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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

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レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
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Scene3:吉報


その日も、帰宅してからの薪の様子が、いつもと違うと、青木は感じた。
どこか・・物思いにふけっているような。

「どうかしましたか?」
薪に直接尋ねても、明確な答えは、返ってこない。

仕事中は、全く気付かなかった。
薪は、いつもどおり、部下にゲキを飛ばしながら、仕事を精力的にこなしていた。

これはきっと、仕事のことではない、仕事に直接関わりの無いことで、何かがあったのだろうかと、青木は、頭をめぐらせた。
この日は、ほぼ一日、薪は第九で共に過ごし、特に変わったことも無かったと思われた。

一度、岡部と共に、席を外した時以外は・・

「何かあったか、だと?」
翌日、休憩中に青木にそれとなく尋ねられ、岡部は、手にした缶のコーヒーをぐびりと一口飲んでから、言った。

「ええ。岡部さん、薪さんと一緒に、会議に出ましたよね。その時に」
「アメリカとの報告会か」

それは元々、薪がアメリカに赴任中、薪と、日本に居る岡部や田城との間で、定期に、時には臨時に開かれていたものだ。
モニターを通じて顔を合わせ、互いの状況を確認し合う、薪にとっては、ダイレクトに第九の情報を得られ、岡部にとっては、薪の顔を見ながら助言を得ることが出来る、大切な場であった。

そして、それは、薪が日本に帰国してからも続いた。
互いの時差を気にすることなく、資料も添付して、メールで情報交換出来るこの時代に、モニター会議の継続を主張したのは、フォスターだ。

「形だけの会議は無駄だが、内容が有益であれば、同時刻に、その場で直接話し合う方が、時間の削減になる。それに、表情や身振り、声音というものは、本人が思う以上に、文章だけでは伝わらない物を、相手に伝えるものだ」

「フォスター所長は、意外にアナログな人間なんですねえ」
岡部は、薪に、そう言ったことがある。

かくして、アメリカ側は、MRI研究所のフォスター所長と、先頃、主任から副所長に昇格したロビンス、日本側は薪と岡部、時には田城や、アメリカ側の重役も加わっての報告会が、開かれていたのだったが。

「昨日は特に、何も問題は無かったぞ。報告をし合い、協力すべき点を確認して・・」
「そうですか」

岡部は、嘘の上手い人間ではない。
捜査上で、簡単には話せないことを隠すことならあるが、今回は、そういったことでは無いだろう。
青木はそう思い、一度考え込むように視線を落とすと、言った。
「すみませんでした。つまらないことをお聞きして」

「薪さんが、どうかしたのか?」
岡部が、いぶかしげな顔で問う。

「・・いえ。たぶん、思い過ごしでしょう」
そう言って、その場を離れようと背を向けた青木に向かい、岡部は、思い出したように、言った。

「そうだ。捜査とは関係無い話だが、お前、フォスター所長のところに、子供が出来たの、知ってるか?」
「え?」
青木は足を止め、振り返る。

「薪さんから聞いてないか。オレも、昨日知ったばかりなんだが」

前日の会議で、薪と岡部が席に着くと、開いたモニター画面に、フォスターの姿は、無かった。
「所長は、急用で本日は欠席しておりまして」
ロビンスの言葉に、薪は、眉をひそめた。

「珍しいですね。何かあったんですか?」
そう尋ねたのは、岡部だ。

「実は、夕べ、所長の子供が生まれたんですよ。予定日より大分早まって、クリスの・・所長の奥さんの具合が悪いらしいんです」
ロビンスは、言った。

「子供? 奥さん、身ごもってたんですか。薪さん、聞いてました?」
「いや・・」
岡部に問われ、薪は、首をわずかに横に振る。

「それで? 容態はそんなに悪いんですか? 子供は?」
真剣な表情で、矢継ぎ早に問う薪を、岡部は、横から眺めた。

「先程、所長から連絡が入りましたが、奥さんの容態は落ち着いて、もう大丈夫だそうです。子供も、元気だそうですよ」
ロビンスが、明るい声でそう言う姿に、薪の表情も、ホッと和らいだ・・ように、岡部には見えた。

「所長、奥さんが妊娠してること、誰にも話してなかったんですね。元々、プライベートな話題を職場に持ち込む人じゃないですが。私は、たまたま、クリスのお腹が大きい時に鉢合わせて。所長も一緒でした。クリスは以前、子供が出来ないと悩んでいたようでしたから、良かったですねって所長に言ったら・・」

そこまで言うと、ロビンスは、一度言葉を途切らせ、何かを思い出した表情になる。
「所長、赤くなってたんですよ。決まり悪そうな顔で・・あんな顔もするんですねえ」
言いながら、ロビンスは、ククッ・・と、笑った。

「クリスの身体を気遣ってたみたいで。ものすごく大切そうにエスコートしてたんですよ。所長は、あんなところ、私には見られたくなかったのかもしれないですね。でも・・本当に嬉しそうだったなあ・・」

「・・・・・・」
ロビンスが話すうちに、いつしか、薪の表情は、静かな物になっていた。

それから、すぐにその目に光が宿り、薪は顔を上げ、
「ロビンス副所長、始めましょう」
そう言って、会議が始まったのだった。

・・青木は、薪が何を考えているのだろうかと、思案した。
仕事中は、何も変わりは無いのに、帰宅すると見せる、どこか心ここにあらずと言った、その様子。

ある夜、青木が、ベッドの中で薪を抱き寄せると、薪は青木の胸に手を突っ張り、やんわりと拒否した。
そのこと自体は、珍しいことではない。
仕事が立て込んでいる時、疲れている時、何か壁にぶつかり悩んでいる時、薪は、激しく求めることもあれば、逆に、拒むこともあった。

「薪さん・・今日は疲れてます?」
言いながら、青木は薪をただ胸に抱き、その髪を、優しく撫でた。

「・・青木?」
「はい」

青木の胸の上で、青木の顔を見上げる、こぼれ落ちそうに大きな目。
その目は、青木を一度じっと見つめてから、そっと、伏せられた。

「青木、お前と僕は、何故、抱き合うんだろう」
「・・?」
薪の質問に、青木は、薪の顔を覗き込む。
白い頬に、長い長い睫毛が、影を落としている、その顔を。

「抱き合う時に、意識はしていないとしても、男と女には、太古の昔から培われた、子孫を残す為の本能が根底にある。だが、僕達は? 男と男では、子孫は残せない。なのに何故、抱き合う?」

「薪さん・・・」
青木は、思わずつぶやいた。
薪の顔を見つめながら、胸が、うずいた・・・

薪は、伏せた目を、わずかに開け、話す。
「お前と僕では、未来に、何も残すことは出来ない。いくら抱き合ったところで、何も生み出さない。お前はそれで、満足か?」

「・・・・・・」
青木は、何かを言おうとして・・そして、言葉を飲み込んだ。
代わりに、薪の細い身体を、しっかりと抱き締めた。

・・・薪が安らかに寝息を立てる、そのベッドを抜け出して、青木は、一人パソコンを開いた。

少しの間、画面を前に、じっと考え込み、それから、意を決した表情で、キーを叩き始めた。





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