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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene9:笑み


「薪さん・・薪さん!!」

ウォーン、ウォーン・・という犬の遠吠えに、娘は目を覚ました。
「どうしたの?」
窓際に立ち、叫ぶ青木の傍に、娘は歩み寄る。

「あら・・? そう言えば、猫ちゃんが居ないわね」
言いながら、娘は、その窓を大きく開いた。

青木は窓から顔を出し、周囲を見渡すが、もうどこにも、薪の姿は見えなかった。
「薪さん・・」
キューン・・と青木は鳴いて、首を引っ込める。

そして、落ち着かない様子で辺りをうろうろとする青木に、娘は手を伸ばし、頭を撫でた。
「あの・・すみません、オレ・・」
青木は、改めて娘の前にお座りし、その顔をじっと見つめて、言う。

「オレはずっと・・自分を必要としてくれる人を、探していました。心から、愛し愛される人を。それは、あなたなのかもしれません。オレは、ここに残るべきなのかも・・だけど・・」
「・・?」
娘は首をかしげ、青木の前にしゃがむ。

「だけどオレは・・オレはどうしても・・・」
青木は窓の向こうを見、それから、再び娘の顔を見つめた。

「ただ・・あなたのことは気がかりです。一人ぼっちだというあなたを、残して出て行くのは。あなたは、とても優しくしてくれたし。あなたが寂しい思いをするのかと、そう思うと・・。でもオレはやっぱり・・・。本当にすみません。どうか、止めないで下さい」

首を垂れる青木に向かい、娘が手を伸ばし、首に触れた、その時。

「おはよう!」
ドアの向こうから聞こえてきた男の声に、娘は反射的に立ち上がった。
「この声・・!」
娘はつぶやき、その頬が急に上気した。

「どうしよう・・ヤだ。あの人が来たっていうのに、こんな格好で、私・・・」
娘は、そわそわと落ち着かない様子で、ドアを見やる。

「おい!居るんだろう? 開けてくれ!オレだよ!」
声と共に、ドンドンと、ドアを叩く音がする。

そのドアと、見上げる青木とを、交互に見ながら、娘は言う。
「誰だと思う? あの人はね・・私の恋人」

娘の言葉に、青木は、目を丸くした。

「私の幼馴染で・・唯一、私を理解してくれた人。でも、彼は町に出稼ぎに行って、私は父とこっちに移り住んで・・離れ離れになってしまった。お金を貯めたら結婚しようって、彼はそう言ってくれていたけれど・・」

「親父さん、亡くなったんだって? それを聞いて、飛んできたんだ」
ドアの向こうの声を聞きながら、娘は、青木に話し続ける。
でも、その目は宙をさ迷い、青木のことは、目に入っていないようでもあり・・。

「実は、昨日、父の発明品を売りに町に行った時、彼のことを探して、遠くから見ていたの。でも・・綺麗な町娘達に囲まれて、私のことなんて、きっと忘れてると・・そう思って、声も掛けられなかった。オオカミに襲われたのは、その帰り道だった・・」

「迎えに来たんだ。結婚しよう・・!」
男の最後の言葉に、娘は、家から飛び出した。

「克洋くん・・!!」
ドアの向こうで待ち受ける男の胸に飛び込んだ娘は、大型犬が、自分の横をすり抜けていったことに、気付いていなかった。




薪は、森の中を歩いていた。

青木は、ずっと探し求めていた人間に出会えたのだ。
これで良かった。
そう、薪は思う。

そして自分は、青木に出会う前の生活に戻るだけ。
・・ただ、それだけのことなのに。
胸が塞がる思いがするのは、何故なのだろう。

薪は、プルプルッ・・と、身体を震わせた。
夜明けには、僅かに日が差していたが、今は太陽が雲に隠れ、湿った空気が、薪を包んでいる。

・・雨になるかもしれない。
急いで帰らねば。
城では、岡部達・・皆が、さぞ心配していることだろう。

その時。
ふと、薪は思った。

家臣達が、自分を心配していると、何故、そう思うのだろう。
当然のように、信じられるのだろう。

自分は一体、いつから・・・・・・・?

「青木・・」
そう、声に出た。

青木・・そうだ、そうなんだ。
僕は、気付くことが出来た。
お前は、僕にそのことを、気付かせてくれた。
それで充分だ。

だから、僕は大丈夫だ。
お前が、居なくても、もう・・・・・。

薪が、自分にそう言い聞かせていた時。
その気配に気付き、薪は、立ち止まった。

聞き覚えのある、足音。
嗅ぎ覚えのある、匂い。
そして・・・・・

「薪さん」
背後で、声がした。

振り返りたかった。
だが、振り返れなかった・・どうしてか。

前を向いたまま、立ち尽くす薪に、青木は並んだ。
そして、言った。

「薪さん・・オレの、飼い主になって下さい」

薪は、目を上げる。
大きな瞳を、更に大きく見開いて。
青木は、薪を見つめていた・・真っ直ぐに。

コクン・・と薪がうなずき、青木は、声を上げる。
「良かった・・!」

千切れんばかりに、しっぽを振る青木を見て、薪は言う。
「だが・・猫が犬を飼うなんて、聞いたことが無いぞ」
そして、再び歩き出した。

並んで歩きながら、青木は言う。
「あなたはきっと・・魔法が解けて、人間に戻りますよ。それでも、オレを一生飼って下さい。約束ですよ。オレは、ずっとあなたの傍に居て、あなたを守る、番犬になります・・!」

嬉しそうに息を吐きながら、そう言う青木をチラリと見て、薪は言った。
「何の警戒心も無く、出された物を全て食べ、どこでも熟睡する、番犬、か・・」
「ぐ・・」
「随分、頼りがいのある番犬だな」

そう言って、薪は、フフッ・・と、笑った・・・。

「・・・・・・」
青木は、息を呑んだ。
薪のそんな笑顔は、今までに、見たことが無かった。

初めて見た薪の笑顔は、あまりにも眩しくて・・・・・青木は、目が離せなくなった。

「・・僕は」
歩きながら、薪は口を開く。

「僕はもう、人間に戻らなくてもいいと、思っている」
「え・・?」
青木は、驚いた顔で、薪を見つめた。

「人間に戻ってしまったら、もうお前と、こうして話すことが出来なくなる。だったら・・戻れなくたっていい」

「薪さん・・・」
青木は思わず立ち止まる。
その様子に、薪も立ち止まり、振り返る。

二匹が互いに見つめ合った、その時。
ポツン・・と鼻に当たる滴に、青木は気が付いた。

二匹は同時に、空を見上げる。
ポツポツと、雨が降り出した。
「急ぎましょう」
青木が言い、改めて二匹は駆け出そうとして・・・

「!!」
薪の耳がピクッと動き、身体の毛が逆立った。
青木も周囲の異変に気付き、身構える。

この足音は・・この匂いは・・・

どんよりとした空気の中、着実に近付いてくる。
逃げようとしたが、あっという間に、囲まれていた。

それは、オオカミの群れ。
一頭、二頭・・全部で五頭も居る。
その真ん中には、ひときわ大きな、ボスオオカミが立っていた。

青木は、薪を後ろに庇い、じりじりと後ずさる。

「こいつらですよ!!」
後ろの方に居た一頭のオオカミが、ボスに向かってわめき立てる。
そのオオカミと、隣りに居たもう一頭のオオカミは、顔が真っ赤に腫れ上がっていた。

「お前達・・オレの仲間を、随分酷い目に合わせてくれたようだな・・」
低くうなる声は、それだけで、周囲の空気を凍らせる。

空には暗雲が立ち込め、雷が鳴り始めていた。

薪は、腰の皮袋に手を伸ばしたが・・既にその中身は空であることを、誰よりも薪は知っていた。
「薪さん・・」
青木は、薪に顔を近付けて、ささやく。

「薪さんは、後ろの木に登って、逃げて下さい。幸いここは、木が密集しています。あなたなら、木から木へ飛び移って、逃げられるでしょう。いいですね・・オレが、彼らの気を引いているうちに!」
「そんなこと・・!!」
薪は、その先の言葉を失う。

「木に登るんです。全速力で。そして逃げるんです」
「青木、僕は・・!!」
「・・絶対に振り返らないで。何も見ないで。城の皆が、あなたを待っています」

ほんの一瞬。
青木は、薪を振り返った。

薪は、青木が何故、そんな顔をするのか、分からなかった。
こんな状況だというのに。

青木の目は、穏やかに、微笑んでいた。





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