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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene13:人質


薪は、執務室の椅子に座り、デスク上の端末に向かっていた。

その傍らに立つ岡部が、仕事の書類を手にしながら、不安げな声を出す。
「今、あいつを解放したら、面倒なことになりますよ」

「あいつが警察に駆け込んだところで、こちらに被害は及ばない」
薪は、画面から目をそらすことなく、キーボードに置いた指を滑らかに動かしながら、言った。

「確かに、青木という男一人が騒いだところで、何てことないでしょう。ですが、あいつの話を聞いて、会社が告訴をしてきたら。ちょうど、ラウを手放したところですし」
「別に、ラウ一人を飼っていたわけじゃないからな。検察も警察も、まだツテはある」

そこまで言うと、薪は、ふと、手を止めた。
「だが・・厄介なのは、今回、あいつが会う筈だった、役人だな」

薪の言葉に、岡部は、大きくうなずいた。

「そうですよ。直接会う相手は小物だったとしても、そのバックに大物が控えてることは、当然の可能性として考えるべきでしょう」
「だからと言って、どうする。あの男が、こちらの要求に応え、金を受け取るなら、あの男にも弱みが出来る。だが、何も話さず、脅しにも屈せず、金も受け取らないとなると、どうすることも出来ない」

一番、手っ取り早い方法は・・・・

岡部は、胸に浮かんだ、その言葉を飲み込んだ。
薪が、それを望まないことを、知っているからだ。

「とにかく、あいつがこちらに協力するように、仕向けましょう」
「今更、銃を突き付けて、あの男が協力するか? 会社への忠誠心が強く、自分の研究が外に漏れることを、頑なに拒んだ男だぞ」
「それを利用するんですよ。・・あいつが持ち込んだディスクを使って」

ベッドに座っていた青木は、部屋のドアが開く音に、振り返った。

思わず身構える。
現れたのが、これまでに、青木を連れ回った部下達とは違う、いつも薪の傍らに居る、側近と思われる男だったからだ。

岡部が、室内の椅子に座る。
共に入って来た部下が、ドアに近い場所に立った。

「座れ」
岡部が言い、青木は、様子を伺いながら、示された向かいの椅子に座った。

「ここから、出してやる」
「・・え?」
思いがけない岡部の言葉に、青木は、耳を疑った。

「ここから、出してやる。支度をしろ」
もう一度、岡部は言った。

「あ、あの、どういう・・」
青木は、とっさに理解出来なかった。
ここから出たいと、強く願い続けていたにも関わらず、いざ、その願いが叶うとなったら、戸惑う気持ちが先に立った。

出してやるという言葉を、どう受け止めたら良いのだろう。
自分は、無事に帰してもらえるのだろうか。
それに・・

「オレの荷物は・・」
「返してやろう。お前の態度によってはな」
青木の質問に、岡部は、そう言った。

まだ戸惑いを見せる青木に、岡部は、詰め寄るように身を乗り出し、言う。
「正直に言おう。ボスは、お前のことを・・手に掛けるつもりは、無い」

岡部の言葉に、青木は、キョトンとした顔で、瞬きをする。
「・・驚かないのか?」
岡部は、青木の顔を見つめた。
拉致監禁されたこの状況で、自分の身が危うくなることを、目の前の男は、考えなかったのだろうか。

「たぶん・・あなたのボスは、薪さんは、そんなことはしないような気がしていたので」

「・・・・・・」
岡部は、あからさまに呆れた表情を見せた。
能天気にも程がある。
いや、人を見る目があると言うべきなのか・・?

少なくとも、自分は、その可能性を考えた。
この青木という男が現れた、その日から。
薪が、この男を客人として迎えると言った時、面倒ごとを持ち込む男ではないかと、そう思えたのだ。

薪の身に、何か厄災を振り掛けるような男なら、自分が、排除せねばと。
・・そう、今は居ない、鈴木の代わりに。

だが、薪は、それを望まない。
薪に銃を向けた男ですら、殺すなと。
手を汚すなと。
そう言って。

「・・・あの」
黙り込んだ岡部に向かい、青木は、遠慮がちに声を掛けた。

「お前の持ち込んだディスクだが」
岡部は、話し始めた。
「あれだけは、返すわけにはいかない。お前が自分の口から全てを話すなら、そのまま返しても良かったが。お前が口を割らない以上、あれは、こちらでいただくことにする」

「それは・・!」
青木は、岡部の顔を見、更に下を向いて思案する。
大切な研究資料ではあるが、この状況では、仕方ないだろう。
拉致され、奪われてしまったとなれば、田城はじめ、会社の人間達だって、分かってくれる筈だ。

まずは、ここから無事に出ることだ。

青木のその様子を見て、岡部は、更に続けた。
「ここを出てからも、お前が、大人しくしているなら、あれは、解析して、こちらで閲覧するだけだ。だがもし・・」
岡部は、そこで語気を強めた。

「もし、お前や、お前の会社が、我々を訴えるようなことをしでかしたら、その中身を、ネット上に流す」
「え・・!!」
青木は絶句した。

「お前は、パスワードが無いと開かないと言ったが、こちらの解析システムで、ファイルを開くことが出来た。そして、いつでも、お前や、お前の会社の人間が研究開発したその内容を、全てネットで流すことが出来る。そうなれば、お前達のライバルである、世界中の煙草関連企業も、それを自由に見ることが出来るわけだ」

青木は、真っ蒼になった。
自分の人生を掛けてきた研究が、会社の財産が、公の物となってしまうとは・・・

「情報を奪われるというのは、そういうことだろう。それをどう使われようと、お前は、手も足も出ないんだ」
「・・・・・・」
岡部の言葉に、青木は、無言になった。

「いいか、約束しろ。ここで見たこと、聞いたこと。お前が拉致され、ここに監禁されたこと。何一つ、誰にも漏らすな。もし、万が一にも、今回のことで、ボスに危害が及ぶようなことになったら・・お前の研究は、世界中の目に晒されることになる。・・いいな?」

青木は、頭を抱えた。
3枚のディスクが、完全に人質となってしまった。

「お前が約束を守りさえすれば、無事に帰してやる。ホンカオを出たところまで送ろう。ホンカオ島に居たなんて、誰にも話すなよ。あとは自力で、上海なり日本なり、好きなところに行け。約束を・・守れるな?」
「・・・はい」

青木は、そう返答するしか、無かった。
だが、たとえ無事に解放されても、会社の人間達に、何と説明したら良いものか・・

青木の心中を読んだのか、岡部が言う。
「会社の人間への言い訳は、自分で考えろ。記憶喪失になっていたとでも言えばいい。とにかく、ディスクはこちらで握っているんだ。それを・・忘れるな」

「とにかく、出る支度をしろ」
岡部にそう言われ、青木は立ち上がり、洗面所へと足を運んだ。
前夜は風呂に入ってないが、とても、今からシャワーを浴びる雰囲気では無かった。

青木は洗面を済ませ、バスルームに掛かっていたスーツを着ると、岡部の前に現れた。
「・・酷い格好だな」
岡部が、言った。

青木は、Tシャツの上に、シワの残るスーツを身に着け、染みの出来た革靴を履いていた。
そのスーツは、ここに到着したその日に、着ていた物だ。

前日に着ていたスーツやシャツは、洗車をして、汚れて濡れたままだ。
それ以外の服は、前夜、小池がスーツケースもろとも、全て持ち去ってしまった為、他に着る物も無かった。

髪は、洗面の時に濡らしてタオルで拭いたが、ドライヤーでゆっくり乾かす気にもなれず、湿ったままになっている。
ヒゲだけは、備え付けのシェーバーで急いで剃ったのが、せめてもの救いだった。

岡部は首を振ると、立ち上がり、青木を連れて部屋の外へ出た。

「あの・・薪さんには、もう・・」
青木は言った。
前夜、青木に話をしていった薪の姿が、脳裏に浮かんでいた。

「・・ボスは、支度で忙しい」
「支度?」
青木の質問に岡部は答えず、代わりに、内ポケットで鳴るケータイを手に取った。

「・・分かりました」
岡部は電話の相手にそう言い、話を終えると、青木の顔を見た。

「来い。ボスがもう一度、お前と話したいと言ってる」
そして岡部は青木に背を向け、先に立って歩き始めた。

青木は、岡部の言葉に、何故か、ホッとするような思いがし、進んで後に付いて行く。

いつものエレベーターに乗るのかと思ったら、連れて行かれたのは、そのフロアの突き当たり。
ドアを抜け、青木は、そこが何のスペースなのか、分かった。
目の前にあるのは、最初の日に乗った覚えのある、とてつもなく広いエレベーター。

上から、そのエレベーターの箱が降りてくる。
それを見ただけで、青木は胸に、何か酸っぱい物が、上がってくるような気がした。

エレベーターのドアが開く。
黒いリムジンが現れた。

「おい!」
立ったまま、進むのを躊躇する青木を、岡部が促した。

「乗れ」
言われて、開いた後部座席のドアに、青木は乗り込む。

「えっ?」
青木は、そこに居た人間の姿を見て、一瞬戸惑い、それから、顔を上げた相手を見て・・

「えええええっっ・・・!!」
・・叫んだ。

そこに座っている人は、明るい銀色の、シルクのロングドレスを着ていた。

ドレスは、1920年代風と思われる、ローウエストで、直線的なシルエット。
周囲の光を反射して、ドレスの表面に施された、立体的な刺繍がキラキラと輝く。
スカート部分には細かなプリーツが入り、着ている人間が足を動かす度に、裾が揺らめいている。

細い首には、紺色のベルベッドのチョーカーが巻かれ、そのトップには、宝石と思われる、銀色の薔薇。
銀色のミュールを履いた足首は細いが、スカートの裾からちらりとのぞくスネは、筋肉質であることが分かる・・・

髪は、栗色の地毛を生かしたまま、前髪だけ、額が見えるようにセットされ。
その額の下で、長い睫毛に縁取られた大きな瞳が、青木を見上げていた。

「・・・・・・」
口を開けたまま、言葉を失っている青木を見て、相手は、こともなげに、言った。

「男がドレスを着ているところを、見たことが無いのか?」

青木の耳に届いたのは、間違いなく、薪の声だった。





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コメント

■ きゃあ(≧∇≦)☆

こんにちは。かのん様!

えええええっっ!!!←たつままも青木と同じ状態(゜▽゜)

薪さん実は銀色のドレスを纏った姫さまでしたかっっ!!!
・・・超びっくりいたしました!!

うんっ!!
スネは筋肉質??? 中国拳法の有段者だからか(笑)

いやん!薪さんのお言葉で男性だと分かりましたが・・・
初対面の時、青木が薪さん綺麗だけど雰囲気は男性だと言ってましたが・・・お前の目は節穴だったのかと一瞬疑いました(^_^;)

ローウエストのドレス・・・身体の線がハッキリと出ますね~細い麗しい腰のラインがばっちり☆☆☆

銀色の刺繍入りのドレスに銀色のミュール・・・首には紺のベルベットのチョーカー・・・想像するだけでうっとりしてきました(〃∇〃)
かのん様の薪さんの表現って本当に素敵です☆☆☆

そうか、支度ってこの支度なのね♪ パーティーに行くのですからドレスアップを、ですね(^_^)v☆☆☆

・・・???
なぜ・・・ドレス???
一族揃って仮装パーティ???(笑)

きゃ~(≧∇≦)
続き、早く拝読したいです!!
薪さんのパーティーシーン気になります☆

あ、青木!!
解放されるみたいですね。大飯食らいだし・・・確かに飼うにはお金掛かりすぎでしたね(笑)

薪さんの寵愛を受けられなくて残念だったね・・・。
薪さんの美しさと優しさをひっそりと胸に抱いて日本に帰りなさい!!!
くれぐれも、薪さんの邪魔にならないようにね~(・o・)ノ

でないと、ネットでお前のぱんつ一丁で爆睡している姿を流すわよ(^▽^)v♪♪♪

・・・いや、待て!!
やっぱり帰らないで~(∋_∈)
その辺で邪魔にならないようにビルの清掃でもしていて!!

かのん様!!
まだまだ青木主任の事を見捨てないで、薪さんと絡ませて下さい。お願いしますm(_ _)m

人質・・・物質だったのですね! さすがです。

■ たつままさま

○たつままさま

こんにちは。
毎度コメントありがとうございます!

> えええええっっ!!!←たつままも青木と同じ状態(゜▽゜)
> 薪さん実は銀色のドレスを纏った姫さまでしたかっっ!!!
> ・・・超びっくりいたしました!!

あははははは・・(誤魔化し笑い)

すみません、こんな物を書いてしまって・・。
せっかく1920年代風ファッションをお召しなので、ドレスも着用いただきました(^^;)

女性化薪さん以外で、男性のままでの女装を書くというのは、初めてかもしれません。

> うんっ!!
> スネは筋肉質??? 中国拳法の有段者だからか(笑)

実は腕も結構鍛えてる感があると思うのですが。
まあ、腕はまだ、脂肪の無い女性の腕に見えるかもしれないなと。
でも、スネの筋肉の付き方は、やはり女性とは違うことが分かってしまうと思います。

> いやん!薪さんのお言葉で男性だと分かりましたが・・・
> 初対面の時、青木が薪さん綺麗だけど雰囲気は男性だと言ってましたが・・・お前の目は節穴だったのかと一瞬疑いました(^_^;)

フフ♪
「姫」シリーズは、男装の女性で、「山の声」は、男性の女性化でしたが、今回は、しっかり最初から最後まで男性です(^^)

> ローウエストのドレス・・・身体の線がハッキリと出ますね~細い麗しい腰のラインがばっちり☆☆☆

そうですね。
お尻やお腹は細くないと、マタニティになってしまいますよね(^_^;)
代わりに、胸は無くても目立たないデザインなので、女装にはピッタリかと。

> 銀色の刺繍入りのドレスに銀色のミュール・・・首には紺のベルベットのチョーカー・・・想像するだけでうっとりしてきました(〃∇〃)
> かのん様の薪さんの表現って本当に素敵です☆☆☆

いえいえ。
たつままさんの豊かな想像力に、いつも助けられております。
ありがとうございます(*^^*)

> そうか、支度ってこの支度なのね♪ パーティーに行くのですからドレスアップを、ですね(^_^)v☆☆☆
> ・・・???
> なぜ・・・ドレス???

あ・・気が付いちゃいましたね(笑)
そうです、何故ドレスなのでしょう。

> 一族揃って仮装パーティ???(笑)

あ、そんな感じです。
時には警察官等のコスプレもするそうですよ(笑)

> きゃ~(≧∇≦)
> 続き、早く拝読したいです!!
> 薪さんのパーティーシーン気になります☆

あ・・・
パーティーシーンと言える物は無いかも・・(><)
すみません~~!

> あ、青木!!
> 解放されるみたいですね。大飯食らいだし・・・確かに飼うにはお金掛かりすぎでしたね(笑)

このまま居ても役に立たないので(笑)

> 薪さんの寵愛を受けられなくて残念だったね・・・。
> 薪さんの美しさと優しさをひっそりと胸に抱いて日本に帰りなさい!!!
> くれぐれも、薪さんの邪魔にならないようにね~(・o・)ノ

あ・・いいんだ。
このまま帰っちゃって、いいんですね・・・。

> でないと、ネットでお前のぱんつ一丁で爆睡している姿を流すわよ(^▽^)v♪♪♪

ぶはっ!!(大ウケ)(≧m≦)

> ・・・いや、待て!!
> やっぱり帰らないで~(∋_∈)
> その辺で邪魔にならないようにビルの清掃でもしていて!!

あ・・良かった。
まだ帰らないでって思って下さって(^^;)

> かのん様!!
> まだまだ青木主任の事を見捨てないで、薪さんと絡ませて下さい。お願いしますm(_ _)m

はい!もちろんです!
このまま帰ったら、「じゃあ最初から、ディスクの入った荷物だけ盗れば良かったのでは」というお話になってしまうので(笑)

もうちょっと、見守ってやって下さいm(_ _)m

> 人質・・・物質だったのですね! さすがです。

ありがとうございます。
サブタイトルを考えるのも、楽しい反面、それなりに時間が掛かり迷う作業なので・・目を留めていただき、嬉しいです!

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