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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene25:最後の煙草


薪は、窓の向こうを見ていた。
ほんの少し前に見ていたものと、風景が、違って見えた。

「薪さん」
「うん?」
青木の呼び掛けに、薪は、顔を上げる。

おずおずと、青木は切り出した。
「あの・・ディスクの研究データ、ネットで流すんですか?」
薪は、目を見開いた。
そう言えば、昨日、そんな話をしていた。

「あのデータディスクは、ここには無いぞ」
「えっ!?」
今度は、青木が目を見開く番だった。

「盗まれたんだ」
「ええっ?」
声を上げてから、青木は改めて問いかけた。
「・・何故?」

「持って行ったのは、トニー・ロンというチンピラだ。データディスクは、作成・入手した順に、ナンバーと日付を入れて保管していた。お前のディスクを入手した前後の日付のディスクだけが、数枚、盗まれていた」

「・・盗んだ目的は、定かではないが。彼らは、あれを解析しようと試みる人間ではない。データが盗まれる心配は、無いだろう」
「でも、薪さんのところでは、コピーなどをして、データが残っているのでは・・」

青木は、言葉を濁す。
田城に真相を話してしまった自分が悪いのだが、データの公開をされると思うと、胃がキリキリと痛んだ。

「ああ。あのディスクだが、ファイルは、開いていない」
「ああ、そうですか・・・・って、えええっ!!」
「ファイルデータは、開いていない。だから、ダウンロードもコピーもしていない」
「えええええっ!?」

回を追うごとに大きくなる青木の叫び声に、薪は、顔をゆがめ、手の平で耳を塞ぐ。

「だって薪さん、優秀な解析システムがあるって、言ってませんでしたか?」
「ああ。半年も掛ければ、大概のデータを解析することは可能だ」
「半年!?」

「だが、その時間すら、貴重な部下をその仕事に従事させるのは惜しい。最初に言っただろう、時間と手間を掛けたくないと」
当然のように言ってのける薪に、青木は、開いた口が塞がらない。

「だけど・・既にファイルは開いて、いつでもネットに流すことが出来ると・・」
「そうでも言わないと、お前の訴えを阻止する材料が、見当たらなかったからな」
「・・・・・・」

青木は、考えを巡らせた。
では、自分に口止めをする為に、嘘を付かれたのか。
・・それでも、自分は約束を違えてしまったのだから、文句は言えないのかもしれないが。

「あれ?でも、その後、薪さんも・・」
「ああ。お前と話をしたお陰で、ファイルを開かなくても、大体の研究内容を伺い知ることが出来た」
「えっ!?」
またも、青木は叫ぶ。

「結局、身体に害の無い煙草の開発に、成功したということだろう。現在出回っている、煙が無く、低タール・低ニコチンであるに留まらず、完全なるタール・ニコチンゼロの煙草だ。だが、ただそれだけでは、煙草は嗜好品とはならない。だから、ニコチンが神経系を刺激するような、擬似感覚作用があり、尚且つ、依存性の無い成分の開発に成功した・・ということかもしれない」

薪は、すらすらと話し続ける。

「お前は、政府がその情報を欲しがったのは、禁煙法を撤廃するに当たり、より健康に害の無い物から解禁する為だと言っていた。そして、煙草の利害を逆転したいとも言った。僕が、既にデータを見ているという前提の上で話すことで、お前は、その内容を、ほとんど僕に明かしたんだ」

「・・・・・・」
青木は、もう、声も出なかった。

「それって・・・」
「そう、こういうことを、日本語で、何と言ったかな。確か、カマを掘・・」
「!! カマをかける、でしょう!」

「そう、それだ」
うなずきながら、薪は言う。

薪の口から、とんでもない言葉が出そうになり、青木は思わず慌てて、さえぎってしまった。
・・いや、そんなことにうろたえている場合では無いが。

「そんなわけで、ディスクもデータも、ここには無い。だから、お前が、ここでのことを、誰にどう話そうと、それを阻止するカードを、僕は持たない」

ハッキリとそう告げる薪の姿を、青木は、見つめた。
この人は、こんなことを、自分に告白してしまって、良いのだろうか・・・。

「ボス、よろしいですか?」
岡部が、部屋に入ってきた。

「実は・・・」
青木が聞き取れない言葉で、薪と岡部の会話が交わされる。

岡部は、青木を見る。
薪も、振り返った。
そして青木の姿を、じっと見つめる。

「・・・・・・」
何だろう?
青木が戸惑っていると、薪は言った。

「来い」

階下に連れて行かれ、青木が引き合わされたのは、ツイードのベストを着込んだ痩せぎすの男と、それよりも若い、やや小太りの男。

その場に居た小池が、青木に言う。
「こちらは、ラウ検事と、ユエン事務官だ」

痩せた男は、青木を一目見るなり、言った。
「ひでえ格好だな」
「え?」
中国語で言われ、青木には、理解出来ない。

「これが本当に、政府までが探している男なのかねえ・・」
まじまじと見つめられ、青木は、居心地の悪さを覚えた。

ラウは、青木の乗った車がビル内に入る様子を見届けてから、この事務所を訪問した。
中に通されると、その青木を差し出せと、そう言ったのだ。

「ここに、上海で失踪した日本人が、居るだろう。写真で見た顔と同じ男が、ここに入っていくのを、オレは、確かに見たんだ」
ラウの言葉は、部下の一人から岡部へ、岡部から薪へと伝えられ、青木は、ここに連れて来られたのだった。

「彼らは、お前を警察に連れて行くと言っている」
薪が、青木に向かって言った。
「え?」

「良かったな。これで、お前はここから出られるぞ」
薪の顔は、穏やかだった。
「僕から離れて、お前は・・やっと自由になれるんだ」

「あ・・薪さん・・オレ・・・・」
青木は、何か言いたかった。

でも、それは、言葉にならず・・・

「行くぜ」
ラウの言葉に、ユエンが、青木に日本語で話しかけた。
「一緒に行きましょう。警察が、あなたの身を、保護してくれますよ」

「あ、そうだ。これ、返しとくぜ」
小池は、上着の内ポケットから、青木のケータイを出した。
それを小池から受け取り、青木は言った。
「・・ありがとうございます」

岡部が、小池が、そして・・薪が、青木を見送っている。
青木は、結局それ以上何も言えず、ラウとユエンと共に、その部屋を出た。

ビルを出て、外を歩く。
完全に、自由だ。
・・あんなに望んでいたことなのに、胸が弾まないのは、何故なのだろう。

三人は、近くのパーキングに停められていた車に乗り、出発した。

ラウは、ユエンに言った。
「おい、通訳しろ」
「え?」
運転しながら、ユエンは聞き返す。

「ラウ検事・・まさか、今時、日本語も出来ないんですか?」
「だったらどうした」
「・・悪知恵は働く癖に、肝心のところで役に立たない・・」
「何か言ったか!」

青木には、彼らのやりとりが、全く分からない。
外を見やる。
車は、川沿いの道に出るようだ。

ユエンの通訳を介し、ラウと青木は、話を始めた。

「大変だったなあ。お前は、あいつに誘拐されてたんだろう?」
「誘拐・・?」
「警察では、その辺を、しっかり話すんだぞ。お前は、VIP扱いで捜索願いが出てる。きっと、特別待遇を受けるぜ」

媚びた笑顔で話し掛けるラウに、青木は、遠慮がちに言う。
「あのー・・・」
「何だ?」
「たぶん・・捜索願いは、取り下げられていると思うんですが」

「・・・・・・え?」

ラウは、警察に電話をした。
「ああ、刑事保安部長、ラウです。どうも、お世話になってます。実は、先日捜索願いが出ていた日本人の件で・・・」
ラウは話し始め、そして・・・・

「・・・・・・」
ラウは、電話を切ると、無言のまま、青木を見つめた。
政府の役人にも通じている男だと思ったが、どうやら、状況が変わったらしい。

「まあいい」
ラウは、自分に言い聞かせるように、そう言った。

「お前、あそこで、拉致監禁されてたんだろう? こんな姿にまでされちまって。拷問でも受けたのか? 警察では、いかに酷い仕打ちを受けたのか、タップリと話すんだぞ」

「・・・・・・」
青木は、ラウを見、ユエンを見た。

確かに、拉致監禁されていたのは、事実だ。
機密を話すよう強要されたし、最初は、不当な扱いだと思った。

自分の身はどうなるのかと、不安に苛まされたこともあった。
一刻も早く、あそこから、出たかった・・・。

けれど・・・・

“お前が、誰にどう話そうと、それを阻止するカードを、僕は持たない”
“お前は・・自由になれるんだ”

薪の声が聞こえる。
そう、もう、何を言ってもいい。
自分は、自由なのだ・・・・。

「いいえ」
青木は、言った。

「酷い仕打ちなんて、受けていません。オレは・・あそこで何一つ、嫌な経験など、していません」
「ええっ・・!?」
青木の言葉に、通訳するユエンは戸惑い、それを聞いたラウも、のけ反る程に驚いた。

「ちょっ・・ちょっと待てよ。お前、上海から、無理矢理連れて来られたんじゃないのか? それで、今まで何やってたんだよ? まさか、客としてもてなされてたなんて、言うんじゃないだろうな」
「・・ある意味、そうかもしれません」

川沿いのその道で、一台の車が、停止した。

後部座席のドアが開き、一人の、図体のデカイ男が、車から降り立った。
・・いや、まるで突き飛ばされたかのように、車から土手に転げ落ちた。

「あばよ」
そう言って、ラウは、ドアを閉めた。

「せめて、最後の一言位、日本語で言えないんですか?」
「知るか」
言い合う二人を乗せて、車は、去って行った。

「・・・・・・」
青木は、よろよろと立ち上がった。

背後の道路では、猛スピードで、次々と車が通り過ぎる。
クラクションを鳴らされ、青木は、草むらに足を取られながら、斜めの地面を、降りて行った。

川に面したその場所には、遊歩道が延びている。
そこにある木製のベンチの一つに、青木は座った。

ポロリ。

眼鏡が、落ちた。
正確には、眼鏡のレンズが、落ちた。
ヒビが入っていたその部分が、車から転げ落ちた時に、外れたらしい。

レンズの片方を失った眼鏡は、更にバランスが悪くなり、もう、どう直そうにも、斜めになって、真っ直ぐに掛けることは、出来なかった。

ため息を付き、青木は、ケータイを取り出した。
電源を入れ、田城に電話をする。

「青木くん・・!!」
田城の、大きな声。

「心配したんだよ。無事だったのか・・!」
「すみません・・・」
「元気なのか?」
「・・・・・・・・・まあ」

「なら、良かった。捜索願いは、あの後すぐに、取り下げたからね」
「・・知ってます」
そこまで話すと、田城は、ひと呼吸置き、神妙な調子で、言った。
「実はね・・」

それに続く田城の言葉に、青木は、天地がひっくり返る思いだった。
「君のことは、永久休職という扱いになったから」

「・・・・・・!」
衝撃を受けながらも、今の青木には、叫ぶ気力すら、残っていない。

「君の負担を軽くするには、退職扱いにした方がいいんじゃないかという意見もあった。・・あとは、仕事を放棄したことについてもね、厳格な処置をするべきだと。でも、私は、君の今回の件は、労災だと思っている。君をそこまで追い込んだ、私達監督者にも、責任はあるんだ」

「労災を認定するには、籍を残しておいた方がいい。私はそう思ってね。もちろん、保険が降りたら、君の意向で、退職してくれても構わない。研究のことなら、心配しなくていいよ。山本くん、思った以上に優秀でね、君の居ない穴を、既に埋める勢いなんだ。だから君は、安心して骨を休めて・・・」

プチ。

青木は、電話を切った。
ケータイを、川に投げ捨てた。

「・・・・・・」
もう何一つ、言葉すら、出なかった。

ふと、ポケットに、まだ何か入っていることに、気が付いた。
手を入れて探ると、そこには、煙草が一本、入っていた。
小池から拝借した煙草が、まだ、残っていたらしい。

青木は、それを口にくわえた。
一度水浸しになったそれは、くわえただけで、酷い味がした。

ライターが無いので、火を付けることは、出来ない。
それでも、青木は、その湿った匂いのする煙草を、口にくわえていた。
禁煙法が施行されているこの国では、こうしているだけでも、誰かに見られたら、通報されるのだろうか。

そう思った。
それでも、構わなかった。

捕まって、これが、人生最後の煙草になるとしても、もう、どうでも良かった。





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コメント

■ あらら・・・

こんにちは。かのん様♪

薪さん・・・ニホンゴはちょっと言い違いがうと、大分ニュアンスの変わってしまうものがあるので・・・
ご注意下さいませ!!!
きゃ~そんなもの・・・掘ってはいけません(^_^;)

青木に掘られるなら・・・きゃっ失礼しましたm(_ _)m

あらら・・・
青木主任の価値が無くなってしまいましたね(^_^;)

悪徳検事に車から叩き出されて
会社は永久休職・・・大事な研究は後輩に取られてしまい

青木、そんな所で腐れていないで、
早く薪さんの元に行って、小池の弟子入り(?)を志願して下さいね!!!

そして、また、洗車から始めましょう(笑)

そうそう、諸悪の根元の携帯は処分しましたね(^▽^)v

しかし・・・さすが薪さんですね。
単純な青木から、研究内容なんかさらりと聞き出していたのですね・・・
青木は、見事にカマを掘られて・・・いえいえ、カマを掛けられていたのですね(笑)

所詮は薪さんの足元にも及ばなかったのですね。あははっ!!

もう、青木は早く薪さんのビルに走って戻って下さい。
ワンコの帰省本能があるから、方向音痴でもきっと帰れますよ(^_^)v

続き、楽しみにお待ちしています(^_^)v
最近、1日に2話づつなので、拝読するほうは嬉しいですが、かのん様は大変なのでは・・・

■ たつままさま

○たつままさま

こんにちは。
コメントありがとうございます♪

> 薪さん・・・ニホンゴはちょっと言い違いがうと、大分ニュアンスの変わってしまうものがあるので・・・
> ご注意下さいませ!!!

ちょっとした言い違いが、薪さんたら、大変なことに・・(笑)

> きゃ~そんなもの・・・掘ってはいけません(^_^;)

そんなもの・・そうですね(笑)

> 青木に掘られるなら・・・きゃっ失礼しましたm(_ _)m

きゃっ。
実は私も、ちらっとそんなことを考えたり致しました(こらこら)

> あらら・・・
> 青木主任の価値が無くなってしまいましたね(^_^;)

そうですねえ・・・
引抜きまでされたエリートだった筈なのに・・(笑)

> 悪徳検事に車から叩き出されて
> 会社は永久休職・・・大事な研究は後輩に取られてしまい

「踏んだり蹴ったり」「泣きっ面に蜂」「満身創痍」・・・酷い目に合ってますね(←そんな目に合わせたのは誰?)

> 青木、そんな所で腐れていないで、
> 早く薪さんの元に行って、小池の弟子入り(?)を志願して下さいね!!!

「小池の弟子入り」!いい言葉ですね(^▽^)

> そして、また、洗車から始めましょう(笑)

お話の流れをしっかり覚えていていただいて、嬉しいです☆

> そうそう、諸悪の根元の携帯は処分しましたね(^▽^)v

はい。
車で轢きこそしませんでしたが(笑)

> しかし・・・さすが薪さんですね。
> 単純な青木から、研究内容なんかさらりと聞き出していたのですね・・・
> 青木は、見事にカマを掘られて・・・いえいえ、カマを掛けられていたのですね(笑)

アハハ☆

そうなんですね。
車中で研究について語り合うシーン、後半はシリアスな会話でしたけれど、実は前半は、青木が薪さんにしてやられていたという・・(笑)

> 所詮は薪さんの足元にも及ばなかったのですね。あははっ!!

結局、そういうことですね(^^;)

> もう、青木は早く薪さんのビルに走って戻って下さい。
> ワンコの帰省本能があるから、方向音痴でもきっと帰れますよ(^_^)v

走って戻る!
想像して笑ってしまいました(≧▽≦)

> 続き、楽しみにお待ちしています(^_^)v
> 最近、1日に2話づつなので、拝読するほうは嬉しいですが、かのん様は大変なのでは・・・

メロディ発売前に書き終えたいという事情もありますが、それよりも何よりも、ちょっと苦しいところを越えたら、もう書きたくて書きたくて止まらない状態なんです(こういうのを「萌えの神様が降りている」と言うのでしょうか?)

なので、大丈夫です!

いつも優しいお心使い、本当にありがとうございます(つ;)

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