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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

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レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
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Scene3:浜辺


2059年、夏。

薪の言葉で、海に泳ぎに行くと決めた薪と鈴木は、途中にあった、マリンスポーツショップに寄った。

「今から? 行くんですか?」
スーツ姿で、水着やタオルや水中眼鏡を買い求める二人に、50絡みの男性の店主は、少し驚いた様子だったが。

「だったら。こちらで着替えて行かれたら」
そこは商売。
手際よく話を進める。

「必要品は、こちらで購入するより、浜辺でレンタルされた方がお得ですよ。駐車場を降りたところに、うちの直営の海の家がありますから。更衣室やロッカーも完備されてます。夜10時まで営業してますから、今からでも、ごゆっくりおくつろぎになれますよ。ドリンクの割引券もお付けしますね」

もう夕方とあって、海水浴場の駐車場は、大分空いていた。
車を停め、商魂逞しい店主の誘導に乗ることにして、海の家で、サマーベッドやパラソルをレンタルし、砂地に場所を確保すると。

「泳ぐぞ!」
鈴木は、即座に海へと向かった。
薪も続く。

ジャバジャバと海に足を踏み入れ、砂に足を取られる感覚の中、前へと進む。

バシャッ。

鈴木が、海に入った。
長い腕で水を掻き、綺麗なフォームで、ぐんぐんと進む。

薪も、水の中に潜り、泳ぎ始めた。

鈴木は、一度顔を上げ、薪の姿を追った。
夕日が照らし出すその水面を、ほとんどしぶきも上げず、まるで海の魚のように、すいすいと泳ぐ、薪。

「・・・・・・」
薪のその姿を見て、鈴木は、何かを思いついたような顔になる。

薪が、水面に顔を出す。
「・・鈴木?」

姿が・・見えない。
浜に上がった様子も無い。
「鈴木?・・・鈴木っ!」

薪は、声を上げた。
と、その瞬間・・

「ブハッ!!」
薪は、大量の水を顔に浴びた。
咳き込みながら、前を見ると。

すぐ目の前で、鈴木が、笑みを浮かべていた。
「おまっ・・! 何っ・・!」
何か言おうとしても、咳き込んでしまい、上手く話せない。

「目の前に潜ってたんだ。気付かなかったか?」
薪は、キッと鈴木を睨み付けると・・

「ブホッ!!」
今度は、鈴木が海水を飲まされ、咳き込む番だった。

「ま・・き・・」
鈴木が気が付いた時には、薪はもう、泳ぎながら、その場を離れてしまっていた。
鈴木も、泳ぎ始める。
薪を追って。

泳ぎ、追い付き、しぶきを浴びせ合い・・・・・
やがて疲れて、二人は、海から上がった。

外した水中眼鏡を手に、パラソルの下まで歩く。
その二人の背中を、沈みゆく太陽の最後の光が追う。

鈴木は、傍らを歩く薪を見つめた。
薪の白い身体に、水滴がまとわり付き、その細い腕や脚を伝い、滴り落ちていく。

鈴木は、今が、夜の帳が降りる時分であることを、幸いだと思う。
もし、この薪の姿が、昼間、太陽の下に晒され、人目に触れたなら・・・。

パラソルの下に辿り着くと、薪はタオルで身体を拭き、サマーベッドに座った。
「・・薪、一度立ってくれ。もう少し、動かそう」
鈴木は、二つのサマーベッドを、パラソルの真下に、くっつくように並べ直す。

「・・? もう、日も照っていないのに?」
「これなら、パラソルに阻まれて、外からはよく見えない」
そう言う鈴木に、薪は不思議そうな顔をする。

「何か、見えてまずいものがあるか?」
「・・・・・・」

鈴木の目の前には、濡れた髪を、後ろへと絞るように撫で付けた薪の顔。
いつもは前髪に隠れた額が現れ、その横顔の線が、暗闇に浮かび上がる。

それが、完璧な物であることを、知る由も無い当人に、何と説明したら良いのだろう。

鈴木は、自分の腹を、ポンと叩いて、言った。
「こんなオッサンの身体、人の目に晒すもんじゃないだろ?」
「何を・・」
薪は、プッと吹き出した。

「何か飲む物を買ってくる。薪はビールか?」
ドリンクの割引券を手に、鈴木が言った。

「多量の塩分を摂取させた上、利尿作用の高い物を飲ませる気か? 脱水症状になるな」
薪の物言いに、鈴木は、口元を緩め、言う。
「運転するのはオレだ。気を遣うな」

薪は、肩をすくめて、言った。
「お前と同じ物を」

戻った鈴木の手には、トロピカルアイスティーのグラスが、二つ。
薪はグラスを受け取る。
その隣りで、鈴木も、サマーベッドに身体を預けた。

「・・・・・・」
薪は、じっと鈴木を見つめる。
「オッサンの身体」などと言っていたが、鈴木の身体には、無駄な贅肉など、無かった。
それは、忙しい仕事の合間にも、自己管理を怠らない、成熟した男の身体だった。

グラスを抱える、大きな手。
穏やかで、時に鋭さを放つ、切れ長の目。
太い眉に、ガッシリとしたアゴの線。

薪の胸の中に、ズン・・と、込み上げてくる物が、あった。

「鈴木・・」
「うん?」

鈴木は振り返る。
すぐ傍に、薪の小さな顔があった。

「鈴木。お前は」
薪が、言葉を一度途切らせる。

それが、重大なことだと思わせて、鈴木は、無言で顔を近づけた。
そんな鈴木の瞳から逃れるように、薪は目を伏せ、そして、言った。

「鈴木。お前は、明日、第九を出ろ」





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