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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene7:小鳥


翌朝。

青木が目を覚ますと、雨の音が止んでいた。
立ち上がり、ベッドの上を覗き込むと、薪は居ない。

ぐっ・・と伸びをしてから、青木は、部屋を出る。
そして、塔の窓際に立ち、外を眺めている、薪を見つけた。

窓からは、久々に現れた太陽の光が差し込み、薪の姿を照らし出している。

青木は、黙って歩み寄り、薪の隣りに並んだ。
共に、外を見る。
青木は、朝日の眩しさに、目を細めた。

「もう・・お前がここに居る必要も無いな」
薪は、外を見つめたまま、そう言った。

「・・そうですね」
青木も、薪を見ず、窓の外を向いたまま、言った。

「お前には、自分を愛してくれる飼い主を探すという目的があるんだろう。こんな猫屋敷に居ても、仕方が無い」
「オレがここに居ても、飯を食らうばかりで、皆さんにご迷惑を掛けるだけですよね」

「・・・・・・」
「・・・・・・」
どちらからともなく、二匹は顔を横に向け、互いに目が合った。

青木は、口を開く。
『お世話になりました』そう言うつもりだった。
その時。

「青木、ここに居たか」
「早速だが、手を貸してくれ。強風であちこち壊れてて、修理が必要だ」
曽我と小池が、現れて言った。

「あ・・」
青木は、パチパチと瞬きをした。

「・・・・・・」
その隣りで、目を上げ、じっと自分達を見る薪に、曽我と小池は、落ち着かない様子で言う。
「薪さん、青木とお話し中でしたか」
「お邪魔してすみませんでした・・あの、青木を連れて行ってもよろしいですか?」

「別に・・。大した話じゃない。好きにしろ」
薪はそう言うと、部屋へと入っていった。

その姿を見送り、小池が青木に手招きをする。
「青木、行くぞ」
「はい!」
青木は、しっぽを大きく振りながら、曽我と小池の後に続いた。

猫達の指示に従い、ひと仕事終えると、当然のように、朝食が出てきた。
食べて、また仕事に呼ばれ、猫達と共に休憩をする。
あっという間に夜が訪れ、青木は、中央の塔の部屋のドアを開け、中に入り込んだ。

薪は、ベッドの上で、丸くなっている。
「薪さん・・おやすみなさい」
ウォン・・と青木が言うと、薪は耳だけ動かし・・何も言わなかった。

誰も、青木が出て行く話はしなかった。
いつの間にか、青木は、猫達にとって、居るのが当たり前の存在になっていった。

ある時は、青木が一番下になり、その上に猫が乗り、更に猫が乗り・・天井から下がる、シャンデリアのローソクを取り替えた。

ある時は、宇野と今井が用意した、料理が乗る台車を、青木が運んだ。
「おい!青木!」
「お前の分じゃない!頭を離せ!」
ついつい、その匂いにつられて鼻先を近付ける青木に、宇野と今井の声が飛んだ。

ある時は、岡部が青木達を探すと、日向に、青木が寝そべり、その背中に仰向けになって曽我が眠り、更に、青木のお腹に、小池がよりかかって眠っていた。
そして岡部の目の前で、青木はぐるん・・と寝返りを打ち、曽我が滑り落ち、小池がつぶれた。

そしてある時は、日の当たるテラスで、テーブルの上に青木は前足を掛け、鼻先で本の背表紙を支えていた。
人間用のサイズであるその本を、薪はテーブルの上に乗り、頁をめくりながら読んだ。

夜になると、青木は黙って薪の部屋に入り、ベッドの傍らで眠る。
薪がうなされると、青木は、首を上げ、薪の顔を舐める。
そうすると、薪の息遣いは静かになる。

薪のうめき声が、以前より少なくなっていることに、岡部は気付いていた。

風が和らぎ、日差しが温かみを帯びてくる。
春はもう、すぐそこまで、来ていた。




「薔薇の手入れですか?」
中庭で、家臣猫達が、ツルの剪定をしたり、肥料を撒いたりしていた。
青木の問いに、猫達は答えた。

「ああ。こうしておくと、5月には、見事な花を咲かせるからな」
「これは、薪さんのお気に入りの薔薇なんだ」
「この花を見る時だけは、機嫌が良くなるからな」
「ハハハ・・・」

青木は、せっせと手入れをする猫達から離れると、薪の姿を探した。
薪は、木の陰から、向こう側を覗いているようだった。

「薪さん!」
ワンッ!・・と青木が吠えると、バサバサッ・・と、木の向こうで、一斉に小鳥が飛び立つ。

「あ・・」
青木は、薪が、何を眺めていたかに、気付いた。
薪は振り返り、ジロリと青木を睨み付けた。

「小鳥を見てらしたんですか?・・まさか、猫の本能で、捕まえようとしていたとか」
「違う。眺めていただけだ」
青木は、薪の手に、パン屑の入った袋が握られていることに、気付いた・・・

「猫が、小鳥の餌付けって・・・」
「だから。僕が猫だと分かったら、警戒して逃げられるから、姿も見せずにやっていたのに」
「・・すみませんでした」

青木は、頭を垂れた。
薪は、木の陰から踏み出し、鳥達が飛び立ったその先を、仰いでいる。
青木も、隣りに並び、空を見上げた。

「薪さん。この城の人達は・・あなたの家臣達は、何をするにも、皆が協力し合い、一丸となって取り組んでいる。素晴らしいですね」
「・・猫になってからというもの、様々な困難があったからな。協力せねば、何事も立ち行かなかった」

薪が見上げたその先で、一度遠くに飛び去った小鳥達が、すぐ近くの木に戻ってきて、枝々に止まり、ピイピイと鳴いている。

「皆が、共に困難に立ち向かい、苦楽を分かち合い、同じ目的に向かって協力し合う・・これこそが、信頼し合う・・信じる、ということではないでしょうか」
そう話す青木に、薪は、目を向ける。

「あなたは・・自分が、誰も信じることが出来ない、また、誰からも信じられる資格も無い。そう言っていましたが、本当にそうでしょうか」

青木は、空を見上げたまま、話し続ける。

「あなたの家臣達は、ただ、自分の務めだからと、それだけで、あなたに仕えているわけではないと思います。今井さんと宇野さんは、いつも、薪さんが何をよく食べるか報告し合っては、あなたの口に合い、滋養にも富む料理を出そうと、創意工夫しています。曽我さんや小池さんも、薪さんのことを話す時、とても楽しそうなんですよ。岡部さんだって、いつも薪さんのことを心配して・・・」

「あなたが、どれだけ皆に慕われているか・・オレは、ここで過ごす日々の中で、それを感じてきました」
「・・・・・・」
薪は、かすかに口を開き、青木を見つめる。

「他に行く当てが無いからじゃない。皆、ここに、薪さんの傍に居たいから、城に居るんだと思います。そして、何故皆がそこまで薪さんを慕うのか・・それは、薪さん、あなたが、彼らを信じているからじゃないんですか?」

青木はそこで、顔を横に向け、薪の顔を、見つめた。

「あなたは、彼らを信じている。彼らも、あなたを信じている。あなたに自覚が無いだけで・・もうとうに、そんな絆を、築いているんじゃないでしょうか。だとしたら・・あなたが、愛される資格が無いなんて、そんなことは無いと思います。あなたは、とっくに資格を得ている。だから、愛し愛される人に巡り合う日も、遠いことではないでしょう」

「青木・・」
薪は、目を見開いて、青木を見つめる。
大きな瞳が、まるでこぼれ落ちそうだと、青木は思った。

青木は、薪から目をそらし、言う。
「・・きっと、あなたにふさわしい、優しく美しく賢い、運命の女性が現れて、あっという間に互いに恋に落ち、魔法が解けることになるんですよ」

青木の言葉に、薪も、青木から目をそらし。
「そんなに、上手く行くものか?」
そう言った。

「ええ!絶対に、そうですよ」
「・・そうかな」

二匹はまた、空を見上げる。
その時。

薪の耳が、ピクッ・・と動いた。
同時に、しっぽが太くなり、身体中の毛が逆立つ。

「薪さん!?」
薪の様子に驚いた青木も、何か嗅ぎ慣れない、危険な匂いを感じ取った。

薪は、傍の木に登る。
瞳を凝らし、そして叫んだ。

「・・オオカミだ!!」





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