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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene3:騒動


青木は、一人まどろんでいた。
・・いや、一頭でまどろんでいたと言うべきか。

食事を終え、猫達が皿を下げ、ドアを閉めて居なくなると、青木はまぶたが重くなるのを感じた。
毛布の上に身体を沈め、目を閉じた。
暖炉の炎から生まれる暖かい空気が、青木を取り囲む。

どれ位の時間が立っただろうか。
青木は、まどろみながら、パチパチと、薪がはぜる音を聞いていた。

ピク!・・と、青木の耳が立つ。
それから、青木は、目を開けた。

薪がはぜる音の合間に、何か・・聞き慣れない音がする。
それは何か・・くぐもった、うめき声のような・・・。

猫の鳴き声にしては、不自然な気がした。
この屋敷には、猫以外にも、何か生き物が居るのだろうか・・。

青木は立ち上がり、ドアに向かう。
ドアの前で上半身を持ち上げ、落ちる勢いで、前足でドアノブを動かすと、キイ・・と、ドアが開いた。

廊下が、そこに伸びている。
青木は、音がする方角に向かい、薄暗い廊下を、歩き始めた。
大理石を用いた廊下の、絨毯が敷かれた中央部分を、青木は、肉球を踏み締め、歩を進めていく。

その先には、階段があった。
音は、そのずっと、上の方から聞こえる。
青木は、階段に足を掛ける。

二階に上がると、階段は少し狭くなった。
更に三階へ・・・

「ワフッ!」
青木は、暗い階段に、突然現れた光る二つの瞳に、思わず声を上げた。
目を凝らすと、そこには、黒猫が居た。

「どこへ行く!」
黒猫は、しっぽを太くして、青木の前に立ちはだかっている。

「岡部さん・・!」
「よそ者が、勝手に屋敷の中をうろつくな」
岡部の言葉に、青木は、首を傾け、それから、そっと一歩退いた。

「・・すみませんでした。何だか、妙な音が聞こえたものですから」
「音?」
岡部は、しっぽを一振りすると、周囲を見渡した。

「ええ。まるで、うめき声のような・・ほら、今も!」
岡部と青木は、共に耳を澄ます。

ググ・・ウウウ・・・
そんな音が、微かに、だが確実に、上から響いてくる。

「・・この音なら、別に心配は無い」
「え?」
岡部の言葉に、青木は、耳をピクン、と立てた。

「お前が気にすることじゃない。客間に戻って、休むんだな」
そう言って、岡部は、あっちに行けというように、アゴをしゃくる。

「・・・・・・」
青木は、岡部の向こうに広がる空間をじっと眺め、それから、回れ右をすると、トットットッ・・と、階段を降りていった。
そんな青木の後ろ姿を見送り、岡部はフッ・・と、息を吐いた。

朝になった。

青木は、毛布から身体を起こすと、大きく伸びをした。
暖炉の中では、炎は陰を潜め、黒い薪から、僅かに残り火の温もりが漂っている。

青木は、昨夜と同じようにドアを開けると、廊下に首を出し、声を上げた。
「すみません・・!」

オオオンッ・・というそのいななきに、白猫が顔を出す。
「どうした?」
「ちょっと外に出たいんですが、いいですか?」
青木の言葉に、小池は、呆れた顔をする。

「散歩か? 外は、まだ吹雪だぞ」
「あの・・用を足したいので」
「あっ・・」

青木と小池は、並んで廊下を歩いていく。

「すみません。出口さえ教えてもらえれば、自分で行けるんですが、ひと声掛けた方がいいかと思って。夕べ岡部さんに、勝手に中をうろつくなと言われたものですから」
「夕べ? 岡部さんと? どこでそんな話をしたんだ?」
「ええと・・」

青木は、昨夜のことを思い浮かべ、あの不審な音を、よそ者である自分が聞きつけたことは、安易に話していいものだろうかと、思い巡らした。
「?・・」
黙った青木を見て肩をすくめ、小池は、辿り着いたドアの、内側のかんぬきを外した。

「ミャッ!・・」
ドアを開けると、風が入り込み、小池は、身体を縮こませる。
「オレはここに居るから。早くしろよ」
「はい」

青木は外に出ると、適当な場所を見つけ、目的を果たした。
まだ吹雪は続いているが、昨晩よりは、吹き付ける風も、穏やかになっている。
猫と違い、犬の青木は、寒さにそれ程弱くは無い。

青木は、壁伝いに空を見上げた。
どんよりとした雲から、雪が舞い落ちる。

その中に佇む、いくつもの塔が連なった、美しい城。
昨晩、あの音がしたのは、たぶん、中央の塔の辺り・・・

「おい!まだか?」
ドアの中から、小池が顔を覗かせた。

「あ、すみません!」
青木は、急いで掛け戻った。

客間に近付くと、青木の足は、自然に早くなった。
「お・・おい!」
小池が、慌てて追いかける。

果たしてそこには、既に朝食が運ばれていた。
三毛猫が、せっせと皿を並べている。

そして、並べ終えると、言った。
「じゃあ、どう・・」

「・・・・・・」
「・・・・・・」
またしても、「どうぞ」と曽我が言い終えるか終わらないかのうちに、勢いよく食事を始める青木を見て、曽我と小池は、無言になった。

小池は言う。
「・・結局、こいつの世話は、オレ達に回ってきちまったな」

「ああ。仕方ないだろ。夕べは、皆食事を済ませた後だったけど。今はちょうど、今井さんは、薪さんの給仕をしてるところだから」
「まあな。それに、何も給仕頭が出る幕でもないよな。こいつの場合、誰がどう出そうと、そこに食事がありゃ構わねえみたいだし」

2匹がそんな話をしている間に、青木は既に食事を終え、言った。
「ご馳走様でした!」

ワフッ!・・と、満足そうにひと声鳴いた青木は、何故かため息を付きながら皿を片付ける猫達に向かい、言う。
「あの~・・薪さんは今、食事中だとおっしゃいましたが」

「・・聞いてたのか」
青木が、夢中で食事をしているように見えて、しっかりと自分達の会話も耳に入れていたことに、曽我は、意外そうな顔をする。

「考えてみたら、まだ、助けていただいたお礼を言っていなかったので。言ってきたいと思うんですが」
青木の言葉に、小池が廊下を指し示す。

「薪さんは、奥のダイニングルームで食べてる。用があれば、薪さんの方から命令が下る。それ以外に、不用意にこちらから邪魔すると、薪さんの機嫌を損ねるだけだから、お前は何も・・・・・っ!!」

小池は、話の途中で絶句した。
「嘘だろ・・」
曽我も、呆然としてつぶやく。

青木は、小池の最初の言葉を聞いたところで、ドアの外に出たのだ。
「お・・おいっ!」
一瞬唖然とした小池と曽我が、慌てて部屋を出た時には、既に青木は、廊下を、奥に向かって歩いていた。

「青木、お前っ・・!」
青木は、歩きながら後ろを振り返る。
曽我と小池が、血相を変えて追いかけてくる。

「キュンッ」
思わず鼻が鳴る。
実は、追われると、追いかけっこが大好きな犬の性質が、青木を駆り立ててしまうのだった・・!

「げっ!!」
「あいつ・・!」
廊下を一目散に駆け出した青木に、2匹の猫は目を見張る。

「おい!止まるんだ!」
「そっちに行くな!!」
口々に叫びながら、慌てふためく曽我と小池。
すっかり楽しくなってしまった青木には、その声すらも、余計に足を速める元となる。

こうなってしまうと、青木自身にも制御は効かない。
廊下を飛ぶように駆ける大型犬。
必死に後を追う、2匹の猫。

青木は走る。
目的地の方角は、分かっている。
食事の匂いがする廊下の突き当たりが、目指すダイニングルームに違いない。

「何なんだ、一体・・」
追いかけっこのゴールであるその部屋のドアが、部屋の中から騒ぎを聞き付けた、黒猫によって開けられ・・

「ミャウッ!!」
ちょうど開いたそのドアに、飛び込んできた犬に、岡部は驚きの声を上げる。

「あっちゃー・・」
「行っちまった・・」
廊下で頭を抱える、曽我と小池。

給仕をしていた手を止め、テーブルの傍らで、立ち尽くす今井。
そして・・そのテーブルに着き、食事をしていた金茶色の猫・・・

興奮していた青木は、部屋に飛び込んだ勢いのまま、しっぽを振りながら、テーブルに近付き・・

「待て!!」

ビクン。
正面から目を合わせ、ハッキリと言い放つその声に、青木は身を震わせ、立ち止まった。
薪のひと声に、青木は動きを止められたのだ。

興奮が冷めやらず、ハアハアと息が出る。
しっぽがパタパタと揺れる。
・・だが、自分をしっかりと見据えた金茶色の瞳に、捉えられたように、身体は動かなかった。

今井に岡部、やっと追い付いた曽我と小池、それに、厨房に居て、騒ぎを聞きつけた宇野も、その部屋に集まり、薪と青木の様子を、固唾を呑んで見つめている。

やがて、青木のしっぽの動きが止まり、息遣いも静かになった。
その様子を見て、薪は青木から目をそらし、「魚を」今井にそう言い、促した。
「あ・・はい!」
立ち尽くしていた今井が、薪に、料理を取り分け始めた。

それを機に、時間が止まったかのようだった部屋の空気が動き、猫達は、首を回したり、しっぽを振ったり、ため息を付いたりする・・。

青木を完全に無視して食事を再開した薪を見て、青木は「クウン・・」と、鼻を鳴らした。
ついつい、興奮のあまり、いきなりここに飛び込んでしまったことを、やっと認識したのだった。

「あの・・」
青木は薪に向かい、おずおずと、話を切り出す。

「すみませんでした・・失礼なことをしてしまって。あなたに、夕べ助けていただいた、お礼が言いたくて・・」
薪は食事の手を止めず、青木を見もしない。

「本当に助かりました。どうもありがとうございました・・!」
青木は、首を垂れ、精一杯のお辞儀をした。

「・・・・・・」
薪からは、何の返事も無い。
青木が、顔を上げて薪を見つめると、やっと薪も目を上げ、青木を見て、言った。

「何も、助けたくて助けたわけじゃない」
「え・・」
薪の物言いに、青木は、言葉を失った。

「行き倒れの者を放置したら、また、何が起こるか分からないから、仕方なく中に入れただけだ」
「また・・って」
青木がつぶやくと、
「どんな呪いが降りかかるか、分からないからな」

後ろから聞こえた曽我の声に、青木は振り返る。
「呪い・・?」

「曽我!!」
薪の、厳しい声が飛んだ。
「すっ・・すみませんっ!!」
曽我は、首を縮めて、退いた。

薪は、曽我を睨み付けると、また、食事に戻る。
青木は、その姿を、改めて眺めた。

猫だというのに、王子の衣装を着こなし、前足で器用にフォークやスプーンを操り、優雅に食事をするその仕草。

「もう、用は済んだな」
自分を見つめる青木をチラリと見やると、薪は言い、それが合図になって、岡部が青木に近付いた。

「出るんだ」
岡部に促され、青木は我に返ると、
「失礼・・しました」

ウォン・・と静かに言い、薪に一礼して、その場を後にした。





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