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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene4:無力


その日。

薪が目を開けると、そこは、第九の仮眠室のベッドの上だった。
見上げると、壁に掛けられた時計は、12時1分。

傍にあったケータイに手を伸ばす。
画面の日付は、2059年・・・

隣りのベッドでは、かつての部下が、イビキを掻いている。
鈴木は・・鈴木はどこだ・・・!?

仮眠室を出ると、その先に見える背中は、紛れも無く・・・・

「薪、起きたか」
鈴木が振り返る。

鈴木が・・・・・・

「ちょうど、声を掛けようと思ってたところだ。これを見てくれ」
「・・・・・・」
「薪?」

鈴木が、不審げに目を細める。
「あ・・」
薪は、瞬きをして、鈴木が向かう端末に近付いた。

「何だ?」
「これだ。ここに・・・」

事件の核心を付く画像に、薪の脳が回転を始める。
「すぐに、各部署に連絡を取ろう。朝一番に、報告会議だ」
「警視庁にも行くようだよな。それに、遺族への連絡と・・」

そこに、また、見覚えのある顔ぶれが揃う。
「買い出し、行ってきました」
「お疲れさん。すぐ食って仕事再開だ。忙しくなるぞ」
「え? さっきのやつ、見つけたんですか?」

鈴木を囲む部下達・・皆が、ここに居る・・・・・

「薪?」
鈴木が気付いた時、薪は、その場から離れていた。

機械の心臓部であるシステム室に入ろうとする。
だが、ドアのロックが解除されない。

「薪? 何してる」
鈴木が声を掛けると、薪は、ビクッと肩を震わせた。
「ドアロックが・・」
「ロック?」

鈴木が、指紋照合で解除をする。
ドアは、何のこともなく、開いた。

「・・・・・・」
薪は無言のまま、中に足を踏み入れた。
だが・・

「薪?」
「いや、何でもない。いいんだ」
薪は、後ずさると、システム室の外へ出た。
そしてドアは、再び閉じられた。

薪は、システムを破壊しようと考えていた。
この先、鈴木がやることを、事前に自分がしてしまえば、あの惨劇は起こらないのではと、そう、思ったのだ。

あの老人と、約束を違えることになっても。
たとえ、未来の全てを、変えてしまうことになったとしても。

変えたいと思った。
迷うことなく。
全てを。

だが、ドアロックは解除されない。
中に入れば、一歩入っただけで、身体が固まったように、その先に進めなくなる。

この時点では、貝沼が殺めた28人は、もう帰らぬ身となっている。
せめて、半年後に命を落とす、少年院の子供達だけでも救えないかと、少年院に連絡を取ろうとすると、やはり、身体が動かなくなる。

この先に起こることを回避出来ないかと、いくつもの方法を試みた。
だが、そのことになると、行動に移せなくなる。
そしてその都度、頭の中に、声が響く。
「無駄だ。人の生死は変えられないのだ・・」

薪は、頭を抱えた。
これから起こる事件。
多数の犠牲者。

それら全てを知っていながら、自分は、何も出来ないのだ。
目の前で仕事をしている部下達も、自分達の運命を、何も知らない。

そんな彼らに、自分は、何もしてやることは出来ない・・・!

何が礼だ。
心の中で、あの老人に毒づいた。
こんな思いを味わうのなら、戻らない方が良かったのではないか・・。

自分に出来るのは、ただ、あの過去の一日を、同じようになぞるだけ。
身を切られるような重さに、押しつぶされそうになりながら、そこから逃れるように、薪は、この日、この時の事件の捜査の終着に向かい、仕事に没頭した。

貝沼が起こす事件の全ても。
これから3年の間に起こる事件の被害者達も。
この第九の部下達も。
天地も。
鈴木も。

その運命を、自分は、変えることは出来ない。
彼らを、救えない。
それはつまり、自分が関わる全てにおいて、その責から、逃れる術は無いということなのだろう。

分かっていた筈だ。
自分が、大勢の人々の死に関わった事実を、鈴木を・・葬り去った罪を、消し去ることなど、出来ないと。

それを受け入れた時。
そんな事実を認識してなお、過去に戻れて良かったと、そう思い直せたのは。

鈴木が、そこに居たからだ。

何も知らない鈴木。
鈴木自身の運命を・・僕の罪を、知らない鈴木。

そんな鈴木と、何食わぬ顔で言葉を交わせる自分は、何と残酷な人間なのだろう。
それでも・・嬉しいと感じてしまう。
鈴木が傍らに居ることに、微笑むことに、喜びを覚える自分は、何て・・・・

「海へ行こう」
そう言ってしまったのは、何故なのだろう。
それで、何が変わるわけでもないのに。

ただ、「いつか」という鈴木の言葉を、くつがえしたかった。
そういうことなのか・・?

自分でも分からない。
ただ、過去の一日をなぞり、運命を受け入れる筈だったのに。
再び、鈴木と会えた。
それだけで、良かった筈なのに・・・。

何も言わない筈だった。
全てを受け入れ、このまま、鈴木と別れる筈だった。
けれど、言わずにはいられなかった。

せめて・・せめて・・・・

「鈴木。お前は、明日、第九を出ろ」





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