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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene5:写真


「どういうことだ・・?」

鈴木は、眉をひそめた。
目の前にある薪の瞳は潤み、唇は震え、何か、切羽詰った物を思わせた。

薪の手にするグラスが傾き、中身がツーッ・・と、こぼれ出る。
「あ・・」
鈴木は、こぼれたことにさえ気付かない薪の手から、グラスを掴み、自分のグラスと共に、傍らに置いた。

薪は言う。
「理由は聞くな。とにかく、今すぐ、第九を出るんだ」
「何を言ってる? ・・わけが分からない」
鈴木は、戸惑った表情で、首をかしげる。

「お前のような人間は、第九の捜査員としては、不適格だ。あっち側に、引きずられてしまう」
「不適格って、薪・・!」
驚きに目を見開く鈴木に向かい、薪は、話し続ける。

「すぐに、第九を離れろ。お前は、第九には必要ない」
「薪・・・」
目をそらす薪の顔を、鈴木は、呆然とした顔で、見つめた。

だが、やがてその表情は静かな物になり、鈴木は、多くを語らず、ただ、言った。
「薪。・・何があった?」

「・・・・・・」
薪は、目を伏せたまま、唇を噛み締めた。
厳しい言葉を浴びせても、鈴木は、憤慨すらしない。
それどころか・・・

「お前がそうして、オレを遠ざけるには、何か理由があるはずだ。それとも・・オレが何か、お前を怒らせるようなことを、しでかしたか?」

「そういうわけじゃない!・・そうじゃなくて・・!」
薪は、顔を伏せた。

言えるわけが無い。
「お前は死ぬんだ」と。
しかも、「僕に殺されるのだ」なんてことを・・・!

今や薪は、サマーベッドの上で、丸くなり、膝を抱え、俯いて震えていた。
「薪・・・」
鈴木は、乾いたバスタオルを手に取り、薪の背中にかぶせた。

「・・・・・・」
たった一枚のタオルに、温もりを感じて、薪は、胸が詰まるのを感じた。

「鈴木・・」
「うん?」
鈴木は、薪の傍に寄り、耳をそばだてる。

「頼みがある」
薪は、静かに話し出した。

「この先、猟奇殺人の・・犯人の画像は、責任を持って、僕が全部見る。第九での事件の捜査の責任は、僕にあるんだ。お前が余計な物を見る必要は、無い。他の部下にも、そう、指示してほしい」
「?・・オレ達に、仕事をするなと言ってるのか?」

「そうじゃない・・。通常の・・被害者の画による犯人の割り出しや、事件の因果関係の捜査は、お前達に任せる。だから・・」
「通常のって・・第九に来るのは、全て、猟奇犯罪ばかりだ。それに、加害者の画は、何より事件の全貌を知る、大切な物だ。それを見るなって・・無茶だ!」

「無茶でも!」
薪の声が張り裂け、鈴木は、一瞬、言葉を失った。

「僕がやる!・・だから、放っておいてくれ。そして、もう、僕に構うな。僕から・・第九から離れてくれ。僕を一人に・・頼む・・!」

「・・・・・・」
鈴木は、薪を見つめていた。
そして・・・

「・・・!」
薪は、顔を上げる。
鈴木の腕が、自分の肩を、抱き寄せていた。

鈴木は、自分を見上げた薪の顔を見つめた。
いつしか、とめどなく、涙が溢れている、その顔を。

「なあ、薪」
鈴木は、穏やかな声で、話し始めた。

「薪は、これまでにも、いくつもの事件を、自分の中で抱えてきた。オレは、少しでも、お前の背負う物を分かち合いたくて・・でもお前は、決してそれを望まなくて」

「・・・・・・」
薪は、鈴木の声を聞いていた。
胸の中まで、染み入ってくる、その声を。

「構うなと言われても、オレは、お前を放っておくことなんて、出来ない。たとえ、お前がそれを望まなくても。オレ自身の意思で、オレは、お前の傍に居る」

「・・そんな簡単に物を言うな! 僕は・・!」
「簡単に言ってるんじゃない」 
鈴木は、薪の肩を抱えるその手に、力を込めた。

「・・・・・・」
薪は、目を閉じる。

鈴木が、言う。
「分かってるさ。お前は、オレを危険に巻き込むことを、恐れてる。だがなあ、薪、たとえ、オレが危険に巻き込まれたとしても・・・そう、死に瀕することがあっても」

ピクッ・・と、薪の身体がこわばる。
それを鈴木は、自分の手の中に、感じた。

「それでもオレは、お前と共にあることを、止めない。たとえ、一度死んで、そして生まれ変わったとしても、オレは、同じことをするだろう」

「鈴木・・・」
薪は、目を開け、鈴木の顔を見つめた。
鈴木も、薪を見ていた。

「いつか再び、生まれ変わっても」

鈴木は、すっ・・と目を細め、薪のことを、見つめたまま。
「薪。オレは、お前を見つけ、お前を追い、お前と共に生きる道を選ぶだろう」

・・・・沈黙が、二人を、辺りを包んだ。

鈴木は、置いておいたグラスを、再び手に取った。
「飲めよ」

「・・・・・・」
薪は、グラスを受け取った。
氷はすっかり溶け、薄茶色の液体の上で、ライムのかけらが、ゆらゆら揺れている。

「そうだ」
鈴木は、荷物をあさると、何かを取り出した。

「写真撮ろうぜ」
薪が見ると、鈴木は、カメラを手にしていた。

「それ、公用のデジカメ・・」
「考えてみたら、薪とオレ、二人だけで撮った写真て、無かったよな。プリントアウトしたら、データは消しておくから。薪にも一枚やるよ」

言いながら、鈴木は、薪の傍に顔を近付け、カメラを上からかざした。

カシャッ。
フラッシュの光と共に、シャッター音が小さく響いた。



************



薪は、目を覚ました。

ソファーの上で、眠ってしまっていた。
起き上がり、時計を見ると、夜の12時過ぎ。

確か、帰宅したのが11時過ぎだったから、少しばかり、うたた寝してしまったということか。

何か、夢を見ていたような気もするが・・・よく覚えていない。
ただ、この時期になるとよく見る、あの日の悪夢ではないようだ。
とても重苦しい・・それでいて、どこか浮き立つような、胸がうずくような感覚が残っている・・・。

立ち上がると、鍵を入れた皿の後ろに立ててある、写真が目に入った。
「・・・・?」

何かが気になり、そこに近付いた。
写真を手に取り、じっと眺める。

・・・何も、変わったところは無い。
3年前から飾っている、鈴木と自分、浜辺で二人で写した写真だ。

あの夏の日、何故か、出張帰りに海に寄ることになって、いい年した男二人で、馬鹿みたいに騒いで。

「?・・・・」
薪は、頬に何かが流れるのを感じて、そこに、手を触れた。
瞳から溢れた滴が、こぼれ落ちていた。

「な・・ぜ?・・」

今更。
この写真を見て、急に、どんな感情が揺り起こされたというのだろう。

「・・鈴木」
薪は、その写真の男に、一言、そう語りかけた。

写真の中には、ニッコリと笑みを見せている鈴木と。

どこか、悲しげに切なげに・・・・・微笑みを浮かべる自分が、写っているのだった。




いつか再び 終





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