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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
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Scene8:絶望


そんなつもりじゃなかった。
薪さんを、追い込むつもりじゃ・・

オレは、ただ・・・

「青木!おい!」

青木は第九に戻り、宇野と共に報告書に取り組んでいた。
とにかく、目の前の仕事をこなさねばと、自らその中に没頭しながら、心のどこかが、浮遊していた。

そんな時、呼びかけられると同時に肩を叩かれ、青木は我に返った。

「岡部さん・・」
青木は振り返り、背後に立つ相手を見上げる。

「薪さんは落ち着いたぞ。心配するな」
岡部は、青木の顔を見て、そう言った。

「・・・・・・」
青木は、無言で視線を落とした。
胸の中を、何とも複雑な思いが、漂っていた。

「オレは、先に帰る。お前も、報告書が仕上がったら、帰っていい」
「・・薪さんは」
「薪さんは、今夜は、オレのところに泊まってもらうことになった」

岡部の言葉に、青木は再び視線を上げる。
「え・・」
「薪さんは、今日はもう、仕事には戻れんだろう。かと言って、医務室に一人で置いとくわけにもいかん」
「だったら、オレが・・」

「青木」
青木の顔を見て、岡部は小さくため息を付くと、続けた。

「こんな言い方をしたくは無いが・・。今の薪さんにとって、お前はまだ、共に捜査をしたことのない・・言わば、見知らぬ人間なんだ。お前と同じ部屋に住んでいる話をしても、信じられない顔をしていた。今、自分のマンションに帰っても・・・」

「ですが・・!」
反論しようとする青木を、岡部は、片手を挙げて制した。
「これは、薪さんの希望でもあるんだ」

「薪さんの・・」
言葉を呑み込む青木に、岡部は言う。
「そうだ。薪さんが望んでるんだ。とにかく、今夜は、オレのところに泊める」

「・・・・・・」
青木は、片手で額を押さえた。

そんな青木を見て、岡部は静かに言った。
「いいか、青木。焦るな・・。薪さんは、今日病院から出てきたばかりだ。薪さんだって、戸惑ってる。オレ達もそうだ。互いに、少しずつ、この状況に慣れていくしか無いんだ」

「記憶を失っても、薪さんは薪さんだ。変わりは無い。だからオレ達も、これまで同様、これまで薪さんに接してきたように、薪さんのもとで、薪さんの部下として、最善を尽くすしか無いんだ。・・分かるな?」


************


青木は一人、マンションに辿り着いた。
ロックを外し、中に入る。

足が、重い・・・・。

廊下を抜け、リビングに入ると、コートを着たまま、ソファーに座り込んだ。
そして・・両手で顔を覆った。

やっと気付いた。
何が、心に引っ掛かっていたのか。
胸の奥を、風が吹きすさぶのは、何故なのか。

・・いや、本当は、とっくに気付いていたのかもしれない。
薪が病室で目覚めた、あの時に。

気付いていながら、気付かないフリをしていた。
その事実から、目をそむけていた。

認めたくなかった。
そう・・薪が、自分と過ごした日々を、その全てを、忘れてしまっていることに・・・・・・・・!

「薪さん・・」
聞こえたその名前が、自分の口から出たことに、後から気が付いた。
その名前に、響きに、愛しさが込み上げた・・・・

「薪さん・・!!」
そして・・その名を持つその人が、薪の姿が、鮮やかに浮かんだ。

先輩達の声が、次々に聞こえる。

『オレ達だって、今の薪さんにしてみれば、第九に配属されて、たったの5か月なんだ』
5か月・・5ヶ月もの期間が、薪の記憶に残っているではないか。

『薪さんは、部下のことは、ちゃんと見てくれる人だ。これまで同様、仕事をこなしていれば、お前の実力は、分かってもらえる』
そう・・ただの部下としてならば、それでもいいだろう。

『一から、やり直せばいいんだ』
一から・・薪との6年間を、一からやり直す?
そんなこと、出来るわけが無い・・・!

『記憶を失っても、薪さんは薪さんだ。変わりは無い』
変わりは無い・・?

違う!・・違う!
今の薪さんは、オレが愛した薪さんじゃない。
オレを・・愛してくれた薪さんじゃない・・・・!!

『・・分かるな?』

分かるものか!
何一つ・・・分かるものか!!

・・目を上げると、すぐそこに・・ソファーに座って本を読む、薪の姿が見えた。
更に視線を上げると、窓辺に立ち、外を見上げる薪が。

青木は、ふらふらと立ち上がる。

ダイニングの向こうに立つ、薪。
デッキに佇む薪。
脱衣場で支度をする薪。
バスルームでシャワーを浴びる薪。

行く先々に、薪が居た。

薪の・・寝室を開けた。
薪が居ない時に、青木が勝手にその部屋に入ることは無かった・・いつもなら。

ベッドに座る薪は、微笑んでいる・・・・・・。

青木は、その残像の中に、飛び込んだ。
薪のベッドに横になり、天井を見上げた。

いつの間にか、こぼれていた物が、目から耳へと、あとからあとから伝っていく。

「うっ・・くっ・・」
そして、嗚咽が漏れ始めた。

薪は、ここに居ない。
たとえ居たとしても、その薪は、自分を知らない・・!

どこにも居ない。
愛し合った薪は、この世の、どこにも居ない。

深い絶望が、青木を襲う。
胸を渦巻く風の向こうに、黒々とした深淵が見えた・・・・・・

そして同時にその胸を、焼け付くような痛みが走る。

今の薪が、誰のもとに居るか。
薪が心を託し、その手を伸ばし、すがっている、その相手・・

分かっている。
今の薪には、自分では駄目なのだ。
今の薪にとって、必要な人であり、そして、薪の為には、その存在に感謝すべきだと。

分かっている・・・。
分かっていながら、ぐつぐつと、煮えたぎるようなその思い。

岡部だけではない。
今井も、宇野も、曽我も、小池も・・
皆、薪と共に過ごした日々を、薪に記憶されている。
そのことが、妬ましくて、たまらない・・

そしてもはや、第九の人間だけではなく。
薪の中に残っている、記憶されている全ての人間が、憎い・・・・!

「ううっ!・・あああっ!」
今や青木は、顔を覆い、声を上げて泣いている。

それは・・生まれて初めて芽生えた感情。

氷のような絶望と。
炎のような嫉妬の嵐。

胸に吹き荒れるその風は、身体にその苦しみを伝え、指先までが、しびれ、震え。

青木は、薪のベッドの上で。
薪の残り香に包まれながら。

そのベッドに涙の滴を。
浸み込ませていくばかりだった。





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コメント

■ 

○4/18に鍵拍手コメ下さったMさま

きゃああああああっ!
こ・・ここにも倒れた方がっ!!(TT)

すみませんすみませんっ!(><)

>愛する人の存在はそこにあっても、心は自分にないというこの残酷さ・・・。

優しいMさんが辛い思いをなさっていると思うと・・本当に申し訳ございません(><)
でも、こんな風に読んでいただけることは、ありがたく嬉しいです。

初回からずっと読んで下さっているとのこと、どうもありがとうございます。

そして・・何だか本当にもう色々と申し訳ございません・・。

コメントとても嬉しく拝見致しました!
ありがとうございましたm(_ _)m

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