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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene5:寝室


青木と猫達が協力し、焚き木を城の中に運び終える頃には、既に、夜の帳が降りていた。

雪交じりの冷たい雨が降り続く中、猫達に括り付けられた台車を引き、何度も焚き木小屋と城を往復した青木は、身体から、水が滴り落ちていた。
城と小屋、双方の出入り口で青木を送り出す猫達も、時に吹き付ける雨や・・うっかり青木がブルブルと身体を震わせて飛ばす滴に、晒された。

濡れそぼった身体を暖炉の前で乾かす彼らに、宇野特性の、熱々・・ではなく、人肌に冷ましたスープが配られた。
誰よりもそのスープを大量に、そしてあっという間に飲み干したのが、青木だったのは、言うまでもない。

その後も、青木には役割があった。
城の中に運び込んだ焚き木を、必要な場所へと、運んで回ったのだ。

調理場や、使用人部屋など、猫達の指示を受けながら、青木は荷を運び続けた。
一階の部屋から、二階へ、そして三階へ・・・

「ここが最後だ」
言われて入ったそこは、中央の塔の上。
どこよりも豪華な作りの、広々としたその部屋は、奥にベッドがあるところから、寝室と思われた。

「そうだ。残りはそこに置いて・・」
岡部の監督の下、他の家臣猫が暖炉の傍に焚き木を並べる。

その様子を見ながら、青木は、部屋の隅に座っていた。

心地良い疲れと満足感が、青木を満たしていく。
誰かの為に、自分が役に立ったということが、嬉しかった。
こんな自分でも、必要とされることが・・・・・

「よし、終わりだ。青木、ご苦労だったな・・」
黒猫が振り返ると、大型犬は、部屋の隅の床にペタリと身体を付け、目を閉じていた。

「・・青木?」
岡部が近付いて、青木に声を掛ける。

「おい!」
岡部は、前足で青木の肩を叩く。
だが既に青木はイビキを掻いていて、一向に目を覚ます気配は無い。

「眠っているのか?」
岡部が振り返ると、薪が、そこに立っていた。

「ええ。こいつ、本当に犬なんですかね・・こんなに警戒心が無いようじゃ、番犬は務まらないでしょうね」
岡部は、ぐーにした前足で青木をどんどんと叩きながら、呆れたように言った。
それでも青木は、目を閉じたまま、ぐーすーぐーすー・・と、音を立てている。

「そのままにしておけ」
薪は言った。

「え?いいんですか?」
岡部は、目を見開いて薪の顔を見る。

「熟睡しているなら、仕方が無い。眠った状態で、この図体を、また運ぶのも一苦労だ。皆だって、今日は疲れているだろう。青木は、目が覚めるまで、このままここで・・寝かせておけばいい」
そう言いながら、青木の寝顔を見つめる薪の、瞳の光が凪いだように、岡部には見えた。

青木は、夢を見ていた。
幸せだった頃の夢を。
自分を抱き締める腕、頭をなでてくれる優しい手。

・・だが、それは、いつしか悲しい夢に変わる。
『おいで、おいで。食べ物をやろう』
言われて傍に寄って行くと、首に下げた宝石を捕まれる。

『犬の癖に、凄いもん持ってるなあ』
『どけよ、オレのだ!』
『オレが先に見つけたんだぜ!』
『あ、おい!・・』

隙を見て逃げ出した。
それを追う手・・・・

「ハッ・・!」
青木は、目を覚ました。
立ち上がり、伸びをして、身体を震わせる。

同時に、背中から、何かが滑り落ちた。
振り返ると、柔らかな毛布が、しっぽに引っ掛かっていた。

「クウン・・」
青木は、小さく鼻を鳴らす。
そして、自分が寝ていた部屋を見渡す。
少し先では、暖炉の炎が揺らめいている。

「ググ・・グウ・・」
青木は、耳を立てた。
昨夜と同じ不審な音が鳴り始めたのだ。
しかも、すぐ近くで・・・。

音のする方角は、部屋の奥。
そこには、天蓋付きのベッドがある。
音は、その天蓋から下がる白いレースの向こうから、響いていた。

「グググ・・ウウ・・」
青木は、その音へと、そっと近付いた。
足音を立てないように、そっと・・・

レースを鼻でかき分け、頭を入れると、嗅ぎ覚えのある匂いがした。
これは、凛とした光を放つ瞳を持つ、金茶色の猫の匂い・・・

青木が前足をベッドに掛けると、薪が気配を感じたのか、その音が途切れた。
そう・・不審な音は、薪が発する、うめき声だったのだ。

猫には広過ぎる、大きなベッドの真ん中で、丸くなって、震えている猫。
「薪さん・・」
ウォン・・と青木は小さく声を上げると、上半身をベッドの上に伸ばし・・

ビクッ・・と、薪は身体を大きく震わせた。
青木が、薪の身体を、ペロッと舐めたのだ。

見上げると、大きな犬の頭がすぐ近くにあり、薪は一瞬身構えたが。
青木は、薪と目が合うと、身体を引っ込め、前足を床に付いて座り直した。
そして、首だけベッドの上に出し、大人しく、薪を見ている。

その様子を見て、薪はまた、ベッドの上に丸まった。
やがて・・スースーと、猫の寝息が聞こえてきた。

青木はそれを見届けると、ベッドのすぐ傍で、床にうずくまり、目を閉じて、眠った。

翌日は、雨だった。
「そうだ。それを奥の部屋に運んで・・」
「おーい、青木!こっちを頼む」
「はい!こちらが済んだら行きます」

前日の作業で、青木が使えると知った猫達は、あちこちで青木に用を頼んだ。
青木も、嬉しそうにそれに応える。

そして・・夜になると、薪は、青木を自分の部屋で寝かせた。
「わざわざ、こいつだけの為に、客間の暖炉を使い続けては、焚き木がもったいないからな」
それが、薪の言う理由だった。

青木は言った。
「オレだったら、別に暖房は無くても・・寒さには強いんで。廊下でもどこでも、雨風がしのげる屋根の下に寝られるなら、それで充分なんですが」

「・・だったら、好きな場所で寝ればいい」
どこか怒った様子でそう言う薪に、青木は、せっかくの薪の気遣いを断わったことが気に障ったのかと、しっぽを垂れて薪を見つめた。

そして結局、薪の部屋に入った。
「好きな場所とおっしゃったので・・ここにお邪魔することにしました」
そう言って。

そんな様子を見て、岡部は、薪にそっと話した。
「確かに、青木は悪い奴じゃないようですが。ここに来たばかりの、よそ者なんです。そんなに信用してしまって、大丈夫ですか?」
「城の為に、これだけ働いたんだ。もう、ただの行き倒れのよそ者じゃない」
「・・いつか、あいつはここを出て行くんですよ。あなたの飼い犬じゃないんですから」

最後の言葉が、薪の胸に響いた。
岡部の言うことは、もっともだった。
岡部は心配しているのだ・・・青木が、本当に信用出来る者かどうかに、関わらず・・。

薪は、いつものように、広々としたベッドの上で、丸くなった。
ベッドのすぐ傍らに、大型犬が寄り添っていることを、確認して。

もしかしたら、もう、悪夢を見ないで済むかもしれない。
そんな期待を込めて、目を閉じる。
だが・・・。

「薪さん・・薪さん・・!」
「グググ・・ウウ・・」
うめき声を上げながら、薪はどこかで、キュン、キュウン・・という、犬が鼻を鳴らす音を聞いた。

目を開くと、覗き込む青木の顔。
薪は、寝返りを打ち、伸びをして、軽やかな身のこなしで、ベッドの端に移動し、座り直した。

青木は、床に身体を付けて、薪を見上げる。
そんな青木を見ながら、薪は、話し始めた。

「僕は・・魔法をかけられたんだ」





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