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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene15:口癖


手がけていた事件の捜査に区切りが付いた、その日。
薪は、岡部を呼び、他の皆が帰宅した後、室長室の端末を開いた。

全てを、きちんと知らなければならなかった。
・・たとえ、そこに、辛い現実が待ち受けていたとしても。

岡部の説明を受けながら、6年間の捜査に関するデータを、全て見終えた。
片手で額を押さえ、ただ、静かにそれを受け入れている、薪。

「・・・・・・」
そんな薪の様子を、黙ったまま、岡部はじっと見ている。

「ご苦労だった。帰っていいぞ」
薪は、デスクに向かって座り、額を押さえた姿勢のまま、そう言った。

「薪さんは、まだお帰りにならないんですか? よろしかったら送りますが」
「いい」
薪の短い言葉は、一人にしてくれと、そう告げていた。

「・・お先に失礼します」
岡部はドアに向かい、一度薪を振り返ると、何も言わず、静かに出て行った。

「はあ・・・」
薪はため息を付き、デスクに両腕を付いて、両手で頭を抱えた。

覚悟はしていたが、予想以上に、数々の事実が、衝撃をもたらしていた。
だが、この6年間の経験を経て、今の自分があるのだ。
記憶を失っただけで・・自分が今、これらの延長線上にあることを、受け入れなければならない・・・。

コンコン。
ドアを、ノックする音が、聞こえたような気がした。

コンコン。
まただ。
岡部が、忘れ物でもしていったのだろうか。

ゴンゴン・・ガンガンガン!
・・・・うるさいっ!
薪は仕方なく立ち上がり、ドアに向かう。

・・と、すぐ目の前でドアが開き、長身の男が飛び込んできた。
「薪さんっ!」
「・・・!!」

不意打ちで飛び込まれ、薪は、よけ切ることが出来なかった。
「わっ・・・!!」
青木も目を丸くして、薪の上に覆いかぶさるように転び・・二人は共に、その場に倒れ込んだ。

「っ・・・!」
気が付くと、薪は、仰向けに倒れていた。
だが、床に打ち付けるだろうと、とっさに覚悟していた背中は、宙に浮いている。

・・・青木の腕が、しっかりと、自分の身体を掴まえていた。

「・・・・・・」
薪は、大きく目を見開いていた。
自分の背中に回った男の腕の感触が、目の前にある、その胸から漂う匂いが・・何か、自分の胸に、ざわめきを呼んだ。

「薪さん、大丈夫ですか?」
至近距離で、自分の顔を覗き込む、その顔・・・
「・・離せ」
「あ・・・」

青木は薪を離し、二人は立ち上がった。
「ダッ・・ツツ・・」
青木は、立ち上がりながら、床に打ち付けた、膝と手の痛みに、もだえている。

二人分の身体を、支えたりするからだ・・・。

「この馬鹿」

「え・・?」
青木は、顔を上げた。
「その口癖・・」

「何故、ドアを開くと同時に、お前が飛び込んでくる必要があるんだ」
「あ・・すみません」
薪に睨まれ、青木は頭に手をやりながら、謝った。

「ドア、開いてたんですね。最初、閉まってるのかと思って・・つい、勢いよく開けてしまって・・」
青木は、決まり悪そうな顔で、頭をかいた。

「で?」
「え?」
「用件は何だ」
薪はすっくとそこに立ち、腕を組み、かすかに首をかしげて、青木を見上げる。

「えっと・・・」
青木は、束の間、答えを探しているようだったが。

「そうですね。あの・・薪さん、帰りましょうか」
やっと出てきた言葉がそれで、薪は、一瞬呆気に取られた。

「・・岡部以外、全員、とうに帰れと言った筈だ」
「そうなんですが・・・」
言いながら、青木は、薪が開いていた端末の画面に目が行った。

「薪さん・・過去の事件データ、ご覧になったんですか・・?」
薪も、デスクを振り返る。
事件項目が並んだトップ画像が、そのままになっていた。

「・・・・・・」
薪は、立ったまま、無言でその画像を閉じ、ディスクを抜いて、端末を切る。
電源が消える、その画面を見つめながら、薪の視線は、どこかその先を見ているようでも、あった。

「薪さん・・」
青木は、薪の傍らに立つ。

「今日は・・病院に面会に行ってきた」
唐突に思えるその話を、薪が切り出したことに、青木は何の疑問も抱かない様子で、うなずいた。

「彼女・・元気でしたか?」
「・・・カウンセラーの話だと、拉致されてから、病院で目覚めるまで、この2年間の記憶は、かなり曖昧になっているらしい」
「・・・・・・」

「僕は、警察の人間だと名乗っただけで、後は何も話さなかったが。あの家で、僕に発見されたことすら、覚えていないようだった」

薪は、視線を落とした。
事故で、記憶を失った自分。
事件に巻き込まれ、自ら記憶を失くした、少女・・・

「・・忘れた方が、いいのかもしれませんね。忘れることで、この先・・彼女が人生を、やり直せるのだとしたら・・」
青木の言葉に、薪は一度、目をつぶる。

そして目を開け、話す。
「そうだな。捜査上、当事者の証言を取らねばならないことになってはいるが。・・最終的に、何も聞き出せないという結末で、終わるべきなのかもしれない。いずれにせよ、これからも、経過はしばらく見ていかねばならないが」

「薪さんは・・」
「うん?」
「捜査上必要だからではないでしょう? 彼女の様子が気になるのは・・」
青木の言葉に、薪は目を上げ、じっと青木を見つめる。

「お前こそ」
「はい?」
「未だに・・通っているんだろう? 篠崎佳人のところに」

薪は、暗くなった端末の画面を見て、そのフタを閉じた。

「あ・・岡部さんから?」
「何故、そこまでする」
薪は、静かに言った。

「お前は、いくつもの事件で、無謀とも思える行動に出ている。ここで、第九で、脳の検証をしていれば良いものを。だがその行動は、まるで・・他人の苦しみを、自分の苦しみとして、捉えているかのように思えた。今回も、自分の立場も省みず・・どうしてそこまで・・」

「薪さんに教えられたことです」
青木は、キッパリと言った。

「全て、薪さんに、教えられたことです」
「・・・・・・」
二人は、互いを見つめ合う。

「薪さんは、いつも・・どの事件でも。人の命を、最優先に考えて。被害者の痛みを、そして、加害者の痛みさえ、受け止めて」
青木の目は、薪を捉えたまま、離さない。

「自分の立場を守ることなど、一つも考えず。いつも、人のことを思い。そんな姿勢を貫いて、薪さんは、第九を・・オレ達を、率いてくれたんです、これまで、ずっと」

薪の瞳も、青木をじっと、見つめている。

「オレは、そんな薪さんに教えられて。そして・・そんな薪さんを、出会ったその日から、今もずっと、追いかけているんです。第九の捜査官としても、一人の・・人間としても」

「・・・・・・」
薪の、大きな瞳が揺れる。

目の前に居るのは、共に捜査を始めて、まだ間もない、新人ではない。
6年間、ずっと傍に居た、男の姿だった。





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