばらく、沈黙が二人を包んだ。
青木は、改めてアキを見つめた。

アキは、その場に正座したまま、下を向いている。
「アキさん・・」

青木が、アキの手を取ろうとした、その時・・・

「・・何故、話した」
アキの声が、聞こえた。

「え?・・今、何と?・・」
青木が聞き返すその声に、またも、アキの声が重なった。

「何故、話したのだ」

それは、いつものアキの声では、無かった。





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コメント

■ ぎゃ~!!!

こんばんは。かのん様!

ああっ!!
良かった(^_^)v
青木は、アキさんに求婚したのですね♪♪

周囲の皆に祝福される主役の二人。
白い着物に身を包み、更に美しさを増したアキさんとそんな彼女に見とれる青木。
微笑み合う二人。

そんな幸せな光景がハッキリと目の前に浮かんできました(≧∇≦)

これで二人は一緒になり、ずっと幸せに・・・
幸せに・・・

なのに・・・

ぎゃ~!
どうして!!
青木のばか!!!

いえ、誠実な青木のことですから。
過去と決別して、アキさんの事だけを想っていこうとする決意の表れなのでしょう。

分かります。分かりますけど・・・言わないでほしかったです(T_T)(T_T)(T_T)

世間に認められ、やっと二人で幸せに暮らせると思ったのに。

「何故話したのだ。」
私も同意見です(T_T)(T_T)(T_T)

今回の題名を拝見して、
良かった♪無事に結婚して夜を迎えられるのね(≧∇≦)
と単純に思ってしまいました・・・

お願いします!
山の神様、どうか青木の言葉は聞かなかったことにして下さいっ!!

青木は、求め続けた光を自らの手で失ってしまったら、もう生きては行けないのでは・・・

この後どうなるのでしょう・・・(T_T)
続きお待ちしておりますm(_ _)m



こちらに失礼します。
ぎゃ~コハルさん!!私は美しい言葉なんか使えません!!

ストーカーのごとく、かのん様のところにうろうろしているだけです。
皆様のお邪魔をしていたらすみませんm(_ _)m

■ 

○たつままさま

こんにちは。
コメントありがとうございます。

コメント、拍手コメント共、レスがすっかり遅くなってしまい、申し訳ございませんでしたm(_ _)m

> ああっ!!
> 良かった(^_^)v
> 青木は、アキさんに求婚したのですね♪♪

悩んでいた筈なのに、次の場面では既に婚約・・
意図したわけではないのですが、どこかの誰かみたいな展開に・・・

> 周囲の皆に祝福される主役の二人。
> 白い着物に身を包み、更に美しさを増したアキさんとそんな彼女に見とれる青木。
> 微笑み合う二人。
> そんな幸せな光景がハッキリと目の前に浮かんできました(≧∇≦)

思い浮かべていただき、とても嬉しいです。
ありがとうございます!

> これで二人は一緒になり、ずっと幸せに・・・
> 幸せに・・・
> なのに・・・
> ぎゃ~!
> どうして!!
> 青木のばか!!!

すみませんすみません!!
ベースが日本昔話だったもので、このような展開に・・(><)

> いえ、誠実な青木のことですから。
> 過去と決別して、アキさんの事だけを想っていこうとする決意の表れなのでしょう。
> 分かります。分かりますけど・・・言わないでほしかったです(T_T)(T_T)(T_T)

口に出さずとも、心の中で決まりを付けることは出来なかったのでしょうか・・?
・・と、書いている私も思いました。

> 世間に認められ、やっと二人で幸せに暮らせると思ったのに。
> 「何故話したのだ。」
> 私も同意見です(T_T)(T_T)(T_T)

あああ・・・
泣かないで、たつままさん・・(TT)

> 今回の題名を拝見して、
> 良かった♪無事に結婚して夜を迎えられるのね(≧∇≦)
> と単純に思ってしまいました・・・

すみません。
内容の予測がし辛いサブタイトルになるのは、私の癖のようです・・・

> お願いします!
> 山の神様、どうか青木の言葉は聞かなかったことにして下さいっ!!

あああ・・・すみませんすみませんすみません・・・

> 青木は、求め続けた光を自らの手で失ってしまったら、もう生きては行けないのでは・・・
> この後どうなるのでしょう・・・(T_T)

続きを待ち続けていただき、本当に励みになりました。
なのに、たつままさんには、驚かせ、泣かせてしまい、もう本当に申し訳なく・・

コハルさんへのメッセージですが、たつままさんのお言葉、美しいです。
いつも素敵なコメントで記事を彩って下さり、本当に感謝しております。

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