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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

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Scene6:戸惑い


それからまた、薪と青木、二人にとって、せわしい日々が始まった。
病院での検査や面接、書類の確認等、仕事の合間を縫って、臨むこととなった。

「日本でも、この数十年の間に、随分規制が緩和されたようだ。だがまだ、こういった医療行為を行なえる機関は、限られている。まして、信用の置ける技術を持つところとなると、尚更だ」
青木に、フォスターは言ったのだ。

「私の妻は、自分が妊娠し辛い体質ではないかと悩み、子供を設ける為に、様々な選択肢を模索していた。この医療団体は、そういった中で挙がったものだ。アメリカに本部があり、日本にも支部がある。信用が置けるのは、技術面だけではない」

「何よりも、守秘義務を厳守する。それが徹底している。彼らの団体名は、一般には馴染みが薄いだろうが、実際には、日本でも多数のVIPが依頼する出産に、関わっているということだ。もちろん、その名は公表されていないが」

「アメリカでは、君達と同様の理由・・同性間である為に、子供を設ける手段として、ここに依頼する人間も、少なくは無い。日本のスタッフも、その辺りは心得ている筈だ」

紹介された女性とは、直接会うことは、無かった。
匿名で、プロフィールのみが提供され、薪達は、その女性と、団体を通じて契約を交わした。

そして、薪と青木、どちらが遺伝子的な父親になるか、その点でも、青木は引き下がらなかった。

「後世に残すなら、薪さんの遺伝子にするべきです!」

最初は、青木が父親になる方がいいと、薪も主張したのだが。
最終的には、青木の意見が通ることとなった。

青木の熱意に、折れたわけではない。
薪は、思ったのだ。

青木は、まだ若い。
青木なら、こんな形ではなく、ごく一般的な手段で、子供を設ける可能性だって、残されている。
もし、青木の未来が、誰か別の人間と共に歩むものだとしたら・・その時、青木にとって、子供の存在は、足かせになるだろう。

・・・もしこの先、青木と離れる人生が待っていたとしても、自分の子供なら、自分が責任を持てばいい。

薪は、そんなこと、決して口には出さなかったが。

体外受精を試みる日が、近付いてきた。
提供された卵子と、薪の精子を、受精させるのだ。

ダイニングで椅子に座り、コーヒーのカップを手にしながら、薪は言った。
「怪我や病気の治療法は、日毎に進化しているのに、子供を作る方法というのは、大して変わらないものだな」

「・・それだけ、子供を作る、生命が誕生するということは、人間には操作し切れない、神秘なんでしょうね」
青木の言葉に、薪は、目を伏せる。

「卵子を採取するにも、女性の身体に、大変な負担を強いると聞いた。受精卵を移植した後もそうだ。女性の体内で、子供は成長し、やがて、出産に至る。僕達が行なうことは、それだけの負担を伴う程の、価値のあることなのか・・?」

カップに視線を落とし、そう話す薪を見て、青木は言う。
「相手の女性も、条件を充分に検討した上で、納得ずくで契約したわけですし。今は、妊娠や出産の過程で、身体に変調を来たすことは、非常に可能性が低いと聞きます。万が一にも、何か問題があった場合の、保険も整っていますし」

「それだけじゃない。・・そういうことじゃ、ない。僕は・・・」
テーブルの上に置いたカップを、両手で掴む薪の手に、青木は、自分の手を重ねた。

薪さんは、まだ迷っている。
迷って、悩んで・・・苦しんで、いる・・?

青木は、自分の胸に問うた。
薪の為にと思い、ここまで突き進んできたが、もしかして自分は、薪の苦しみを、広げているだけではないか・・?

そして、当日がやって来た。
薪と青木、二人揃って、病院に足を運んだ。
手順の最終確認がなされ、スタッフに、奥の部屋へと通された。

個室の扉を開けた、更にその奥に、もう一つ、ドアがあった。
「こちらが、採精室です」
奥のドアが開けられると、そこは、どこかのリビングのような、一室になっていた。

テレビや本棚、ソファ等が置かれ、清潔で、落ち着いた空間。
普通のリビングと違うのは、奥に、ベッドが置かれているところだろうか。

スタッフが、室内を指しながら、説明する。
「採取の手助けとなるよう、あちらに、雑誌やDVDが用意されております。この部屋は、プライバシー保護の為、完全防音になっておりますので、お気遣い無く、ご自由にご利用下さい。パートナーの方は、手前の部屋で待機いただいても、採取にご協力いただいても、どちらでも構いません」

「協力・・って・・・」
「・・・・・・」

青木は、思わずつぶやき、薪は、無言のままだった。

「こちらの容器に採取したら、先程ご案内した処置室までお持ち下さい。では、失礼致します」
スタッフは、あくまで事務的に説明を終えると、その場から去って行った。

「・・・・・・」
薪は、部屋の中に入り、室内を見渡した。

「薪さん、大丈夫ですか?」
青木が、尋ねる。
「・・大丈夫だ」
「その・・一人で」

青木が、口ごもりながらそう言うと、薪は振り返り、青木を見据え、言った。
「大丈夫だ。お前は、そちらの部屋で待っていろ」
「・・はい」

青木は、外に出た。
ドアが閉まる。
それを見届けると、薪はまず、隠しカメラや盗聴器が無いか、点検を済ませた。

それから、大きくため息を付き、顔を上げ、着ている物を脱ぎ始めた。

時が過ぎた。
青木は、居ても立っても、いられなかった。
手前の部屋も、広めに取ってあり、テーブルに椅子、コーヒーセット等が置かれていたが、とても、座ってお茶を飲んでいる気分には、なれなかった。

出た物を、容器に採取するだけだ。
滞りなく行なえれば、短時間で済む。
だが薪は、なかなか出てこない。

完全防音というだけあって、薪の居る部屋の気配が、全く感じ取れないことも、不安を広げた。
手前の部屋で、行きつ戻りつ、白熊のように歩き回っていると、ドアの開く音が、聞こえた。

「・・青木」
小さな声が、洩れる。
ドアは、ほんの微かに開かれ、そこから、こちらを覗く、薪の瞳が見えた。

「薪さ・・・!」
青木が覗き返すと同時に、ドアが開かれ、中から手が伸び、青木の腕が掴まれ、青木は、部屋の中へと引っ張り込まれた。

同時に、ドアが勢いよく閉められる。
青木は面食らい、よろけ、薪に身体を支えられた。

「薪さん・・ど、どうし・・」
言いながら、青木は、自分の腕を両手で掴む、薪の立ち姿を、改めて見て、目を見張った。

薪は、上は開襟シャツ一枚、そして・・下は何も身に付けていなかった。
だが、青木が驚いたのは、その格好ではない。

「薪さん・・・」
青木は、薪の頬を、手の平で覆った。
そこには、涙が流れていた。

「青木・・すまない」
続く言葉と共に、また、薪の大きな瞳から、新たな滴が、こぼれ出た。

「僕は、出来ない」





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