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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene9:此処


「薪さん。オレが第九に配属された年の2月半ばって、何か特別なこと、ありましたっけ・・?」

夕食・・と呼べる時間はとうに過ぎ、青木は、薪と二人、リビングでソファーに並んで座り、夜食を取りながら、ふとその手を止め、言った。
別れ際の舟木の言葉が、青木の脳裏に引っ掛かっていた。

「その頃、オレは何をしてたかと思って・・」
「2月14日は、各自分担して、通り魔連続殺人事件の捜査。15日は捜査にケリが付き、午後には、各部署への報告を行なった。16日は、休日出勤した分の休みを交替で取り、お前もその日は休んだ筈だ」
「・・・・・・」

予想外に詳細な答えに、青木は、無言になった。
薪の脳には、年月日ごとの出来事が、全てインプットされているのだろうか・・・。

そんな青木の様子に、薪は、やや目を細め、言葉を付け足した。
「14日の夜には、外で食事をした。お前の行き付けの定食屋に連れて行かれて」
「・・はい。そうですね」

青木も、その時のことは、鮮明に覚えている。
今思えば、薪と初めて二人で食事をしたのだ。

「入って3週間で・・!!」
後で何気なく先輩達にそのことを漏らしたら、皆に、ものすごく驚かれた。
上司と食事に行くことが、そんなに驚くことなのかと、その時は、かえって不思議に思ったものだ。

その日は、バレンタインデーだった。
定食屋のおばちゃんから、薪と自分は、チョコレートを受け取って・・・

「あっ・・・!!」
そうだ、バレンタイン・・・・!

「・・・?」
声を上げた青木に、薪は、目を上げる。
「バレンタインデーだったんです。それで・・・」
青木は、一点を見つめ、言った。

その日の朝、青木は出勤した際、廊下で、女性二人に呼び止められたのだ。
「これ、受け取って下さい」
そう言って、二人は、チョコレートをくれた。

そうだ。
あれは・・あの女性の一人は、舟木だ・・!

「忘れてました。しかも、翌月、オレ・・・」
「何だ? ホワイトデーとやらを、忘れたとでも?」
「いえ。お返しはしたんです。ただ・・・」
「?・・・」

「オレ・・社会人になって、チョコをもらえるなんて思ってなくて。ホワイトデーにお返しはしなきゃと思って」
悩んだ末、青木は、有名店の焼き菓子の包みを二つ購入した。

ホワイトデーに、彼女達に渡そうと足を運ぶと、事務室に入る前に、舟木ではない、もう一人の女性が、ちょうど外に出てきた。
女性を呼び止め、包みを渡した。

相手は、驚いた様子で、言ったのだ。
「少し待って下さい。舟木さん、今ちょうど席を外していて・・」
「じゃあ、戻ったら渡して下さい」
青木は、深く考えもせず、そう言った。

「あの・・もう少しで戻ると思いますから。ちょっとだけ、待っていてくれませんか?」
「オレも、すぐに戻らなきゃならないんです。すみませんが、よろしくお願いします」
青木は頭を下げると、その場を後にした。
「ちょっ・・ちょっと待って下さい。舟木さんは、玲ちゃんは、本気で・・・!」

青木は、その時のことを思い返す。
あの時は、事件の捜査の途中で、抜け出してきていた。
それに、事務室の前で、ホワイトデーのプレゼントを手渡すことが、気恥ずかしかった部分もある。

あの頃、自分は捜査に没頭していた。
第九に配属されてからの数ヶ月は、とにかく無我夢中で、他のことを考える余裕は無かった。

第九の捜査官として、役に立ちたくて、薪に認められたくて、仕方がなかったのだ。
そう・・今思えば、あの頃、自分は既に、薪のことしか頭に無かった・・・。

青木が、このことを思い出す、何時間か前。
青木をマンションに送り届けた舟木は、帰る道すがら、7年前のその出来事を、思い返していた。

バレンタインの日、当時、自分一人で青木にチョコを渡す勇気は無く、仲の良い同僚を誘い、二人で渡したのだ。
その1ヵ月後、会議室に資料を届け、事務室に戻ると、青木からのホワイトデーの贈り物が届いていた。
人づてに、ただ、物だけが・・・。

「玲ちゃん・・」
複雑な表情でつぶやく同僚に、舟木は、笑顔で言った。
「これ、サン・ルネのクッキーでしょう? 食べようよ!」
そして、その場で包みを開けた。

「美味しい!」
そう言いながら食べたけれど、本当は味なんて、ちっとも分からなかった。

後から思えば、同僚と二人で渡したチョコを、青木が真剣に受け止めなかったのも、仕方の無いことだった。
青木にしてみれば、わざわざ届けに足を運び、義理を果たしてくれたのだということも分かる。

だが、人づてに渡された焼き菓子は、青木の、自分に対する無関心さを表してもいた。
何もお返しが無い方がまだマシだと、その時は、思った・・・。

「ふふ・・・」
運転しながら、舟木は微笑む。
あの頃の自分は、まだ若過ぎたのだ・・・。

全てを思い出した青木は、肩を落としていた。
チョコを受け取ったことは嬉しかったし、お返しも果たしたと思っていた。
けれど自分は、舟木の気持ちを、ちっとも分かっていなかった。

あんなやり方をしたにも関わらず、舟木は、その後もずっと、自分の言葉が支えになったと、そう言ってくれたのだ・・・。

舟木の言葉が、よみがえる。
『本当に、青木さんは、優しくて・・・・』

「・・オレって、残酷な人間なんですね」
青木の言葉に、薪は目を上げ・・・

「そうだな」
一言、そう言った。

「・・・・・・」
青木は押し黙る。
薪は、否定してくれる気は、全く無いらしい。

「・・だが、本来人間なんて、皆、残酷な生き物じゃないか?」

そう続いた薪の言葉に、青木は、顔を上げ、薪を見つめた。
確かに、そうかもしれない。
意識的か無意識かの差こそあれ、生きている限り、人は、残酷であるのかもしれない。

青木は、薪の身体を抱き締めた。
「んっ・・。明日は早いんだ。もう寝ろ」
「はい。薪さんと寝ます」
「離せ・・!」

せめて、目の前に居るこの人を、全力で愛そう。
自分には、それしか出来ないのだから・・・・。

翌朝。

「・・おはようございますっ!」
第九に駆け込み、青木は叫んだ。

「・・・・・・」
皆が、黙って青木に注目している。
否。
正確には、青木と、その視線の先に居る人物の動向に、注目していた。

「大したものだな。何の準備もせず、報告会議を滞りなく進められる自信があると見える」
「・・・・・遅くなって、すみません」
「遅くはないぞ。お前が宇野と担当する会議の開始時刻まで、15分もある」
「っ・・・・!!」

薪の静かな笑みに、青木は、涙が出そうだった。
「青木。すぐに第二モニター室に移動するぞ。資料はこれだ。歩きながら見て、流れを飲み込め」
「宇野さん・・ありがとうございますっ」

先輩と共に、早足でモニター室に向かいながら、資料をめくる、青木。
薪に反論することは出来ない。
薪は、前日も一日仕事をこなし、そして夜は、青木同様、ろくに眠ってない筈だ。
なのに、自分と違い、平然とした顔でそこに立っていて。

・・それにしても、何故一人だけ、先にベッドから抜け出したのだろう。
同じベッドに入っているのだから、ひと声かけてくれても・・いや、そんな甘えたことは言えないが。

他の第九メンバーも、それぞれに、自分の手がけた事件の捜査報告の準備にかかっていた。
その中で、青木を見送る薪の姿を、岡部は、そっと見やる。

何だろう?
この数日に比べ、薪が楽しそうに、青木を苛めていたように見える。
一見するといつもと変わりないが、何となく、薪の表情が生き生きしているというか・・。

「薪さん。何か・・」
「岡部、この報告書だが」
二人の声が、重なった。

「何だ?」
薪が聞き返す。

「あ。いえ・・何でもありません」
岡部はそういい、薪の話に耳を傾ける。

理由なんて、何でもいい。
要は、薪が元気なら、自分はそれでいいのだ。

しばらくして。
青木のもとに、その噂話は、入ってきた。

「舟木さんが留学!? アメリカに?」
「そう。それで仕事は退職するんだってさ。何でも、経営学を勉強し直したいとかで」
小池と曽我の会話を耳にして、青木は、あの時の、舟木の言葉を思い出した。

『これで、これからの人生を、改めて見つめ直すことが出来るような気がします』
見つめ直した結果が、これなのか・・。

椅子に座って、そんな思いにふける青木に、小池が近付く。
「青木、大丈夫か?」
「は?」
「遠距離になるのか? それとも・・キッパリ振られたのか?」
「?? 何のことを言ってるのか、さっぱり分かりませんが」

青木の態度に、小池は、目を更に細め、曽我のところへと、戻る。
「・・やっぱり、何も無かったんじゃないのか?」
「うーん・・。実は、会ってるのを見たって奴、男の顔までは暗くて見えなかったって言うんだよな」
「別人だったのか」
「でも、あんなデカイ男が、そうそう居るかな・・」

二人の会話に、青木は、舟木と会っているところを見られたという話が、ここまで及んでいたのかと驚いた。
これでは・・薪に隠すなんて、出来るわけが無い。

「何も無かったわけではないんだろ?」
後ろで低い声が聞こえた。
振り返ると、今井が居た。

「お前・・舟木さんの留学の話を聞いた時、ホッとしたような、嬉しそうな顔をしてたぞ。『何か』は、あったんだろ?」
今井の言葉に、青木は慌てて首を横に振る。

「いえ! そんな、何かって言う程のことじゃ・・」
「ほう・・」
「あ・・・・!」

今井に、含みのある笑みを向けられ、青木は、顔が熱くなるのを感じる。
これでは、「何かって言う程のことではない、何か」があったと、告白してしまったようなものだ。

『気を付けた方がよろしいですよ』
自分はまた、同じことを・・・。
青木は額に手を当て、ため息を付く。

「青木!」
「はい!」
上司に呼ばれ、青木は立ち上がり、早足でそのもとへと急ぐ。

「お前がさっき出したこの画像・・この部分だが・・」
薪の頭が、目の前にある。
細い指先が、書面を辿る。

「すぐ出来るか?」
見上げる薪の、大きな瞳が、そこにある。
「はい!」

様々な事柄を経て。

今、自分はここに居る。
薪と、共に。




波 終





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