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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene9:血痕


チェンは、寺院の裏手で、現場検証に当たっていた。
周囲はライトに照らし出され、警察関係者が歩き回っている。

先刻、ここで銃撃戦があり、警察が到着した時には、既に全員逃亡した後だったという。
それだけなら、刑事保安部から現場にまで来ることも無いのだが、駆け付けた警員(巡査)が、血痕を見つけ、通報してきたのだ。

「怪我をしたのは・・二人。血量からすると、致命傷には至っていない」
チェンがつぶやきながら、周囲を探る。

「弾丸は貫通しています」
鑑識の人間が、チェンに、袋に入れた弾を見せた。
「弾の種類は、今のところ3種類。そのうち2つの弾が、命中しています。血痕の位置から考え合わせて、一つは、この通りの中心から、奥に向かって。もう一つは、あの壁際から、こちらを狙っています」

「そして・・血痕は同じ所に向かい、途切れている。怪我をした二人は、同じ車で逃亡したということか」
「おそらく」
チェンと、鑑識の人間が話しているところに、ソンが、一人の少年を連れて現れた。

「チェン警部、連れてきました」
「おお」

その少年は、この周辺で暴走している少年達の、リーダーだった。
「っ!離せよっ!!」
少年が、ソンの手を振り払った。

「私は、ホンカオ警察のチェン警部だ」
チェンは、睨み上げる少年に、警察手帳を見せた。

「怪我をしているな。それも、真新しい。ケンカでもしたのか?」
「・・あんたには、関係ねえよ」
自分の顔を見る相手に向かい、少年は、憮然とした目を向ける。

「夕方、この周辺に、お前達が集まっていた様子が、目撃されている。何をしていた?」
少年に尋ねるチェンに、ソンが、手にしていた物を見せた。
「こんな物を、所持していました」

「ふうん・・。こんなまとまった金、何に使うつもりだったんだ?」
「・・・・・・」
黙り込む少年に、チェンは言う。
「ここでは話し辛いなら、署まで、来てもらおうか」

チェンの言葉に、少年は、顔をゆがませた。
「言っとくけど・・ここでのケンカには、オレは、何の関係もねえよ!」

「ケンカ・・ここでケンカがあったことを、お前は知ってるのか?」
「・・・!! だって、撃ち合う音がしたんだろ。みんな知ってるぜ」
「そうか・・。お前は、もっと色んなことを知ってそうだな」

黙って目をそらす少年に向かい、チェンは、ソンから金を受け取り、言った。
「この金は、どうやって手に入れた?・・最近、この辺りでチンケなひったくりや恐喝が繰り返されているのと、何か関係はあるのか?」
「・・・・・・」

「金の出どころが言えないなら、これは没収だ」
「・・!!」
「そして・・恐喝容疑で、このままお前を拘束することも出来る」

目を見開く少年に、チェンは言った。
「どうだ?少しは、何か話す気になったか?」

「汚ねえ!!」
叫ぶ少年に、チェンは微笑んで、言った。

「話してくれるか。警察はいつも、捜査に協力する善良な市民の味方だよ」



・・・・声が聞こえる。人の気配がする。
だが、疲れきった身体は、目を開くという行動に至らない。

「こいつ、メシだけはしっかり食ってやがる」
「宇野も、そんなことを言っていた」
「度胸があるんですかね。それとも、馬鹿なんですかね」
「たぶん・・後者だろう」

中国語の会話が聞こえる。
どちらも、聞き覚えのある声だ。

呆れたような、早口の声。
それに・・ビロードの布を思わせるような、深く、滑らかに響く声。

「おい・・起きろよ!」
声が、ごく近くになった。

「起きろ!・・起きろって!!」
青木は、目が覚めた。
目の前に、小池の顔があった。
肩を掴まれている。

バッと起き上がった。
同時に、小池が手を離す。

青木の視線の先には、ソファーに座って脚を組み、グラスを手にしている薪の姿。
・・そして自分は、ベッドの上に居た。

部屋に帰ると、食事をして、ベッドの上に倒れ込み、そのまま寝てしまったらしい。
そう思いながら、自分の姿を見下ろして・・

「!!・・・・」
青木は、慌てて布団を自分の上に掛けた。
濡れた服やシャツを脱ぎ、トランクス一枚で、横になっていたのだ・・・・

「お前、研究員なんてやってる割には、割といい身体してんだな。・・ま、オレには負けるけどな」
小池に言われ、青木は、微妙な顔をする。

「起きてこい。ボスが、話があるそうだ」
小池は言い、リビングスペースとの仕切りを閉めながら、出て行った。

青木は服を着ると、仕切りの向こうに、顔を出した。
小池が、薪の手にする、まるでお猪口のような小さなグラスに、酒を注いでいる。

青木が出てきたのを見て、薪は、アゴをしゃくり、小池に指図をする。
小池は、青木にもグラスを渡すと、そこに、手にしていた酒を注いだ。

「ボスのおごりだ。飲め」
「あ・・はい」
青木は、グラスを手に、薪の向かいに座った。
独特の芳香を放つその酒に、口を付ける・・・

「・・ブハッ!!」
「てめっ!吹くなよっ!!」
「すいませ・・ゴホ・・この酒、強・・ゲホッ・・!」
青木は、傍らにあったナプキンで、口をぬぐった。

「65度のマオタイ酒だ」
「65・・!!」
こともなげに言う薪のセリフに、青木は絶句する。

小池が言う。
「今は、30度位の物が主流だからな。これは貴重品だぜ。ありがたく飲めよ」
「・・・・・・」
青木の目の前で、薪は、この酒を、ストレートでクイッと飲み干し、顔色一つ変えていない。

青木は時計を見た。
時刻は、夜の12時を過ぎている。

そう言えば薪は、朝の6時には、身体を動かしていた。
そして、この時刻に、この強い酒を、淡々と飲んでいる。
・・一体、目の前に居る人間の、一日の活動時間はどれだけあるのだろうかと、青木は薪を見つめ、思った。

薪は、空になったグラスをテーブルに置くと、青木を見上げた。
そして・・話し始めた。

「禁煙法が施行されて12年。中国では、煙草の製造・販売・喫煙が一切禁止された・・それが名ばかりのものとなっていることは、知っているな」
薪は、青木の目を見る。

「中国各地で、闇煙草の取引が行なわれ、また、摘発もされている。禁煙法が施行されてからの方が、喫煙人口自体は、増えている。これは、周知の事実だ・・」
薪は、静かに話し、小池も青木も、黙って聞いていた。

「禁止されればされる程、かえって手に入れたいと思うのは、人間のサガだ。そして、需要があれば、供給が生まれる。粗悪な品を安く仕入れ、そして高値で売り付ける・・そんな人間が溢れた。一方で、元々煙草を作っていた工場や農家の人間は、政府に機械を差し押さえられ、畑は転作を余儀なくされた」

「僕は、家具製造の下請け企業から、その話を伝え聞いた。彼らが悲鳴を上げていると。ちょうど、今の会社を立て直す為、少々荒っぽいこともやっていた頃だ。煙草を作らせ、客に販売するまでを、一手に引き受ける、リスクはあるが、上手く行けば、充分利益が見込める・・最初は、その程度の思いだった」

薪は目を細め、ふっ・・と微笑む。
遠くを見るように、そして、自嘲するかのように。

「・・手を出したら、それは、思った以上に、厄介だった。だが、手は引けなかった。何故なら・・」
薪は、一度言葉を途切らせ、そして、言った。

「彼らが、必死だったからだ」

青木は、想像することが出来た。
政府の人間が来て、それまでやっていた仕事を、突然辞めさせられる。
呆然としていたところに、仕事を再開しろと言ってきた、一人の男。

彼らには、救世主にも、思えた筈だ。

「目立たぬ場所で仕事をさせ、役人と警察を黙らせ、そして、販売ルートを確保する。それは・・とんでもなく、手の掛かる仕事だった。いくつもの邪魔が入り、その都度、一つずつ、排除していった・・様々な手段を使って」

「他の土地では、色々な方法があるだろうが、ここ、ホンカオ島では、煙草の取引は、実にシンプルに組織化されている。・・非合法とは言え、多くの人間が、適材適所に携わり、生活を営んでいる。誰も、損はしていない」

「金の無い人間には、少量販売も行い、無理に高値で買わせることもない。未成年に売り付けることもしない・・身体をむしばむということ以上に、買う金を作る為に、犯罪を誘発するからだ。僕は・・この街に、犯罪者を増やすようなマネをしたいとは、思わない」

「・・・・・・」
青木は、じっと、薪の話を聞いていた。
薪が何故、自分にこんな話をするのか、分かっているからこそ、ただ、聞くしか術は無かった。

「禁煙法が、撤廃に向かっているという噂が、関係者の間に、広がっている。皆、戦々恐々としている。この、煙草マーケットが崩壊することを。今、ホンカオで、この取引が成立しているのは、禁煙法があるからだ。撤廃されれば、外国資本の製品が、この豊かな市場を目指して、一挙に入ってくるだろう。市場価格が大幅に下がり、これまでの取引は成り立たなくなる・・」

「確かに・・この取引によって、僕のところにも、大きな利益が入っている。だが、既にこれは、僕だけの問題ではない。やっと生活の糧を得た多くの人間が、路頭に迷い兼ねない。だから・・お前の持つ情報が必要だ。この市場で、生き残っていく為に」

薪は、じっと青木を見た。
だが青木は、目をそらした。
そして・・手元に残っていた酒を、一気に飲み干した。

「ぐっ・・」
強い酒の味が、ノドを焼くかのように通り過ぎ、芳香が、鼻から抜けていく。

「・・あなたが、何故、ここで密造煙草の取引をしているのか、その理由は、よく分かりました。それを維持したいという思いも・・。でも、結局それは、非合法な事業に、変わりは無いでしょう。国には法律がある。それを、国民は守らねばならない。秩序を保つには、それは、仕方の無いことです」

「・・・・・!」
青木の反論に、薪は、顔をかすかにゆがませた。

「法律を無視した行いをすれば、いつかは、辞めざるを得ない時が来るでしょう。最初は、混乱するかもしれない。でも、それが在るべき姿の筈です。それに・・」

「禁煙法が撤廃されたら、それは、以前と同じ、余所の土地の製品と、対等に競争する状態に戻るだけではないですか? もしそれで、外国資本の製品が、ここを制圧するとしたら、それも、仕方の無いことです。世の中は、競争原理で動いています。より安く、より質の良い物が選ばれる。そうじゃない物は、淘汰されていく。それが分かっているから、企業は皆、努力をするんです。より良い物を求めて・・」

「オレは・・必死に研究をしてきました。煙草が好きだから。人に害を与え、敬遠される物として、無くなってしまうのではなく、楽しむ物として、世の中に残っていくようにと。その為に努力をして、認められれば、採用されて・・。あなたも企業を営むなら、分かるでしょう。努力をする者が残っていく。それと・・あなたが人々の生活を守りたいと願うことは、全くの別物です」

薪は、平静な顔で、青木の話を聞いていた。
そして、言った。
「一介の・・研究員が・・」

低く、小さな声で、つぶやく薪に、青木は、耳をそばだてる。
「お前は、最初からそうだった。この僕に・・そんな口を・・」
「え・・?」

薪は、立ち上がった。
「小池、こいつの荷物を、没収しろ」
「はい!」

「え?」
青木が戸惑ううちに、小池は、素早く青木のバッグやスーツケースを手に取った。
「ちょっ・・!!」
青木が、叫び声を上げる。

「もうお前には、何も期待はしない。二度と・・」
薪は言い、部屋を出て行った。

「終わりだな」
小池が青木に向かって言い、荷物を取り返そうと後を追う青木から身をひるがえし、部屋の外へ出た。

青木は、ドアを開けようとする。
・・開かない。
開けたら警報が鳴るどころではない。
完全に、内側からは開かないように、ロックされていた。

終わり・・終わりとは、一体どういうことだろう。
今度こそ、自分の身が、滅ぶということか。

ここの人間達と交流し、失くしかけていた危機感が、再び、よみがえった。
自分はいつ、どんな仕打ちを受けるのか。

青木は、中国に降り立ってから初めて・・眠れない夜を過ごした。





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