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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
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Scene11:事実


自分が、青木と共に住んでいることを、岡部から聞かされた時、薪は最初、信じられなかった。

「・・何故?」
「お互いの利害が一致したと、そう、薪さんはおっしゃってましたよ」
自分が説明したという理由を、薪は岡部から聞かされたが、それでも薪は、納得することが出来なかった。

自分が、部下と共に住む。
家族でも何でもない人間と。
どうしても、想像することが出来ない。

それは、職場からそう遠くない、防犯システムも優れた、快適なマンションだったが。
それでも、自分が以前住んでいた場所から出る理由には、至らないように思えた。

何が自分を、そうさせたのだろう・・・

マンションへ向かう道すがら、青木本人にも尋ねたのだが、岡部が言っていたことと、同様の理由しか出てこない。
「そんなことで? それで、僕とお前は、同じ部屋に住むことになったのか?」
「・・・はい」

「上司との同居では、彼女や友人を、部屋に呼ぶことさえ、気を遣うだろう」
「・・・オレは、部屋に誰かを呼んだことは、一度もありません。呼ぼうとも思いませんし」
青木は、やや、むっとした表情で言う。
第九の勤務状況では、彼女や友人と付き合うことも、ままならないのだろうか。

何か、青木が隠しごとをしているのではと、薪は、そうも思ったが。
これまでの印象では、青木のことを、表情が豊かで、分かり易い男だと思っていたのだが、なかなかどうして、こういう時の真意は掴みにくい。
岡部と違い、嘘を付くことが、苦手な人間ではないようだ。

それに、会話をしていても、青木はどこか、心ここにあらずといった様子で、それがまた、青木の言葉の真偽を、分かり辛くしていた。

マンションに着くと、リビングに立ち、薪は周囲を見渡した。
互いの寝室以外は、全て共用スペースだという。
これは本当に、完全な同居だ。

「薪さんが入院してから、掃除もしてなくて・・散らかっていてすみません」
そう青木は言ったが、独身男の暮らしにしては、さほど部屋が荒れているわけではない。
なる程。
少なくとも、共用スペースを快適に使えるだけの、整理能力はあるようだ。

薪は、自分の部屋に入った。
ドアに鍵はあるが、ロックはされていなかった。
同居するに当たり、互いの部屋には立ち入らないという、ルールが確立されていたのか。
そして、自分は青木という男を、それだけ信用していたということか。

薪は、部屋を隅々までチェックした。
間違いなく、自分の部屋だ。
そこには自分の私物が、自分らしい配置の仕方で、置かれていた。

・・いくつか、気になる点もあったが、いずれは答えが出るだろう。

薪は、着替えを済ませ、形のある物を全てチェックし終えると、デスクに座った。
今度は端末を開き、そこから引き出せる、自分に関するデータを見ていく。

まずは、ネットバンキングの情報。
持っていたいくつかの口座は、全て問題なく、継続されている。
日常の買い物も、ほとんどがカード決裁の為、その情報と総合して見ていくと、この数年の自分の動きが、手に取るように分かる。

電話やメールの履歴もチェックした。
やはり、仕事のフォルダと、プライベートのフォルダ、どちらも、一定期間が過ぎたメールは削除されるよう、設定されている。

必要の無い記録を端末に残しておくことを、自分は嫌った。
それは、自分の脳が全てを記録するからであり、記憶を失くすという前提が無いからでは、あったが。

「・・・?」
薪は、情報をチェックしているうちに、仕事とも、プライベートのフォルダとも違う、別枠の格納庫を見つけた。
個別にパスワードを設定してあったが、それ程複雑な物ではなく、すぐに開いた。

「・・・・・・」
薪が、そこにある物を見ていた時、ドアがノックされ、声が聞こえた。
「薪さん、居ますか?」

ドアを開けると、そこに青木の姿があった。
食事や風呂について尋ねる青木に、薪は答えると、ドアを閉めようとした。

だが、その手が、ふと、止まった。
「そうだ。青木・・・」
「はい」

すぐ目の前に立つ男を、薪は見上げた。
相手も、自分を見下ろしている。

初めて見る、プライベートな青木は、これまで職場で見てきた姿より、年相応に若く見えた。
この男と、自分は、一年以上も生活を共にしていたのか・・・

気が付くと、黙ったまま、自分は青木を見つめていた。
青木も、そんな自分にイラつくでもなく、じっと黙って薪の話の続きを、待っているようだった。

「・・いや。何でも無い」
薪はそう言って、ドアを閉めた。

聞きたいことが、山ほどあった。

鈴木の脳のこと。
青木は、それを何故見たのか。
そして・・そこに、何を見たのか。

それから、この6年間の出来事。
青木と自分の間に、何があったのか。
同居してからの一年を、どう過ごしてきたのか。

溢れるほどの疑問をぶつけるつもりだったのに、何故か、それらを、口にすることが出来なかった。

再びデスクに向かい、端末の画面を見つめると、また、頭が痛んだ。
「うう・・・」
薪は、頭を抱えた。

青木と・・あの男と話をすると、頭と胸に、痛みが走る。
それは、失われた記憶が、自分の心身を刺激しているかのようだった・・・・。

翌朝、薪はシャワーを浴び、青木がまだ部屋を出てこないうちに、家を出た。
朝食は、通勤路の途中のカフェで済ませた。
熱いコーヒーを口にしながら、頭を仕事に切り替えていく。

新たな捜査が始まった。
若い女性を狙った、連続誘拐監禁殺人。
薪の指揮のもと、複数の被害者の脳を、第九メンバー達で検証していった。

岡部以下、皆、実によく動いた。
6年前に比べて、格段に手際が良くなっている。
新人の青木も、粘り強く付いてくる。
いや・・6年も捜査官を続けているのなら、もう新人とも言えないが。

残業や泊り込みが数日続き、薪は、職場では青木と顔を合わせたが、マンションでは、すれ違いが続いた。

その日は、薪と青木、同時に着替えに家に帰った。
薪はシャワーを浴び、脱衣場で下着を身に着ける。
シャツを着る前に、体の火照りを冷ますように、鏡の前で両肘を付き、頭を抱えた・・・。

「疲れてるようですよ。薪さん、少し、自宅で休んでいかれたら」
背後から聞こえた声に顔を上げると、鏡に、青木の姿が映っていた。

「いや、いい。睡眠なら、仮眠室で取れる」
「でも・・・」
薪は振り返ると、言った。

「お前の方が、余程疲れた顔をしているぞ」
「え・・」
手を顔に触れ、薪の隣りで、鏡を覗き込む仕草をする青木を、薪は見つめた。

記憶を失って、最初に目覚めた、あの日。
あの時の青木は、何かもっと、生き生きとしていた。
その日から、青木が、日々やつれていくように見えるのは、気のせいだろうか・・。

薪の視線に気付いたのか、青木も、薪の姿を見やった。
「薪さん・・」
「青木」

二人の声が、重なった。
互いに、相手に向き直る。
鏡の前で、向かい合わせに立ち、互いを見つめる・・二人。

先に続きを口にしたのは、薪の方だった。

「青木。僕は・・近いうちに、この部屋を出る」





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