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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene14:灯り


薪は言う。
「女がイヴニング・ドレス、男がタキシードやテイル・コートで着飾るにも、限界がある。飽きるから、時々こういった、逆のドレスコードが指定される。別に、よくあることだろう」

「・・ありませんよっ!」
ようやく声の出た青木は、思わず大声を上げた。

「稀に、コスチューム指定の時もある」
「コス・・」
「軍人や警察官、メイドやナース等、専門職のコスチュームを着用するんだ。気分が変わるぞ」
「・・・・・・」

青木は、無言になった。
金持ちの考えることというのは、よく分からない。

それにしても・・

薪の姿を、改めて上から下まで見つめる青木に、薪は、怪訝な顔をする。
「そんなに、変か?」
「あ、いえ」

青木は、首を振りながら、感心したような顔で薪を見つめ、素直な感想を漏らした。
「変どころか・・似合ってます。こんないい女、見たことないかもしれません」
「え・・」

目を見開く薪の前で、青木は、ふと薪から視線をそらし・・
「う、うぐっ!」
一瞬にして真っ蒼な顔になり、口を塞いだ。

薪の姿に驚き見とれ、車ごとエレベーターで降下していることを忘れていたが、周囲の様子が目に入った瞬間、ノドに込み上げてくる物が。

「吐くなよ!」
前の座席から岡部の声が飛び・・青木は、それを飲み込んだ。

エレベーターは最下層に着き、そこから、車は道路へと走り出す。

青木は、深呼吸をしながら、薪を見た。
薪は、脚を組み、両腕を肘掛に乗せ、その片手に頭を乗せながら、前を向いている。
ドレスを着ているとは言え、そのポーズは、これまでに見てきたボスの薪そのものだ。

薪は、青木の視線に気付いたのか、ちらりと青木に視線を泳がせると、あからさまに不機嫌な表情で、目をそらした。

結局、自分が何も話さなかったことを、苦々しく思っているのだろうか。
それとも、今、吐きそうになったことに、呆れたのだろうか。

いや、いい女などと言ったことが、気に入らなかったのかもしれない。
確かに、男の薪にしてみれば、気分を害したに違いない。

そんなことを、青木は思う。

やっと気分が落ち着いてきて、青木は外を見た。
スモークガラスの向こうに広がる、外の景色。
閉じ込められていた部屋から見下ろす物とは違う、すぐそこにある、風景・・

そんな青木を、薪は、見るともなしに見ていた。

“どこを歩いたって、男のお前よりもいい女が居なかったから”
今朝聞いたばかりの、友の言葉が、薪の胸をよぎる。

この男は・・どうして、こう・・・

薪は、瞬きをすると、言った。
「あのディスクの情報は、僕が握っているからな」
薪の言葉に、青木は振り返る。

「岡部から聞いたと思うが。これから先、余計なことを、言うな」
キッパリと言う薪の視線は鋭く、青木を突き刺してくる。

「・・はい」
青木は、神妙な顔でうなずいた。

「それにしても・・」
薪は、話を続ける。

「あの研究には、どれ位時間を掛けたんだ?」
「どれ位・・自分が煙草を吸うようになってから、これまで。その人生全てでしょうか」
薪の質問に、青木は答えた。

「ふうん・・」
薪は、青木の様子を伺うように目を上げると、言った。
「研究内容は分かったが、あれを、何故政府が欲しがったのか、どう使うつもりだったのかが、今一つ分からない」

「それは、オレだって、聞いたわけじゃありませんけど。結局、禁煙法を撤廃するに当たり、いきなり全てを撤廃するよりも、より健康に害の少ない物から徐々に解禁していく方が、世論の支持を得られるからじゃないでしょうか。NTIにしてみれば、一番乗りで中国市場に参入出来るチャンスですし、双方の利害が一致したということなんでしょう」

「・・そうか」
「まだ日本でも製品化されていませんが、いずれは、これが落ち込んだ煙草産業を活性化する、煙草市場の主流を担っていくと、オレは思っています。煙草は、100害あって1利無し、と言われています。でも、その利害を逆転したい。酒もコーヒーも、悪者にされた時代もあったけれど、今は、その効能が認められています。煙草も、そうなる日が来ると、オレは信じています!・・」

青木がふと気が付くと、薪が無言で見上げていた。
「あ・・」
青木は、片手で額を押さえた。

顔が、恥ずかしさで火照るのが分かる。
研究について語り始めると、ついつい、熱くなってしまう・・

「お前は・・自分のやっていることに、未来を見ているんだな」
薪は言った。
「夕べのお前の話もそうだ。お前は、自分のやってることを信じ、世の中を信じ、明るい未来を信じている。混沌としたこの世界を、お前は、どうしてそんなに、信じられるんだ・・?」

薪は、目を伏せた。
見ず知らずの男達に拉致された、この非日常な状況でも、迷いなく、自分を保ち続けたこの男は、一体、何者なのだろう・・・

「・・・・・・」
そんな薪を、青木は黙って見つめていたが。

「・・信じているのは、あなたもでしょう? 薪さん」
青木の言葉に、薪は、目を上げる。
青木が、真っ直ぐ、自分を見ていた。

「今回のことには、色んなやり方があった筈です。でも、あなたは」
青木は、そこで言葉を継いだ。
「あなたは、オレに、きちんと向き合ってくれた。ただの情報源ではなく、一人の人間として、向き合えばオレが協力するのではないかと、そう、信じて。全く知らないオレという人間を、あなたは、信じようとした」

「結局・・オレには、あなたのやり方は、理解出来ませんでしたけど。オレから情報を奪うことも。非合法な商売も。とても、オレには受け入れられない。でも、あなたはあなたなりに、自分のやり方を、信じてきたんでしょう? あなたがしてきたことは、あなたが信じる明るい未来に繋げる為なんでしょう?」

「・・お前」
薪は、目を大きく見開いて、青木を見ている。
そんな薪の様子を、前のシートから、岡部が、黙って見ていた。

青木は、話し続ける。
「今日、あそこから出られると知った時、嬉しかったんですけど、でも、その前に、もう一度、あなたに会わなければいけないような、気がしていました。何故なのか、今、分かりました」

青木は、薪の目を見て、言った。
「夕べ、あなたと話した時、あなたを・・傷付けてしまったような気がして。オレは、間違ったことを言ったとは思ってませんけど。でも・・出ていく時のあなたの後ろ姿が、頭から離れなくて・・」

ぎこちなく言葉を紡ぐ青木から、薪は、視線をそらし、言う。
「変な奴だな。拉致され、自由を奪われて、研究資料を取られた人間が、考えることじゃないと思うが」

「・・そうですね」
青木は苦笑する。
「でも、良かった。こうして、もう一度、薪さんと話すことが出来て。大変な思いはしましたけど、結局は、美味い飯も食わせてもらったし。これで無事に帰れるなら、オレは、薪さんを訴えたりはしません」

「青木・・」
薪は青木を振り返り、そう言った。
薪の口から、その呼び名が初めて出たことに、青木も、薪本人も、気付いていなかった。

「オレが約束を守れば、あなたも約束を守る人だ。・・信じていいですね」
薪は、思わずうなずいた。
そして・・首をかしげた。

おかしい。
拉致して、ディスクを奪い、約束を守れと脅したのは、自分の方の筈なのに・・。

辺りは、夕闇に包まれ始めていた。
車は海岸沿いを走り、窓から、輝く波が見える。

大きなレストランの前に着いた。
古いヨーロッパ調の造りは、植民地時代の名残だろうか。
白壁にネオンが反射し、建物全体が、薄紫色に浮かび上がって見える。

車が停まると、岡部は助手席から降りた。
ほぼ同時に、薪が座っている、反対側の後部座席のドアが開いた。
差し出された手を取って、薪は車の外へと降り立った。

青木が車の中からそちらを覗くと、黒いタキシード姿の男が、立っていた。
そこで青木は初めて、すぐ後ろに、もう一台、薪の部下の車が付いてきていたことに気が付いた。

後ろの車から降りてきて、薪のエスコートをする今井の腕に、薪は自分の手を絡めた。
「どうも、このハイヒールだけは慣れない。階段を上るところまで、頼む」
「はい」
今井は、ニッコリと微笑んだ。

そんな今井に、薪がささやく。
「お前も、ドレスを着ても良かったんだぞ」
「・・オレは、ボスのエスコート役で結構です」

今井と共に、レストランの入り口に向かって歩きかけ、ふと、薪は足を止めた。
「青木」
その呼び掛けに、岡部が、車中の青木に声を掛けた。
「降りろ。薪さんが呼んでる」

青木が車を降りると、薪は、今井から腕を離し、青木に近付いた。
リムジンの前で、ドレス姿の薪と、シワだらけ・・なのは夕闇で何とか誤魔化せそうなスーツ姿の青木が、向かい合う。

街灯と、レストランから届く灯りが、夕闇と溶け合って、薪の顔に、陰影を作っていた。

「後ろの車で、小池が、お前をホンカオの外れまで送ることになってる」
「はい。お世話になりました」
青木の言葉に、薪は、クスッ・・と、笑い。

あ・・・。
青木は、薪のそんな顔を、初めて見た気がした。
これまでの、挑むような微笑ではなく、何というか・・

「今井」
薪は、青木から目をそらし、今井を呼んだ。
今井が急いで傍に寄り、二人は改めて腕を組み、レストランの階段を、登っていく。

薪は青木に、それ以上、何も言わなかった。
何も言わず。
振り返りもせず。

レストランの中へと、消えていった。

リムジンは、薪の部下の運転で、駐車場へと去っていく。
後には、小さな車が一台と、その運転席に座る部下。

そして、その場に立つ青木、岡部、後ろの車から降りてきた小池が、残された。
「じゃあ、こいつを頼むぞ。オレは、会場に入って、ボスのガードに立つからな」
そう言って、岡部は、レストランに入っていった。

「ガードって・・」
青木が言うと、小池が答えた。
「ああ。岡部さんは、仕事の側近でもあり、同時に、ボスのボディガードでもあるんだ。今日は今井さんが付いてるけど、銃も持ってないしな」

小池は、レストランを見上げ、話を続ける。
「すげえ建物だろ。ワン一族のお抱えレストランだ。VIPが集まるんで、色々と防犯システムも揃ってるんだ。たとえ親族と言えど、ここに入る人間は、銃の持ち込みは禁止。隠し持っていても、センサーが反応して、入る前にドアが閉まるようになってる」

「へええ・・」
青木が言い、小池は更に話した。
「中からの操作で、あらゆるドアや窓の開閉を止めることも出来るそうだ。内側からロックを解除しない限り、外からは何を使っても開かないって言うぜ」

「さて、行くか」
小池が言い、二人が振り返ろうとした瞬間・・

「うわっ・・!」
「なっ!」

覆面をした男達の一群が、突進してきた。
小池はとっさにそれを避け、階段下にうずくまる。
青木は避けきれず、男達に押されるように、一気に階段の上へと流された。

「おい!お前!」
「うわっ!うわわ・・・!」
「どけっ!」

階段の様子をカメラでチェックしていた内部の警備員が、すぐにドアロックをセットする。
入り口に居た警備員が、男達と格闘する。

「チッ!」
小池は舌打ちをし、階段を駆け上がる。

ドアが閉まる。

全ては、数秒のうちに過ぎ去った。

ドアが閉まったその時。
外には、入り口に居た警備員と、5人の覆面の男達。
そして小池が、残された。

覆面の男達の過半数と、そして青木は、その場に居なかった。





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コメント

■ 

○たつままさま

コメントありがとうございます。

>なぜでしょう? コメントをしましたが、『コメントが空欄です。』と出てしまい、コメント出来ませんでした。
> 長文ですが、こちらに失礼しますm(_ _)m

お手数をお掛けして、申し訳ございません!(><)
何かFC2側で、またも不具合が出ていたのでしょうか・・(TT)

それにも関わらず、こうしてコメントを試みて下さいまして、本当にありがとうございましたm(_ _)m

>青木は、僅かな対面や少しの会話でも薪さんの確信に触れて、薪さんのお心を揺さぶってしまうのですね・・・。

繊細でピッタリな表現を、ありがとうございます。

青木は、妙に勘がいいところと、図太さが売りです(笑)(←せっかく素敵に表現していただいたのに、実もフタも無いような・・)

>自分が人質ならぬ物質を握って約束させるはずだったのに薪さんったら・・・気が付いたら青木に約束させられていましたね(^_^)

薪さんは、鈴木さんや青木のように、自分のペースを崩される相手に、弱いような気がします。
岡部さんのように、自分のペースに合わせてくれる人にも、ホッと安心するのでしょうけどね(^^;)

>未来を、自分を信じる青木の真っ直ぐさと、自分の信念を信じ、優しさを労りの想いで周りの人々を守る薪さん。
>二人の想いが交わる日が来てほしいとたつままは切に願います!!

ありがとうございます。
そんな思いで読んでいただけて・・本当にありがたいです(TT)

>それにしても・・・コスチューム指定のパーティー(≧∇≦)
>薪さんのドレス姿、じっくり拝見して、なめまわして写真を撮りたいです☆

そうですね。
あらゆる角度から撮りたいですね!(笑)

>が・・・他のごっつい中年太りをした毛だらけのオジサマ方(失礼しました。イメージです!)のドレス姿は・・・想像すると怖いです(^▽^;)

すすす・・すみません。
まさしくそんな感じのオジサマを登場させてしまいました(><)
(ティンフン伯父さんのイメージは、私の中では総監だったりします←えええええっ!?)

>いやいや、薪さんの親族ですから、美男美女揃いかも(〃∇〃)

あ、そういう人も居ると思います。

薪さんはですね、母親が、ワン一族の華と呼ばれる美女だったんです。
なので、それを射止めた薪さんの父親は、親族から妬まれていたりするんです(裏話)

>えええええっ・・・!
>あ、青木!なんで、覆面集団に巻き込まれているの!!
>プロでなくてもドンくさ過ぎ!!

すみませんすみません。
ドンくさくてすみません!(><)

でででも、こうでもしないと、青木、中に入ることが無さそうなので。
(この青木は、自分から、事件の渦中に飛び込んで、人助けしようとはしない、情けない男なのですね~^^;)

>さて、青木は騎士になるのでしょうか? それとも囚われの姫(笑)???

さてさてどうでしょうか?
「姫&騎士」ネタを出して下さって、嬉しいです(〃▽〃)

あの青木(アオキール)だったら、颯爽と薪さんを救おうとするのでしょうけどね(笑)

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