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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene6:象徴


その場でケータイのメッセージを再生するわけにもいかず、青木は、第九の執務室を出ると、廊下を1ブロック先まで進み、曲がったところでケータイを開いた。
その間に、先輩達が第九を出る、足音や話し声が、聞こえた。

舟木からのメッセージは、仕事が済んだら、連絡が欲しいというものだった。

第九に戻ると、岡部が一人、端末に向かっていた。
「薪さんは?」
青木が尋ねると、
「うん?」
岡部は端末から目を離さずに一度声を出し、それから、キーをポンと叩いて、青木を見上げた。

「薪さんは、今出てったぞ。何だ? 何か用か?」
「いえ・・・」
青木は、一度周囲を見渡し、それから、もう一度尋ねる。

「薪さんは、いつ頃戻るんでしょう」
「そうだな。あちこち回るらしいから・・ほぼ一日かかるかもしれんな。夕方には戻るだろうが」
「そうですか・・」
「オレは、あと一件、これを送信したら帰る。お前も帰れ」

「・・・・・・」
無言で立つ青木を、岡部は座ったまま、じっと見上げる。
「青木。お前、何か・・」
「え?」

目を見張る青木に、岡部は口を開き・・
「いや。何でもない」
そう言って、再び端末に向かった。

青木は帰宅すると、自室で上着を脱ぎ、ベッドへ倒れ込んだ。

そうだ、舟木に連絡を入れねば。
だが、まだ電話するには朝が早過ぎて迷惑かもしれない。
もう少し、時間を置いてからの方がいいだろう。

そんなことを考えながらも、まぶたに浮かぶのは、薪の姿。
捜査が終了し、部下達を帰しながら、自分はまだ、残務処理をこなしている、薪。
誰よりも早く出勤し、誰よりも遅くまで動いている、その人。

どんなに部下に厳しくても、皆が薪に付いていくのは、薪が、誰よりも自分自身に厳しいからだ・・。

その薪の様子が、おかしい。
自分と目を合わせないのは、やはり、自分が薪に隠し事をしていることに、気付いたからだろうか。

薪に小さな嘘を付き、舟木に会ったのは、それが、薪のことだからだ。
人事係の人間の、薪の調査に協力するなど、薪自身に言うわけにもいかない。

それに、そこまでせねばならない程、薪を攻撃しようとしている人間が居ることも、出来れば薪に知らせたくない。
それじゃなくても重圧を抱える薪に、これ以上、薪をとやかく言う人間の存在を知らせるようなことは、避けたかった。

自分が、舟木の調査に協力すれば、ことは丸く治まるのだ。
薪の私生活について、その人となりについて。
私生活については、一体どこまで話したものか悩むところだが、その人となりは、何を聞かれても、戸惑うことは無い。
薪ほど素晴らしい人間は、どこにも居ない・・・・。

隠しているのは、全て薪の為だ。
そう思いながら、本当にそれだけか?・・そう青木は自分に問う。

舟木という女性の存在を、薪に知らせたくない、薪に近付けたくないという思いは、どこかに無いだろうか。

もちろん、薪が自分を裏切るようなことをするとは、思っていない。
けれど、今、自分を選んでいる薪が、この先もずっと、自分を選び続ける保証など、どこにも無い。
薪にとって、自分がそんな価値のある人間だなんて自信は・・・・。

・・舟木は、薪にその想いを伝える気は、無いのだろうか。
仕事の話をしていた舟木には、そういった他意は、全く見られなかったが。
だがもし、舟木が本気で、薪に行動を起こしたら、どうなるだろう。

『お話し出来て、良かった』
舟木の笑顔は、女性として魅力的だった・・そう、自分自身、動揺したことを、認めざるを得ない程に。
薪にこの一件を告げられない理由は、その動揺に対する後ろめたさも、含まれているように思われた・・・。

「はあ・・・」
青木は、大きくため息を付いた。
とにかく、この件は、早く終わらせよう。
薪に隠しごとをし続けることも、彼女と会うことも、スッパリと終わらせたい。

・・そんなことを思ううちに、まともな睡眠を取らず捜査に明け暮れた身体は、いつの間にか、眠りに落ちていった・・・・。

目を開く。
自室の天井が見える。
ガバッと起き上がり、青木は、あくびをしながら、顔をこすった。

ワイシャツにスラックス姿のままで、寝入ってしまっていた。
時計を見ると、もう昼に近い。

勤務中かと思案しながら舟木に電話をすると、相手は、電話を取った。

「そうですか。それでしたら、今日これからのご都合はいかがですか?」
青木が、なるべく早く話を済ませたいと告げると、舟木はそう言った。

「今日・・ですか」
青木は、再び時計を見る。
薪は、夕方には第九に戻るだろうと、岡部は言っていた。
帰宅する薪を、待ち受けたい。

「あの・・今日は、夜はちょっと・・都合が悪いんですが」
そう青木が言うと、
「私、午後なら抜けられますから。そうですね、2時頃はいかがでしょう?」
舟木が答えた。

電話を切ると、青木は、冷蔵庫の中を漁って食事を済ませ、風呂に入り、出掛ける支度をした。
マンションを出ると、青木の目の前に、車が止まった。
運転しているのは、サングラスを掛け、肩に掛かる黒髪が揺らめく女性。

「乗って下さい」
車の窓が開き、舟木にそう言われ、青木は助手席に乗り込んだ。

「今日は少し、ドライブしましょう」
「え?」
すぐに車を発進させた舟木を、青木は見やる。

「この前、私たちがお店の外で話しているのを、目撃した職員が居るの、ご存知?」
「は?」
「ですから、先にお帰り下さいと申し上げたのに」
「・・・・すみません」

青木は、神妙な顔になる。
確かにそうだ。
あの状況を考えたら、舟木より先に店の前から立ち去った方が良かった。
自分は、そこまで考えなかった・・・。

舟木にも迷惑を掛けてしまったと、青木が目を上げると。
舟木の口元には、笑みが浮かんでいた。

「少し足を伸ばすことになりますけど。知人がやっているレストランがあります。個室もありますから、ゆっくりお話し出来ると思います」
「あの・・・」
舟木に向かい、青木は言う。

「オレ、昼飯食ったばかりで、腹は減ってないですし。毎回ご馳走になるのも、心苦しいんで・・」
「あら。そんなこと、お気になさることはありませんのに。こちらの方が、無理なお願いをしてるんですから」
「いえ。オレも、無理だったら断わりますから。薪さんの為だと思って、自分から来てるに過ぎません」

青木の言葉に、舟木は、ハンドルを握ったまま、チラリと目を上げる。
「そうですか。・・でも、人目に付くところでお話しするわけにも参りませんし」
舟木は、思案しているようだったが、そのまましばらく走り続けた。

都会の喧騒は遠くに過ぎ、やがて、広々とした駐車場に、車が入った。
その先には、海が見えた。

エンジンを止めると、舟木は言った。
「ではこのまま、車の中でお話を伺っても、よろしいでしょうか?」
「はい。舟木さんがよければ、オレは構いません」
青木の言葉に、舟木はうなずき、シートベルトとサングラスを外すと、後部座席に置かれたカバンに手を伸ばした。

その拍子に、ふわり・・と、舟木の髪から心地よい香りが立ち昇った。
舟木は、カバンを引き寄せ、運転席のシートを後ろにずらしてスペースを広げ、カバンを開けて書類やペンを取り出している。

女性は、髪形で随分印象が変わるものだと、青木は思う。
前回会った時は、髪をアップにしていた為、青木は最初、車が近付いた時、舟木だと分からなかった。
今、目の前に居る舟木は、ややウェーブのかかった黒髪を肩までおろし、その雰囲気までが、柔らかく感じられた。

「では、お話しいただけますか?」
舟木は、書類を挟んだボードを手に、座り直した。

「話すって・・何を話せばいいんでしょう?」
「そうですね。まず、退庁してからの、薪さんの生活ぶりを」
「んー・・別に普通です」
「普通と言うと?」

青木は、改めて、薪の行動を思い返す。
「帰って、風呂に入って、飯を食って・・」
「食事は、きちんと取ってらっしゃいますか?」
「そうですね。捜査中は淡白な物を好みますが、食べる時は、それなりに食べてますね」

「食事の後は?」
「うーん・・読書をしたり、新聞を読んだり・・」
そこまで言って、青木は、言葉に詰まる。
その先に、何があるかなど、言えるわけが無い・・!

「・・では、趣味にいそしんで、それから、就寝するわけですね」
「え!? 趣味って・・」
「ですから、読書をなさると」
「あ・・はい、はい、そうです」

頭を振る青木に構わず、舟木はボードに書き込みをしている。
「趣味に親しむ時間を持つのは、とても良いことですね。精神をリラックスさせる手段を持ち得ているということになりますから」
舟木の言葉には、何の含みも無い筈なのに、青木は、気が気ではなかった。

「休日は、主に何をなさってます?」
「・・・買い物をしたり、料理をしたり。ネットに向かったり、何か勉強をしていることもあるようです」
「身体を動かしたりなどは?」
「え!?」

青木が絶句する様子に、舟木は目を上げ、続ける。
「ジョギングをしたり、ジムに通ったり、スポーツクラブで汗を流したり、警察関係者には、休日に身体を鍛えている方が多いですから。これも、健全な心身を育成する行動ということで、いい評価に繋がるんです」
「あ・・ああ、そうですよね」

・・そんなやり取りの末、話は、薪の人間性へと移った。

「とても優しい人だと思います。純粋で、慈愛と正義感に溢れていて・・」
「そういう、抽象的な言葉ではなく、そんな人となりを表す、出来れば何か、具体的なエピソードが欲しいんですが」

「具体的・・」
「ええ。私生活を共にする青木さんならではの、薪さんのその優しさを表すエピソード、何かありませんか?」

何かあるだろうか。
青木は、じっと思案する。

プライベートでの薪・・自分をしょっちゅう馬鹿と言い、必要なことをあまり口に出さず、不安にさせたかと思うと、微笑み一つで、自信をくれる。
しかしそれは、言葉にしたところで、薪の良さを表すエピソードにはなり得ない・・・。

優しさが感じられると言えば、それは、あの時だ。
薪は、激しい情熱と共に、自分を天国に導いてくれる。
あの薪が、自分を受け入れ、共に感じ合い、そして何より、その行為に満足したことを伝えてくれる。
その大きな愛情は、優しさに他ならない・・・

「・・・・・・」
「あの・・・?」
押し黙ってしまった青木に、舟木が、首をかしげる。

駄目だ。
薪は、あんなにも素晴らしい人間なのに、自分は、どうして伝える術を持たないのだろう・・。

「・・もし、具体的なことを挙げるのが難しいのであれば、人間関係について、ご存知のことがあればと思いますが」
舟木の言葉に、青木は、目を合わせる。
「例えば、友人や家族を大事にしているとか、そういったことです。そういったエピソードがあれば、手っ取り早く、当人の人格に対して高評価を得ることが出来ます」

「友人や、家族・・・」
そう言えば、薪がそういった人間と関わるところを、見たことがあるだろうか・・。

「あるいは、お付き合いしてる女性とか」
「ぐっ・・!」
青木は、言葉に詰まる。

「本来なら、プライベートで付き合っている相手にまで詮索する権限はありませんが、実際には、そういったことが、評価に大きく影響しているのは事実です。付き合っている相手が、暴力を振るう人間だったり、借金や飲酒などの問題を抱えていたりした場合、大きなストレスを感じているということになりますから」

「何か問題を抱えている場合には、仕事の負担を軽減するなど、当人に配慮した人事を考える場合もありますし・・・どうしました?」
「いえ・・・」

いつしか、蒼ざめている青木を、舟木はじっと見上げる。

「・・あるいは、付き合う相手が居ることで、心身の安定を得ていると、評価される場合もあります。薪さんは特に、過去にあのような事件に見舞われてらっしゃいますから。精神が安定しているかどうかといったことは、大きな問題ですので」

「・・・青木さん?」
舟木が声を掛けても、青木は、押し黙ったままだった。

暴力や借金などとは無縁だが、自分のような人間と付き合っている、それは、薪にとっては、大きな問題に他ならない。
もしこれが知れたら、薪は、閑職に回されることもあるのだろうか。
あるいは、退職なんてことに・・・。
結局、薪にとって一番の問題は、自分自身ではないのか。

薪の為にと思ったのに、ろくな話も出来ず。
薪はあれ程、眩しい人間なのに・・・

「あの・・」
ようやく、青木は、重い口を開いた。

「薪さんは、本当に素晴らしい人なんです。オレには、上手く言えないんですけど・・だから、精神が不安定だとか、性格が破綻してるとか、そんなこと、誰にも言わせません。薪さんは、この世の誰よりも、綺麗な心を持ってる」

「それだけは、間違いの無い真実です」
キッパリと、青木は言った。

青木の言葉を聞いて、舟木は、大きく目を見開いた。
それから、フッと微笑むと、車のフロントガラスに向き直り、外を見つめた。

外は、日が傾き始めていた。
差し込む夕日に、舟木の横顔が照らし出され、黒髪が艶めいている。

綺麗だなあ・・・。
青木は、素直にそう思った。

心の中に住む、とてもとても綺麗な人。
その人と並んでも、彼女なら遜色無い。
そう、認めざるを得なかった。

いや、彼女に限らない。
男の自分より、薪にふさわしい女性は、この世に沢山居る筈だ。
今、自分は、舟木の姿を通して、それを思い知らされているだけなのだ。

自分など・・・

青木は、舟木をじっと見つめていた。
自分には決して到達出来ない、眩しい女性の象徴が、そこにあった。

舟木が、そんな青木に気付き、振り返ったことを、青木は意識していなかった。
その顔が、自分に近付いてきたことも・・・

「・・・・!!」
青木は、あまりにも意外な出来事に、動くことが出来なかった。

自分の唇に、舟木の唇が、重なっていた。





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