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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene8:波


ドアを開ける気配。
その音に、青木はすぐさま玄関に向かった。

薪が中に入り、玄関のドアを閉め、振り返った瞬間。
「・・・・!!」
青木は、薪を抱き締めた。

「青・・! お前、何・・」
とっさに青木の腕を振りほどこうとし、言いかける薪の唇を、青木は自分の唇で、ふさぐ。

そして、青木を離そうとしていた薪の手も・・・青木の背に、回った。
「・・・・・・」
口付けを交わしながら、青木は、薪の身体を片手で抱え上げ、もう片方の手で薪の靴を落とした。

そして、両腕で薪を抱き上げ、そのまま寝室へと連れて行った。
薪の手は、青木の首の後ろへと回り、青木にしがみついている。

青木は寝室に入ると、薪を床に立たせ、そのコートを、上着を脱がせた。
薪も、青木のシャツのボタンに手を伸ばし・・だが、その手が、止まった。

「・・薪さん?」
青木が、薪の顔を覗き込むと、薪は、目をそらす。

「薪さん、オレを見て」
青木は薪の肩を抱いて、言った。
「・・・・・・」
「薪さん・・どうしてずっと、オレを見てくれないんですか」

薪は、視線をそらしたまま、立ち尽くしている。
「僕は」

薪は言った。
「お前がこの先、僕以外の誰かを選んだとしても、何も言うつもりは無い」

「は!?」
薪の言葉は、青木にとって、予想外のものだった。

「あの・・何故そんな?」
戸惑う青木に、薪は言う。
「お前は最近、僕に隠して、誰かと会っているだろう。今日も今まで、会っていた筈だ。相手は、舟木人事係長か?」

スパッと薪にそう言われ、青木は、目を見張る。
「な!・・どうして?」
ふっと息を吐き、薪は、ベッドに座った。
青木も、その隣りに座る。

「僕が早朝会議で、先に出勤した朝。お前は、庁舎の前で、彼女と会っていた」
「え・・!」
青木は絶句する。
そんな、ことの発端から、薪に知られていたのか。

「でも・・何故?」
うろたえながら青木が問うと、薪は言った。

「お前はあの日、僕と一緒に出勤しようと支度をしていたが、間に合わなかった。僕は、第九で仕事の段取りを付けた後、会議室に向かう前に、外を見た」
「え、何で・・?」

「・・・・・・」
薪は、横目で青木をちらりと見上げ、すぐに視線を外す。

その、明らかに不機嫌そうな視線。
「あ・・」
青木は、薪がその時、外を見た理由が分かった気がして、顔が赤らむのを感じた。

薪は窓の外を見て、庁舎の前に現れた青木を見つけた。
早足で歩くその姿を視界に捉え、薪の口元が、かすかに緩む。

次の瞬間、薪は、青木に近付く女性の姿に、気付いた。
その女性は、少し前からそこに立っていて、青木を待ち受けていたようだった。

「相手が、舟木係長だということは、すぐに分かった。僕は以前に、彼女を会議の席上で見たことがある。彼女はまだ入庁したばかりで、その席には、資料を届けに来ただけだった。だが、総務部長が、せっかく来たのだから、少し意見も述べていけと、彼女に命じたんだ」

それは、総務部長の、一種のたわむれだった。
だが舟木は、そうそうたるメンバーが揃うその席で、臆することなく、自分の意見を述べた。
「ご苦労。下がっていいよ」
総務部長に言われ、舟木は、その場を後にした。

「総務部長は、彼女を気に入っているようだった。僕は彼女を見て・・第九に入ったばかりのお前に似ていると、そう感じた」
「え?・・」

青木は、傍らにある、小さな頭を見つめる。
「新人の身で、恐いもの知らずに、前に進んでいくお前。そんなお前と、重なったんだ。だから・・彼女とお前は、きっかけさえあれば、きっと気が合うだろうと、そう思っていた」
「薪さん・・・」

青木は、やっと薪の考えていることが、飲み込めたような気がした。
薪は、舟木と自分のことを・・・・

「!! 薪さん! 違います!」
青木は、慌てて否定する。

「舟木さんとオレは、そんなんじゃありません! 実はその・・舟木さんには、人事のことで、ちょっと相談ごとをされて・・その・・・」
「分かってる」
「え?」

青木は、薪を見つめる。
分かってるとは、一体どういうことだろう?

「お前が彼女に声を掛けられ、僕に嘘を付いて会うとしたら、それは、僕のことだろう。最近、僕のことをとやかく言って、人事にまで口を出している人間が居ることは、耳に入っていたからな」
「え!・・」
薪は、その人物の存在を知っていたのか。

しかも・・・

「オレが嘘を付いてるって、どうして分かりました?」
「お前は、友達と飲みに行くと言った時、それだけしか話さなかった。いつもなら、どんな友達が参加するか、どこで話が持ち上がったか、そんな余計なことまで話すのに」
「え・・」

「しかも、帰宅してからも何も話さない。いつもなら、酒が入っていれば余計に、その日のことを、うるさく報告してくるお前が」
「う・・」
「決め手は、僕に近付いた時だ。すぐ傍で息がかかるのに、まったく酒の匂いがしなかった。それで、本気で隠し通しているつもりだったのか?」

「・・・・・・・」
青木は、全く言葉が出ない。

「今日も、帰り際にケータイを持って廊下に出て行き、あげくに、帰宅して着替えた筈なのに、仕事用のシャツを着ている」
「あ・・」
青木は、自分の姿を見下ろす。

確かに、仕事のような格好で出かけた。
実際に、それは仕事だと思ったからだ。
会う相手が職場から直行で、スーツ姿だからということもある。

帰ってから、スラックスは履き替えたが、シャツは、そのままだった。
薪の目は、誤魔化せない・・・・・。

青木は、ベッドから降り、薪の目の前の床に座り込むと、頭を下げた。

「薪さん。本当に、すみませんでした・・・!」
薪に隠しごとなど、自分に、出来るわけが無かったのだ・・・。

「・・・・・・」
頭を上げると、薪と、目が合った。
だが、薪はふっと・・また視線をそらした。

「薪さん。薪さんの様子がおかしかったのは、オレが、隠しごとをしていたからですか?」
「・・・・・・」
「薪さんに嘘を付いて、隠しごとをしていたことは、謝ります。でも、やましいことは、何もありません」
「・・だから、分かってる」

「舟木さんは、薪さんの情報を集めたいと言って。オレは、薪さんのことを、少し話しましたけど・・すみませんでした。でも、薪さんの為になると思ったんです。オレの証言によって、薪さんの評価をプラスに出来るって聞いて」
「そんなことだろうとは思っていた。分かってる」

「薪さんは、彼女がオレに似てるって言いましたけど。オレはどちらかと言うと、薪さんに似てるところがあると思って・・。いや、だからって、オレの気持ちが動いたわけじゃなくて」
「分かってる」
「オレが、薪さん以外の人間を選ぶなんて、そんなこと・・」

「分かっていても!」
薪は、声を大きくした。
口元を噛み締め、顔を歪ませて。

「・・・・・・」
青木は、そんな薪の様子に、押し黙る。

薪は再び、静かな口調になり、話し始めた。
「分かっていた。・・お前が、僕を裏切るような真似をする筈が無いと。分かっていても、だからと言って、お前がこの先も、僕の傍に居ると、そんな保証がどこにある?」

「薪さん・・・」
青木は、ポカンと口を開けて、薪を見つめた。

薪は、目を伏せて話す。
「お前は今、迷うことなく、僕の傍に居る。だが、お前だって、一人の男だ。この先、誰もが祝福する未来を共に出来る、そんな女性が、目の前に現れたとしたら・・」

「お前自身が予想もしない心境の変化が、いつ、訪れるかも分からない。もし、そうなっても・・僕には、それを非難する権利は無い」

「あ・・・・」
青木は、口を開けたまま、言葉が出なかった。
薪は・・薪も・・・・・

「そう。そんな権利はどこにも無い。そう思いながら・・それでも、僕は彼女の存在が・・・」
薪は、そこで一度言葉を飲み込んだ。

「・・最初は、小さな波だった」
そしてまた、話し始める。

「お前が、彼女と会う。ただ、それだけのこと。分かっていても、僕の中で、波が起こっていた。さざ波が、やがて少しずつ、うねりを大きくしていくように」

「・・・・・!」
青木は、とてつもなく驚いた。
つまり、薪は・・。

「彼女に限らない。この先も、お前には、そんな出会いが訪れるだろう。いつか、お前の心が離れたとしても、僕には責める権利など無い。なのに僕は・・・」

「そんな自分に、僕は、お前の顔をまともに見ることも出来ず・・・・っ!!」
薪が話すその最中に、青木は薪を抱き締めていた。

「薪さん・・薪さん・・オレ・・・」
言いながら、青木は両手で薪の頭を抱え、自分に向けさせた。

薪は、伏せていた目を徐々に上げていく。
そして、その潤んだ瞳は、青木の瞳の前で、ピタリと止まった。
その瞳を真っ直ぐに見つめ、青木は、口を開く。

「薪さん・・。オレは、薪さんしか・・薪さんだけを・・ずっと・・・・」

言葉にならない。
想いが溢れて、言葉が見つからない。

代わりに、青木は、薪に口付けた。
深く、深く・・・・

口付けながら薪を抱き締め、そのまま後ろへと押し倒す。
顔を離し、そして見下ろす。
仰向けに横たわる美しい顔、愛しいその姿。

この人が、自分を想い、胸を焦がしていたのかと、そう思うと、信じられない。
愛しくて、愛しくて、たまらない・・・・。

「薪さん。ああ・・薪さん・・!」
その名を呼びながら、薪が身に着ける全てを取り去り、薪を愛する。

「青木・・青木・・・!」
薪もまた、青木を呼ぶ。

「薪さん、オレを見て下さい。オレをずっと・・見ていて下さい・・!」
「ん・・。あお・・っ!」

青木は、その唇で、指で。
余すところなく、薪の全てを辿った。
激しく高ぶる想いが、波のように押し寄せた。

愛しても愛しても、足りないような、気がした。





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