カウンター


プロフィール

かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

リンクは嬉しいので、ご自由にどうぞ♪


当ブログ拍手頁

最新の公開拍手コメのレスはこちら それ以前の公開拍手コメ&レスは、各記事の拍手ボタンを再度押していただければ読めます 鍵拍手コメにつきましては、拍手をいただいた記事下コメント欄にレスを書いております

所属してます♪


月別アーカイブ


最新記事


最新コメント


検索フォーム


 
Scene6:魔法


「魔法?」
青木が、首を持ち上げて聞き返すと、薪は言った。

「僕は・・僕も、そしてこの城の家臣達も、元は皆、人間だったんだ」

「・・・・・・」
その告白に、青木は、じっと薪を見つめる。

薪も青木を見つめ返し、それから、フッ・・と、息を吐いた。
「こんなこと、信じられないかもしれないが」

「信じますよ。だって・・」
「魔法によって姿を変えられたなどと・・もし同じことを誰かが言ったとしても、僕だって、とても信じられないだろう」
「・・・・・・」

「だが・・本当なんだ」
薪は目を伏せて、言った。

「・・あなたも、あなたに仕える猫達も、どう見たって、普通の猫じゃない。人間と同じ服を着て、人間と同じ生活をしている。この城だって、人間が住むものでしょう。あなたの言葉どおりだったら、納得が行きます。オレは信じますよ」

青木の言葉に、薪は静かに微笑み・・そして青木に目をやった。
丸い黒い瞳が、真っ直ぐに、薪を見つめている。

「お前はやはり・・子供の頃を思い起こさせる。無邪気に騒ぎ、人の言葉が素直に信じられた頃を」
「・・薪さん?」
薪は顔を上げ、遠くを見るような目になった。

「僕は・・父と母と、この城に住んでいた。美しく聡明な母、誰よりも強く優しかった父。・・昨日、食事中に、お前が部屋に飛び込んできたが」
「あ・・。あれは、本当にすみませんでした」
青木はその際のことを思い出し、力なく頭を垂れる。

だが薪は、それを咎めるようでもなく、話し続ける。
「あの時、僕は、父を思い出した。子供の頃、僕はよく城の中を走り回っていた。危ないからと追いかける家臣達から逃れ・・飛び込んだ部屋に父が居て、目を丸くしていた。叱られると思い、首を縮める僕を、父は・・笑いながら抱き上げてくれた」

青木は、薪の話に、目を上げる。

「そんなこと、ずっと忘れていた。いや、忘れようとしていた。子供の頃の幸せな記憶など、今の僕には必要ないと思い」
薪の大きな瞳が、暖炉の炎を照り返し・・潤んでいるように、青木には見えた。

「ある雪の日。父の乗っていた馬が、うっかりオオカミ避けの罠にハマって暴れ、父は落馬して・・死んだ」
「・・・・・・」
青木は、何も言えなかった。
ただ、薪を見つめるだけ・・。

「母も心労からか、後を追うように亡くなった。あっけなかった・・。両親を亡くし、失意のどん底にあった僕を、親類や知人達が、慰めてくれた。だが・・彼らの本当の目的は、両親が残した財産だった」
薪は、口元をギュッと噛み締めた。

「彼らの目的を知って、僕は、上辺は和やかに付き合うフリをしながら、少しずつ彼らを遠ざけた。誰も信じられなかった。何もかもが・・信じられなくなった。そして・・」
薪の目が、大きく開く。

「あれも、雪の日だった。一人の老婆が、一晩の宿を求めて城にやってきた。だが、僕は断わった。弱い老人のフリをして、何かを盗んで逃げるつもりかもしれない。あるいは、遺産を狙う親類の手先か・・僕は、疑心暗鬼になっていて、見知らぬ者を労わる心など、残っていなかった。・・すると突然、老婆は美しい魔女に姿を変えた・・!」

その時。
魔女は、薪に告げた。

『あなたは、人に裏切られ続けた為に、人を信じ、人を愛する心を、失ってしまったのですね。では、その心を取り戻す日まで、あなたの姿を変えましょう』

『外見や身分に惑わされることなく、真にあなたを愛する者と巡り合い、そしてあなたも、その者を信じ、心から愛することが出来るようになったその時に、人間に戻ることが出来るでしょう』

「・・気が付いたら」
薪は、静かに話す。

「僕は、猫の姿になって、その場に倒れていた。傍らに居た岡部も同様だ。そして・・他の者達も。城の者達が皆、猫の姿に変えられていた。城中、大騒ぎになった・・」

「皆、猫の姿になったことに、悲嘆に暮れた。原因は、魔女の呪いだという噂が広まった。この城に魔女が訪れて、呪いをかけたのだと・・。唯一真実を知っている岡部も、あえて否定はしなかった。僕が、皆に責められることを避ける為に。本当は、僕のせいだ。僕が人を信じられなくなったせいで、家臣達まで巻き添えに・・。僕の・・・」

薪は、両方の前脚で自分の身体を抱きかかえるようにして、そこに顔を埋めた。
「それから僕は、毎夜のように、これまでのことを夢に見る・・」
そう言って、薪は一度、黙り込んだ。

クウン・・と、青木が鼻を鳴らして、薪を見つめる。

「・・雪は、嫌いだ」
しばらくして、薪は、顔を隠したまま、そう言った。

「雪の日に父が亡くなり、雪の日に魔法で姿を変えられた。雪は・・不吉な予兆だ。吹雪の日に、お前が現れた時も、僕は本当は、お前を恐れたんだ。だから・・早く出て行ってくれと願った・・」

そう言うと、薪は、耳の辺りに、熱い息が吹きかかるのを感じた。
顔を上げると同時に、ペロン・・と青木が、薪の顔を舐めた。

「青木・・」
見つめる薪から、青木は顔を離し、床に座り直して、言う。
「それでもあなたは、オレを助けてくれました」

「それは・・言ったろう。また魔法にかけられたりしたら叶わないから、用心の為に、お前を迎え入れただけだ」
「本当にそうでしょうか?」
「・・どういう意味だ?」

薪の質問に青木は答えず、代わりに、薪に問いを返した。
「あなたは・・皆を巻き添えにしてしまったと、失意に暮れてるようですが。この先、魔法が解けるとは、思っていないんですか?」
「・・無理に決まってるだろう」
「何故、そう思うんです?」

青木の問いに、薪は、ヒゲをプルッと震わせた。
「猫の姿をした僕に、真の愛を捧げるような人間が居ると思うか? 大体、今の僕は、猫語しか話せないから、動物同士としか、話も通じない」

「そんなことないですよ。前の飼い主の人間は、犬語で話すオレの言葉を、ちゃんと分かってくれました」
「それは、『腹が減った』とか『構ってくれ』といった、単純なことしか話していなかったせいだろう?」
「う・・」

「何も知らない人間が、猫の僕と、真の愛を育めるだろうか。親類や知人なら、僕のこの姿を見て、もしかしたら、僕だと気付いてくれるかもしれない。だが、そうと知ったら、益々彼らは、僕の持つ全てを乗っ取ろうとするだろう。僕は・・やはり、彼らを信用することが出来ないんだ」

薪は、話を続ける。

「元からの猫だった者達と、交流したこともある。だが、彼らは、猫の姿で人間の振る舞いをする僕を不審がった。元は人間だったと話すと、今度はそれを信じず、笑うばかりだった。・・それに、仮に、本当の猫と愛し合ったとしたら? 僕は、その時点で人間に戻ってしまう。それは、僕にとっても、相手にとっても、悲劇だ」

「・・・・・・」
薪の話をじっと聞いていた青木は、考え込んだ末に、言った。

「・・だったら、あなたの家臣達は? あなたと同様、猫の姿に変えられた彼らなら、言葉も通じるし、あなたの魔法が解けたら、きっと一緒に人間に戻るでしょう?」

「家臣達は・・それこそ、僕がこの城の主だから、仕えているに過ぎない。それが、彼らの務めだからだ。猫になってからは余計に、ここ以外に、自分が人間だったことを知る者が無く、他に行く当てが無いから城に留まっているに過ぎない。それに・・僕のせいで魔法がかけられた彼らに、愛される資格など、僕には・・」

薪は一度言葉を飲み込み、そして、言った。
「分かったろう? 僕は、今もなお、誰も信じることが出来ない。誰からも信じられる資格も無い。そんな僕の魔法が解ける日など・・永遠に、訪れることは無いんだ」

「薪さん・・」
キュウン・・と青木は鳴いて、それから言った。

「オレも実は・・探しているんです。愛し愛される人間を」
「大切にしてくれる飼い主、ということか?」
「・・ええ」

今度は、青木が身の上を話し始めた。
「オレが・・前の飼い主のところから飛び出したのは、自分が、必要とされていないと感じたからです。何の役にも立たない自分に失望し、オレは、あちこち、さ迷いました。時々、オレを可愛がってくれる人間にも出会いました。でも・・彼らが必要としたのは、オレのこの、首輪でした・・」

「もちろん、それで飼い主が喜んでくれるなら、オレはこんな物、いくらだって差し出します。でも・・オレ自身を必要としてくれてるんじゃないと思うと、たまらなかった・・。絶望し、諦めかけた頃、辿り着いたのが、ここでした」

いつしか、今度は薪が、青木の話に聞き入っていた。

「オレはここで・・皆さんの役に立てて、こんなオレでも、生きてて良かったと思うことが出来ました。やっと、希望が見えたんです。だから・・オレは諦めません」
「青木・・」

「いつか、本当に、オレを必要とし、愛してくれる・・飼い主に出会えることを信じたい。そして、そんな人に出会えたら、オレもきっと、その人を、心から愛せると思います」

青木は、目を上げて、薪を見つめる。
「オレは、そんな出会いがあると、信じています。だから、薪さんだってきっと・・・」

ベッドの上と下で見つめ合う二匹を、暖炉の炎が照らし出す。

パチパチと薪がはぜる音を聞きながら、青木は、大きなあくびをした。
それを見て、薪は、我に返ったように、言う。
「・・寝るぞ」
そして、くるん・・と寝返りを打ち、青木に背を向けて、丸くなった。

「おやすみなさい」
青木も言って、床に身体を沈めると、程なく、寝息を立て始めた。

その音を聞き、青木の匂いを感じながら、薪も、眠りについた。





関連記事

コメント

コメントの投稿



管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

■この記事のトラックバックURL

⇒ http://kanon23.blog36.fc2.com/tb.php/683-a7bffd6b

この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

■この記事へのトラックバック

 | BLOG TOP |