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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene1:責務


青木は、空飛ぶ機内に居た。

新調したダークグレーのスーツに、クリーニングから引き取った白いシャツを身に着け。
上着とネクタイは外して、脇に掛けてある。
床屋に行ったばかりの首筋が涼しい。

それにしても、狭い。
同じエコノミーでも、普段よく使う国内線の方が、もう少しゆったりしている気がする。
今、乗っているのは、会社が手配してくれた、格安チケットの飛行機だ。

それじゃなくても、人より大きな体躯を、小さなシートで持て余しながら、青木は、ここに至るまでの出来事を、思い起こしていた。

「後で、所長室に来てほしい」
山本が配属された日、田城は目の前で電話を切ると、青木にそう言い、先に出て行った。
青木は、山本を第一研究室の人間に引き合わせると、その後、一人、田城の居る所長室へと向かった。

「そこに掛けて」
田城に促され、青木は所長室のソファに座り、田城も、テーブルを挟んだその向かいに、座った。

「2週間程、出張をお願いしたい。その間、山本くんの面倒は、別のスタッフに頼むから」
「あ、はい」
青木は、すぐに頷いた。

これまでも、東京の本社や、国内の他の研究所等、青木はその技術と知識を買われ、指導や説明に出張することが度々あった。
2週間という期間は、これまでで一番長いが。

「実は、NTIから、東京本社を通じて、依頼があってね。君に来てほしいと言ってるんだ」
「え? NTI・・ニッポンタバコ・インターナショナルですか?」
「そう」

NTIは、ニッポンタバコのグループ企業で、ニッポンタバコを、海外に展開する役割を担っている。
その本部の場所は、ジュネーブだ。

「じゃあ・・オレ、スイスに・・?」
一瞬、青木の脳裏に、スイスの美しい街並みやアルプスの風景が、ヨーデルの響きと共に、現れた。

「ううん。上海」
「え・・」
ヨーデルがしぼんで行き、代わりに脳裏に現れる、中国三千年の歴史・・・。

「あれ?でも」
青木は、ふと気付いて、言った。

「中国は今、禁煙法が制定されてるんじゃ・・」
「そ。国内での煙草の販売や喫煙が、全面的に禁止されて、NTIの上海支店も撤退。もう10年以上になるね」
「じゃあ何故・・」

「この政策が、実は上手く機能していないことは、君も知っているだろう?」
「ええ、まあ」

海外のニュースが、リアルタイムに入ってくる今の時代。
中国で禁煙法が施行されて以来、度々、密造煙草が摘発されている様子は、日本でも報道されていた。

「特に、ホンカオ島の中国マフィアなんて、それで栄えてるっていう話だし」
「あの、でも。それが、今回の出張と、どういう関係が・・」

「そこなんだがね」
田城は、身を乗り出し、やや声を潜める。

「中国政府は、この政策が間違いだったと、ようやく認める気になったらしいんだ」
「え、じゃあ・・」
「そう。次の党首選では、禁煙法を撤廃するか否かが争点になるとも言われている。・・まだ、水面下での動きだがね」

一体、そんな情報を、NTIはどこから入手したのか。
青木は思ったが、これは、自分が尋ねることではないだろう。

「公になってからでは、遅いんだ。禁煙法が撤廃されたら、世界中の煙草産業が、巨大な中国市場を求めて、一斉に参入してくる。どこよりも早く手を打たねば。NTIは、既に動いている。政府高官達とコンタクトを取り、禁煙法撤廃と同時にマーケットに食い込めるように」

青木にも、話の中身が、ようやく見えてきた。
つまり・・

「すぐに、完全撤廃されるとは限らない。社会に害を及ぼすという名目で施行された法律だ。最初は、害の少ない物から、少しずつ許可される可能性が高い」
田城の言葉に、青木は、頷いた。

「そこでだ、君が今、研究している、あれ」
やはり、そうだ。
青木は、目を上げた。

「商品化までは、まだ、もうちょっと時間がかかるけれど。NTIが政府に持ち掛けたら、話を聞いてみる気になったらしい。NTIは、詳しい話が出来る人間を求めている。営業が上手い人間ということではなく、直接、その研究に携わっている者を」

田城は、立ち上がった。
青木も、共に立ち上がる。

「行ってくれるね」
田城が差し出した手に、青木も手を差し出した。
握手をしながら、田城は、青木の肩を、ぽんぽんと、叩いた。

・・・・青木は、目を覚ました。
機内で、狭い座席で身を縮めながらも、眠ってしまったらしい。

成田から上海までは、3時間あまり。
もうすぐ、到着のアナウンスが入るだろう。

田城にああ言われて、青木は、自分の肩に掛かる責任に、身が引き締まる思いがした。
これから開放される中国市場での取引きという、大きな商談に関わる自分を、誇らしく思った。

・・・・・・が。

「青木くん、とりあえず、床屋に行ってね」
続く田城の言葉が、それだった。

「は?・・・」
「スーツも新調した方がいいな。君のスーツは全部、煙草の匂いが沁み込んでるだろう。脱臭クリーニングをしても、落ちないかもしれない」

「あの・・・」
「何しろ、禁煙法の国だからね。着ている物から煙草の匂いがしたら、みんなびっくりする」
「・・・・・・」

「これまでの出張先は、言わば身内だったから、皆、許してくれたけど。今度はそうは行かないからね。常識のある格好で行ってね」
・・・これまでの格好は、非常識だったということだろうか。

「それに、あの国では、日本以上に、身だしなみが物を言うんだ。服は、靴は、小物は。身に着けている物で、判断される部分が大きい。くたびれたシャツやネクタイなんて、着けていかないようにね。・・出来れば、ヤニだらけのその眼鏡も、作り替えた方がいいけど」
田城は、じっと青木の目を・・いや、眼鏡を見て、言った。

「あの・・それって、全部、自費でやるんですか?」
「うちの経理が苦しいの、分かってるよね」
「・・・・・・」

「それじゃなくても、本社から、研究所で予算を使い過ぎる、出来るだけ切り詰めろって、苦情が来てるんだ。まあ、今回のことについては、特別枠で申請するから。出張が終わって帰ってきたら、まとめて請求して。必ず領収書を添付してね」

・・ことは、グループ企業をまたいだ、大きな仕事・・と思えるのだが、それにしては、何とわびしい待遇だろう。
飛行機だって、ファーストクラスとまでは言わないまでも、せめてビジネスクラス、いや、もうちょっと快適な航空会社のエコノミーだって・・・。

青木は、一度眼鏡を外して目をこすり、もう一度眼鏡を掛けた。
・・・視界が、クリアだ。

自分では、全く気に掛けていなかったのだが、やはり、知らず知らず、眼鏡は汚れが溜まっていたらしい。
わざわざ作り直すのもどうかと思い、とりあえず、眼鏡店にクリーニングを頼んだのだが。

「すみません、お客様。どうしても、油膜が張って綺麗にはならないのですが・・」
申し訳無さそうに言われた。

レンズ交換のみにしようかとも思ったが、どうせ会社持ちなのだからと、フレームから新調した。
会社の金で、スーツや靴まで購入することに、多少の負い目も感じたが、今、この狭いシートで身体がきしむのを感じると、それ位の権利はあるのだと思える。

「あ、分かってるとは思うけど。もちろん、出張中は禁煙だからね。出来れば、少し前から禁煙して、身体から煙草臭さを無くすといいな」

・・・そこまでやってられませんよ。
と、口にこそ出さなかったが。


************


こんにちは。ナレーターです。

築40年のビルから一転、青木主任は、上海に飛ぶこととなりました。
青木主任の研究所での活躍や、山本さんとのやりとりを期待していた方がいらしたら、申し訳ございません・・と、作者が小さくなっています。

実は、作者の中で、この話の構想が沸いたのは、去年の9月。
まだ、山本さんは陰も形も存在していなかった頃。
今回は、いわば、ゲスト出演のようなものだったので。

禁煙法? マフィア?
・・何となく、1920年代の、どこかの法律を思い起こす・・方も、いらっしゃるかもしれませんね。

ホンカオ島?
中国に、そんな島、あったでしょうか。
・・何となく、どこかとどこかを、掛け合わせたような名前だと思う・・方も、いらっしゃるかもしれませんね。

それにしても、青木主任。
先程登場した時とは、見違えるようです。

本人は、ちっともそんなこと、意識していないようですが。


************


「レイディース、アンドジェントルメン・・・」
機内アナウンスが聞こえる。

シートベルトを締めながら、青木は窓の外を見やる。
空港が、眼下に見えた。





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コメント

■ 青木vsマフィア???

こんにちは。かのん様☆

きゃあ!!
お話がどんどん楽しくなってまいりましたね(≧∇≦)

青木主任は、さっぱりとした青年になったようで・・・
体から頑張ってヤニを抜いたのですね♪

ヘビースモーカーの方って、
喫煙していない時でも、常に全身から臭いがするので分かりますよね!

青木は、相当な努力をされたのでは・・・(笑)

ぶはははっ!!
その大きな身体に、その飛行機の席はとても気の毒ですね~
帰りは、誰かの計らいでビジネスクラスになれると良いですね(笑)

青木の行く先には、マフィアが待ち構えているかも・・・
きゃあ~
こわぁーい(≧∇≦)

青木の運命が楽し・・・心配です(笑)
蜂の巣にされたりして・・・(笑)

最悪は女装して逃げ回るとか!!(笑)

我らが最愛のお方が、どの様に登場するか楽しみです(〃∇〃)♪

本職か・・・
仲間か・・・

ぎゃっ!
まさか、地下で密造煙草を売買している方だったりして・・・

青木主任!!
頑張って下さいね(^o^)/~

かのん様、毎日がウキウキと楽しくなるお話をありがとうございます♪♪♪

続き、お待ちしております(^▽^)

■ 

かのん様

新章スタートだ~♪
えっ、らすと…ラスト・スモーキング!?

もぉ、かのん様ったら、なんて心憎いタイトルをお付けになるのかしら、と中を繙いてみてまたびっくり。

ナレーション入り?舞台はタバコの研究所?青木は超ヘビースモーカーで主任?
うひゃーっ、薪さんはどんなだろう。

さて、第1話っと。
ありゃ、青木は機上の人だ。どこへ…上海ね。
(ここでしづ様のチャイナドレス薪さんを連想してしまったのは、私ぐらいのものでしょうか? かのん様、しづ様、腐者ですみません。)

禁煙法の廃止が水面下で動き出した中国ですか。
政治、企業、情報、マフィア、スパイ…はーどぼいるどな要素もありそうで、展開が楽しみです。

約30話! 長丁場ですね。
また除湿や冷房が必要な季節が近づいてきました。
どうかお身体にはお気をつけ下さい。

■ たつままさま

○たつままさま

こんにちは!
コメントありがとうございます(^^)

> きゃあ!!
> お話がどんどん楽しくなってまいりましたね(≧∇≦)

そそそ・・そうですか?
あっさり日本を発ってしまって、たつままさんを気落ちさせてしまったのではないかと・・(><)
でも、そうおっしゃっていただいて、ホッとしました。
ありがとうございます(T▽T)

> 青木主任は、さっぱりとした青年になったようで・・・
> 体から頑張ってヤニを抜いたのですね♪

「これまでは非常識だったのか」と思ったり、作り変えた眼鏡のクリアさに驚いたり、青木自身は、自分がどんな姿だったのか、自覚が無かったようですが(笑)

まあ、あのままじゃ悲惨過ぎるので、さっぱりとしてもらいました(^^;)

> ヘビースモーカーの方って、
> 喫煙していない時でも、常に全身から臭いがするので分かりますよね!

そうですよね。
そんな状態で禁煙国家に行ったら・・

> 青木は、相当な努力をされたのでは・・・(笑)

やっぱり、不審がられてしまいました(笑)
田城さんに言われた「何日も前から禁煙」は、遂行されなかったものと思われます(笑・笑)

> ぶはははっ!!
> その大きな身体に、その飛行機の席はとても気の毒ですね~
> 帰りは、誰かの計らいでビジネスクラスになれると良いですね(笑)

きゃっ。思い出して下さったのですね(≧▽≦)

実は、「狭いエコノミーで2週間の出張」というのは、自分の中ではあの話のパロディだったのですが・・一年以上も前に書いた話ですし、あまりに地味なネタなので、お気付きになる方はいらっしゃらないかと・・

覚えていて下さって、そしてこんなところまで見て下さって・・本当に本当に、ありがとうございます!(〃▽〃)

さて、この世界の青木は、帰りはビジネスクラスで(笑)無事日本に帰れるのでしょうか。
それとも・・・

> 青木の行く先には、マフィアが待ち構えているかも・・・
> きゃあ~
> こわぁーい(≧∇≦)

たつままさんてば!☆
顔が、口調が、全然恐がってないんですけど♪♪♪

> 青木の運命が楽し・・・心配です(笑)
> 蜂の巣にされたりして・・・(笑)

「(笑)」マークだらけ・・青木・・(笑)

> 最悪は女装して逃げ回るとか!!(笑)

あっ。それもいいですね!(笑)
(でも・・青木の女装って・・あまり見たくないかも・・←みちゅうさんのところの「ねこ」のお話のように、ベールでしっかり顔を隠すとか?^^)

> 我らが最愛のお方が、どの様に登場するか楽しみです(〃∇〃)♪
> 本職か・・・
> 仲間か・・・
> ぎゃっ!
> まさか、地下で密造煙草を売買している方だったりして・・・

すみませんすみません!!
皆様お待ちかねですのに・・お待たせし続けてしまって(><)

私も早くご登場願いたいのですが、なかなかそこに辿り着きません・・(T▽T)

> 青木主任!!
> 頑張って下さいね(^o^)/~

すみません。
早々に捕まってしまいまして・・
でも、せっかくたつままさんがエールを送って下さってるのですから、頑張ってほしいと思います。

> かのん様、毎日がウキウキと楽しくなるお話をありがとうございます♪♪♪
> 続き、お待ちしております(^▽^)

ううう・・・なんて、なんて嬉しいお言葉なのでしょう・・(;;)

いただいたお言葉を胸に、励んで書いて参りたいと思います。

■ サンショウウオさま

○サンショウウオさま

コメントありがとうございます!
いつもお読みいただき、とてもありがたく嬉しく思いますm(_ _)m

> 新章スタートだ~♪

レビューが終わったら、よそ様のブログ巡りをしたいと思っていたのですが・・
いつまでもこの長編に手が付けられずにいたもので、思い切って始めてしまいました(><)

> えっ、らすと…ラスト・スモーキング!?
> もぉ、かのん様ったら、なんて心憎いタイトルをお付けになるのかしら、と中を繙いてみてまたびっくり。

まあ!ここに注目して下さって嬉しいです。

実はこのタイトル、私の中では、勝手に清水先生の原作へのオマージュなんです。
最初の章を「プロローグ」としたのも、そういう思いが入っております(*^^*)

> ナレーション入り?舞台はタバコの研究所?青木は超ヘビースモーカーで主任?
> うひゃーっ、薪さんはどんなだろう。

そうですよね。
普通は、ここを舞台にしたお話になると、そう思いますよね・・・
期待を裏切ってしまっていたら、申し訳ございません(><)

> さて、第1話っと。
> ありゃ、青木は機上の人だ。どこへ…上海ね。
> (ここでしづ様のチャイナドレス薪さんを連想してしまったのは、私ぐらいのものでしょうか? かのん様、しづ様、腐者ですみません。)

どきっ☆

じじじ実は・・私も、これを書き始める時、脳内に浮かんでいたのですね。
しづさんのところでお目見えした、あでやかなチャイナドレス姿の薪さんが。

でも・・かぶってしまったら、しづさんに失礼だな・・と思いましたもので、「チャイナドレスでは」登場する予定はございません(^^;)

> 禁煙法の廃止が水面下で動き出した中国ですか。
> 政治、企業、情報、マフィア、スパイ…はーどぼいるどな要素もありそうで、展開が楽しみです。

えっ・・と。
「第二の居場所」「朱色の空」「Sの手口」と、長編の際には、毎度事件が絡んでおりますが、毎度あのような中途半端な物ですので、今回も中途半端な、つまらないはーどぼいるどになる可能性が大です・・・(TT)(←作者がそんな弱気でどうする)

> 約30話! 長丁場ですね。
> また除湿や冷房が必要な季節が近づいてきました。
> どうかお身体にはお気をつけ下さい。

温かいお言葉、ありがとうございますm(_ _)m

そうなんです・・長丁場・・またもメロディ8月号発売前に終わらせようと、最後は駆け足になる予感が・・6月は農閑期ですし、何とかなるかな・・と自分に言い聞かせているのですが・・。

サンショウウオさまも、どうかお身体にお気を付けて。
お互い、健康で梅雨を乗り切りましょう(^^)

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