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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene24:再見


ラウは、気分が腐って仕方が無かった。
早朝、ラウは、ユエンの運転する車中に居た。

レストラン襲撃事件という、余計な出来事。
それに加えて、ラウの弱みを握ったまま、逃亡したトニー・ロン。
そして、担当を外された一件。

何もかもが、気に入らなかった。

自分が収賄を持ち掛けた証拠であるディスクを手に入れ、その上で、薪を完全に叩きのめす。
その計画が、自分の思惑と違う方向に、動いている。

トニー・ロンが捕まったという報告は聞かれないから、もう、奴らはホンカオを出たのだろう。
とりあえず、あのディスクは、この地には無い。

だが、薪の件が、気にかかる。
レストラン襲撃事件で、薪は、一躍ヒーローになってしまった。
脱税や裏取引とは関係無いとは言え、陪審の印象が、どうなるか。

今となっては、ひと月前の事件で、薪の会社を守る側に立ったことが、悔やまれる。
何か・・薪の素行の悪さを示す材料は無いものか・・。

そう思い、薪の事務所に向かっていた。
目指す建物が目前にせまった、その時。

「お!?」
ラウは、2車線隣りの車に、目を留めた。
その車を運転しているのは、薪の部下だった。

助手席に居るのも、その後ろに居るのも、ラウが見たことのある、幹部達だった。
薪や、その幹部が乗る車には、通常、後部シートにスモークが貼られているが、この車には、それが無かった。
ビルを警察が捜索している間に、どこか、別の場所から、車を調達したのかもしれない。

そして・・運転席の後ろには、一人だけ、薪の幹部ではない男が、乗っていた。
新しい幹部見習いにしては、様子が変だ。
一般の社員がここに乗り合わせていることにも、違和感を覚える。

何より・・その男の顔を、ラウは、どこかで見た覚えがあるような、気がした。
薪の会社ではない。
では、どこで・・・?

「あっ!!」
走り出すと同時に、ラウが声を上げ、ユエンがびくっと肩を上げた。
「な・・何ですか?」

目を瞬かせるユエンに、ラウが言う。
「そこを曲がれ!いいんだ!とにかく、曲がるんだ!」
ラウが、当初の目的地から外れた進路を取ることに、ユエンは戸惑いながらも、言うとおりにした。

「止まれ。そこに入って、Uターンだ」
「はあ?」
「あいつらに気付かれないよう、後から行くんだ」

薪の部下の車は、ビルの中へと入っていく。
それを確かめ、少し時間を置いてから、ラウも、そのビルに向かって行った。



薪は、目の前に現れたその顔に、見入っていた。
画面を通してそこに見える、友の顔に。

「鈴木・・・」

少し離れたところに立っていた青木が、薪の口から出たその名前に、顔を上げた。
その後ろに居た岡部は、ノックする音に、ドアへと向かう。

「あの・・ボスは」
顔を出した部下に、岡部は小声で言う。
「今ボスは、取り込み中だ。用件は何だ?」
「それが・・」

岡部は、廊下へと出た。
後に残された青木は、薪の様子を、じっと見ている。

「薪、元気か?」
「・・ああ」
「そうかな。疲れた顔をしてる」

薪は、フッ・・と、口元を緩ませた。
鈴木には、すぐ見抜かれてしまう。

「今日は、長くは話せない。手身近に言う。オレは・・ここ、北京を出る」
薪は、目を上げる。
一体、次はどこへ、向かうと言うのか。

「警察の手が、伸びてきた。この通信を切ったら、オレはすぐ、中国を発つ」
「!!・・・」
「どこに行くとは、言わない。お前が知ってるとなると、オレの逃亡を助けていると、疑われるからな。通信も、二度としない」

「お前・・そんな・・!」
薪の声が、震える。

「本当は、もっと早く発つべきだったんだ。だが、ここが最後と思ったら、離れ難くなって・・・」
鈴木は、自嘲気味に、笑う。

「お前と歩いた街を、全て辿って・・オレは、お前との思い出を、味わい尽くした。だからもう、思い残すことは無い。ただ最後に、もう一度、お前の顔を見たくて・・」
「最後なんて、言うな!」
薪が、叫んだ。

青木は、思わず、薪の傍に歩み寄る。
薪と鈴木の会話は中国語で、青木には理解出来なかったが、薪が激高していることは、分かった。

「言ったろう!お前の裏切りを、僕は絶対に許さないと。このまま中国を発つって? ふざけるな! お前は、ここに戻ってくるんだ。僕の元に!約束したろう!それをお前は・・!」

「鈴木さん!」
青木が割って入ったことに、薪も、そして鈴木も、唖然とした。

「鈴木さん!薪さんは、あなたに・・・」
「ちょっ・・ちょっと待て。日本語? 薪、お前、日本人を、部下に引き入れたのか?」
「青木!お前、何をやってる。そこをどけ!」
「青木、というのか」

周囲の戸惑いに構わず、青木は、話し続ける。
「鈴木さん。オレは・・あなたが、裏切り者だと聞きました。薪さんや、薪さんの組織を裏切って、通報したあげく、逃亡したと。でも、薪さんは、そのことを怒っているんじゃ、ありません!」

「青木・・?」
薪は、青木が突然何を言い出したのか、理解出来ずにいる。

「・・・・・・」
画面の向こうの鈴木は、黙って、青木の話を聞いていた。

「裏切り者だと言ったのは、全てを分かち合うと言ったのに、あなたが、一人で去ってしまったから・・!」
「分かっている」
鈴木は、青木の言葉をさえぎり、言った。

「分かっている。・・薪は、決して、オレを許さない。オレは、裏切り者だから。永遠に共に歩んでいくと、その約束を、裏切ったオレだから・・」

「鈴木・・・」
薪の瞳が揺れ、その大きな瞳から、ぽろん・・と、こぼれ落ちる物があった。

「青木・・だったな」
鈴木は、改めて青木の顔を見つめると、ふうっ・・と息を吐き、そして、言った。

「お前のような奴が、薪の新しい部下になってくれて、良かった。薪を・・・頼む」

「え・・」
青木は、ポカンとした顔で、鈴木を見つめ、それから振り返り、薪の顔を見た。
・・・そこには、ぽろぽろと滴をこぼす、薪の姿が、あった。

「薪・・」
鈴木は、微笑んで、薪を見つめた。
薪がよく知る、鈴木の笑顔。
限りなく、深く優しく・・そして、愛おしい者を見つめるような、寂しげな・・・

青木は、その後に、薪に向かって鈴木が話した中国語の文章が、分からなかった。
ただ、薪は黙ってそれを聞き、涙を、こぼし続けていた。

いつしか・・鈴木の目にも、光る物が浮かんでいた。
けれどそれをこぼすことは無く、最後に、鈴木は言った。

・・・笑顔で。

「ツァイチェン・・!」

ツァイチェン(再見)、それは、さよならの挨拶。
再び会う相手とも、永遠の別れの相手とも、交わす言葉。

この時、それは、一体どちらの意味だったのか。

画面が暗くなる。
だが薪は、そこを、動くことなく。

「薪さん?・・・」
青木は、そっと・・薪の肩に、手を置いた。

薪と鈴木の会話が、一体どう交わされたのか、青木には分からない。
だが、青木に向かい、薪を頼むと言った彼は、薪に、別れを告げたのだろう。

薪は、静かに泣きながら、自分の肩に置かれた青木の手に、自分の手を、重ねた。

その手のぬくもり。
鈴木の言葉。

それらが薪の胸に染み入り、心の内を、溶かしていった。





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