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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene12:焦心


記憶を失って以来、薪が初めて帰宅した、翌朝。

明け方になって、やっと眠りに着いた青木は、薪が家を出た時、まだ熟睡していた。
目覚めてから、薪が既に出勤したことに気付き、青木は、落胆と安堵が入り混じった、複雑な気持ちを抱いた。

青木が職場に着いた時、薪は、書類を片手に、もう片方の手の指を唇に付け、何か思案している様子だった。
その姿が目に飛び込んだ瞬間、青木の胸は、溢れる想いに、押しつぶされそうになった。

「青木?」
薪の傍に居た岡部が、青木の姿に気付く。
「あ・・おはようございます!」
上司や先輩よりも遅い出勤になったことに改めて気付き、慌てて仕事の準備にかかる青木だった。

そんな青木を、薪も振り返り、そっと見やったことに、青木は気付かなかった。

事件の捜査に、青木は没頭した。
男に監禁され、麻薬を打たれ、幻覚の中で死んでいく被害者の画は・・悲惨な物だった。

第九の捜査により、既に犯人の男は確定され、指名手配されている。
逮捕も、時間の問題だろう。

仕事をしている間は、余計なことを考える暇は無かった。
青木は、自らを追い込むように、目の前の責務に取り組んでいた。

だが、ひと息付くと、青木の目は、薪の姿を探した。
そして青木は、薪の姿を見つけると、それを目で追わずには、いられなかった。

薪は椅子に座り、立っている岡部と話し込んでいる。
その表情は真剣だが、リラックスしているようにも、伺える。

薪は、岡部を信頼しているのだ・・・

当然のことなのに。
今まで、気にも留めていなかったのに。
青木は、またも胸が締め付けられるような、苦しさを覚えた。

今度は、今井が薪に話しかける。
今井が差し出した書類を見て、薪は立ち上がり、その書類に指を指しながら、何か指示を出している。
薪は、あんなに、人と接近して話をする人間だったろうか・・・

薪の華奢な身体は、今井の身体に納まるように隠れ、薪が、今井の胸の傍で見上げて話をすると、更にその顔の距離が縮まる。
今井が耳を傾けると、もはや、薪のその艶やかな唇が、今井の顔に触れそうに見え、青木は、気が気ではなかった・・・。

・・・何を考えているんだ、オレは。

青木は立ち上がり、自販機のコーヒーを買いに歩いた。

岡部も、今井も、薪に対して、余計な感情があるわけではない。
薪の方だって、そうだ。
彼らを、部下として、信頼しているだけだ。

・・だが今の青木には、その薪の信頼が、妬ましくてならない。

小池がうっかり薪に対して口を滑らせ、周囲をヒヤリとさせる時も、そんな薪と小池の関係が、羨ましく思える。
自分を差し置いて、宇野を呼び付け、仕事の指示を出す薪に、自分よりも宇野を買っているのだと、そんなことを思う。

薪が、曽我の怪我を心配し、岡部に尋ねている様子に、そこに居ない曽我のことまでが、妬ましくなる自分を、青木は抑えられなかった。

これまでは、全く気にならなかった些細なことが、いちいち青木の胸を突き、えぐっていく・・・。

それは、間違った感情だと、理性では分かっていた。
薪が記憶を失ってもなお、信頼出来る人間が居ることは、薪の支えになるだろう。
それは、薪の為に、感謝すべきことだ。

自分では、今の薪の支えには、なれないのだから・・・・

自分にそう言い聞かせ、納得させようとしても。
薪が失った物の大きさ、それでもなお抱える重さ・・それに比べたら、自分のこんな思いなど、呆れた馬鹿な感情だと、分かっていても。

胸がかきむしられるような苦しさに、目まいがする。
苦しくて、苦しくて、たまらない・・・・・・

けれど、自分がどんなに暗い感情に支配されても、見上げれば、そこには、薪の姿があった。
自分の黒く淀んだ思いに比べ、薪のその姿の、なんて眩しいことだろう。

これまでも、薪の姿は、誰よりも輝いて見えた。
だが、今の薪は、これまで以上に、眩しく映り、青木は、目が開けていられないような感覚さえ、覚えた。

眩しくて、眩しくて。
そして・・・なんて遠い存在なのだろう・・・・・・

連日、残業や泊り込みの仕事が続く中、マンションに帰宅する時間は、薪とすれ違うことが、多かった。
その日は、溜まった着替えを抱え、一度帰宅しようとする薪を見て、ちょうど休憩を取ろうとした青木も、自分も着替えに帰るから、荷物を運ぶと、申し出たのだった。

先にシャワーを使った薪が、バスルームから出てきた物音に、青木は、自分もシャワーを浴びようと、脱衣場に足を運んだ。

鏡の前に、薪が立っていた。
下着一枚の姿で。

思わず青木は、立ち止まった。

目に飛び込んできた、白い背中。
適度に筋肉が付いた、しなやかな脚。
そして、引き締まった小さな臀部・・・。

それを、手の中に納めた感触を、思い出す。
滑らかな肌に手を滑らせ、その脚を絡ませ合い、愛し合った・・時。

青木は、頭を振った。
そして、疲れた様子で頭を抱える薪に、声をかけた。
「疲れてるようですよ。薪さん、少し、自宅で休んでいかれたら」

振り返った薪のその顔に、青木は、またも目を奪われる。
薪の頬は、シャワーの熱に上気し、濡れた髪が、細い首に絡み付いていた・・。

「お前の方が、余程疲れた顔をしているぞ」
薪の言葉に、青木は我に返る。
確かに・・職場でも家でも、今の青木は、心も身体も、休まる時が無かった。

ふと気付くと、薪が、自分を見つめていた。
青木は、胸の鼓動が激しくなる自分を、感じていた。

だが、その先に待っていた薪の言葉は、青木を、思いがけない衝撃へと突き落とした。

「僕は・・近いうちに、この部屋を出る」

一瞬、青木は、薪が何を言っているのか、理解出来なかった。
「え・・」
目をしばたかせ、息を呑む青木に、薪は、もう一度言った。
「僕は、ここを、このマンションを出て行く」

薪の言葉に、青木は、うろたえる。
「どうして・・」
「僕が、ここにお前と住む理由が、見つからないからだ」

「・・・・・・!」
青木は、言葉を失った。

「一年前の僕なら、その理由があったんだろう。だが、今の僕には、それが無い。見てのとおり、家に居る時間なんて、たかが知れている。ただ着替えに戻り、寝るだけの為に、こんな広い部屋は必要ない」

「今の事件の捜査が終わったら、部屋を探す。そして見つかり次第、僕は、ここを出て行く・・。お前は、ここに住んでいても構わない。だが、お前の給料では、ここの家賃を支払っていくには、無理があるだろう。お前も、別の部屋を探した方がいい」

「・・・・・・」
青木は、薪が言っていることが分からない。
呑み込めない。

「僕の都合で、勝手なマネをして、済まない。お前が住む部屋を見つけて越すまで、ここの家賃は、今までどおり、僕の分は支払う。もし、引越し費用が捻出出来ないようなら、それも請求してくれて構わない」

「そんなこと・・・」
青木は、頭の中が、真っ白になっていた。
とても、先のことまで、考えることは出来ない・・・・

呆然と立ち尽くす青木を、薪も黙って見つめる。

そして薪は青木の脇をすり抜け、自室へと入っていった。





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