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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene22:朝


「・・私の許可無しに、彼を解放したんですか?」
「許可が要るのか!勝手なことをしたのは、お前だろう!」

チェンが、部長に呼び出され戻ってみると、薪を解放したとの報告と、叱責が待っていた。

「怪我人を病院に収容し、手当てを受けさせただけです」
「だからと言って、そのまま閉じ込めていいと思ってるのか!容疑が確定するまでは、連行も拘束も強いる権利は無いんだぞ!」

ひととおり小言を聞き終え、チェンは自分のデスクへと戻った。
まあ、遅かれ早かれ、こうなることは予期していた。
捜査は迅速に進んだようだし、今から彼が戻ったとしても、もう逃げられはしないだろう。

チェンは、昼間の出来事を、思い起こしていた。

昼間、ラウが、刑事保安部に、自分を訪ねてきた。
「よう、やっと戻ってきたか。何度も所在確認の連絡をしたんだぜ」
「・・伝言は聞いた。お前がオレを探していると。だが、余程暇な誰かと違い、オレは仕事が立て込んでいるもんでな」

そう話す合間にも、チェンはラウを見もせずに、書類や端末に目を通していた。
そんなチェンの背中に、ラウは、こっそりとささやいた。
「ワン・シウルンの件だが・・」
チェンの動きが止まり、ラウを振り返った。

場所を変え、小さな部屋で、チェンは、ラウと向き合い、座っていた。
ラウは言う。
「あいつの裏での仕事について、調べを続けてるんだろう?」
「・・・・・・」

チェンは、何も言わなかった。
余計なことをしゃべって、ラウに情報を握られたら、どう利用されるか分からない。

「そう警戒するなって。この前の事件の時、オレの力不足で、ワン・シウルンとその会社は、何の咎めも受けなかった。お前がどう思っているか知らないが、あの時は、オレだって悔しい思いをしたんだぜ」
「力不足・・か」
チェンは、それだけつぶやいた。

「ワン・シウルンが、このホンカオ島の煙草マーケットを握っていることは、まず間違いない。皆、知ってることだ。だが、手が出せない。あいつの力があちこちに及んでいる上に、決定的な証拠が見つからないからだ」
抜け抜けとそう言うラウに、チェンは、この男の真意を、測り兼ねていた。

「取引そのものの痕跡は、まず見つからないだろう。書類やデータで証拠を残しておくとは思えない。だが、それによって上がる利益は? 金は、消えるわけが無い。どうしたって、どこかに回っている筈だ。そしてその分の利益は・・申告されていない」

チェンはそこで、目を細めた。
「・・脱税か」
「そう。あいつを引っ張るには、それしか無い。そこから、裏取引そのものを、叩くことが出来る筈だ」

チェンは、片手でアゴをさすりながら、目の前の男を見つめる。
「だが、それだって、簡単に証拠は上がらんだろう。あのビルを捜索でも出来れば別だが」
「そう、捜索する必要が生じたとしたら?」
「・・? 何を言ってる?」

チェンの疑問に、ラウはニヤリと笑みを返す。
「後で分かる。とにかく、オレとお前とで、手を組もうぜ」

フフッ・・と、チェンは笑う。
「面白い」
「だろう?」
ラウが満足げに言った。

「そうじゃない。オレがお前と手を組むなんて、永久に有り得ないことを言う、そのお前が面白いんだ」
チェンの言葉に、ラウは、両の手の平を空に向けて言う。
「そう言うなって。お前はきっと、オレに感謝するぜ」

「感謝・・か」
そうつぶやくチェンに、ラウは、口の端を上げて、笑った。

・・レストラン襲撃事件が重なり、自分はそちらへ赴いた為、別の警官が、薪の事務所の捜索の指揮を取った。
信用の置ける同僚だ。
彼なら、抜かり無くやるだろう。

ラウが、トニー・ロンをどのように動かしたのか、チェンには見当が付いていた。
だが今は、それを追及するべき時ではない。

物事には、適切な時というものがある。
今、自分が求めていた時が、遂にやって来ていることを、チェンは、身震いする思いで、感じていた。



薪は、病院を出て、車に乗り込むまでの間に、今井から、全てを聞いた。
ラウがやって来て、トニー・ロンが強盗に入り、調度品とデータディスクを持ち出し、警察が、ビルを一斉捜索していることを。

「それで? その後の手筈は、どうなってる?」
「どうって・・。何も連絡は受けていませんが」
「・・っ!」
今井の言葉に、薪は舌打ちをすると、警官から返されたケータイを取り出した。

「事務所に戻るんだ!早くしろ!」
呼び出し音が鳴る間に、今井に向かって叫ぶ。

慌てて今井が車を発進させるうちに、岡部が、電話口に出た。
「今井から話を聞いた。今、病院を出るところだ」
「そうですか、良かった・・。実は、口利きを頼んだところがありまして・・」
「その話は、後で聞く」

薪は、岡部の話を容赦なく、さえぎった。
「誰か、取引相手に、連絡を取った者は?」
「え? あ・・皆、ボスのことと、事務所のことで、精一杯で」

「それだけ居て、誰も気が付かなかったのか!?」
薪の声色が、変わった。

「一体今まで、何やってた!!」
後ろで薪の怒声が飛び、今井は運転しながら、肩をすくめる。

「事務所なんて放っておけ!僕の会社のことは、僕が責任を取る。だが、事務所が捜索されれば、そこから辿って、多くの人間に行き着くんだぞ!もし今、この瞬間にでも、彼らに捜査の手が伸びたらどうなる!今逮捕されたら、家族もろとも路頭に迷う人間が、どれだけ居ると思う!」

「!!」
岡部は、息を呑んだ。

「関係者に連絡を取れ!製造元、運び屋、集金係、全てだ!事務所の電話は使うな。ケータイも止めた方がいい。お前達の通話記録は、押さえられる可能性が高い。別の手段を使って、漏らさず連絡するんだ。証拠品は全て隠蔽しろ、身を隠せる人間は隠せ、警察に何か聞かれても、決して自分が関わったことは認めるな、そう言え!」



朝が、訪れた。

広々とした壁一面が、ガラス窓で覆われているその部屋に、薪は居た。
昇ったばかりの朝日が差し込み、薪の座るその床を、照らす。

部屋は、隅々まで捜索され、主要な物は持ち去られ、ガランとしていた。

「・・・・・・」
薪は、ガラスの向こうを、見渡した。
高層ビルが並ぶ、街並み。

今まで、ここで、自分は生きてきた。
部下達と共に。
この街に住む人々と、共に。

全ては、過ぎ去ったことのようで、かえって、薪の心は、晴れ晴れとしていた。
これまでに、築き上げてきた物。
それらを全て、失う自分。

きっと、これで良かったのだ・・・。

「鈴木・・」
薪の口から、その名がこぼれ出た、その時。

「失礼します」
「入れ」
現れたのは、岡部と、そして、その岡部に背中を押されて入ってくる、一人の男。

友の名を口にした途端、現れたその男を見て、薪は思う。
やはり・・ちっとも似ていない。

ボサボサの髪。
ヨレヨレのスラックスとシャツに、シミだらけの革靴。
レンズにヒビが入った眼鏡は、今にも、鼻からズリ落ちそうだ。

鈴木はいつも、隙の無い格好をしていた。
いや・・くつろいだ姿も、サマになっていた。

「どうします?」
岡部に問われ、薪は、座ったまま、首を傾けた。

「さて・・どうするかな」





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