FC2ブログ

カウンター


プロフィール

かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

リンクは嬉しいので、ご自由にどうぞ♪


当ブログ拍手頁

最新の公開拍手コメのレスはこちら それ以前の公開拍手コメ&レスは、各記事の拍手ボタンを再度押していただければ読めます 鍵拍手コメにつきましては、拍手をいただいた記事下コメント欄にレスを書いております

所属してます♪


月別アーカイブ


最新記事


最新コメント


検索フォーム


 
Scene16:螺旋


「・・鈴木の脳を見たのも」
薪は、一度目を伏せる。

「お前が、鈴木の脳を見たのも・・僕の、為だったんだろう?」
「・・・・・・」
青木は、黙り込んだ。

「好奇心なんて、そんなものじゃない。精神を壊し、命さえも失う・・そんな危険を承知で、お前は、鈴木の脳を見たんだ。・・真実を知る為に」

「その真実が何なのか、僕も知った。何かを、僕は知っている。けれど、その真実が何なのか、今の僕には・・・」

話しながら、薪は、頭を抱える。
「僕は・・全てを忘れてしまった。鈴木の真実も。貝沼の策略も」

徐々に、その身体が、床に沈んでいく・・
「薪さん・・!」
青木が、薪の傍にしゃがみ込む。

「情報漏洩から・・あんな悲劇を・・招いたことも・・!」
「薪さん・・!」
「部下を・・失ったことさえ・・!」
薪の頬を、涙が伝う。

「沢山の人間が・・傷付き、死んでいった・・・! 僕のせいで・・。なのに僕は・・!!」
「薪さん、違う! あなたのせいじゃないんです! あなたは・・」
「何もかも。全て・・。事実は何も変わらない。なのに・・僕が・・僕だけが・・沢山の屍の上で・・何もかも忘れて・・!」

「違う! 違います・・薪さん・・!」
「あああっ!ああああああっ・・!!」
薪は、頭を抱え、床に崩折れた。

青木は、薪に寄り添い、その肩を抱いた。
そして思う。

・・一体何度、薪の苦しむ姿を見てきただろう。

6年前、少年達の自殺事件の時も。
天地が亡くなった時も。
少女救出の望みを、絶たれた時も。
萩原事件の背景を知った時も。

薪は苦しんできた。
何度も、何度も・・・・

きっと、自分は見ていない、見えないところでも、薪は人知れず、苦しんでいたに違いない。

どうして、今になって再び。
味わってきたその痛みを、感じなければならないのか。

繰り返し、繰り返し・・・・

「薪さん・・・あなたは、もう充分苦しんできた。記憶を失くしたからといって、あなたが苦しんできたことが、その痛みが、無くなるわけじゃない」
青木は、薪に語りかけた。

「あなたが、これ以上苦しむことを、誰が望むんですか? もう充分だ。少なくとも、オレはそう思う。岡部さんだって・・第九の皆も、きっとそう思ってる。・・・鈴木さんだって」
「鈴木・・・」

薪は、顔を上げる。
その瞳から、涙を溢れさせながら。

「聞いて下さい・・薪さん」
青木は、薪の腕を取った。
その細い手首を、薪の顔の両脇で、しっかりと掴み、顔をこちらに向けさせる。

「鈴木さんは・・あなたが苦しむことを、望まなかった。あなたを、守りたかった。その為に、鈴木さんは・・・」
薪が瞬きをする。
その瞳が揺れ動き、何かを・・思い出そうとする。

「・・駄目だ。分からない」
薪は、首を振った。

「たとえ・・今は分からなくても。鈴木さんは、あなたが苦しむことを、望んではいない。あなたは知っているんです・・!」
「青木・・でも、僕は・・・」
薪は、言葉を詰まらせる。

「そう、あなたが記憶を失くしても、事実は何も変わらない。あなたが、この6年間に歩んだ道、その事実には、何も変わりは無いんです・・! だから・・・」

青木は、薪の手を離し、もう一度、その肩を抱いた。
「どうか・・薪さん・・・・」
「うっ・・・」

薪は、両手で顔を覆い、青木の腕の中で、涙を流し続けていた・・・・・


************


「薪さんは、どこだ?」
岡部は周囲を見渡し、傍らに居る、曽我に尋ねた。

「あれ? さっきまで居たんですけどね」
曽我が言い、その先に居た青木が、振り返った。
「呼んできましょうか? 急ぎですか?」

「いや。別に急ぎではないんだが。・・薪さんの居所、知ってんのか?」
「聞いちゃいないですけど。たぶん・・また昼寝じゃないかと思いますよ」
そう言って、青木は出て行った。

「薪さん、最近また、裏の木陰で、よく昼寝してるみたいですね」
曽我は、言いながら、岡部が、青木の行った先を、眺めていることに気が付いた。

そう言えば・・こんなシチュエーション、以前にもあったような。
あの時、岡部は、ムッとした顔をしていた。
あれは、いつだった・・・・?

曽我がそんなことを思い巡らしていると、岡部のつぶやく声が聞こえた。
「ま・・そういうもんだ」
「岡部さん・・?」

振り返った岡部の顔は、穏やかに、微笑んでいた・・・。

「薪さん・・」
青木が、薪を呼ぶ。

薪は、草の上で眠っていた。
・・片手を枕にして、もう片方の腕で、自分自身を抱きかかえるようにして。

「薪さん・・もうそろそろ、起きて下さい」
青木が傍で声をかけると、薪の目が、開いた。

「・・青木」

まだ夢うつつのような薪を見て、青木は、その隣りに、座った。
「今日は、いい天気ですね。風も、気持ちいい位で」

薪も起き上がる。
前髪に手を差し入れ、頭を掻く仕草をし、そして、空を見上げた。

青木は、薪の横顔を見つめる。
スッと上がった首筋からアゴ、かすかに開いた唇の線が見える。
そよ吹く風に、薪の柔らかな髪が揺れている。

薪が記憶を失ってから、青木は、薪と、こうして並んで座るのは、初めてだった。

半月前までは、それが、当たり前のことだった。
薪と共に過ごす時間が、こんなにも貴重な物であることを・・・自分は、忘れていたような気がする。

薪と、この距離に居られるのなら、それで自分は、充分、幸せかもしれない。

・・・たとえ、恋人に戻れなくても、いい。
この距離で、薪の傍らで、薪を・・見守っていられたら。

「青木」
見つめていたその唇が、自分の名前を、形作った。
「・・はい」

「お前は、本当に、馬鹿な奴だ」
「え?・・」
目を見開く青木を、薪が振り返る。
その目は、とても・・柔らかな色をしていた。

「だが・・そんなお前だから、第九で、ここまで、やって来れたんだろう」
「薪さん・・それって・・褒めて・・?」
青木は、複雑な顔になる。

更に、薪は言った。

「そんなお前だから・・・・僕は、お前を愛したんだろう」

最後の言葉に、青木は動きを止め、瞬きをして、薪を見つめた。





関連記事

コメント

コメントの投稿



管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

■この記事のトラックバックURL

⇒ http://kanon23.blog36.fc2.com/tb.php/534-ff8bdbb9

この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

■この記事へのトラックバック

 | BLOG TOP |