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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene2:往来する者


2062年、夏。

薪は、第九に向かって歩いていた。
朝から容赦なく照り付ける太陽が、紛れも無く、今年も夏が巡ってきたと、告げる。

そろそろ、鈴木が去った・・・・・いや、この手で葬り去ったあの日から、丸3年が立つ。

この3年の間に、実に様々なことがあった。
だが、それでも、その日々が、あの悪夢のような日の記憶を薄めることもなく。
それは、まるで昨日のことのように鮮やかに蘇り、変わることなく、自分を締め付ける。

突然。
頭の中がくらくらと揺らぎ、薪は、足を止めた。

過去を、鈴木のことを、あの事件を思う時。
未だに、自分が本当にこの世に居るのかどうか、定かでなくなり、足元がぐらつくような感覚を覚えるのだ。

「うっ・・!」
同時に、頭がズキズキと痛み、薪は、額を押さえた。

目を閉じて、頭痛をやり過ごし、目を開けた途端。
「・・?」
何か、異質な物が目に入ったような気がして、薪は、顔を上げた。

傍らに目をやると、そこには・・
「・・!!」
薪は、驚愕した。

車道の真ん中、車が行き交うその狭間に、一人の男の子が、立っている。
年はまだ、3つか4つ。
夏祭りにでも行くのか、古風な着物姿で、唖然とした顔で、前後をすり抜ける車を見つめている。

道路の反対側にまで目を凝らしたが、周囲には、親らしき人間の姿も無い。
それどころか、通勤ラッシュの最中、誰一人、この子供に気付かない様子だった。

子供は、こちらに向かって足を踏み出そうとし、しかし、すり抜ける車におびえ、頭を抱えてしゃがみ込んだ。

「くっ・・!」
とっさに、薪は車道へ飛び出した。

その瞬間。
薪には、鳴り響くクラクションの音も、人々のざわめきも、何一つ、聞こえなかった。
まるで、音の無い空間に放り出されたように。

薪は、ただ一心に、子供のもとへと向かう。
子供が顔を上げ、大きく目を見開くと同時に、薪は子供を抱え上げ・・

「!!」
身体が、ふわりと宙に浮いた。
在り得ない。

薪は、子供を抱えたまま、宙に浮いて、下を行き交う車を、見つめていた。

「なっ・・!?」
戸惑ううちに、薪の身体は、更にふわりと舞い上がり・・やがて、ストン・・と、歩道橋の上に降り立った。

「う・・・うわああああああっ!!」
緊張の糸が切れたのか、子供が、声を上げて泣き出した。

「・・怪我は無いか?」
何が何だか分からぬまま、それでも、薪は、目の前に居る子供の安否を気遣う。
膝を折り、低い姿勢で、子供の頭をなでながら、ふと薪は、子供の背後に立つ、老人の姿に気付いた。

子供と同じ、古風な着物姿の、少なくとも、80歳は越えていると思われる男だった。

「・・ちょっと目を離した隙に、こんなところに迷い込んでおった。そなたが助けてくれなければ、間に合わなかったかもしれない。礼を言う」
子供は振り返ると、老人の脚に抱き付き、しゃくり上げている。

「・・・・・・」
薪は、立ち上がり、じっと老人を見つめた。
小さな子供をあんな危険に晒すなど、保護者を見つけたら、その怠慢を叱り付けたいところだった。
だが、目の前に居るのも、年を経た者だ。

薪は、小さくため息を付き、
「・・これからは、気を付けて下さい」
それだけ、言った。

「そなたのように、我らの姿が見える者も、実は、少なくは無い。だが、だからと言って、こんな場面で助けてくれる人間は、そう居ない」
「・・・・?」
老人の言葉に、薪は、怪訝な顔をする。

「助けてくれた、礼をしたい。だが、我らに出来ることは、限られている。そう・・例えば、一日だけ時を戻す。そんなこと位だが・・」

「時を・・?」
薪は、ハッとして、改めて周囲を見渡す。
歩道橋の上に居た筈なのに、いつの間にか、周囲はまるで雲の中に居るかのように、真っ白い霧のような物に、包まれていた。

「お前は、一体・・!」

薪が問い質すと、老人は言った。
「我らは、あちらの世界と、こちらの世界を、行き来する種族。双方の世界を、見守る者だ。この子供は、我らの子供。好奇心が旺盛な盛りで、すぐに、手を離れてしまう。その姿は人間には見えなくとも、こちらの世界で傷付けば、消えて無くなることもある」

「・・・・!?」
薪は、目を見張った。

目の前の老人は、いつの間にか、男から女へと変わり、声色までが変化を遂げている。
「しばしば、あちらの世界と、こちらの世界の間に魂が浮遊する人間が居る。そんな人間には、我らの姿が見えるのだ。ほとんどの者が、それを幻と受け止め、記憶から消し去ってしまうが」

「・・時を戻すことが出来ると、言ったな」
この信じられない出来事を、薪の脳がフル回転し、受け止め、どう対処すべきかを探っていた。

「では・・・」
薪は、6年前の、ある日付を口にした。

「それは出来ぬ」
「何故だ!!」

薪は叫んだ。
老人の声色は、また、男のそれへと移り、薪に、諭すように、言った。

「そなたの頭の中が見える。そなたは、今、あちらの世界に居る者達を、こちらの世界に留まらせようとしている」
「それが?」

貝沼に出会った日、この日を変えれば、全てが変わる。

「我らは、人の運命を変えることは、出来ない。人生の、大きな出来事を左右してしまえば、当事者だけではない、それに関わる周囲の人々、更には、こちらの世界全ての未来を、大きく変えてしまうことになるからだ」

「構わない」
薪は、キッパリと言った。

「いや。それは出来ない。我らにも、そんな力は無い」
「では、それ以前の・・」

薪は、いくつか、戻りたいその日を、挙げて見せた。
第九が発足する日や、鈴木に出会った日さえも。

鈴木と出会わなければ。
鈴木を葬り去る、その運命も変えられた筈だ。
その死を回避出来るのなら、たとえ出会うことすら出来なくても、構わなかった・・・。

「駄目だ。駄目だ」
老人は、かぶりを振る。

「何故だ!どうして!」
「そなたの考えていることが分かる。だが、その運命は変えられない。我らが戻してやれるのは、ただ、過ぎ去った日をもう一度味わう、その為だけなのだ。そう、例えば、過ぎ去ったらもう、その日の出来事は忘れてしまうかのような、つまらない一日、そんな日でなければ、戻してやることは、出来ぬのだ」

「・・・・・・」
薪は、こぶしを握り締め、俯いた。
あの日を、変えることは出来ないのか・・・。

何事も無い一日・・・そんな日は、きっと、あれが最後だった。

「いつか、来よう」
鈴木は、そう言った。
いつもいつも、「これから行こう」「今からやろう」、そんな風に、半ば強引に、即行動に移していた鈴木が。

その日に限って、「いつか」と言ったのだ。

「今からか? 無理だ。何の準備もしてないし。昨日まで泊り込みだったんだぞ。鈴木、お前も、早く帰って休んだ方がいい」
薪がそう言うと、鈴木は首をすくめ、それから、うなずいて言った。
「そうだな。薪だって、疲れてるよな。でもいつか・・・いつかきっと、来よう。海に行って、泳ごう。な、薪」

鈴木は、微笑んでいた。
後にも先にも、鈴木が「いつか」なんて言葉を発したのは、この時だけだった。

「いつか」なんて日は、決して来ない。
そんなジンクスを踏まえるかのように、あの直後、貝沼の事件が、自分達を襲った・・・・。

「ふん・・。その日なら、何も問題は無かろう」
薪が何も言わずとも、老人は、薪が思い描いたのその日が、見えたようだった。

「だが、未来を左右するようなことは、一切口に出してはならぬ。そなた以外は、そなたが、一日だけ時を戻した人間だとは知らない。皆、自分達の未来を知らないのだからな。それに・・」

老人は、言葉を継いだ。
「そなたも、その一日が過ぎ去ったら、時を越えたことは、忘れてしまう」

薪は、うなずいた。

どんな条件だろうと、本当に、過去に戻れると言うのなら。
鈴木に・・・・会えるなら。

「では、行くが良い」
老人の言葉と共に、周囲の霧が、するすると消え去った。

「・・・・・?」
薪は、目を瞬いた。
自分は、歩道に立っている。

顔を上げ、周囲を見渡すと、行き交う人々は、さっき、自分が頭痛で額を押さえたその時と、同じ顔ぶれだ。
慌てて車道を見やる。
子供など、居ない。

上を見上げる。
歩道橋も、何の変哲も無い、通勤客が行き交う、日常の風景だ。

こんなところで、白昼夢を見たのだろうか・・・・。

薪は首をすっくと上げ、職場に向かって、歩き出した。

この日も、目まぐるしく、一日が過ぎた。
帰宅したのは、夜の11時過ぎ。

いつものように、鍵を置いた皿の向こうにある、鈴木と雪子と自分の3人が写った写真を、じっと見つめる。

それから、薪はシャツのボタンを上から数個外し、ソファーに座り込んだ。
また、頭痛がする。
頭を抱え、それから、脚をソファーの上に上げて、横になった。

自然に、瞼が閉じる。

「・・!!」
しばらくして、薪は、目を開けた。
地震なのか、目まいなのか、天井が揺れるような感覚に襲われたからだ。

とっさに時計を見る。
ちょうど、12時・・・・

まさか・・!?

次の瞬間、頭が割れるような頭痛に襲われ、薪は、両手で頭を抱え、目を閉じた。





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