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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene12:将来


「ここに到着してすぐ、お前からメッセージが届いた。さすがだな、薪」

「鈴木・・」
久しぶりに見るその顔に、薪の胸が、うずいた。

しかし、そのうずきを振り払うように、薪は、相手を睨み付け、言う。
「さすがなんて言えるか。今まで、全く足取りが掴めなかった。ひと月以上も、何をしていた?」

「・・心配したか?」
「んっ!?」
薪は、相手の意外なセリフに、言葉を飲み込んだ。
鈴木はと言えば、まるでイタズラっ子のような目つきで、薪の顔を伺っている。

薪は言う。
「お前・・今の立場で、よくそんなことが言えるな」
「ははっ・・」
鈴木は、目を細め、笑って見せる。

「あちこち、移動していたんだ。広州、福州、杭州、上海、南京、天津、そして北京・・」
「それは・・」
薪の目が、見開かれる。

「そう。昔、お前と旅したところだ、薪」
鈴木は、静かにそう告げた。

「鈴木・・・・」
束の間、二人は見つめ合う。

「・・面白かったなあ。二人とも、それまでホンカオ島を出たことが、ほとんど無かったから。見る物、聞く物、全てが新鮮で・・。もちろん、ホンカオに居たって世界中の映像が見られるけどな。お前と一緒に、生で体験するのは、全く違っていた」

薪の脳裏にも、その時の光景が、鮮やかによみがえる。

「ここ、北京も、随分歩いたよな。王府井では、お前、男達に声を掛けられて」
「・・言うな」
「まあ、当然と言えば当然だけどな。どこを歩いたって、男のお前よりもいい女が居なかったから」

「・・そういう言い方は、よせと言ってるだろう」
薪は、片手で顔を覆った。

そして、鈴木の顔を見た。
切迫した状況だというのに、何故、この男に掛かると、こんなペースになってしまうのか。

鈴木は、話を続ける。
「薪には、歴史博物館とか、革命博物館とか、観光地でもないところにも、引っ張っていかれたよな。お前の興味って、いつも意外なところにあって。八達嶺でも、お前は、どんどん先に行って」

北京から程近い、万里の長城の観光コース。
この歴史的建造物を、早く山頂から見たくて、人垣の中、薪は、夢中で階段を登って行った。
ふと振り返ると、鈴木の姿が、無かった。

「鈴木・・?」
急に不安に襲われて、来た道を戻ろうとしたが、登る人並みにまぎれ、ぶつかり・・
「ふっ・・!」

気が付いたら、薪は、鈴木の腕の中に居た。
「大丈夫か?」
薪の腰を支え、そう言って、顔を覗き込んだ、鈴木・・。

「・・あの時お前、足を踏み外したろ」
「あれは、お前が遅いから!」
「先で待ってればいいのに、薪が、オレを探して、戻ろうとしたからだろ」

「・・・・・・」
薪は、小さくため息を付き、端末の画面から、目をそらす。

「あの時、お前、言ってたよな。自分は、経営者になるって」
「・・そうだったか?」
鈴木の話に、薪は、そう答えてみせる。

本当は、忘れてはいない。
鈴木と交わした話を、忘れなどしない。

山頂から景色を眺めながら、鈴木は言った。
「すごいなあ・・。これを何千キロって。これを作るのに、どれだけ労働させられたんだろうな。ご苦労なこった」

鈴木の隣りで、通り過ぎる風に髪を揺らしながら、薪は言った。
「労働させられた・・そうかな」
「搾取されたんだろ。当時の支配者に」

「搾取とは限らない。これだけの事業を行なうに当たり、大きな雇用が生まれた筈だ。不当な労働かどうかは、待遇の問題だろう。労働する上での、安全の確保。速やかに仕事を行なう為の、入念な準備や指導。労働時間と休息時間の割合。労働に見合った報酬。そういった面をクリアすれば、それは、雇用される側にとっても、利益になる筈だ」

「・・・・・・」
薪が話すその姿を、鈴木は、じっと見ていた。
そして、言った。

「でも、その為の金は、どこから出すんだ? 結局、庶民から吸い取った金・・つまり、税金による公共事業みたいなものだろ。莫大な血税を、軍事目的に使うって、どうなんだろうな。しかも、結局は、これを越えて攻め入られることも、度々あったって言うし。・・まあ、その後、家の材料やら何やらで多くが持ち去られ、残った部分はこうして、観光地になってる。結局は、役に立ってるんだろうけどな」

「だったら・・自分の金でやればいい」
「うん?」
薪の言葉に、鈴木は、首をかしげる。

「人の金ではなく、自分の金でやれば、問題は無い。自分の金で、人を動かし、それによってまた、金を生み出す。金があれば人はそれを使い、更に物やサービスが売れ、雇用が生まれる。僕はそれを・・やってみたい」

現在の薪と鈴木の脳裏に、過去の自分達の姿が、流れていく。

「・・お前、一族の会社を継ぐことに、それまで、迷ってたよな。旅の途中、都市部と都市部の間の貧しさも知って、その格差に、お前は驚いていた。土地は痩せ、働き口も無く、出稼ぎに頼る人達も見た。お前は、オレが見る以上に、色々な物を見ていた。見て、感じて・・そして、自分の将来を決めたんだ」

鈴木は、改めて、画面の向こうから、薪を見つめる。
「知ってたか? オレも・・この旅で、自分の将来を決めたこと」

「え?・・」
薪は、鈴木のその後を、振り返る。
ずっと、ずっと・・薪と共に歩み、薪の傍に居た、鈴木。

「本当は・・その決めた将来を、貫きたかったんだけどな」
鈴木が微笑む。
寂しげに・・・

「だったら、戻ってくればいい・・!」
「薪・・」

「お前は、警察に追われてるんだぞ。警察の手に落ちるなんて、僕は許さない。お前を制裁するのは、この僕だ。お前の裏切りを、僕は・・絶対に、絶対に許さない・・!」

薪の瞳が燃え・・その中に、きらりと光る滴が見える。

「薪。・・・シウルン」
昔の呼び名を、鈴木は、口にする。

「相変わらずだな。シウルン(小龍)、その名のとおり、空駆ける小さな龍。感情に火が灯ると、瞳が明るく燃えるんだ。怒ったり、泣いたり・・・笑ったり。お前の色々な顔を、オレは見てきた。お前と居ると、本当に・・毎日が、新鮮だった」

「・・そんな言い方するな! 戻って来い! 僕は絶対に許さない・・許さないぞ・・!」
「ああ、分かってる。オレの裏切りを、お前は許さない。分かってる。全て、分かってる・・・」

鈴木は、静かに、静かに言い、そして・・・画面が暗くなった。

「許さない・・許さない。僕は・・・」
うわ言のように、薪はつぶやく。

「鈴木・・・」
薪の声が、かすれた。

暗くなった画面の前で、薪は、両手で顔を覆い、ただじっと、座っていた。





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