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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
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Scene10:反芻


薪は、ベッドに横になった。

ホンカオ島の北西部に位置する丘陵地に、自宅もあるのだが、ここしばらく、帰っていない。
忙しさのせいでもあり、また、ビルのこのフロア全体が薪の自室のようなものであり、不自由が無いからでもあった。

疲労と、身体に廻った酒のせいで、身体はすぐにも眠りに就きそうなのに、頭だけが、冴えていた。

薪は、この一日を振り返る。

青木が自分のところにやって来て、一瞬、かつて傍に居た友の姿と、重なった。
そして、その友が、北京で、姿を現した・・・

あいつは何故、あんなところに居たのか。
警察は、あいつを追っているのだ。

「鈴木・・」
思わず声に出て、薪は、手の甲でまぶたを押さえた。

そして・・ラウ検事がやって来た。
あの事件の時も、関わった男だ。
互いに便利な関係であった筈なのに、ラウは、一線を踏み越えた。
・・面倒な男だ。

法律撤廃の噂は、取引相手に動揺を招き、更に、トニー・ロンの暴走も招いた。
あいつも焦っている。
稼ぐなら今だと、考えているのだろう。

「ボス・・あんな場所に自ら出て行かれるのは、もう止めて下さい」
トニー・ロンとの争いから戻る車中で、岡部が言った。

後部座席で、岡部は、隣りに座る薪の顔を、じっと見つめた。
だが、薪は、無言のまま、前を向いている。

「あんなチンピラ。僕が威嚇しなくても、お前なら、簡単に仕留められた筈だ」
「それは、そうですが・・」

薪は、自分が撃たれたら、次の瞬間、部下が若者達を全滅させるだろうと言ったが。
その気になれば、トニー・ロンに銃を向けられたその瞬間、岡部は相手に止められるまでもなく、銃を引き抜き、撃つことも可能だった。

だが・・

「ボスはいつも・・出来る限り人を撃つなと。そうおっしゃるから、オレも、不用意に手が出せないんですよ。あんな場面は、もう御免です」
岡部はそう言い、はーっ・・と、ため息をつく。

「あいつは本当にボスを撃ち兼ねなかったから、仕方なく腕を撃った。後は、威嚇射撃にとどめたんですから。動揺して逃げ回るあいつらを、命中しないように追い立てるのも、大変なんです。それに・・」

岡部は、薪の上着に目を落とした。
脇腹の部分が、焦げ付き、溶けている。

「あいつら、ろくに撃ち方も知らない癖に、焦って銃を乱射しやがって。下手な鉄砲も、数撃ちゃ当たることもあるんです。これだって、宇野が相手の脚を撃っていなかったら、命中していたかもしれません」

「そうだな。宇野、ご苦労だった。腕を上げたな」
「・・・・・・」
運転する宇野に、薪はねぎらいの言葉を掛けたが、宇野は、憮然とした表情のまま、何も言いはしなかった。

「宇野?・・」
その反応を、いぶかしげに見る薪に、岡部が言う。
「宇野だって、怒ってるんですよ」
「うん?」

「本当は宇野だって、ボスを狙うような奴は、一撃で仕留めたかった筈です。でも、ボスがそれを望まないことが、分かっているから」
薪は、岡部を見、それから、宇野の後ろ頭を見つめた。

「皆、ボスの身を心配して、気が気じゃないんです。守ろうとしても、あなたは危険な場に、自ら出て行くし、そして部下には、自分の手を汚すな、人を撃つなとけん制する。八方塞がりなんですよ」
「・・・・・・」
薪の瞳が、物思うように、力を弱める。

「今度のことだって、情報を流して、あいつらは警察にくれてやれば良かったんですよ。ボスは、あいつらが大人しく、ここ、ホンカオ島を出て行くことを望んでいるようですが・・分別の無いガキだからこそ、厄介なもんです」

黙ったままの薪から視線をそらし、岡部は、外を眺めながら、言った。
「あなたを見ていると、まるで死に急いでるようで、不安になる・・。あんまり、無茶はせんで下さい」

薪は、ベッドに横になったまま、岡部の言葉を、思い返す。
そうなのか?
自分は、死に急いでいるのだろうか。

分からない・・・。

それにしても、何度指図をするなと言っても、岡部は、自分に忠告をし続ける。
よく、懲りないものだ。
薪は、そんなことを思う。

そして、その岡部以上に、自分に真っ向から反撃してきたのが・・・

「青木・・」
薪の脳裏に、先程の、青木の姿が浮かぶ。

最初は、外国人ゆえに、ホンカオでの薪の力を、知らないせいかとも思った。
だが、いい加減、自分の置かれた立場を認識しても、いいのではないだろうか。

あれは、あいつの本来の性格だ。
しかも度胸があると言うより、あれは・・無鉄砲だ。

だが、青木の言うことも一理ある。
それは、認めざるを得ない。

これまで、財閥の一員として生まれた薪に対して、周囲の人間は、ひれ伏すのが当たり前だった。
反抗分子も多々あったが、それすら、薪の力を知った上で、それに対抗すべく、攻撃を仕掛けてくる者ばかりだった。

自分は厳しい世界を生き抜いてきたと、そう思っていたが。
実は、井の中の蛙でしか、無かったのではないか。
自分は、甘かったのかもしれない。

・・そう、思わされた。

薪の力を全く知らず、こちらの脅しに怯えもせず、ただ、対等な人間として、思うところを述べてきた。
あんな奴は、初めてだ・・・

「あいつの始末は、どう付けますか?」
小池に問われ、
「明朝、考える」
そう答えた薪だったが。

実際のところ、自分は一体、どうしたいのだろう・・・

答えの出ない疑問を反芻しながら、薪は、眠りに落ちていった。



青木は、ベッドに座り、傍らのカーテンを開け、窓の外を眺めていた。
目のくらむような、ネオンの洪水。

手を伸ばせば、簡単に届きそうなのに、今の自分には、とても、遠い・・・

自分は一体、どうなるのか。
考えても仕方のない疑問を、反芻していた。

・・ここから出たい。
その望みは、何よりも青木の胸中を占めていた。

だが、自分の研究成果を、晒すわけにもいかない。
いや・・ここは全てを話し、協力する姿勢を見せて、解放されるチャンスを伺うべきか。
しかし、薪はもう、自分に期待はしないと言った。
小池も、終わりだと言っていた。

今更協力すると言って、無事に、解放されるのだろうか・・・

胸の中を、ぐるぐると不安が渦巻いたが、不思議と、命を落とすようなことにはならないと、そんな気も、していた。

ここを、いつか出られるのか、その見通しすら、立たない。
まして、無事に日本に帰れるのかどうか、全く分からない。

けれど、少なくとも、あの薪という男なら、自分を殺めるようなことはしないと、そんな、根拠の無い考えが、浮かんでいた。

禁煙法という好機に乗じて、人々に密造煙草を売り付け、不当な利益を得ている集団・・ホンカオのマフィアの存在を、そんな風に思っていたが。
実際には、そんな、単純な物ではなかった。

・・いや、薪の言うことが、全て真実とは限らない。
話を全て信じてしまった自分は、甘いだろうか。

だが・・青木には、薪の言うことが、信じられる気がした。
小池が言っていたことも。
それら全てが真実だとしたら、薪は、決して、悪党ではない。

“少々荒っぽいことも”
“様々な手段を使って”

・・・薪は、そう言っていた。
そこには、非合法なやり方も、多々あったのだろう。
そして・・自分を今こうして、不当に拉致している男。

それでも何故か、自分は、薪という人間を、恐れる気にも、憎む気にも、なれなかった。

自分は一体、どうしたらいいのか。
青木は、じっと考え込み、いつしかネオンが消え、朝日が姿を見せるまで、そのまま窓の向こうを、見つめていた。





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