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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene23:天空


チェンが、部長に呼び出され、叱責を受けたその後。

薪のビルの捜索の一件で、次々と成果が上がり、警察も検察も、騒然としていた。
そんな中、チェンを訪ねてきた者が、あった。

「おい!どういうことなんだ!」
開口一番に毒づくラウに、チェンは、振り返る。
「そろそろ、来る頃だと思っていた」
済ました顔で、チェンは言った。

「約束が違うぜ!」
「約束?」
二人のやりとりに、周囲の警官達が注目する。

「・・・・・・」
それを見渡し、ラウは、言葉を飲み込むと、言った。
「顔を貸せ」

別室に移動し、二人だけになったところで、ラウは、改めて言う。
「今度の件、おれは、担当から外された」

デスクを挟み、向かい合って座る相手を見て、チェンは言った。
「ああ。そうらしいな」
「とぼけんじゃねえ!」

ラウは立ち上がり、チェンに食ってかかる。
さすがに手を出すことは出来ず、顔を近付け、睨み付けるだけだが。

「担当検事を決めるのはオレじゃない。それは、そちらの話だろう」
チェンの顔色は、全く変わらない。

「・・これは、オレが仕掛けたヤマだ。オレが担当するのが筋だ」
「仕掛けた?ほお・・借りにも検察官の立場にある人間が、一体何を仕掛けたって言うんだ?」
「お前・・!」
ラウの目が、見開く。

「担当検事が誰になろうと、同じ調査、同じ証拠品で、同じ手続を踏まえれば、結果は変わらない筈だが」
そこまで言うと、チェンは、一度言葉をと切らせ、
「・・そうか。お前の場合は、違うのか。何故か証拠の一部が消え失せることが、あるからな」
そう言った。

「今回は、そんなことは無い。必ず起訴し、有罪に持ち込んでやる」
「今回は、ということは、今までの事件では、やはり、不当な作為があったということか?」
「!・・」
ラウは、唇を噛み締める。

「大体、有罪か無罪かを審理するのは、陪審員だ。その審理が正しく行なわれるよう、事件の状況を、より正確に提示する、それが検察の仕事だろう。お前が審理をするわけでも、判決を下すわけでもない」
「・・・・・・!」
整然と話すチェンに、ラウは、言葉を失った。

そして、低い声になり、言う。
「お前は、あいつを・・上げたかったんだろう? オレと、利害は一致する筈だ・・」
「そう思ったのは、お前だけだ。言った筈だ。オレがお前と手を組むなど、永久に有り得ないと」

チェンは立ち上がる。
長身のチェンが、ラウを見下ろし睨み付けると、そこから、相手を威圧する気迫が溢れた。
ラウは、思わず半歩、後ずさった。

チェンは、ラウを指差して、言う。
「言っておくが、今回の検察のやり方に対して、オレは一切、口出ししていない。これまでのお前のやり方を、皆が見ていた、そういうことだ。自分の仕事に誇りを持って臨んでいる人間の目に、お前のような虫けらが、肩を並べて仕事をしている、それがどう映るか」

「お前は・・考えたことも無いだろうが」
最後の言葉は、静かに、こぼれ出た。

今、チェンの目の前に居るのは、顔を紅潮させ、頬を引きつらせた、哀れな虫けら。
この男は、自分が虫けらであることすら、決して、認めないだろう・・。

「っ・・!」
ラウは舌打ちをすると、その部屋を出て行った。

チェンも、静かに椅子をデスクに納めると、すぐに、その場を後にした。



薪は、病院から事務所に戻ると、部下達を指揮した。
事務所の中は、変わり果てた姿になっていたが、そんなことに、構っている余裕は無かった。

表の仕事は一般社員に、裏の仕事は幹部達に、その後始末をさせた。
出来る限りのことを終えると、薪は、最上階の一室に、こもった。

薪自身、拘束こそされなかったが、ホンカオ島から出ることは禁じられ、いつでも警察の呼び出しに応じるよう、宣告されていた。

このフロアには、展望ルームや、VIP用のラウンジが入っていたが、その一角に、薪が使用する一室も、設けられていた。
その眺めを堪能出来るよう、壁の一面がガラスで覆われたこの部屋に、薪は、仕事に関する物は、持ち込まなかった。

幹部と言えど、勝手にこの部屋に入室することは、許されなかった。
ベッドルームとはまた違う、薪のプライベート空間だった。
今は・・その部屋も警官達の手によって、荒らされてしまったが。

いや、薪以外にもう一人、この部屋を訪れる人間が居た。
ただの部下ではない、特別な・・・

眼前に広がるネオンの街が、迫り来る朝日によって、色を変えていく。

薪が、事業家の道を歩むと決めた時、当然のように、鈴木は、その部下になる道を選んだ。
共同経営者になろう、薪はそう言ったが。

「ワン一族の人間でもないオレが、パートナーになったら、また、色々と風当たりがあるだろう? オレは、お前の下に居る方が、気楽でいい」
鈴木は、そう言った。

鈴木は、父方の遠縁だった。
ワン一族の人間ではない、そのことを口にしては、いつも、一歩引いていた。

けれど、鈴木が居なかったら、会社も、そして薪自身も、今は無かった。
それは、薪の心の支えであったことは言うまでも無く、それ以外にも・・・。

・・空が、白々と染まっていく。

きっかけは、いつだったか。
まだ、薪が、傾いた会社の建て直しに、心血を注いでいた頃。

「例の会社、急に、うちに出資すると言ってきた」
「そうか」
鈴木のその反応に、薪は、目を上げた。
突然変わった相手の態度に「何故?」と、疑問を呈さない鈴木に。

「お前・・何か、知ってるのか?」
「何かって?」
鈴木は薪を見つめ、ニッコリと、笑った。

薪は、それ以上、何も聞けなかった。
鈴木の笑顔に、何も、聞けなかったのだ。

業績は、回復していった。
薪の奔走と、部下達の尽力の賜物ではあったが、それ以外に何か・・力が加わっていることを、薪は、常に感じるようになった。

賄賂目的からか、製品に欠陥があると上げつらい、貿易を差し止めた役人。
こちらの足元を見て、無理な要求を強いる取引先。
不当な妨害行為をしてきた、ライバル企業。

そういった、数々の障害が、何かの拍子に、あっけなく取り除かれることが、あるのだ。

それを話すと、鈴木はいつも、
「ふうん、そうか」
「良かったな。これで薪の思いどおりに、取引が進む」
そう言って、笑顔を、見せるのだった。

・・何故、もっと、追及しなかったのだろう。
お前は何をやっているのだと、胸倉を掴んででも、鈴木に、問い詰めなかったのだろう。

深い、深い後悔が、薪の胸を、襲う・・・。

鈴木を問い詰める代わりに、薪は、言ったのだ。
「鈴木」
「うん?」
振り返る鈴木の笑顔に、薪は、また、何も言えなくなりそうになる。

「鈴木・・。何かを一人で背負うのは、止めてくれ」
薪は、静かに、だが、力を込めて、言った。

「約束してくれ。喜びも、悲しみも、善も悪も、僕と、全てを分かち合うと」

「・・・・・・」
鈴木は、束の間沈黙し、それから、薪の頭に、そっと手の平を乗せた。
そして、言った。

「薪。お前には、喜びが似合う。善が似合う。悲しみや悪は、似合わない。お前が悲しむ必要があるなら、オレが代わりに悲しもう。お前の手を悪に染める位なら、オレの手を染めよう。薪、お前は、大空を駆け登る龍なんだ。オレは、迷い無く空に舞うその龍の姿を、ずっと・・見ていたい」

「・・・・・!」
薪は、瞳を大きく見開いた。
鈴木の言葉には、真実があった。
やはり、鈴木は・・・

「・・駄目だ! お前が手を汚して、僕が、悲しまずにいると思うのか? 僕が本当に・・それで、喜んでいるとでも?・・」

鈴木の手をはねのけ、薪は、相手を睨み付けた。
明るく燃え上がるその瞳を、鈴木は見ていた。

「お前は・・僕の部下なんだ。上司の命令には、絶対服従しろ。自分の手を汚すな。僕は、部下にそんなことは、させない。約束しろ、全てを分かち合うと。お前一人、何もかもを背負って、遠くへ行くな・・!」

薪の顔をじっと見つめ、鈴木は、口を開いた。
「・・約束する」
「本当だな?」

「オレは、薪を置いて、どこかへ行ったりしない。ずっと、お前の傍に居る。これからもずっと、永遠に、薪と共に、歩んでいく」

鈴木は、そう言った・・微笑んで。
約束すると。
全てを分かち合うと。
共に、歩んでいくと・・・・。

・・日が昇る。
ネオンはすっかり消え、朝が、訪れる。

それは、2ヶ月程前だった。

薪の会社に、従業員を引き抜かれ、取引先まで奪われた企業の人間が、薪を狙ったのだ。
優秀な社員の能力を引き出すことが出来ず、搾取するばかりで、取引も不振に陥ってた企業だった。
遅かれ早かれ、潰れるところだったのだ。

だが、その恨みは、薪に向かった。
寸でのところで命拾いした薪は、狙った相手の顔を見ていたにも関わらず、訴え出ることをしなかった。

しかし、それを、決して許さない男が居た。
これまでにも、薪に危害を加えようとする人間には、人知れず、容赦の無い制裁を加えていた、その男が。

一発の銃弾が、一台の車のフロントガラスを、貫いた。
それは、人を撃つ為のものではなかった。
運転席と助手席、更には、後部シートにも人が乗っていたにも関わらず、銃弾は、正確に、車だけを貫いていった。

だが、飛散するガラスに、運転手の手はハンドルを離れ、車は建物に激突した。
乗っていた男達は、一命こそ取り留めたが、重傷を負った。

この事件の捜査は、当然のごとく、薪に向かった。
だが、警察がそこに辿り着く前に、鈴木が、警察に通報した。

全ては・・薪が指示したことだと。

そして、これまでにも、うやむやになっていたいくつかの傷害事件や、収賄、恐喝といった、薪の周囲に立ち昇る疑惑が、全て薪の指示だと、鈴木は、証言したのだ。

「そのとおりです。僕が全てを操っていました」
そう、薪は言った。
実際のところ、これまでの鈴木の動きも、薪は感づいていながら、黙認してきたのだ。

全ての責めを負う、覚悟は出来ていた。

だが。
捜査の過程で、何故か、鈴木が単独で行なっていたことだと、そう、結論が出た。
そして、薪が気付いた時には、会社の金が、持ち出されていた。
その金が、どこにどう回ったのか、薪には、察しが付いている。

薪は、被害者になった。
一人の部下が、身勝手な行動を犯した上に、会社の金を持ち去って逃げたのだと。

隠蔽しきれない事件を起こしてしまった鈴木は、同時に、他の数々の疑惑までも、全て自分の身に背負い、薪の元から、去ったのだ。

許せない。
許せるわけが無い。

そんな勝手なマネをして、一体どこへ行こうというのか・・・

・・そして、朝日が昇りきった今、目の前には、ヒビの入った眼鏡を掛けた男が、居る。

3日前にやって来て、そして、何故か未だ、ここに居る。
その数日のうちに、幾度も、鈴木を思い起こさせた・・その男。

どうしたものかと思っていると、部屋の隅に置かれていた端末が、ある音を、鳴らした。

ビル内の全てのシステムと端末は、警察に全て開かれ、多くが持ち去られたが、仕事に全く使っておらず、何のデータも入っていないと判断されたこの端末は、そのまま捨て置かれていたのだ。

薪はその音に、まるで身体が反応するかのように、立ち上がり、端末を開いた。

そして・・わずかに震える手で、ネット電話の着信サインが付いているそのキーを、押した。





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