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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene18:誤解


薪が外を見ると、そこに、関係者達に事情聴取をしている、警官達の姿が見えた。

「おい!タオルを持って来い!」
警官が叫ぶ。
警察が用意した大きなタオルを受け取ると、薪は、それを後ろに居た、今まさに立ち上がる瞬間のその男の顔に、かぶせた。

「小池!!」
外で様子を伺っていた小池が、薪の呼び掛けに、走り寄る。

「ボス!無事で・・」
「こいつを、ここから連れ出して、帰るんだ!」
「え?ですが・・」
「すぐに行け!」

「は、はい!」
人々が右往左往する中、小池は、タオルをかぶった青木を連れて、その場を抜け出した。
「付いて来い!」
小池に言われ、青木は、何が何だか分からないまま、その後を付いていく。

薪は、首から下を、足首までタオルでスッポリと覆い、先へと歩き始めた。
テープが張られたその向こうに、記者達の一群が居る。
薪に向かって、フラッシュがたかれる。

他の人間と話していたチェンが、薪に気付き、近付いてきた。
「ご苦労だったな」
「いえ」
「君のお陰で、犯人一味の身柄は、確保した」

「そうですか」
言いながら、ふーっ・・と、薪は息を吐いた。
「君の部下達は、それぞれ、あちらで事情聴取を受けている。君を探しに行くと言って、二人とも聞かなくてね、我々を手こずらせてくれた」

「・・申し訳ありません」
謝罪の言葉を口にしながらも、薪のその口端に、かすかに笑みが宿る。

そんな薪の顔を見て、チェンは言う。
「君は、病院に行った方がいいな。もちろん、君が倒した男達とは、別室にしよう」
最後のセリフには、フフッ・・と、笑いが交じる。

「いえ。どこも怪我はしておりませんので。このまま僕も事情聴取を受けますから、終わったらすぐに、部下と共に帰らせていただきたい」
そう言う薪に、チェンはわずかに首を傾け、薪の姿を見やる。

タオルをかき合せた間から伸びる細い首に、濡れた髪が巻き付いている。
その髪からも、タオルの下から見えるドレスの裾からも、ポタポタと滴が垂れ落ちている。
身体は震え、唇は紫色に染まりながら、頬にはかすかに赤みが差し、濡れた睫毛で、相手をじっと、見上げる薪。

「怪我はしていない・・そうかな」
言うと同時に、チェンは、薪の身体をタオルごと抱え上げた。

「!!・・」
「君の足」
言われて薪は、自分の足の方を見る。

「かかとや足の裏が、傷だらけだ」
チェンの言葉に、薪は眉間にシワを寄せる。
素足で走り回っていたのだ。
多少の傷は出来ているかもしれないが。

「それ位で・・!」
「君は警察の協力者だ。怪我をさせたまま、帰すわけにはいかない」
「離っ!・・」
薪は相手を殴り付けようとしたが、タオルにくるまれて抱かえられては、手も足も出ない。

「ボス!」
「ボス!大丈夫ですか!」
薪の部下達が、チェンに運ばれる薪に気付き、走り寄ってきた。

「岡部!今井!こいつを何とかしろ!」
チェンの腕の中でもがきなら、薪が叫ぶ。

「何とかって・・」
岡部と今井は、顔を見合わせる。
ボスの命令とは言え、相手は、警察の人間だ。
下手に手を出すわけには、いかない。

もちろん、薪に危害を加えようとする者なら、たとえ相手が警察でも黙ってはいない。
だが、そういうわけでもなさそうだ。

戸惑いを見せる岡部達に、チェンが言う。
「安心しろ。君達のボスを病院に運んで、怪我の手当てをするだけだ。終わったらすぐに帰してやる」
「ふざけるな!こんな・・」
わめく薪だったが、岡部達が見守る中、有無を言わせず救急車に乗せられてしまった。

救急隊員に薪を預けると、チェンは楽しそうに微笑んで、岡部達を振り返り、そして、現場へと戻っていった。

「・・今井、薪さんの後を追って、病院に行け。オレは・・向こうを何とかする」
岡部が言い、今井がうなずき、それぞれ別の方向へと、去って行った。

岡部が何とかしようとしている「向こう」とは。
薪の預かり知らぬところで、別の一件が、動いていた。

「お前は、ここで待ってろ」
小池はそう言うと、青木を車に一人残し、歩いて出て行った。

レストランから、小池は青木を連れ出すと、青木を車に乗せた。
その車を運転していた部下は、そこには居なかった。

後部座席に座り、青木はタオルを身体にかけ直した。
「連れて帰れって言ってもなあ・・」
小池の声が聞こえた。

小池は運転席から振り返り、青木の顔を見た。
そして頭を振り、ため息を付く。

「とりあえず、ボスの命令だ。事務所の近くまで、戻るからな」
小池の言葉に、青木は、目を上げた。

この状態のまま、ホンカオの外れで放り出されるよりは、いいかもしれない。
だが、また事務所に戻ったら、再び拘束される可能性は、あるのだろうか。
今ここで、逃げた方が得策か。
だが、とりあえず、どこかで着替えたい。

青木は、考えることが、面倒になっていた。
この数日、あまりにも色々なことがあり過ぎて、青木は心身共に、飽和状態だった。
そして、薪が見せた、様々な顔・・・

シートに身体を持たせると、眼鏡がずり落ちた。
青木は、それを手に取り、タオルで顔を拭いた。

再び眼鏡を掛けようとして、その手が止まる。
“あとで弁償する”
薪は、そう言っていた。

再び自分と会うことを、薪は、信じているのだ・・・。

「・・・・・・」
青木は眼鏡を掛け、天井を見つめた。
逃げようという選択肢は、自分の中には無いと思った。

ただ、気になるのは、心配する人々のことだ。
自分は無事だと伝える、その手段さえあれば・・・

車は何故か、事務所のビルには入らず、そこから少し距離を置いた、裏道のパーキングに停まった。
そして小池は青木を残し、出て行ったのだ。

「待ってろ」と言いながら、小池は青木を振り返った。
だが、それ以上は、何も言わなかった。
たとえ、青木が待たずにここから居なくなったとしても、もう構わないのかもしれなかった。

何よりも、青木のことより、小池は、何か気に掛かることがあるようだった。
青木のことなど、構っていられない、何か・・。

小池が居なくなってから、青木は、助手席に、小池の上着が置かれたままになっていることに気が付いた。
もしかして・・・
青木は手を伸ばし、上着の内ポケットを探った。

あった・・・。

拉致されたその日、小池が青木から没収したケータイ。
翌日、小池が胸ポケットから煙草を取り出そうとした時、もう一つの内ポケットに、青木のケータイがのぞいてるのを、青木は見たのだ。

その時は気付かないフリをしたが、いつか、機会があれば、それを取り返したいと思っていた。
きっと、青木のケータイは、小池がずっと持ち歩いていて、今日、ホンカオを出る時に、返すつもりだったのだろう、そう青木は考えた。

青木は、周囲を伺い、それから、ケータイの電源を入れる。
「うんっ!?・・」
青木は、目を向いた。

200件以上にも及ぶ、着信履歴や伝言、そして受信メール。
そのほとんどは、NTIや、田城からのものだ。
全てをチェックしている暇は無い。

とりあえず、青木は、田城に電話を掛けた。

「青木主任!君か!」
「はい。青木です」

「無事なのか?」
「はい・・!」
ハーッ・・と、長いため息が、電話口から、漏れた。

「すみませんでした。長い間・・ご心配をお掛けして」
「いや。無事ならいいんだ。良かった・・」
田城の言葉に、青木は、目頭が熱くなった。

「青木くん、今、どこに居るんだ?」
田城に問われ、青木は、言葉に詰まった。
「あ・・それが・・」

「・・・・・・」
言いよどむ青木に、田城は、しばし無言になる。

「言えないのかな?」
「ええ。その、ちょっと・・・」
青木は、どう説明したら良いか、戸惑った。
疲れきっていて、とっさに、相手を納得させる言い方が、思い浮かばない。

「やはり・・そうか」
「え?」
田城の、意外な言葉と、一段低い声に、青木は、ただならぬ気配を感じた。

「あの・・」
「いや、いい。言いたくないのなら。君も、色々とあったんだろう」
「え?」
“色々とあった”ことを、田城は何故、知っているのだろう。

「・・中国警察に、君の捜索願いを出しているが、それは、取り下げた方がいいのかな」
「そう・・ですね。そうしていただけると、助かります」
青木は、戸惑いながらも、そう言った。

「私は、君に何も聞かないよ。分かってる。君も、大変な苦労があったんだろう」
「あ・・ありがとうございます」
言いながら、青木は首をかしげた。
田城は、どこまで知っているのだろう・・。

「君が、ここでの研究生活に、それ程のストレスを抱えているとは知らなかった。てっきり、君は好きでやっているものと・・。一人離れた部屋に追いやり、君のことを思いやれなかった私を、許してほしい」
「え?・・・・・・・ええええっ!?」

青木は、声を上げた。
田城の言っている意味が、サッパリ分からない。

「実はね・・先程、上海から連絡が入ってね」
「はあ・・」
「君のことを、ホンカオ島で見たという情報が入ったというんだ」
「え・・!」

青木は、頭をめぐらせた。
一体、どこで何を見られたというのだろう。

「君、高級レストランやホテルが立ち並ぶ通りで、リムジンから降り立ったって言うじゃないか」
「え!?」
「ちょうど、NTIの関係者が、その前を通ったらしいんだ。君の捜索に関しては、写真を配布し、中国全土の社員に協力を依頼していたから」

田城は、淡々と話す。
「その社員も、君のことを直接見たことがあるわけじゃないから、自信が無くて、声は掛けなかったそうだ。だが・・持っていたケータイで写真を撮ったと。こちらにも送られてきたが、それは紛れも無く、君だった」

「しかも・・ドレスアップした美女と、一緒だったそうだね」
「あ・・」
青木は、段々と、田城の言いたいことが、分かってきたような、気がした。

「女性の方は、逆光で顔は見えないが。その社員によると、そんな美女は、ホンカオの社交界でも、見たことが無いそうだ」
「いや・・あの・・」
それは、女性ではなく、男性だと、青木は言いたかったが。

「だが、物腰は洗練されていて、明らかに、素人の女性ではなかったようだと、そう聞いている。しかも、君と別れた後、その女性は、ボディガードのような男性を連れて行ったとか」
「・・・・・・」

誤解だ。
とんでもない誤解を招いている気がする。

「今回の仕事も、君にはプレッシャーだったんだろう。私は気付きもせずに、全てを君一人に任せてしまって。大事な仕事の直前に、それを放り出して、ホンカオの歓楽街に飛び込む程、君は、追い詰められていたんだね・・」

「あ・・あの、田城さん!違うんですっ!」
「どう違うんだね?」
思わず田城の話をさえぎった青木だったが、問い返されると、どう説明したら良いものか・・。

「あの・・事情がありまして、詳しくは説明出来ないんですが、とにかく、違うんです!」
「うん。きっと君の中には、何か違う理由があったのかもしれない。ただ、仕事を放棄したのではなく、大切な理由が。言い訳したい気持ちは分かる。私は、ちゃんと分かってるよ」

「そうじゃなくて・・」
青木は、先程とは違う理由で、涙が出そうになってきた。

「実は・・実は・・!」
「うん?」
青木は、必死の思いで、声を絞り出し、遂に言った。

「オレ、マフィアに捕まったんです。その女性っていうのは、マフィアのボスで、それで、その後、ギャングに襲撃されて・・」
「青木くん・・」

田城の声が、割って入った。
「いいんだよ、そんな話を作らなくても。何があっても、私は君の味方だから。私は、これ以上君を追い詰めたくはない。だが、心配だ。君の方から戻ってくる日を、待っているから」
「本当なんです・・!」

その瞬間、青木は、人の気配に振り返った。
車のドアが開く。

そして、外から、青木のケータイに、手が伸びた。
青木は、ケータイを奪われるまま、なす術が無かった。

「もしもし?青木くん?」
田城の声が、小池がケータイの電源を切る動作と共に、聞こえなくなった。

そして・・

「お前、今、何をしゃべってた?・・・」
小池の言葉に、青木は、やはりここから逃げるべきだったと・・・そう、思っていた。





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